インドジフ・フェルドの「ソナタ」を初めて聴いたのは服部吉之先生のアルバム「Embraceable you」であった。服部先生から直接購入したアルバムで、他にパスカルの「ソナティヌ(ソナチネ)」にガロワ=モンブラン「音楽的練習曲」、クレストン「ソナタ」、生野裕久の委嘱新作(モレティとのデュオ演奏!)が入曲。作曲家自身が絶賛したパスカルの「ソナティヌ」に目がいくが、あえてフェルドに注目してみよう。
フェルドの母国チェコ・スロバキアの民主化革命に題材を採り、特に第二楽章には「自由の鐘(1989)」という副題が与えられている。サクソフォンの作品としては数少ない、メッセージ性の高い作品と言えよう。
楽曲全体を通して真っ向から取り組まれたレベルの高い演奏を聴くことができる。特筆すべきは第二楽章、録音の繊細さ(服部先生の息遣いまでも感じ取ることができる!)もあいまって異常なまでに集中力の高い音世界が展開されているのがよく分かる。さらに第四楽章、自由の鐘が回顧されるときの美しさといったら!民主化という事物に話題を求め、残酷なまでの美しさに昇華している点がすばらしい。作曲者、奏者の両方に大拍手。献呈者のユージン・ルソーの録音、さらにルソー門下のケネス・チェによる演奏もあるが、聴き比べてみると奏者の曲への没入度という点でやはり服部先生の録音が一番だと思ってしまうわけです。
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