2日目。朝一でキオスクに行き、トラムのカード(Suica的なもの)を入手。30分までならどこまで乗っても4クーナ(60円強)という安さ。トラムを活用すれば、大体どこにでも行けるため、重宝した。滞在先から音楽院までは、トラムで5分ちょっと。
会期中は様々なプログラムがあるが、どういった演奏を聴くのかは思案のしどころだ。日本の参加者も多く、応援しに行きたい気持ちと、コングレスでしか聴けないような奏者を聴きたい気持ちが交錯した。今回は両者をバランス良く聴いていくことにした。
コングレス初日。まずは日本のJemmy Genic QuartetをAcademy of MusicのVaclav Huml Hallで聴く。Shunsuke Takizawa「Good Summer Picture」と、Takatsugu Muramatsu「Earth」。「日本人の、誰が聴いてもわかりやすい曲を、日本人らしく」というようなコメントを演奏後に伺った。その目的は、とても高いレベルで達成されていたと思う。丁寧で、しかし同時に内に秘めるものをしっかりと感じさせる演奏であった。
続いて隣のホールSvetislav Stancic HallでDuo NoVexを。サクソフォンとパーカッションとエレクトロニクスでAlex Mincek「Nucleus」を演奏していた。本当はPierre Jodlowskiの「Collapsed」も聴きたかったが…。手綱で抑えるがごときパーカッションと、高いテンションのサクソフォン、そしてエレクトロニクスパートの絡みが絶妙であった。
1つフロアを下げて、日本のQuatuor Bを聴く。Jun Nagao「Comets」は聴くことができず、Takashi Niigaki「Ballade」と、Johann Sebastian Bach/Yasuhide Ito「Chaconne」。新垣氏の委嘱作品初演は、非常に高い集中力による演奏で、喝采を浴びていた。伊藤康英先生のバッハの「シャコンヌ」は、これはちょっと個人的に冷静に聴くことができなかった…聴きながら昔を思い出して震えてしまった。Tsukuba Saxophone Quartetのメンバーとして、2012年のスコットランドのコングレスで演奏した曲なのだ!おそらくその時がヨーロッパ初演だったはずだ。ちなみにバリトンの小山さん、楽器を現地を借りたらなんとF#無しだったそうで、すべてフラジオに置き換えて演奏していたそうな。
Academy of MusicのBlagoje Bersa Hallで、Zurich Saxophone Collectiveの演奏を聴いた。指揮はLars Mulekusch氏だった。Alvin Lucierの「The Two Grey Hills」だけ聴くことができたが、さすがに洗練された演奏であり、過去から現代まで続くスイスのサクソフォン界の強さを感じさせるものであった。
ここでトラムに乗って中央バスターミナルへ、さらに空港行きバスに乗って(バスターミナルと空港を30分程度で結んでいる)、後発で到着した山本くんを迎えに行った。ついでに7000円分のクーナを調達。同じ便には偶然松下洋くんも乗っていた。3人でおしゃべりしながら、再び空港バスに乗って中央バスターミナルまで移動した。バスターミナルでは再びトラムに乗ったが、なんと別の日本人がスリ(未遂)に遭っている現場に遭遇。バスターミナルからのトラムは狩り場なんだろうなあ…。
山本くんをアパートメントに案内し、一休み。ちょうどBlagoje Bersa Hallでの須川氏の演奏とかぶっていたので、中継で須川さんの演奏を聴くことができた。後半のJohann Sebastian Bach「Chaconne」、Chick Correa「Florida to Tokyo」、George Gershwin「From the Place Where Knows Everything」だけであったが、須川氏のバランスのとれた解釈、そして、聴き手を熱狂の渦に巻き込む演奏は、世界のどこに行っても通じるものなのだろう。あとから会場にいた方に聞いたところ、その場も大変な盛り上がり&大混雑だったそうだ。
Croatian National Theatreに移動して、ACMH Alicante Saxophone Ensembleを聴いた。このとき初めてこの会場に入ったのだが、とにかく外装・内装が美しい。19世紀末の建築だそうだ。スペインのアンサンブルで、若手・ベテランの混合といった感じ。スラップタンギングを混合したオスティナートが耳に残り、なぜか皆裸足だなあ、と思っていたところ、最後は舞台上を歩き回って幕、という、なかなかおもしろい作品であった。Sixto Herrero「Sureste」。スペインには、面白いグループがたくさんあるな…。
