2009/06/27

nordgren concertos

ノルディックサウンド広島で買ったCD、その1。

ペール=ヘンリク・ノルドグレン Pehr Henrik Nordgren(1944 - 2008)は、フィンランドの作曲家。1944年に生まれ、ヘルシンキ大学で楽理を学び、さらにJoonas Kokkonenにプライヴェート・レッスンを受けることで作曲を学んだ(ショスタコーヴィチにあこがれて、作曲家を目指したのだとか)。その後1970年から1973年まで東京藝術大学に留学していたことでも有名。代表作に、弦楽四重奏曲を始めとする数多くの弦楽器のための作品が挙げられる。また、国内では舘野泉とのコラボレーションによる「小泉八雲の怪談によるバラード」などが有名だろう。

そのノルドグレンの協奏曲を収録したCDが、「nordgren concertos(FINLANDIA RECORDS 3984-23392-2)」である。収録されているのは、スティーヴン・イッサリースに捧げられたという「チェロ協奏曲」、単一楽章となる「サクソフォン協奏曲」「ホルン協奏曲」の3作品。演奏は、Juha Kangas指揮 オストロボニア室内オーケストラ Ostrobothnian Chamber Orchestra。オストロボニアCOは、ノルドグレンゆかりのオーケストラとも言え、両者のコラボレーションのなかから数々の新作が生まれたそうだ。

サクソフォン的興味から、まずは「アルトサクソフォンと弦楽のための協奏曲作品92」を聴いてみた。演奏は、シガード・ラッシャー派の高弟の一人、ジョン=エドワルド・ケリー John Edward Kelly氏で、高音域を数多く含む難易度の高いパッセージを、難なく吹きこなしている。曲のスタイルとしては、作曲者自身が語っている通り、ソロがメインとなるフレーズをひたすらに辿り、弦楽器がほぼ終始一貫してバックグラウンド的に(主にトーン・クラスター的な音空間を形成する役割で)扱われているのが面白い。クライマックス~後半部を除けば、いくら「協奏曲」とはいえ、ここまでオーケストラが前に出てこない曲も珍しいのではないか。

独奏パートには微分音やスラップ、ビスビリャンド、フラッターなど、サクソフォンの特殊奏法がかなり充実して使われており、作曲に際しての楽器法へのこだわりが感じられる。ほとんど休みがないのに加え、演奏者はかなり大変なのではないか(苦笑)。そして、クライマックスを抜けた後の、この意外なほどのせつない美しさはどうだろう!これぞまさに北欧音楽の真髄、といったところだろうか。

「サクソフォン協奏曲」以外には、「ホルン協奏曲」がとても面白かった。この曲の美しさは、ちょっと言葉では表現しがたいが、冒頭にホルンが奏でるフレーズを皮切りに拡がる、目の前の広大な音空間に感動してしまった。海の底に響くエレジー、という言葉が想起された。

…といったCDなのだが、肝心のFINLANDIAレーベルは活動停止中。店頭で入手するのは難しそうだ。amazonを探したところ、いちおう中古を扱っていた(amazonへのリンク→Nordgren;Concertos)。

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