2023/07/23

Crampon S3 Prestige Saxophoneの備忘録:追記

徳祐一郎さんより、先日のブログ記事「Crampon S3 Prestige Saxophoneの備忘録」について、貴重なコメントを頂戴した。

主に、後半部に記載した、松井宏幸氏が入手したというダニエル・デファイエ氏の使用モデルについてのコメント、また、ビュッフェ・クランポンのサクソフォン全体についての捉え方について、興味深い示唆をいくつもご提示いただいた(ありがとうございました)。私自身も全く知らない情報が多く、どこかに残しておきたいと考えてご相談したところ、掲載許可をいただいたので、一部、「噂レベルの話…」とコメントがあった部分を除き、そのまま掲載する。

他にコメントや情報があればお寄せいただきたい。

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松井先生が入手されたデファイエ氏使用のPrestigeのC-D#キイについて考えるにあたっては、S2というモデルの存在が鍵となります。

S2は、S1と同一の管体を持ちながらも一部設計を合理化したS1の廉価版です。具体的なS1との差異点には、C5キイとTfキイの機構の簡易化(主列との連絡を省略)、彫刻の省略(彫刻付き個体もあり)、そしてC-D#キイの一般的なローラーキイへの変更などがあります。

そしてデファイエ氏使用のPrestigeについてです。こちらの個体に搭載されたC-D#キイは、前述のS2と同様のローラーキイです 。同時期に製造された真鍮S1にも、同様にS2用のC-D#キイを搭載した個体が存在します。これらはカイルヴェルト製のキイとは全く異なるものです。

ともかく、この個体は「S2用C-D#キイを搭載したS1 Prestige」という解釈をすることができます。

ビュッフェの楽器はモデル名の定義が非常に曖昧で、それがより理解を難しくする一因となっています。そもそも「S3」という名称は正式なモデル名ではなく、通称に過ぎないのではないかともいわれています。一般に「S3 Prestige」と呼ばれるモデルの正式名は、「Prestige」 (S1 Prestigeも正式名称は「Prestige」)です。

また「無印S3」と呼ばれるモデルも、管体などに「S3」の刻印はなく、保証書ではのモデル名は「saxophone alto」とのみ記されているものや、「S1」と表示された個体すらあります。個人的にはS3製造当時のビュッフェ公式資料における「S3」という表記は確認しておりません (近年の資料にはS3という表記もみられますが)。何をもって「S3」と呼ぶか、という明確な基準が存在していないともいえると思います。個人的には純ビュッフェ製がS1シリーズ、カイル製キイ付きがS3シリーズという認識でしたが、何が正しいやら...といったところです。

他にも、1973-1975年の製造品の中にはSuper Dynactionの構造をもったS1が存在したり、S1の構造をもったSuper Dynactionが存在したり...

ビュッフェのサクソフォンはマイナーチェンジがあまりに多く、個人的には厳密にモデル名を区別することは極めて困難であると考えています。


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