2023/12/27

家族が到着

 12/20に家族がアメリカに到着し、生活立ち上げ中。落ち着くのはもう少し先になりそう。

2023/11/19

車の中で音楽を

アメリカ赴任開始後、当たり前のように車での移動が主となり、1か月半で1200マイル程度走った。通勤は車、また、休日の遠出も車で、車の中で自分好みの音楽を聴く機会が増えた。

使うのはYouTube Musicで、音声をBluetoothで車のオーディオシステムに飛ばしている。クラシックサクソフォンを聴くこともあるが、その時の気分で雑多に鳴らしておくことが多い。クラシック(オーケストラや室内楽や吹奏楽、時代も様々)、ジャズ、フュージョン、プログレッシブロック、ラテン、ゲームミュージック…など。びっくりするのは、さすが広大なだけあって、辺鄙な場所をドライブしに行くと携帯の電波がつながらなくなること。いくつかのアルバムはあらかじめローカルストレージに入れてある。



2023/10/30

West Valley Music訪問

早速仕事も忙しく、それ以前に生活の立ち上げなどもありなかなかゆっくりできない。家も決まり、一時滞在のホテルから引っ越したのが1週間前。2日間かけて掃除をしてなんとか過ごせるようになった。慌ただしいが、幸いにして睡眠がある程度以上は取れていて比較的心身ともに調子が良い。また、車の運転を兼ねていろいろと見て回っているのだが、アメリカの楽器屋さんにも行ってみた。

West Valley Musicという、El Camino Real(!)という名の通り沿いにあるマウンテンビューの楽器屋さん。楽譜や小物の在庫あり、音楽のレッスンなども行っているようだ。試しにソプラノのマウスピースを…とお願いしたところ、ヴァンドレンの新品とルソーの中古が。種類が満遍なく揃っている、というわけではないみたい。ちなみに、サクソフォンの楽譜コーナーの真正面にて見つけたのが、ゲイリー・ショッカー/松下洋編の「3つのダンス」の楽譜で、ちょっとびっくり。

なんか良い演奏団体ないかねえ、と相談したところ、やはりというかなんというか、Foothill Symphonic Windsを勧められた。ここは連絡を取ってみるつもり。

2023/10/04

アメリカへ赴任

本日、アメリカ・カリフォルニア州サンノゼへと渡航する。会社の現地事業所において3年程度の勤務となる。

2023/08/30

10月上旬まで更新停止

2023/10上旬まで多忙につき更新を停止する。

2023/07/24

木下直人さんより(Marcel MuleのSelmer盤復刻)

マルセル・ミュール氏の録音の中でも、特に高名なSelmer盤(かつて、フランス・サクソフォン協会からASAX98という型番でCD化もなされている)の復刻盤を、木下直人さんに送っていただいた(いつも、ありがとうございます)。

P.クレストン - ソナタ
P.モーリス - プロヴァンスの風景
P.M.デュボワ - ディヴェルティスマン
E.グラナドス - ゴイエスカス
P.ボノー - ワルツ形式のカプリス
H.トマジ - ジラシオン
E.ボザ - カプリス

様々な形態で復刻されているが、それぞれの復刻ポリシーによって、少しずつ違う演奏に聴こえてくるのが実に面白い。音色や音の輪郭そのものにはエッジの効いた、眼前に迫るようなリアルさを感じるのだが、そのおかげでより各場面における違いが際立つ。

かつて、クレストンの冒頭を初めて聴いたとき「問答無用に感じた畏怖」のようなものは、ASAX98の復刻ポリシーによるものも大きかったのかもしれない。もう少し違う印象を持つようになったのは、大きな発見であった。


2023/07/23

Crampon S3 Prestige Saxophoneの備忘録:追記

徳祐一郎さんより、先日のブログ記事「Crampon S3 Prestige Saxophoneの備忘録」について、貴重なコメントを頂戴した。

主に、後半部に記載した、松井宏幸氏が入手したというダニエル・デファイエ氏の使用モデルについてのコメント、また、ビュッフェ・クランポンのサクソフォン全体についての捉え方について、興味深い示唆をいくつもご提示いただいた(ありがとうございました)。私自身も全く知らない情報が多く、どこかに残しておきたいと考えてご相談したところ、掲載許可をいただいたので、一部、「噂レベルの話…」とコメントがあった部分を除き、そのまま掲載する。

他にコメントや情報があればお寄せいただきたい。

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松井先生が入手されたデファイエ氏使用のPrestigeのC-D#キイについて考えるにあたっては、S2というモデルの存在が鍵となります。

S2は、S1と同一の管体を持ちながらも一部設計を合理化したS1の廉価版です。具体的なS1との差異点には、C5キイとTfキイの機構の簡易化(主列との連絡を省略)、彫刻の省略(彫刻付き個体もあり)、そしてC-D#キイの一般的なローラーキイへの変更などがあります。

そしてデファイエ氏使用のPrestigeについてです。こちらの個体に搭載されたC-D#キイは、前述のS2と同様のローラーキイです 。同時期に製造された真鍮S1にも、同様にS2用のC-D#キイを搭載した個体が存在します。これらはカイルヴェルト製のキイとは全く異なるものです。

ともかく、この個体は「S2用C-D#キイを搭載したS1 Prestige」という解釈をすることができます。

ビュッフェの楽器はモデル名の定義が非常に曖昧で、それがより理解を難しくする一因となっています。そもそも「S3」という名称は正式なモデル名ではなく、通称に過ぎないのではないかともいわれています。一般に「S3 Prestige」と呼ばれるモデルの正式名は、「Prestige」 (S1 Prestigeも正式名称は「Prestige」)です。

また「無印S3」と呼ばれるモデルも、管体などに「S3」の刻印はなく、保証書ではのモデル名は「saxophone alto」とのみ記されているものや、「S1」と表示された個体すらあります。個人的にはS3製造当時のビュッフェ公式資料における「S3」という表記は確認しておりません (近年の資料にはS3という表記もみられますが)。何をもって「S3」と呼ぶか、という明確な基準が存在していないともいえると思います。個人的には純ビュッフェ製がS1シリーズ、カイル製キイ付きがS3シリーズという認識でしたが、何が正しいやら...といったところです。

他にも、1973-1975年の製造品の中にはSuper Dynactionの構造をもったS1が存在したり、S1の構造をもったSuper Dynactionが存在したり...

ビュッフェのサクソフォンはマイナーチェンジがあまりに多く、個人的には厳密にモデル名を区別することは極めて困難であると考えています。


2023/07/09

Robert Planelのローマ大賞作品

作曲家ロベール・プラネルは、1933年にローマ大賞を受賞している。ローマ大賞は、コンクールの中で指定されたテキストをベースに、参加者が多声部・オーケストラを付与することによって作品を作り上げ、その出来を競う、という形で争われる。ちなみにこの年の次席は、ピアニストとしても有名なアンリット・ピュイグ=ロジェであった。

その、プラネルの作品について、おなじみMusica et Memoriaの中に興味深い記述があった。

http://www.musimem.com/prix-rome-1930-1939.htm#planel

カンタータ「イディル・ファンビュレスク Idylle funambulesque」によって、この若き音楽家は、芸術音楽にジャズを導入し、またサクソフォンの特殊な音色を取り入れた。

少し探してみたが、残念ながら、音を見つけることはできなかった。しかし、1908年生まれのプラネルがその音楽的キャリアの極めて初期からサクソフォンやジャズを知る…どころか存分に活用し、芸術作品の域へと昇華していたという事実を示すものだろう。

以下は、1941年に撮影されたプラネルの写真とのこと。


2023/07/08

Michael Colgrassの「Urban Requiem」

吹奏楽形態においてサクソフォン四重奏をフィーチャーした作品の一つ。

アメリカに生まれ、カナダで活動していた作曲家、マイケル・コルグラス氏の名前は、日本国内においては吹奏楽の世界で主に知られている。アルトサクソフォンと吹奏楽のための「Dream Dancer」なる作品も存在しているが、それよりもさらに規模が大きい作品で、コルグラス氏がサクソフォンのためにこのような大規模な作品を残していることを初めて知った。

作曲者のコメントを訳して載せておく:

レクイエムとは、死者の魂に捧げるものである。アーバンレクイエムは、様々な偶然の印象から着想を得た、都市の物語と言えるかもしれない。私は、サクソフォンが生まれた私たちの都市部や、このような環境で日々起こる悲劇や闘争を思い浮かべた。しかし、私はまた、この都市のエネルギーとパワー、そしてその対立に内在するユーモアにも触発された。サクソフォンは、このアイデアに必要なさまざまな感情を表現するのに特に適していると感じている。というのも、サクソフォンは非常に個人的で痛烈な性格を持つだけでなく、力強く、威厳があるからだ。バンシーのように吠えることもできるし、子猫のように鳴くこともできる。要するに、サクソフォンは他のどの楽器よりも人間の声に似ているのだ。私の脳裏には、4本のサクソフォンがヴォーカル・カルテットのように歌い、典礼的な音楽でありながらブルージーな倍音を持つ、一種の "アフター・アワー "レクイエムのように聴こえた。

演奏時間はおよそ30分。各ソロ楽器の見事な音運びと、バックバンドとソロの濃密なインタープレイが魅力的だ。

録音はいくつかあるが、サクソフォン奏者のJoseph Lulloffが参加しているGreat Lakes Saxophone Quartet(この作品のための臨時編成カルテットかもしれない)と、ノーステキサス・ウィンド・シンフォニー、ミシガン州立大学、各バンドと録音を行っているものがオススメ。技術的にはいずれも優れているが、どちらを取るかと言われればノーステキサス・ウィンド・シンフォニーの演奏が好みである。


2023/07/05

Crampon S3 Prestige Saxophoneの備忘録

かつてクランポンが製造・販売していたプレスティージュサクソフォンについての備忘録。

私は、あまり楽器の情報には興味が無いのだが「クランポンのプレスティージュ」については少し特別な思いがある。そもそも、ダニエル・デファイエ氏が演奏/プロモーションしていた、という点や、かつて実際に一度吹いたときに出てきた驚くほど美しい音(しかも、たまたまアルトの小物が手元になく、部室に転がっていた古いヤマハか何かの超適当に選んだマウスピースで吹いた…)など、所有に至ったことはないが、決して手に入ることのない憧れのような存在として、心の奥底にずっと燻り続けている。

最終期にはアルトサクソフォンのみが製造され、中古市場でもかなり高額で取引されており、さらにソプラノ、テナー、バリトンは希少度がさらに高い。たまに、中古情報やオークションなどでふと目にすると、他の楽器には感じることのない羨望の感情が湧き上がってくる。

