中小企業向け投資ファンドのArgos Soditic(以下A社)が仏セルマー社の株式の所有権を獲得するための独占交渉権を得たとのニュースが入ってきた。
この所有権移管により、今すぐに何かが変わるとは思えないが、A社が経営陣に参加することで(セルマー家のメンバーも一部所有権は保持し、経営には参加し続けるそうだ)、やがて方向性が定まってくるのだろう。強大な資本を持つファンドが後ろ盾となることは、その会社にとって、成長のため機動的に資本を投入することができるというメリットを持つ一方で、利益が出なければ容赦なく縮小させられる、といった正負の2つの側面を持つ。A社の投資先ポートフォリオを見たが、多岐にわたりすぎていて(交通、食品、情報工学、軍事etc)、「セルマー」という会社やブランド、製品の真の価値をわかっているマネージャーがいるかどうかは、不安要素となる。
気になるのは、なぜA社が買収に興味を示したのか、そして、なぜセルマー家がそれを呑んだのか、だ。A社側の立場でいうと、プレスリリース文にいちおう記載があるが、ユニーク・マニュファクチャリングとか、ワールドワイド・フットプリントとか、"らしい"言葉が並ぶのみである。そんな言葉上のことはどうでも良く、キャッシュを生み出す対象として、そこまで魅力的に映ったのはなぜか、というところだ。セルマー社側の立場についてはFacebook上にジェローム・セルマー氏のコメントがあるが、やはりリソースの増強による拡大…的なコメントがあるのみだ。実際のポイント(両者の思惑)がどこにあったのか、が気になっている。