Vaclav Huml Hallで、Adam McCord and Paul Tuckerのリサイタルを拝聴。Marc Satterwhite「Amentecayatl」という曲だが、アルトサクソフォンとテナーサクソフォンのデュオで大変に上手い。このような演奏を突然見つけることがあるのが、コングレスの醍醐味だ。その次に演奏されたDon Freund「Louder than Words」という作品も、とてもクールなものだったようだ。
Svetislav Stancic HallでNicolas Arsenijevic and Ivan Batosを聴いた。すべて新作、という意欲的なプログラム。ディナンでも入賞しているし、それより前から、非常に上手く、豊かな音楽性を持ち合わせていることを存じているが、ライヴで聴いてもその通りだった。作品としての印象で、特に強いものがあるか…と言われると、残念ながらそういったものはないのだが、どれも氏の音楽の一部として昇華されていたのだった。Orlando Bass「Veranderungen I」、Florent Caron-Darras「Projectio」、Riccardo Nillni「Hush」、Jean-Baptiste Doulcet「Nocturne」。
この日は最後に、コングレスの最大規模のコンサートホールであるVatroslav Lisinski Concert Hallでの協奏曲コンサート。およそ1800のキャパシティを持っている会場で、大盛況。ドゥラングル氏、ボーンカンプ氏、マカリスター氏は説明するまでもないが、Antonio Garcia Jorgeは、フランスでも学んだ奏者で、クロアチアの国際コンクールで優勝している。かなり大きな会場であるため、さすがにサクソフォンの演奏という意味ではインパクトが薄まってしまうのは致し方ないかもしれいないが、それにしても名演奏の連続だった。特に初耳だったギョーム・ラゴの「レジェンド」は、構成感や響きから聴き手に対して与えるインパクトが大きく、今後人気が出そうだ。ところで、フィリップ・ルルーの作品は、どこで初演されたのかな…恥ずかしながら作品の存在自体を知らなかった。
Boris Papandopulo「Concerto for Saxophone and Big Orchestra」- soloist Antonio Garcia Jorge*
Philippe Leroux「L'Unique trait de Pinceau」- soloist Claude Delangle*
Guillermo Lago「Legends for alto saxophone and orchestra」 - soloist Arno Bornkamp
John Adams「Saxophone Concerto」 - soloist Timothy McAllister
ところで、この協奏曲コンサートのときに、スペインのDaniel Duranと久々に会うことができた(実は非常に多くの方がお世話になっているXXXの仕掛人)。スコットランド、ストラスブールの各コングレスで会って以来、久々の再会であった。また、前回コングレスで共演した、スコットランド、セント・アンドルーズ大学のRichard Inghamとも会うことができ、再会を喜びあった。今回はLargo MusicのExhibitorとして参加しているそうだが、実はこの日に演奏もあったそうで…そのプログラムに気付かず聴きに行けなかったのだが(>_<)
コンサートのあとは、ロビーでシャンパンが振る舞われ、軽食・ドリンク付きのパーティが催された。皆思い思いに、旧交を深め合い、再会を喜び合い、演奏会の余韻へと浸りながらの充実した時間。多くの日本人奏者に久々に会うことができ、また、アメリカのRichard Dirlamとは、数年前のInternational Saxophone Quartetの打ち上げ以来(驚いたことに、名前を覚えていてくれた!)の再会だった。気がつけば23:30。トラムで宿に戻り、すぐに眠りについた。
写真は、コンチェルトコンサートの様子。
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