そのクランポンのプレスティージュだが、最終期に製造されていた「S3プレスティージュ」には2種類のバージョンが存在していたことを最近知った。もしかして界隈では常識なのかもしれないが、備忘録として残す次第。

1つ目が、1989-1994年に製造された純粋にクランポン製の楽器。キーワークなど、S1等を継承する特徴が見られる。製造数が700程度と非常に少ない。


2つ目が、1995-2008年に製造された、管体がクランポン製、キーワークがカイルヴェルト製の楽器。こちらの楽器が、現在中古市場等では数多く見られるもの。


音などにどういった違いがあるのかは良くわからないが、とりあえず事実としてそのような違いがあることを最近知ったのでブログに残しておく。うーん、書いていたら欲しくなってきたが、入手困難であるため、なかなか。

さて、ここまで書いて一つ疑問が出てくる。それは、最近、サクソフォン奏者の松井宏幸氏が入手したという、「巨匠ダニエル・デファイエがベルリンフィル日本公演で使用したプレスティージュ」のことである。どんな経緯で入手されたのかはほとんど語られていない(関係者が眠らせていたお宝です、とのこと)が、その写真を見ると、上記のいずれにも属さないキーワークが目を引く。C-D#のローラーは、クランポンのキーワークではないし、ではカイルヴェルトか?と思いきや、カイルヴェルトとは違う妙に丸い形状に違和感がある。また、Tf/C5のあたりは、クランポンのキーワークそのものである。これは一体どのようなモデルなのだろうか。


また、クランポンのシリアル番号リスト、というものを見つけた。非常に興味深い内容で、併せて掲載しておく。クランポン→クランポン&カイルヴェルト、の移行時期には、無印のS3の発売も重なっているのだ。また、S1の時期に突如として現れて消えていったS2の役割、というものも気になる。


2023/06/25

ダニエル・ケンジーのYouTubeチャンネル

ひと月ほど前に、ダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏のYouTubeアカウントが突如として開設され、同時に57本もの演奏録音(残念ながら映像は無いようだが)がアップロードされた。

特に現代作品の分野において、大量の録音を実施しているダニエル・ケンジー氏ならではの内容。作曲家の名前に馴染みが無い中、どのような音が飛び出すかは予測不可能。じっくり腰を据えて聴いてみて、新たな響きを発見することに楽しみが見いだせるだろう。

私も聴いたことがあるのは、ジェルジー・クルタグの「ブカレストの叔父を訪ねて」くらいで、ほかは初耳。とにかく分量が圧巻で、まだ全然聴けていないのだが、少しずつ聴いていこうと思う。

https://www.youtube.com/@daniel-KIENTZY


2023/06/24

ラッシャーの演奏(Frederick Kochのコンチェルティーノ)

1964年にシガード・ラッシャーに献呈されたFrederick Kochの「サクソフォン・コンチェルティーノ」の録音を見つけた。ラッシャー氏の演奏は数多く所持しているが、この作品の録音を聴くのは初めてだと思う。Frederick Kochについては、このCleveland Arts Prizeページが詳しい。1923年生まれの作曲家だそうだ。

ラッシャー氏向けに書かれた曲の「らしさ」が溢れており、録音はモノラルで音質も決して良くないが、なかなかの名演だ。

https://archive.org/details/cd_series-composers-tapes_frederick-koch-daniel-dorff-wolfgang-ludew/

「Harth, Carnegie / Community Orch」との記載があり、指揮はRobert Harthだろうか、しかし確定には至らない。以下は、Frederick Koch氏の写真。



2023/06/21

The Saxophone Mass(サクソフォン・ミサ曲)

ジョン・ハールの「サクソフォン・ミサ曲」という作品を、「The John Harle Collection Vol.8 - Gothic」で聴くことができる。ギルドホール音楽院サクソフォンアンサンブルをフィーチャーした演奏で、大規模、かつ、実験的要素を含む壮大な作品である。

のちに「恐怖と壮麗」という作品で、作品のコア(中世の音楽を活用するなどの考え方)を流用しながら、コンパクト、かつ、ポップな要素をも携えて再び世に問われることになるが、その片鱗を「サクソフォン・ミサ曲」の各所で垣間見ることができる。例えば「恐怖と壮麗」の最終部、40本のソプラノサクソフォンが炸裂する箇所は、明らかに「サクソフォン・ミサ曲」の一部を引用していることが分かる。


「恐怖と壮麗」と「サクソフォン・ミサ曲」の関係性については、ジョン・ハール自身の言葉を引用しておこう。

 《恐怖と壮麗》は、音楽による五つのドラマからなるファンタジーである。「過去の中に現在を見出だせ。そうすれば世界が理解できる」といったのは、ロイヤル・シェイクスピア劇団の芸術監督であるエイドリアン・ノーブルだった。そしてこのアルバムが形を整えるに連れて、彼のこの言葉は私の心の中でより鮮明に鳴り響くようになった。

 この音楽の種が最初に蒔かれたのは1980年代の中頃、ハリソン・バートウィッスルとドミニク・マルドウニーがナショナル・シアターでわれわれ音楽家にとって刺激的な演奏を行った時のことである。彼らは、中性音楽が構造的・即興的な遊び場として面白い素材であることにわれわれの目を開かせてくれた。彼らの努力の成果は私の場合、《サクソフォン・ミサ曲》となって結実した。これは16人のサクソフォン奏者、4人の打楽器奏者、2人のキーボード奏者、ニュー・ロンドン・コンソート、そして1台の大砲のための1時間に及ぶ大作である。《サクソフォン・ミサ曲》が埋葬されて10年後、このアルバムに収録された作品で、バートウィッスルとマルドウニーの努力はさらなる成果を生んだ。

これは「恐怖と壮麗」のブックレットに記載されたコメントで、このアルバムを入手したときから「サクソフォン・ミサ曲」の存在はとても気になっていた。そういった背景から「The John Harle Collection」にそれが収録されたことは個人的に非常に嬉しい出来事だった。このコメントからすると「サクソフォン・ミサ曲」は演奏時間1時間とのことだが、「The John Harle Collection」に収録されたものは20分程であり、その差分の理由は判らない。もしかしたら、複数バージョンが存在しているのかもしれない。

2023/06/19

上田市のアーバンSQ

長野県上田市のサントミューゼにて、アーバン・サクソフォン・カルテットがリサイタルを開く。

アレンジ作品とオリジナル作品がバランス良く配置されている。特にオリジナル作品の選曲センスが素晴らしく、サクソフォン四重奏の魅力を存分に魅せてくれるものと期待される。

ところで、この演奏会向けの曲目解説を仰せつかり、今日納品したところ(最近ブログが書けていなかったのは、ここに時間を割いていたため)。最近はChatGPTや、ChatGPTをベースにした曲目解説がちらほらと出てきているような噂も聞いており、普通に書いたのでは太刀打ちできないため、普段音楽を聴かない方でも分かるように、なるべく平易に、興味を持つように仕上げたつもり。これまでの仕事と比べて、推敲の回数・時間はかなり多くなった。

そういったこともあり、オリジナル作品については一通り改めて聴くことになったのだが、プラネル、ジャンジャン、トーキー、マスランカと、演奏し尽くされている作品ばかりだが、どれもこれも改めて名曲だな、との思いを強くした。

日時:2023年7月22日(土)開演14:00(開場13:30)

出演:アーバン・サクソフォン・カルテット
曲目:
プラネル/バーレスク
ドビュッシー(編曲:中村均一)/アラベスク第1番
ドヴォルザーク/ユーモレスク
ピアソラ(編曲:中村優香)/エスクアロ(鮫)
チャイコフスキー / アンダンテ・カンタービレ
ジャンジャン / サクソフォン四重奏曲
トーキー / JULY
マスランカ/マウンテン・ロード


2023/06/07

サクソフォニストVol.33到着

日本サクソフォーン協会の協会誌「サクソフォニスト Vol.33」が到着。今回も協会誌の編集委員として携わっている。

・第37回日本管打楽器コンクール特集
・特殊奏法が開くサクソフォンの新しい音響的可能性
 -《息の道》に向かう野平一郎のサクソフォン作品群の考察を通して-
・日本のサクソフォン史 第2章
・キンダー楽器を活用したサクソフォーンの早期教育研究
・日本サクソフォン界の隆盛を築いた奏者たち~昭和の知られざる資料集~
・サクソフォンにおける古楽的アプローチに基づいたバロック音楽演奏
・第19回ワールド・サクソフォーン・コングレス&フェスティバル倉敷 報告
・第39回ジャパン・サクソフォーン・フェスティバル報告

このうち、私は「日本のサクソフォン史 第2章」と「日本サクソフォン界の隆盛を築いた奏者たち~昭和の知られざる資料集~」を担当した。

「日本のサクソフォン史 第2章」は、翻訳を行った。原文は杉原真人氏の英語論文である。「日本サクソフォン界の隆盛を築いた奏者たち~昭和の知られざる資料集~」は、今年3月のジャパン・サクソフォーン・フェスティバルでポスター展示した「日本のサクソフォン史~現代に至る日本サクソフォン界の系譜と、日本に影響を与えた世界の奏者」の再構成版である。

その他、面白い記事が多く、ぜひ入手してご覧いただきたい。



2023/06/03

ジョン・ハールのインタビュー記事@PRS for Music

ジョン・ハールのインタビュー記事を試訳してみた。特に子供の頃の音楽との関わり合いなど、いままで知らない情報もあり、興味深い内容である。

https://www.prsformusic.com/m-magazine/features/interview-john-harle

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序文:ジョン・ハールは、ロンドンを拠点に活動するサクソフォン奏者、プロデューサーであり、作曲分野ではIvor Novello Awardを受賞している。世界中のオーケストラと共演し、ハリソン・バートウィッスル、マーク・アンソニー・ターネジ、サリー・ビーミッシュ、マイケル・ナイマンの作品に生命を吹き込んでいる。また、ハービー・ハンコック、エルビス・コステロ、ポール・マッカートニーといった一流のアーティストと共演し、彼らのビジョンを世界中のステージに届けている。ここでは、イギリス音楽の革新の最前線で活躍する彼が、様々なキャリアから得た洞察を紹介します。

ー どんな音楽を聴いて育ったのですか?

小さい頃、そして10代のころまでは、とても熱心に音楽を聴いていました。ピンク・フロイド、ペンタングル、キング・クリムゾン、シュトックハウゼン、デューク・エリントン、ファウスト、ハリソン・バートウィッスルなどの音楽の「異質さ」に惹かれました。電子音に熱中し、プログレやジャズも楽しんでいました。

ー サクソフォンを始めたきっかけは?

サクソフォンについても「異質さ」に惹かれました。また、デューク・エリントン・オーケストラのサクソフォン奏者、ジョニー・ホッジスの演奏に、言葉にならないほどのインスピレーションを受けました。ホッジスはアルトサクソフォンをボーカルのごとく聴かせるのですが、特に私にはマヘリア・ジャクソンに聴こえたのです。その類似性には頭が上がりませんでしたが、その音の深さをコピーするのではなく、自分自身で解釈しなければならないとも思いました。父は共産党員だったこともあるビジネスマンで、私を何度もエリントンに会わせ、エリントンやコルトレーンのようなミュージシャンの人生経験、つまり非常に暗く恐ろしい時代における彼らの真の闘い、公民権運動について教えてくれました。私は高級校に通う恵まれた子供だったので、自分の音楽的な感覚の深さを表現するために別の方法を見つけなければなりませんでした。ジャズは、他者のものであり、その権利があるように思えたので、「おもちゃ」にする気にはなれませんでした。今となっては、それが過剰な気遣いであったことに気づきますが、結果的にそうなってしまったのです。でも、サクソフォンが私の楽器になったのは、おそらくサクソフォンがどこにも属さず…つまり、私と同じだったからでしょう。プログレ、ジャズ、フォーク、クラシックなど、自分のリストにあるすべての音楽の周辺を演奏するのが好きだったんです。10代の頃はプログレのリードギターを弾いていて、サクソフォンよりもずっと練習していたのですが、そのおかげで自分のサクソフォン・サウンドを見つけることができたと思います。19歳から22歳までサクソフォンに没頭し、その後フリーランスとしてナショナル・シアター、無数の映画セッション、ロンドン交響楽団など、さまざまなタイプの音楽に携わるようになりました。

ー 最初のブレイクは何だったのですか?

1980年にスタンリー・マイヤーズが私のベルリン・バンドのコンサートに来て、ジョー・オートンの伝記映画『Prick Up Your Ears』の音楽のオーケストレーションと演出を私に依頼したのです。それは信じられないほど強烈なもので、あれほど懸命に働いたことはありません。ウンドトラック・アルバムでは、ハンス・ジマーや他の素晴らしいアーティストと緊密に仕事をしました。これは自分のためのものだと思いました。

ー キャリアを通じて最も影響を受けたのは誰ですか?

1974年にデューク・エリントンと出会い、それが私の全人生のターニングポイントとなりました。後にも先にも、これほど気品があり、カリスマ性があり、親切な人に会ったことはありません。ハリソン・バートウィスルと故リチャード・ロドニー・ベネットは、共に長い間激しい仕事をする中で、私に多大な影響を与え、父親のような存在でした。また、マイケル・ナイマンのバンドで長い間演奏したことで、サクソフォンのサウンドへのアプローチが明確になり、それが私の中に常に残っています。この4人の素晴らしいミュージシャンが、さまざまな場面で、今の私を形成するのに役立っています。

ー キャリアを通じて、さまざまなコラボレーションを行っていますが、これらの創造的な関係から何を得ているのでしょうか?

本当に偉大なアーティストは、他の誰よりも懸命に働くということを学びました。たとえ私が曲を書いたとしても、エルビス・コステロやマーク・アーモンドのようなシンガーは、それが本当に自分のものになるまで努力するのです。これこそ本物のパフォーマンスの最高峰であり、いつも謙虚であり、そのことはインスピレーションを与えてくれます。バービカンのプロジェクトで、ハービー・ハンコックと密接に仕事をしたことがあります。私はいつものジーンズとTシャツで出かけたのですが、ハービーはオズワルド・ボアテングの新しい鮮やかなオレンジ色のスーツで現れました。彼は私を見て、明らかに私の出で立ちに感心していないようでした。彼は半笑いのような笑みを浮かべて、「ジョン、気を抜くなよ!」と言い放ちました。彼は誰とも昼食をとろうとしませんでした。彼はハムステッドのハムステッドにあるクラクストン・スタジオを予約して、毎日そこでピアノの練習をしていました。おそらくジャズ界で最も偉大な現役のハーモニック・ブレインが、毎日4時間も作曲と音階の演奏をしていたのですから、決して忘れることはできません。

ー ムーンドッグと仕事をするのはどんな感じでしたか?

ムーンドッグは真の紳士でしたが、厳しい管理者でもありました。(ペンタングルのベーシストである)ダニー・トンプソンを通じて彼と知り合い、一緒にバンドを結成して、エルビス・コステロがメルトダウン・フェスティバルを企画したときに、我々を出演させるように説得しました。そして、ワッピングの古いエレファント・スタジオでアルバム『ムーンドッグ・ビッグ・バンド』を制作しました。レコーディングの2日目に、私は「多くの音楽は技術的にとても簡単だ」と間違えて言ってしまった。その翌日、彼は猛烈に難しいサクソフォン・ソロを持ってやってきて、急遽録音することになった。技術的には大変な挑戦でしたが、何度もテイクを重ね、最終的には成功しました。恣意的な基準で音楽を判断するのではなく、音楽を尊重することを教えてくれました。

ー 普段、あなたの作品はどのように誕生するのですか?

窓の外を眺めてボードレールのようにため息をついても、ほとんど浮かんできません。家にいる日は、朝5時から昼まで作曲や制作をし、その後1時間半ほどサクソフォンの練習をします。こういうルーティンがあると、目の前の素材を扱うときや、飽き飽きしたときに、アイデアが浮かんでくるんですよね。

ー これから作曲をする人へのアドバイスをお願いします。

音楽を作るということは、日常のありふれたものに対する反抗であることを忘れないでください。自分の音楽がありふれたものになったと感じたら、すぐにやめてください!音楽の歴史はリソースであり、インスピレーションでもあります。自分の好きな曲がどのように作曲され、制作されたかを調べ、その情報を自分のために使ってみてください。ディレクターやプロデューサーに何かをカットするように言われなくても済むように、自分自身の音楽を編集できるようになりましょう。プロデュースのことより、音楽について詳しくなることです。プロデュースは、頭の中の音に後から付いてきます。LogicやCubase、Liveなどを開くと、あなたの音楽は4/4、120bpmで、Appleが認めた公式な想像力のすべてが、右側にあるApple LoopsやSculptureシンセの中にあると教えてくれます。これは嘘です。MacやLogicをアップデートし続けるのはやめましょう。それは地獄への入り口です。Logic 9はLogic Xよりまだいい。彼らはお金を稼ぐために、音楽的な目的ではなく、ソフトウェアをいじくり回しているだけなのです。自分の持っているもの、つまり想像力と技術的、和声的な能力を使って仕事をするのです。練習のために有名な曲をアレンジして、原曲の新鮮なバージョンのように聞こえるようにハーモナイズし直してみましょう。映画やテレビの音楽で賞を取るのは、できれば避けたいものです。かつて一緒に仕事をしていた人たちは、あなたが「高価」になりすぎたと思うかもしれません。


2023/05/31

ダニエル・ケンジーへのインタビュー@Radio Romania Muzical

Radio Roumania Muzicalのサイトに、サクソフォン奏者ダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏のインタビューが掲載されていた。ごく短い内容だが、ケンジー氏のルーマニア音楽・電子音楽への思いが語られており、興味深い内容だ。以下、個人的に翻訳した内容を掲載する。

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https://en.romania-muzical.ro/articole/art.htm?c=18&g=2&arh=1&y=2009&a=592

フランスの著名なサクソフォン奏者であるダニエル・ケンジー、ヴァイオリン奏者のコーネリア・ペトロウ、電子音響を専門とするポルトガル人のレイナ・ポーテュオンドによるPROmoZICAトリオが、10月28日から11月13日までスペインでツアーを開催することが決定しました。リサイタルでは、作曲家アディナ・ドゥミトレスク、コスティン・ミエレアヌ、オクタヴィアン・ネメスクの作品が演奏されます。ダニエル・ケンジーは、これらの作曲を選んだ理由や、電子音響音楽が好きになったきっかけについて、独占インタビューに応じてくれました。

インタビュアー:今回のスペイン公演では、ルーマニアの現代作曲家、コスティン・ミエレアヌ、アディナ・ドゥミトレスク、オクタヴィアン・ネメスクによるオペラ等がレパートリーに含まれていますね。彼らの作品を選んだ理由は何ですか?

ケンジー:この質問に答えるのは難しいのですが、リサイタルでルーマニアの音楽を取り上げないということはほとんどありません。リサイタルでルーマニアの作品を演奏しないのは、私にとっては不思議なことです。私が演奏するのは、ほとんどすべてルーマニアの音楽なのです。

インタビュアー:ルーマニアの現代作曲家の作品には、どのような特徴があるのでしょうか?

ケンジー:ルーマニアの音楽は、別々の作曲家の作品であっても、特定の「エトス」を持っています。文化の深遠な源泉と現代的な要素を融合させた、救済とこの国の性格から来るものがありますね。

インタビュアー:スペインの人々は、これまでルーマニアの作品をどのように受け止めてきたのでしょうか?

ケンジー:とても好意的に受け止めていると思います。ルーマニアの現代音楽の流派は、最も身近なもののひとつです。ルーマニアの作曲家の作品は、世界で最も「輸出しやすい」作品のひとつです。ルーマニアの音楽はとても評価されているので、旅行やプレゼンテーションがしやすいのです。

インタビュアー:電子音楽がお好きな理由は何ですか?

ケンジー:この音楽は、音楽の詩を一般的な可能性を超えて拡張する可能性を与えてくれます。楽器には多くの可能性がありますが、電子音響はその可能性を広げてくれます。私は、電子音響音楽がもたらす詩、夢想、絶対的なものに興味があります。



2023/05/17

ImpetusSE with Vincent David

2022年9月に開催されたインペトゥスサクソフォンアンサンブルの演奏会の模様が、YouTubeにアップされていた。私はこの演奏会に伺うことはできなかったのだが、チラシに書かれた「ヴァンソン・ダヴィッド氏から届く音と映像のコラボレーション!?」という謳い文句から、どのような演奏会になったのかが気になっていた。

当日の写真は演奏会直後に拝見しており、舞台写真ダヴィッド氏自身は来日せず(理由は当時のコロナ禍の難しい状況のためだろう。「短期滞在のビザ免除&個人旅行の解禁」を含む入国制限の大幅緩和が施行されたのは、2022年10月11日からである)、事前収録されたソロ映像+舞台上のインペトゥスサクソフォンアンサンブル、という形での共演がなされたことは把握していた。映像として演奏の模様を観たのは初めてだった。

そもそもこのライヒ「ニューヨーク・カウンターポイント」、ライヴでのソロ楽器と、残りの10パートを重ねる(事前にテープ録音)という形式がオリジナルの指示だが、それの真逆の形式。バランスやタイミングを始めとして、どのようにアンサンブルを成立させたか、そのアプローチは気になるが、結果的になかなか面白い舞台となった様子が窺える。

2020年4月時点ではインペトゥスSEとダヴィッド氏はリアル共演を狙っていたがコロナ禍で延期、その後2022年9月の延期後演奏会でも事前収録映像との共演。いずれは、リアル共演を実現させてほしいものだ。


2023/05/14

普門バンドフェスティバル1983年(ロンデックス氏来日)

ジャン=マリー・ロンデックス氏は、1983年6月の来日時、銀座中央会館でリサイタルを開いた他、6月5日には普門バンドフェスティバルというイベントに出演した。大友直人指揮東京佼成ウインドオーケストラと共演し、ロナルド・ビンジ「サクソフォン協奏曲」を共演している。この時の録音がM先生のところに残っており、聴く機会に恵まれた。

極めて推進力のあるTKWOの演奏に驚かされるとともに、ロンデックス氏の輝かしい音色に、冒頭から驚かされる。ちなみに、ビンジの協奏曲は、決して独奏・バックの吹奏楽ともに、技術的に高難易度というわけではないが、妙な箇所(冒頭で大見得を切る箇所等)で独奏パートがつまずいたり、TKWOとのアンサンブルもやや噛み合わない箇所があり、本調子ではなかったのかな、という印象もある。

驚かされたのはボノー「ワルツ形式によるカプリス」の演奏で、これは物凄い演奏だ。ミュールが1980年代に存在していたかのような、アクロバティックな曲芸師と、泣きの歌心の要素を併せ持つ、類まれなる名演だ。この曲、MD+Gレーベルのロンデックス氏の復刻録音でも最終トラックとして取り上げられていたように、ロンデックス氏が初期から十八番として各所で演奏していた作品のはずだが、それにしても凄い。最後には聴衆に向けたパフォーマンスだろうか、ちょっとした楽譜の改変も(見事!)。

写真は、James C. Umble著「Jean-Marie Londeix Master of the Modern Saxophone」より。普門バンドフェスティバルの時の演奏の様子。


阪口新氏の演奏映像

先日のジャパン・サクソフォーン・フェスティバルにおけるポスター/映像展示制作にあたり、冨岡和男先生よりお借りした資料の中に、阪口新氏の演奏映像が含まれていた。本当は3月のフェスで展示したかったのだが、著作隣接権処理の打診先がわからず、展示できなかったもの。VHSだったのでデジタル化はしておこうと思ったのだ。

順に、高松ウィンドシンフォニー(第2回、1985年4月6日)、香川大学吹奏楽団(第10回)、高松第一高校(第10回、1982年8月8日)との各共演。指揮は、当時香川大学の教授だった佐倉友章氏。香川、ということで、ダッパーサクセーバーズの皆様が良く知っている演奏会(実は一部の演奏には乗っている)であり、"師匠"さんことOさん、"きんじ"さんに様々な情報を教えていただいた。

「インディアン・サマー」や、高校生との共演での「展覧会の絵より"古城"」など、往年の演奏スタイルでの見事なサウンドを聴くことができる。"きんじ"さんの感想によると、「客席に降りて一番後ろまで来るとホール全体を包み込むような響きになってて、遠鳴りの音ってこれかー!と感動した(…後略)」とのこと。








Oさんからは、プログラム冊子の写真も送っていただいた。それぞれ、高松ウィンドと、高松第一高校のプログラム冊子抜粋。


2023/05/12

「サクソフォン四重奏」の楽しさを子供たちに

ソニー音楽財団のYouTubeチャンネル「こどものためのクラシック」に、小学校高学年向けに、サクソフォン四重奏の魅力を伝える目的で、Urban Saxophone Quartetが企画・出演。次のような内容で、サクソフォン四重奏のことを開設。どのような経緯でこのような企画が実現したかはわからないが、こういう子供向けの企画、これまでありそうで無かった…と思う。

シバの女王の入城/ヘンデル
サクソフォンってどんな楽器?
4種類のサックス
聖者の行進/アメリカ民謡
サックス四重奏の魅力
サクソフォン四重奏曲 第1番より第4楽章/サンジュレー

わずか16分だが、とても親しみやすく、分かりやすい内容で、教材やアウトリーチの素材としても使えそうな内容だ。多くの子供たちの目に触れてほしい。


2023/05/04

Ensemble Saxophone de Francaisの音

Jacques Melzer (soprano)、Jean-Marie Londeix (alto)、Guy Lacour (tenor)、Roland Audefroy (baritone)というメンバー編成の、もはや伝説ともいえるカルテット、Ensemble Saxophone de Francaisの音。

バッハ作品集をリリースしたことがあるそうで、その抜粋録音。音を聴いたのは初めてだった。極めて明るい音と、小気味よいテクニック。そして何より、音楽の推進力に感心してします。

YouTubeのリンク先からさらにいくつかの録音を参照することができる。



2023/04/30

Linda Bangsのプライヴェート録音

リンダ・バングス Linda Bangs氏(Linda Bangs-Urbanと表記されることもある)は、長らくラッシャーサクソフォン四重奏団のバリトンサクソフォン奏者として活躍した。

ニューヨーク州タイオガ郡ウェイバリー生まれ、シガード・ラッシャーとローレンス・ワイマンに師事。ドイツ、ダルムシュタットの音楽アカデミーでサクソフォンを教えている。アメリカやヨーロッパで広く演奏活動を行い、数多くの商業用レコードに参加している。1990年、バングスはSüddeutsches Saxophon-Kammerorchester(南ドイツ室内サクソフォンオーケストラ)を設立した。

その、リンダ・バングス氏の、おそらくプライヴェート録音と思われるもので、彼女の生徒が許可を得てアップロードしたもの、といったことが情報に書いてあった。アントニオ・ヴィヴァルディの「チェロ・ソナタ第1番」。録音は2007年。バロック期の作品を頻繁に取り上げるのはラッシャー派の(ラッシャー氏の)特徴であるが、演奏スタイルも、その流れを汲むものである。



2023/04/22

サクソフォーン協会誌向けの物書きが進行中

日本サクソフォーン協会の協会誌(Vol.33)向けに記事を2点準備している。

・杉原真人さんが書いた「日本のサクソフォン史」の論文Chapter2翻訳
・フェス向けに制作したポスター展示16枚の協会誌向け組版変更

これらの物書き作業がかなりボリュームがあり忙しく、なかなかブログのほうに割く時間が取れていない。

これはVol.32の表紙の一部分。



2023/04/16

フルネ指揮N響のボレロ

冨岡和男氏からお借りしたVHSの中に、1990年のNHK交響楽団のラヴェル「ボレロ」の映像があった。ジャン・フルネ指揮NHK交響楽団という実に本当は先日のサクソフォーンフェスティバルで展示したかったのだが、著作隣接権の処理のアテが無く、諦めたものだ。

テナーサクソフォンが池上政人氏、ソプラノサクソフォンが冨岡和男氏。池上氏のテナーサクソフォンの演奏姿は初めて観た。また、演奏前のトークでは岩城宏之氏の姿が。



2023/04/10

BingAIに曲目解説を書かせてみる

最近話題のAIチャットサービスに、サクソフォン作品の曲目解説を書かせてみた。サクッと使えるLLMとしては、ChatGPT-3かBingAIあたりだが、よりアクセスしやすいという点でBingAIを使ってみた(ChatGPT-4も使ってみたいが、有料なのでまだ試せていない)。太字が指示、斜体が回答。


非常に強力なツールだと感じる。内容が、数回のターンアラウンドで変わっていく様子(対応しきれていない箇所もあるが)にご注目いただきたい。最後はあまり曲目解説らしからぬ体裁になってしまったが…。指示次第ではもっと思うような結果を得られるだろう。AIチャットサービスが生成した内容が、実際の演奏会のプログラム冊子に載るのも、間もなくだろう(もしかしてすでに実践されている?)。

内容の正確性については極めて怪しい箇所もあり、こういった内容が自動生成され、ウェブに掲載され、さらにその先に引用されるようになってしまうことは危険だとも感じた。

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ポール・モーリス「プロヴァンスの風景」の曲目解説を、詳細に書いて。

Web検索結果からの回答です。ポール・モーリス「プロヴァンスの風景」の曲目解説は以下のようになります。
- この曲は、1956年にポール・モーリスがサクソフォーン奏者マルセル・ミュールに献呈したアルト・サクソフォーンとピアノのための組曲です。
- 演奏時間は約15分で、5つの楽章からなります。
- 第1楽章は「若い娘たちが踊るファランドール」という題名で、プロヴァンス地方の民族舞曲をもとにした軽快な6/8拍子の曲です。
- 第2楽章は「愛しい人への歌」という題名で、冒頭にギターの調弦を模したピアノのパッセージがあります。サクソフォーンが美しい旋律を歌います。
- 第3楽章は「ジプシーの女」という題名で、ロマ音楽をテーマとした曲です。バスケドラム(タンバリンのような打楽器)を模したピアノのリズムに乗って、サクソフォーンが情熱的に演奏します。
- 第4楽章は「アリスカン魂は嘆きて」という題名で、アリスカンとはアルル地方にある墓地の名前です。モーリスの友人の子供が亡くなったことに触発されて作曲されたと言われています。サクソフォーンが悲しげなメロディを奏し、ピアノが鐘の音を模します。
- 第5楽章は「カブリダン(大きな虻)」という題名で、ブンブンと飛び回る虻を描写した曲です。サクソフォーンが高音域で活発に動き回り、最後には遠く見えなくなってしまいます。

もう少し、読み手が面白く読めるように、エスプリやくすっと笑える要素を追加して書き直してみてください。

分かりました。エスプリやユーモアを加えて書き直してみます。
- この曲は、サクソフォーン奏者マルセル・ミュールに気に入られたくて、ポール・モーリスが必死に作曲したアルト・サクソフォーンとピアノのための組曲です 。ミュールはこの曲を聴いて感動し、モーリスに感謝のキスをしたとかしないとか。
- 演奏時間は約15分で、5つの楽章からなります 。それぞれプロヴァンス地方の風景や人々を描いた小品ですが、実はモーリスはプロヴァンスに行ったことがなかったそうです。彼女は本や絵画などからイメージを膨らませて作曲したのだとか。
- 第1楽章は「若い娘たちが踊るファランドール」という題名で、プロヴァンス地方の民族舞曲をもとにした軽快な6/8拍子の曲です 。サクソフォーンが娘たちの笑顔や仕草を表現しています。ピアノは娘たちを見守るおばあさんの役割を果たしています。
- 第2楽章は「愛しい人への歌」という題名で、冒頭にギターの調弦を模したピアノのパッセージがあります。サクソフォーンが美しい旋律を歌います 。これはプロヴァンスの恋人たちが夕暮れ時に交わす甘いささやきをイメージしたものです。サクソフォーン奏者はこの曲で相手にアピールするチャンスです。
- 第3楽章は「ジプシーの女」という題名で、ロマ音楽をテーマとした曲です。バスケドラム(タンバリンのような打楽器)を模したピアノのリズムに乗って、サクソフォーンが情熱的に演奏します 。これはプロヴァンスにやってきたジプシーの女性が、村人たちを魅了するダンスを踊る様子を描いたものです。サクソフォーン奏者はこの曲で自分のテクニックを見せつけるチャンスです。
- 第4楽章は「アリスカン魂は嘆きて」という題名で、アリスカンとはアルル地方にある墓地の名前です。モーリスの友人の子供が亡くなったことに触発されて作曲されたと言われています 。サクソフォーンが悲しげなメロディを奏し、ピアノが鐘の音を模します 。これはプロヴァンスの死者たちが天国へへの道を探してさまよう様子を描いたものです。サクソフォーン奏者はこの曲で自分の感情を表現するチャンスです。
- 第5楽章は「カブリダン(大きな虻)」という題名で、ブンブンと飛び回る虻を描写した曲です。サクソフォーンが高音域で活発に動き回り、最後には遠く見えなくなってしまいます 。これはプロヴァンスの夏の風物詩である虻の騒動をコミカルに表現したものです。サクソフォーン奏者はこの曲で自分のスタミナを試すチャンスです。

文末が画一的で、読んでいて不自然です。改善してください。また、組曲なので、「楽章」と書くのは少し不自然です「第1楽章」ではなく、「第1曲」と書き直してください。

分かりました。文末の表現を変えて、楽章を曲に書き直してみます。
- この曲は、サクソフォーン奏者マルセル・ミュールに気に入られたくて、ポール・モーリスが必死に作曲したアルト・サクソフォーンとピアノのための組曲です 。ミュールはこの曲を聴いて感動し、モーリスに感謝のキスをしたという噂もあります。
- 演奏時間は約15分で、5つの曲からなります 。それぞれプロヴァンス地方の風景や人々を描いた小品ですが、実はモーリスはプロヴァンスに行ったことがなかったそうです。彼女は本や絵画などからイメージを膨らませて作曲したのだとか。
- 第1曲は「若い娘たちが踊るファランドール」という題名で、プロヴァンス地方の民族舞曲をもとにした軽快な6/8拍子の曲です 。サクソフォーンが娘たちの笑顔や仕草を表現しています。ピアノは娘たちを見守るおばあさんの役割を果たしています。
- 第2曲は「愛しい人への歌」という題名で、冒頭にギターの調弦を模したピアノのパッセージがあります。サクソフォーンが美しい旋律を歌います 。これはプロヴァンスの恋人たちが夕暮れ時に交わす甘いささやきをイメージしたものです。サクソフォーン奏者はこの曲で相手にアピールするチャンスです。
- 第3曲は「ジプシーの女」という題名で、ロマ音楽をテーマとした曲です。バスケドラム(タンバリンのような打楽器)を模したピアノのリズムに乗って、サクソフォーンが情熱的に演奏します 。これはプロヴァンスにやってきたジプシーの女性が、村人たちを魅了するダンスを踊る様子を描いたものです。サクソフォーン奏者はこの曲で自分のテクニックを見せつけるチャンスです。
- 第4曲は「アリスカン魂は嘆きて」という題名で、アリスカンとはアルル地方にある墓地の名前です。モーリスの友人の子供が亡くなったことに触発されて作曲されたと言われています 。サクソフォーンが悲しげなメロディを奏し、ピアノが鐘の音を模します 。これはプロヴァンスの死者たちが天国への道を探してさまよう様子を描いたものです。サクソフォーン奏者はこの曲で自分の感情を表現するチャンスです。
- 第5曲は「カブリダン(大きな虻)」という題名で、ブンブンと飛び回る虻を描写した曲です。サクソフォーンが高音域で活発に動き回り、最後には遠く見えなくなってしまいます 。これはプロヴァンスの夏の風物詩である虻の騒動をコミカルに表現したものです。サクソフォーン奏者はこの曲で自分のスタミナを試すチャンスです。

文末に、何度も「チャンスです。」と書かれており、不自然です。書き直してください。

分かりました。文末の表現を変えて書き直してみます。
- この曲は、サクソフォーン奏者マルセル・ミュールに気に入られたくて、ポール・モーリスが必死に作曲したアルト・サクソフォーンとピアノのための組曲です 。ミュールはこの曲を聴いて感動し、モーリスに感謝のキスをしたという噂もあります。
- 演奏時間は約15分で、5つの曲からなります 。それぞれプロヴァンス地方の風景や人々を描いた小品ですが、実はモーリスはプロヴァンスに行ったことがなかったそうです。彼女は本や絵画などからイメージを膨らませて作曲したのだとか。
- 第1曲は「若い娘たちが踊るファランドール」という題名で、プロヴァンス地方の民族舞曲をもとにした軽快な6/8拍子の曲です 。サクソフォーンが娘たちの笑顔や仕草を表現しています。ピアノは娘たちを見守るおばあさんの役割を果たしています。
- 第2曲は「愛しい人への歌」という題名で、冒頭にギターの調弦を模したピアノのパッセージがあります。サクソフォーンが美しい旋律を歌います 。これはプロヴァンスの恋人たちが夕暮れ時に交わす甘いささやきをイメージしたものです。サクソフォーン奏者はこの曲で相手にアピールする機会があります。
- 第3曲は「ジプシーの女」という題名で、ロマ音楽をテーマとした曲です。バスケドラム(タンバリンのような打楽器)を模したピアノのリズムに乗って、サクソフォーンが情熱的に演奏します 。これはプロヴァンスにやってきたジプシーの女性が、村人たちを魅了するダンスを踊る様子を描いたものです。サクソフォーン奏者はこの曲で自分のテクニックを見せつけることができます。
- 第4曲は「アリスカン魂は嘆きて」という題名で、アリスカンとはアルル地方にある墓地の名前です。モーリスの友人の子供が亡くなったことに触発されて作曲されたと言われています 。サクソフォーンが悲しげなメロディを奏し、ピアノが鐘の音を模します 。これはプロヴァンスの死者たちが天国への道を探してさまよう様子を描いたものです。サクソフォーン奏者はこの曲で自分の感情を表現することができます。
- 第5曲は「カブリダン(大きな虻)」という題名で、ブンブンと飛び回る虻を描写した曲です。サクソフォーンが高音域で活発に動き回り、最後には遠く見えなくなってしまいます 。これはプロヴァンスの夏の風物詩である虻の騒動をコミカルに表現したものです。サクソフォーン奏者はこの曲で自分のスタミナを試すことができます。


2023/04/03

ダニエル・ケンジー演奏のNigel Keay「Maungarei」

YouTube上にダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏の演奏姿。Nigel Keayという作曲家の「Maungarei」という、サクソフォン、電子オルガン、オンド・マルトノ、バスのための作品。


神秘的…とも違う、なんとも不思議な雰囲気の作品だ。「Maungarei」とは、おそらくニュージーランドのマウンガレイ山のことだと思うが、あまり今までに耳にしたことの無い響き。電子オルガンとオンド・マルトノという、どちらも電気的な発音をベースにした音色のミックスの上に、飄々とした雰囲気のケンジー氏のサクソフォンが絶妙に重なる。

ケンジー氏の演奏姿を観るのは久々だが、相変わらず新作への取り組みに邁進している…ということだろうか。このブレない姿勢は、今となってはサクソフォン界において貴重な存在である。

ちなみに、映像はあくまで映像で、ファイナル・テイクとは楽器や音を差し替えていると見受けられる箇所もある。最終的な音は、作曲家のサイトから聴くことができる。

https://www.nigelkeay.com/ensemble-2019.htm

2023/03/31

南西ドイツ放送響のイベール「遍歴の騎士」

サクソフォンがオーケストラの中で大活躍するジャック・イベール「遍歴の騎士」。商用録音として流通しているものは、ジョルジュ・ツィピーヌ指揮フランス放送国立管弦楽団/合唱団による1955年のモノラル録音、そして、ジャック・メルシェ指揮ロレーヌ国立管弦楽団による2014年のステレオ録音、しか存在しなかった。前者は、間違いなく本作品の決定盤であり、その演奏の凄さについてはブログで取り上げたこともある(サクソフォンはマルセル・ミュール)。

最近知ったのだが、同作品の新たな商用録音が最近リリースされた。ハンス・ロスバウト指揮南西ドイツ放送交響楽団バーデン=バーデンの、1953年の録音である。ここ数年にわたり「SWR Music」「SWR Classic」として、所蔵音源の大量の復刻を実施している南西ドイツ放送のレーベル発の録音だ。「遍歴の騎士」はイベールの作品の中でも際立って優れた作品であると個人的に思っており、喜ばしいこと…のみならず、その演奏内容も素晴らしいのだ。

特に急速部においては、スパニッシュな響き、シンコペーションを多用したリズムのキレなど、通常のクラシック作品とは違うスピード感が求められる作品である。フランス国立管の、ツィピーヌのアグレッシブな音運びはそれを見事に体現しており、決定盤といえるものだが、ロレーヌ国立管の演奏には不満があった(遅いし、響きがボンヤリしている)。

この、南西ドイツ放送響の演奏は、さすがにフランス国立管ほどではないにしろ、そういった推進力を十分に携えた演奏であり、フランス国立管の演奏とともに、自信をもって他者に薦められる内容だ!


サクソフォンは誰だろうか。音からすると、フランスの流派とは違うようにも思えるし、ただ、ラッシャー派という感じでもない(この時期、すでにラッシャー氏はメインの活動拠点をアメリカに移していた)し、ブムケ氏にしてはさすがに時代が合わない。もしかしたらクラリネット奏者が持ち替えで吹いている、等かもしれない。

2023/03/26

杉原真人氏の論文を翻訳再開

1年に1チャプターずつ翻訳を実施し、日本サクソフォーン協会の機関誌に掲載している、杉原真人氏の論文「The History of the Saxophone in Japan」の翻訳を再開。昨年、チャプター1「19世紀後半の日本における西洋音楽」を翻訳して掲載した。

今年はチャプター2「公的機関におけるサクソフォン」。海軍バンド、陸軍バンド、宮内省式部寮雅楽課のそれぞれにおける西洋式バンドのサクソフォン採用についての詳細がおよそ40ページにわたって述べられている。なかなか面白い内容だが、人名(漢字)の調査等はなかなか大変そうだ。


    

2023/03/22

速報:次回コングレスはスペインのグラン・カナリア島

非公式情報だが、日本が開催を断念した第19回世界サクソフォンコングレスの代替開催地が、ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア(スペイン:グラン・カナリア島のラス・パルマス市)に決まったそうだ。グラン・カナリア島では、グラン・カナリア・サックス・フェスティバルという国際的なイベントが定常的に開催されており、その主催元を受け皿にしたのでは、と推測。

3/23追記:International Saxophone Committeeにも同様の記載があったため、公式情報として捉えて差し支えないだろう。

https://www.saxophonecommittee.com/

2023年12月6~10日とのことだが、今のところ公式サイト等もオープンしていないようで、今後かなり急ピッチで開催に向けての準備が進むと思われる。

ちなみに、グラン・カナリア島を含むカナリア諸島はスペイン本土からだいぶ離れた場所にある、モロッコ~西サハラの西に位置する島々だ。

木下直人さんより(リヴィエ、ドビュッシー、ブートリー)

木下直人さんに、ダニエル・デファイエ氏と、ジョルジュ・グールデ氏の復刻録音をいくつかお送りいただいた。フランス国立放送局が出版した「Masterworks from France」というシリーズに含まれる録音。「Masterworks from France」は、フランス国立放送局のアーカイヴ的なシリーズで、O.R.T.F.その他の演奏者フィーチャーした録音を、LPとして販売したものである。

デファイエ氏の演奏は、リヴィエ「コンチェルティーノ」とドビュッシー「ラプソディ」インターネット上でも参照できる録音ではある。演奏のすばらしさは言うまでもないが、圧縮音源と比較し、やはりLPからの復刻は音質が圧倒的に良い。ありがとうございます。

リヴィエ「コンチェルティーノ」:https://kurisaxo.blogspot.com/2022/11/blog-post_19.html

ドビュッシー「ラプソディ」:https://kurisaxo.blogspot.com/2015/01/blog-post_11.html

グールデ氏演奏の「ディヴェルティメント」も珍しい。昔、島根県のF様にお送りいただいて以来、すっかり存在を忘れていた録音だった。演奏内容としては、デファイエ氏の伝説的なブートリーの演奏(Crest)に比べるとかなり苦しいが(そもそも、シンコペーションが多用された第1楽章を、オーケストラと演奏することの難しさ…)、ともあれ非常に貴重な録音である。

おなじみのジャケット(今回頂戴したものとは無関係のProgram No.701)。


2023/03/19

クリステル・ヨンソン演奏のラーション、ライヴ録音

ラーシュ=エリク・ラーションの「サクソフォン協奏曲」の中で、フラジオ音域へアプローチしないという点を除いて最も完成度の高い録音は、スウェーデンのクリステル・ヨンソン Christer Johnsson氏の演奏だと思っている。

ヨンソン氏のサクソフォンの、隅々まで音楽的で、絶妙にヴィブラートを抑制した演奏がとにかく美しい(フラジオ音域へアプローチしてほしい…)。レイフ・セーゲルスタム指揮スウェーデン放送交響楽団のバックアップも、非常に質が高い。(ネオ古典的なシンプルなオーケストラパートだけに、音程が散らかるとすぐ違和感が出てくる難しさがあるが、この録音はそういったことが一切ない、どころか、サクソフォンとともに前進する積極性も持ち合わせている。


その、同じ布陣によるライヴ録音である。やや音質が悪いが、上記の通りこの布陣による演奏の美しさという点から、貴重なものである。リンク先には指揮者情報として"Nilson"と記載があるが、冒頭、レイフ・セーゲルスタムの指揮である旨、アナウンスがある。CD化されているものと演奏内容にほとんど違いが聴き取れないが、第3楽章最終部のフラジオ音域へのアプローチ有無(CDはフラジオ音域に上るが、ライヴ録音はオクターヴ下げている)、さらに拍手と会場ノイズ等から、やはり別ソースかと思われる。

https://archive.org/details/cd_swedish-composers-vol-44_lennart-hedwall-emil-sjogren-sigurd-von-ko

2023/03/13

新たな世代にまつわる二題

先日のフェスティバルで高校生の衝撃的な演奏(演奏そのものというより、考え方の根底)を聴いてから、2つ気になっていることがある。

1つ目は、どのようなプラットフォームでのどのようなやり取りが、土壌になっているのか、ということ。17LIVEやtiktokやYouTube Shortやツイキャスなど、私自身は存在は知ってはいるがまだ飛び込んだことのない超双方向型・インスタント型の動画&SNSプラットフォームから出現したものなのだろうか。観測のために飛び込んでみるつもりは…今のところそのような(公私にわたる)余裕は持ち合わせていない。

2つ目は、そういった新世代型の演奏者に適した、誰もが取り組むレパートリーはまだ無さそうだな、ということ。フェスで演奏されていた真島俊夫編の「マイ・フェイヴァリット・シングス」なんて、今では誰もが演奏しているけど、30年近く前のレパートリーだ。新たなレパートリーはどのように形作られていくのか、これはもう少し経って今の世代が作編曲で活躍し始めると、違った動きが見えてくるのかもしれない。実はもう、若い世代に流行っているプラットフォーム上にはそういった種が落ちているのかもしれないが…。

何だか随分と上の世代みたいなコメントになってしまったが、実際そうなのかも。インターネットやSNSが流行り始めた頃に、親に話をすると「付いていけない」と笑いながら言われたものだが、こういう気持ちだったのかもしれない。操作方法等、テクニカルな部分ではなく、自分がそれを受け入れる余裕の有無の部分のことだったのだろう。

2023/03/09

第39回サクソフォーンフェスティバル二日目

・音楽大学・専門学校によるラージ
極めて漠然とした個人的な考えであるか、既存の、想像の内にある「サクソフォンのラージアンサンブル」「サクソフォンオーケストラ」の枠組みを逸脱しようとするor逸脱した演奏やレパートリーが、重要なのかなと考える。展示準備等で聴けない演奏もあったのだが、東京藝術大学、東京音楽大学、昭和音楽大学は、そういう試みを感じられ、大変聴き応えがあった。長生淳「地球」は良いですよね、掛け値なしに心動かされる。本堂さんの指揮もとても良かった(響きや目指すところのイメージが、どんなジャンルにおいても明確なのだろう)。

・松浦真沙 新作エチュード
40曲に及ぶ新作エチュードのプレゼンテーション。東京藝術大学や、パリ国立高等音楽院の入試に含まれる、「初見試験」のために制作を開始し、試行錯誤しながら完成させたという。広い形式で書かれ、初見を主目的としつつも、初見用として使い終わったあとはさらにデュエットにも使える内容。「初見」の重要性についての有村さんの考え、エチュードの使い方や心構えについての松浦さんのプレゼン、また、実際にその場で新エチュードを40秒読んで、生徒役の奏者にデモンストレーションしてもらう(見事に吹き切っていた)など、とても面白いレクチャーだった。

・村田淳一&由井平太
コンポーザー・プレイヤーで、かっこいい作品を発表しまくっている村田さんの自作を含むデュオコンサート。お二人とも長野県出身であり、私も同郷。屋外の寒い中、Socolaを訪れた一般向けのアコースティックライヴだったが、反応も良くて(さすが村田さんだ)なかなか盛り上がっていた。最後は思いっきりジャズセッティングで「枯葉」、ふたりともアドリブ効かせまくりで、引き出しの多さには恐れ入る。

・五十嵐健太と東京SOのグラズノフ
とにかくフレーズの持続性が、サクソフォンと思えないような驚異の演奏。バックのオーケストラも抑制された響きで、万全のアンサンブルであった。ウクライナで学び、KievSQにも参加、現在東京音楽大学の学生とのこと。もはや学ぶことなど何も無いのではと思ってしまうほどだが、ここからどのように進化していくのかが楽しみだ。

・プレミアムコンサート
Circle A Saxは、新井さん門下の集まり。単なる同門としての、音色・発音の均一性だとか、音楽性の一致とか、そういう繋がりではなく、もっと深淵な場所…精神的な拠り所を一様にする、という、極めて内面的な統一性を感じる。「フロッシュゲザング」は、ものすごく感動的で美しい。アプローチとしては斬新だがなにか元ネタがあるのかな。ViveSQもとても良かった。活動の目的が明確であり、それを余裕でやってのけるアンサンブル力が伴っており、とても長く活動を続けている…室内楽団としての理想だ。シュバルツの「ラウンドアバウト」は、カール・ジェンキンスの「ボロッコNo.1」に似ていて面白かった。次の定期演奏会ではゴールドシュタインの「ブロウ!」をやるそうだ!

・電子オルガンとサクソフォン
演奏者は竹田歌穂さん、角口圭都さん、大城正司さんと、もう素晴らしくて当たり前なので、作品や電子オルガンのあたりのコメントを。べダールのオルガンとサクソフォンの作品は、とても聴き応えがある内容で、最初のバロック的な音運びから、最後はまるで「ファンテジー」のエコーが聴こえるようなところまで…面白かった。編成の難しさを除けば人気が出そうだ。
トマジの電子オルガンは凄かった。オーケストラを意識したアレンジだったのだが、数百種の中から音色を選び、曲の中で場面ごとにプリセットを切り替える(エクスプレッションペダルの右にあるスイッチで次のプリセットへ進める)というやり方とのこと。そのプリセット数がいったい何百あるのかわからないほどで、準備も恐ろしく大変だと思うのだが、ある箇所では一小節に2回変えたりと、とにかくオルガンのアレンジ兼演奏兼オペレーションに見入って(聴き入って)しまった。
旭井さんの作品は、作曲家の個性とエンターテインメント性が融合した名作であり、未完とのことだが完成が楽しみだ。ハモンドオルガン的な音色との重ね合わせによって、ブラックミュージックに影響を受けたという第1楽章の狙いがより如実に現われていた。

・室内オーケストラとサクソフォン
田中氏、斎藤氏の演奏は、展示片付けで聴けず‥残念。なんとか本堂氏の演奏を聴くことができたのは幸いだった。一度聴いただけでは捉えきれない、難解な作品ではあったが、目指す音楽が極めてクリアであり(指揮の板倉康明氏の手腕によるところも大きいだろう)、それを実現する技術と音楽性が圧倒的であり、徹頭徹尾実に見通しがよく、澄み渡るような聴後感を得られた。ソロを吹く本堂氏は、あまりの存在感に、2倍くらいの大きさに見えたのだった。

全体を通してとても良い雰囲気と盛り上がりで、通して参加し、また展示も担当できてとても楽しかった。関係者の皆様、お疲れ様でした&ありがとうございました。

2023/03/05

第39回ジャパンサクソフォーンフェスティバル一日目

一日目を終えて、とても良い盛り上がり。実行委員長の小山さんはじめとする運営の手腕によるところも大きいのだろう。都心からのアクセス・駅からのアクセスも良く、ホールも丁度よいサイズ。

・愛好家ステージ

ロッソさんさすがだなあとか(東京のアンサンブルでもかなり老舗の部類になってきた、とのMCあり)、響雅音の同門ならではのUnifiedなサウンドとか、國末さんのウェニアンから、「國末さんの美学」を感じ取れたり、とても楽しく聴いた。中でも衝撃的かつ一番面白かったのは、「ふぉれらの音楽を届け隊」という、全員高校生&関東/関西混成&クラシック/ジャズ混成の四重奏団。少し昔を振り返ると、我々アラフォー世代の、例えばインターネットやSNSを活用した情報収集・発信して演奏活動を推進し、演奏レベルを高めていく、というスタイルは、一つ上の世代から見ると「異化」との評を得たこともあった。しかし、今回この演奏やMCを聴いて、20代周辺の方々は、確実に違う次元に移行しているのだなと感じた。思考の方向性に驚かされる…バッハ「イタリア協奏曲」第1楽章と、真島俊夫編の「My Favorite Things」をトータル2時間の合わせで持ってきてしまったという、そもそもそんな考え方、我々の世代は思いつきもしない。それでもそれなりに見事に演奏してしまうのだ。TikTokとかYouTube Shortとか17Liveとか、超双方向型/インスタント型のSNSが生み出した潮流なのだろうか。

・サキソフォックスのコンコンコンサート

サキソフォックスは初めて聴いた・観たのだが、とにかく楽しく、久々に大笑いした。思い返してみるとベタなのだが、そういったネタを見事に構成して、客席を盛り上げる手腕は見事というほかない。とにかくその場の雰囲気や、MCも含めた演出、もちろん演奏も超見事で、実に楽しい時間を過ごしたのだった。サクソフォンの名曲をコラージュした高橋宏樹氏の「サキソフェスタ」は、目まぐるしく登場するサクソフォンの名曲が楽しく、人気が出そう。こうして聴くとシュミット「四重奏曲」のフーガ主題の4音って、存在感あるなあ。

・宮崎真一のサクソフォン博物館

宮崎真一さんのヴィンテージ~最新サクソフォンコレクション10本(それでも所持在庫の1/10以下とのことで場内爆笑)を出動させ、サクソフォンの楽器進化を6期に分けて解説。宮崎さんのヴィンテージ楽器の解説は、YouTubeやPipers誌上にて参照することができるが、このように全体を網羅・体系的に説明を聴ける機会は大変貴重で、わかりやすく、とても理解が深まったのだった。手元のピクトグラムで細かい写真を見られるのも良かった。ConnのC-Melodyの蠱惑的な音色や、セルマーのバランスアクションが登場するまでの工夫が凝らされたギミック(バランスアクションてすごい進化だったのだ)、プレスティージュのシルクのような音色、どれも魅力的だ。

・ヤコブTVショー2

大石将紀さんプレゼンツのJacobTV作品個展。Heavenスタイル/Earthスタイルの作品を交互に並べ、最後Heavenスタイルで終えるところに大石さんのこだわりを感じる。演奏はどれも良かったが、YouTubeに「The Garden of Love」映像をアップしている清水氏の演奏は、この極めて難しい作品にあって、世界トップクラスのライヴ演奏だろう。佐藤さん、加藤さんの「TATATATATA」の、後半にかけての、"窯変"という言葉を思い起こすようなカタルシスは引き込まれた。「Jesus is Coming」のアグレッシブな演奏も良かったが、ややテープバランスが控えめだったような。また、大石さんはほとんどのHeavenスタイルの作品に取り組んでいたが、しなやかな音色が見事に作品やテープとからみ合い、聴いたことのないようなサウンドを生み出していた。

・日本のサクソフォン史:ポスターと映像の常設展示

今回、実行委員長の小山さんからお声がけいただき、制作を担当した。意外にも?常時誰かしらが足を止めてくれ、多くの方の目に触れてとても嬉しかった。ちなみに、一番人気だったと思われるのは、師弟関係の系統図試作版。

会場の小金井宮地楽器ホール。駅前の建物が等しくこのようなモダンなガラス張りデザインに統一されている。


2023/03/02

「日本のサクソフォン史」展示@フェスティバル

前記事の告知通り、第39回ジャパンサクソフォーンフェスティバルにおいて「日本のサクソフォン史~現代に至る日本サクソフォン界の系譜と、日本に影響を与えた世界の奏者」というタイトルで、A0サイズポスター展示(16枚)ならびに映像展示を行う。

フェスティバル来られる方々、よろしければスキマ時間にお立ち寄りください。私自身はブースにはあまりいないと思いますが。

以下、ポスター展示の概要。石渡先生、冨岡先生、宗貞先生、小串先生、雲井先生、今廣志様に資料をお借りすることができた。

・阪口新と大室勇一
・第9回世界サクソフォンコングレス(川崎/横浜)の舞台裏
・アカデミアSQ ~日本初のプロ・カルテット~
・アカデミアに続くカルテット ~キャトルロゾー、東京SE、ファインアーツSQ~
・アメリカの風 ~ヘムケ、シンタ、ホーリック来日~
・現代サクソフォン演奏スタイルへの潮流
・国内クラシックサクソフォンの系譜 試作版


以下は、映像展示の全リスト。様々な方にご協力いただき、著作隣接権をクリアすることができた。

2023/02/12

第39回ジャパンサクソフォーンフェスティバルにて展示予定

第39回ジャパンサクソフォーンフェスティバルにおいて、「現代に至る日本のサクソフォーン界の系譜と、日本に影響を与えた世界の奏者たち」と題して、常設ポスター展示(できれば映像展示も‥)を実施予定。鋭意制作中(果たして間に合うのか)。



2023/02/06

野平一郎サクソフォン作品個展(ドゥラングル氏来日)

【野平一郎 サクソフォン作品個展 クロード・ドゥラングルを招いて】
日時:2023年2月6日 18:30開場 19:00開演
会場:浜離宮朝日ホール
出演:
クロード・ドゥラングル(サクソフォン)
オディール・ドゥラングル(ピアノ)
湯川亜矢子(メゾソプラノ)
ホセ・ミゲル・フェルナンデス(電子音響)
片桐健順(音響)
大石将紀、江川良子、貝沼拓実、本堂誠(サクソフォン四重奏)
曲目:
野平一郎「アラベスクIII」
野平一郎「サクソフォン四重奏曲」
野平一郎「舵手の書」
野平一郎「ひとりぼっち」
野平一郎「フォリア・コン・ファンタジア」
野平一郎「息の道」

野平一郎氏の、10年プロジェクトの一環として企画された演奏会だという。昨年の同時期に流れたときには残念に思ったが、一年越しでこうして無事開催されたことが嬉しい。

私はといえば、コロナが流行り始めてからリアルの演奏会に伺うのは初めてだった。いや、そもそもこれだけの規模の演奏会には、転職後に仕事場が都心から離れたこともあり、平日には全く伺えてなかった。調べてみたところ、出演・企画したものを除くと、演奏会をしっかり聴くのは2018年のクロアチアの世界サクソフォンコングレス以来だったかもしれない。

ドゥラングル氏の極めてしなやかな音色・音運びは健在で、一部には僅かなミスも見受けられたものの、曲ごとの異なった音世界を表現する力には目を見張る。このように野平氏の作品を連続して聴いて気付かされたことだが、サクソフォンを単音の旋律楽器として捉えるのではなく、サクソフォンの一つ一つの音に「音響」を見出して、それを聴き手に気付かせるように、テーマに基づいて展開・発展させる手腕こそ、"野平氏✕サクソフォン"のオリジナリティといえるのであろう。その作品の佇まいには、ドゥラングル氏の演奏スタイルがぴったりだ。

「アラベスクIII」では意外と控えめなテンションだったが、そういう作品のひとつの側面を引き出したといえば納得。かと思えば独奏曲「フォリア・コン・ファンタジア」での絶妙なコントロール…で通すのかと思いきや、狂騒・狂気(そもそもフォリアは狂気という意味だし、変奏曲は狂気の塊のような音楽だと私的に思う)といったキャラクターをも見事に体現するような、変幻自在さでも魅せた。

共演者も素晴らしい仕事をしており、オディール氏のピアノが、こんなにもダイナミックなものだったかと驚かされたり、湯川氏のメゾ・ソプラノは、これまで聞いたことのある演奏とは少し外した解釈で、テアトル的な雰囲気を面白く聴いた。大石氏を始めとする四重奏メンバーも高次元の仕事をしていて、個人的にはとてもホッとする"日本的な"響きだった。

最後に、メイン曲として演奏された「息の道」…30分を越える大作にして、類稀なる傑作である。これまで2012年7月のイギリス初演と、2012年10月の日本初演を聴いたことがあるが、聴く度に新たな発見がある。完璧にコントロールされた音響、そして、完全なるサクソフォンの演奏を聴くことは、この作品の新たな側面を表出させる。イギリス・セントアンドリュース、Byre Theatreで、熱に浮かされたような会場の空気感の中で聴いた演奏が、私の中でのベースライン。音響の面では荒削りではあったが、特別なものがあった。そこに、静岡音楽館AOIや、本日浜離宮で聴いた演奏が、衛星のように取り巻いて、この作品の個人的印象を形作っている。

帰りがけに撮った朝日新聞の社屋。

2023/02/05

ミュール氏から阪口新氏への手紙(1988年)

マルセル・ミュール氏から、阪口新氏に宛てた直筆の手紙。1988年の第9回サクソフォン・コングレス(神奈川県川崎市開催)への招待に対する返信である。冨岡和男氏にお借りした資料に含まれていた。

招待への謝意とともに、当時すでにかなりの高齢であったミュール氏が、長旅が難しく残念ながら参加を断念せざるをえないことが書かれており、併せて、1984年の訪日(第1回日本管打楽器コンクールの特別審査員として招聘)への礼が述べられている。


2023/02/04

デファイエ氏演奏のグラズノフ「協奏曲」

おなじみニコラ・プロスト氏のアップロードによるもので、ダニエル・デファイエ演奏のグラズノフ「サクソフォン協奏曲」。Serge Baudo指揮ニース放送管弦楽団との共演。この音運びは、様々な録音で聴いたデファイエ氏の音色、音楽、そのもの、であり、夢にみたグラズノフのこの曲の演奏を聴くことができて、感激だ。

プロスト氏は、近年フランス周辺の歴史的録音を数多く発掘しており、一部はCDとして復刻しているが、ぜひ今後も続けていただきたいと思う。

最終部が突然にカットされていることに驚かされたが、プロスト氏によれば、おそらく放送前の「編集によるミス」ではないか、とのこと。また、三國氏によれば、ミュール氏がそのようにカットしており、それに倣ったためではないか、とのこと(確かに、ミュール氏自身の演奏も同様に最終部をカットしている)。



2023/01/29

エストニア国立交響楽団演奏の"City Noir"

ジョン・アダムス「シティ・ノワール」は、すでに世界中のオーケストラによって(チャレンジングな)レパートリーとして広く認知されているようだ。

アメリカにおける初演:グスターヴォ・ドゥダメル指揮ロサンゼルス交響楽団…以降、イギリス、フランス、オランダ、カナダ、ポルトガル、スペイン、オーストラリア、オーストリア、ドイツ、ベルギー、チェコ、エストニア、フィンランド、スイス、日本他で演奏され、版元であるBoosey&Hawkesのページからたどる限り、その演奏回数は86回を数える。

演奏が極めて困難、という部分はもちろんあるものの、人気が出ることは自然だろう。スピード感ある導入部から、ジャズの影響を受けたハイブリッドな作風は、多くの聴き手に衝撃を与える。

映像ではないのだが、Olari Elts指揮エストニア国立交響楽団の演奏が、YouTubeにアップロードされていた。オーケストラの演奏としてはなかなか健闘しているが、サクソフォンは誰が吹いているのだろう?クラシック・サクソフォンとして良い音ではあるが、初演者であるマカリスター氏の強烈なソロを聴いてしまうと、役不足感は否めないところ(楽譜として吹ききれず落ちている所も…)。


2023/01/22

デザンクロの"Noël des Flandres"

アルフレッド・デザンクロが書いた、4声部の合唱のための「Noël des Flandres」を初めて聴いた。

「レクイエム」や「サルヴェ・レジーナ」を始めとする美しい合唱作品の数々は、Les elementsのデザンクロ作品集のアルバムで愛聴している。凝縮された宝石のような輝きを放つ作品の数々は、事あるごとに聴きたくなる内容だが、そのアルバムには収録されていなかった作品。

「フランダース地方のクリスマス」とでも訳せば良いのか、4分程度の小品で、Commotio Choralという団体の演奏。デザンクロの合唱作品の中でも、群を抜いてエキセントリックな音運びと和声で、一度聴いたら忘れない強烈な印象を残す(難易度は高そうだ)。そして、最終部の、静謐さを湛えて、音楽波が収まっていくような美しさといったら!

2023/01/21

Harvey Pittel plays Dahl's Concerto in 1971

アメリカのサクソフォン奏者、ハーヴェイ・ピッテル Harvey Pittel氏の独奏によるインゴルフ・ダール「サクソフォン協奏曲」の演奏。指揮は、ダールに南カリフォルニア大学で学んだ、マイケル・ティルソン・トーマスで、オーケストラはボストン交響楽団。

https://archive.org/details/cd_heiller-read-dahl-compositions_anton-heiller-gardner-read-ingolf-dahl/disc1/

ボストン交響楽団のアーカイヴをたどると、1971年(ダール死去の翌年である)にこの布陣で6回演奏しており、この演奏はこのリストなかのいずれかのライヴ録音と思われる。

極めてアグレッシヴに音楽を運んでおり、聴きごたえがある。マイケル・ティルソン・トーマスは、90年代にザ・ニュー・ワールド・シンフォニーと同曲を録音しており(独奏はジョン・ハール氏)、そちらも評価が高いことで有名だが、その片鱗という一言では片づけられない、若き時代の迸るような、湧き出るような、演奏だ。

ちなみに、原典版ではなく改訂版であり、独奏パートはossiaを多用。さすがにラッシャー派の、フラジオ音域を含む音運びにトライするような時代ではなかった…ということだろう。

2023/01/20

マルティノン「四重奏のための協奏曲」ピアノ版の演奏

おなじみ、Ellipsos Saxophone Quartetの演奏によるジャン・マルティノン「サクソフォン四重奏とオーケストラのための協奏曲」を見つけた。本来はオーケストラとサクソフォン四重奏、という編成だが、2台ピアノ版の楽譜も出版されている。

オーケストラ版と比較して、華やかさには欠けるものの、エッジが立ったピアノの音色は、特に第2部:アパッショナートで強いドライヴ感を生み出している。サクソフォン四重奏の面々が上手いのは言わずもがな。


2023/01/14

Marcus Weiss plays Caplet's "Legende"

マルカル・ワイス Marcus Weiss氏(1961-)は、スイスのサクソフォン奏者。スイスのバーゼル音楽院でIwan Rothに、アメリカのノースウエスタン大学でフレデリック・ヘムケに師事。1995年からバーゼル音楽院で教鞭をとるほか、XASAXとしての活動も有名である。私個人的には、シュトックハウゼンの「Edentia」への録音参加が印象深い。

多くのオーケストラに客演しているが、下記でご紹介するのはワイス氏がアンドレ・カプレ「伝説」に参加した録音である。録音年不明。"Ensemble Andre"という名前の室内オーケストラと共演しているようだが、そのオーケストラがどういった団体であるかはわからなかった。

https://archive.org/details/cd_music-of-andre-caplet_andre-caplet

いかにもライヴ録音、といった趣で、万全のコンディションとはいえない演奏ではある。サクソフォンは、さすがワイス氏といったところか、良い仕事をしているが、弦がやや取っ散らかっている印象。サクソフォン以外の管楽器も凡庸である。

2023/01/13

Joan-Marti Fresquier plays "Jackdaw"

Joan Marti-Fresquier氏が、バリトンサクソフォンとテープのためのWayne Siegel「Jackdaw」の演奏をYouTubeにアップしていた。氏の実力が如実に表れた、切れ味鋭い演奏。Stephen Cottrell氏の、独特の温度感の演奏とは一線を画すものだ。

スペインのサクソフォン奏者であるMarti-Fresquier氏は、バリトンサクソフォンサクソフォン専門の奏者として、素晴らしい録音を数多く送り出している。特にJacobTVの「Pimpin'」の映像は強烈な印象を残し、私にとって同曲のベスト演奏の一つとなっている。


2023/01/09

シュミット「伝説」ヴァイオリンまたはヴィオラバージョン

ヴァイオリン、ないし、ヴィオラで演奏されることもあるフローラン・シュミット「伝説」の、各録音。商用録音では、ヴァイオリン奏者Alexis Galpérineの、ピアノのElisabeth Herbinとの共演盤が有名。以下に挙げたものは、いずれもオーケストラとの共演。

音域がサクソフォン版と比べて拡張されていることに気付くだろう。少し驚くが、むしろ音運び的にはこちらのほうが自然で、いちど聴いてしまうと、サクソフォン版は「下げている」という印象になってしまう。そのうち、サクソフォンでもフラジオを駆使して、ヴァイオリンやヴィオラのごとく自然に演奏する奏者が出てくるかもしれない。

ヴァイオリン・バージョン。



ヴィオラ・バージョン。


2023/01/08

マルセル・ペラン演奏のロジェ・カルメル「コンチェルティーノ」

マルセル・ペラン Marcel Perrin氏の演奏による、ロジェ・カルメル「コンチェルティーノ」。 

https://archive.org/details/cd_argento-dietrich-levkovics-calmel-composit_dominick-argento-karl-dietrich-dimitri-lev

難局を見事に吹きこなしており、20世紀前半~中期の、フランス・サクソフォン界を代表する奏者の一人であったことを思い知らされる。特に、最終部に向けたオーケストラとの燃え上がるようなカタルシスが、聴きものだ。ヴィブラートやソノリテは(どうしても比べてしまうのだが)マルセル・ミュール氏と似通ったところがあり、この時代のトレンドをよく表わしているものだと思う。



2023/01/07

マルセル・ペラン Marcel Perrinについて

マルセル・ペラン Marcel Perrinという奏者についてHarry R. Gee「Saxophone Soloists and Their Music」から経歴を引用する。

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1912年6月1日アルジェリアのアルジェ生まれ。幼少より著名なトランペット奏者であった父の手ほどきを受けた。アルジェ音楽院で学び、ヴァイオリン、サクソフォン、和声学、対位法でそれぞれ一等賞をエた。パリでマルセル・ミュールの下で学び、音楽教育学の教員免状を獲得。アルジェに戻り、サクソフォン講師、コンサートアーティストとして活動を始めた。1935年、アルジェ・サクソフォン四重奏団を結成、1962年までコンサートツアー、放送向け収録で活動。独奏者としては、妻のスザンヌ・ペラン・ヴァルスや、各地のオーケストラと共演しながら、1933年から1980年までベルギー、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、ポルトガル、スウェーデン、スイスなどを周遊した。この演奏活動が認められ、多くの作曲家から作品の献呈を受けている。さらに作曲、著作活動も展開し、1954年に出版された「Le saxophone」により教育功労賞を受賞した。フランス・サクソフォン界黎明期において、各国を周り演奏活動を行った奏者の一人である。

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よく知られたところでは、Marc Eychenne「Cantilene et Danse」を献呈され、また、Roger Calmelからも「Les Caracteres」というサクソフォン、フルート、ピアノのための作品を献呈されている。ペラン氏の名前をあまり知らなかったのだが、マルセル・ミュールと同時期に活動した奏者としては注目すべき奏者の一人であろう。

アフリカのアルジェリア出身、というのも驚いたが、1962年のエビアン協定締結までアルジェリアはフランスの植民地であったため、有能なアーティストであったペラン氏がパリへ学びに行く、というのは自然なことであったと思われる。

写真等は下記リンクからどうぞ。父のクレマン・ペラン氏の写真や、アルジェ四重奏団の写真も掲載されている。演奏を聴くこともできる。

http://tournantsrovigo.free.fr/portraits.htm

マルセル・ペラン氏と、妻のスザンヌ・ペラン氏。