North American Saxophone Allianceの"ロシアのサックス史"に関する論文を読んでいるのだが、帝政ロシアの歴史に間違いがありすぎて、閉口してしまった。書いた人が悪いのか、査読した人が悪いのか…いやはや。
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島根県のF様から頂戴した貴重な音源のご紹介も、これで最後。最後は、ダニエル・デファイエ氏の1982年?の放送用録音で、NHK-FMリサイタルとして録音されたものだ。ピアノは岡崎悦子さん。
P.クレストン - ソナタ
P.M.デュボワ - 性格的小品
L.ロベール - カデンツァ
M.ラヴェル - ハバネラ形式の小品
このあたりのレパートリーは、1980年代以降頻繁に取り上げられたもので、デュボワとロベールに関しては、最後の来日となった1992年のリサイタルでも演奏されている。だが、デファイエ氏がクレストンの「ソナタ」を吹いて録音というのは初めて知った。NHKのFMリサイタルということはほとんど一発録りなのだと思うのだが、非常に高い完成度に驚かされるばかりだ。デファイエはこのとき60歳。その音楽の流れに聴き手を巻き込んでしまうようなパワフルさは、とても全盛期を過ぎたプレイヤーの演奏には聴こえない。ただただ、驚異的だ。
クレストンは、いたってシンプルな演奏ながら説得力は抜群。ミュールの演奏に慣れているせいかヴィブラートは意外と控えめ(かける音がかなり限定されている)で驚くが、音色とフレージングが絶品。隅から隅まで繊細で、第二楽章なんて実に感動的だ。ピアノも恐ろしく上手くて、相乗効果のようなものもあるのだろう。
デュボワは、たしかこの録音は聴いたことがあるぞ。各楽章の描き分けは見事なもので、ガラスのように華奢で壊れそうなしかし美しい音色から、底抜けに明るいオーバーブロウまで、表現力の幅に恐れ入る。ロベールも、これまた想像を絶する録音で、推進力という点ではロンデックスがCrestに吹き込んだ演奏に一歩譲るかもしれないが、おしゃれで、ロベール「カデンツァ」がフランス産の管楽器曲だということを再認識させられる。
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この録音と、ブートリーの「ディヴェルティメント」他のライヴ録音というものも頂戴した。これは、デファイエがCrestレーベルのLPを吹き込んだ頃の録音なのだが、LPで聴けるよりもさらに広大で、かつ狂気じみたテンションのブートリーに、とても感動した。ピアノとのピッチも怪しいし、録音状態もそれほど良いとは言えないのだが、これまた貴重な記録であり、記録を超えた"何か"を聴き手に感じさせる録音だ。
2009/08/31
2009/08/30
2009/08/29
リヴィエの二重協奏曲(ミュール参加盤)
ジャン・リヴィエ Jean Rivierの「トランペット、サクソフォン、ピアノのための協奏曲」は、近頃急激に認知されるようになった感がある。神代修氏、雲井雅人氏、藤井一興氏のコンビでオクタヴィアのCrystonレーベルとしてリリースされた「SAXOPET!」の功績が大きいのだと思う。私自身は、実はずっと古くから聴いている録音があって、ロジェ・デルモットとダニエル・デファイエが組んで、ジラール指揮ORTFのフロントで吹きまくる演奏で、これはこれで大変趣があり、フランス風の明るい音色が聴かれ、大変な愛聴盤であった(最初は音だけ持っていたのだが、以前LPを木下直人さんに頂戴し、ずっと保管してある)。どちらもそれぞれの魅力があって、良いのだが、今回送ってもらった録音は、なんとマルセル・ミュールの参加盤である。
んー、これと同じレイアウトのジャケットを、どこかで見たことがあると思われた方も多いだろう。ミュールが参加したLondon(Decca)の「The Saxophone」シリーズと同系列の、「The Trumpet」というシリーズのVol.3なのだ!このシリーズは、どのLPもジャケットのレイアウトが同じで、それぞれが良く似通っているというわけ。トランペット独奏はルイ・メナルディ Louis Ménardiという人物で、ジャケット裏の解説によると、ソシエテ(パリ音楽院管弦楽団)とオペラ・コミークのプレイヤーだという記述があった。
Raymond Loucheur - Concertino (tp, 6cl)
Francis Poulenc - Sonate (cor, tp, tb)
Jean Rivier - Concerto (tp, sax, pf)
Johann Sebastian Bach - Gavotte en rondeau (tp, 6cl)
非常に面白いトランペットの作品集だ。レイモン・ルーシュールという人のオリジナル作品は、トランペットとクラリネット六重奏のために書かれたものだし、プーランクのソナタは金管三重奏のソナタだし(コルを吹いているのはルシアン・テヴェ Lucien Thévetだ!)、最後のバッハも、トランペットとクラリネット六重奏のためにアレンジされてしまってるし…。
リヴィエの「ダブルコンチェルト」は、サクソフォンのマルセル・ミュールに、ピアノはアニー・ダルコ Annie d'Arcoというスペシャルなメンバー構成。当時のフランス器楽界の最高峰を集めたような感じだ。技術云々とか、フランス風の輝かしい音色が云々とか、そのあたりのことはもう当たり前で(我ながらずいぶん耳が肥えたな)リズムや音が引き締まっており、音楽に常に推進力があるような印象。各個人が一流の独奏者というだけでなく、一流の室内楽奏者でもあるのだ。また、楽章によってスタイルが分離されて吹き分けられているのも聴きもの。一番楽しそうなのは、やっぱり第3楽章かなあ。曲に仕掛けられたトラップ、もといユーモアを、技術的にしっかりと表現しているのには舌を巻く。ちょっと急ぎすぎな気もしないでもないが(笑)。
ルーシュールという作曲家の名前は初めて聴いたが(サックスの作品は特に書いていないようだ)、この曲は室内楽的にも精密で破綻のない響きがして、興味深く聴いた。プーランクの「ソナタ」は、テヴェのコルが、コルらしからぬ怪しい動きをしていて面白い。どちらかというと、コルが主体の曲だものな。
んー、これと同じレイアウトのジャケットを、どこかで見たことがあると思われた方も多いだろう。ミュールが参加したLondon(Decca)の「The Saxophone」シリーズと同系列の、「The Trumpet」というシリーズのVol.3なのだ!このシリーズは、どのLPもジャケットのレイアウトが同じで、それぞれが良く似通っているというわけ。トランペット独奏はルイ・メナルディ Louis Ménardiという人物で、ジャケット裏の解説によると、ソシエテ(パリ音楽院管弦楽団)とオペラ・コミークのプレイヤーだという記述があった。
Raymond Loucheur - Concertino (tp, 6cl)
Francis Poulenc - Sonate (cor, tp, tb)
Jean Rivier - Concerto (tp, sax, pf)
Johann Sebastian Bach - Gavotte en rondeau (tp, 6cl)
非常に面白いトランペットの作品集だ。レイモン・ルーシュールという人のオリジナル作品は、トランペットとクラリネット六重奏のために書かれたものだし、プーランクのソナタは金管三重奏のソナタだし(コルを吹いているのはルシアン・テヴェ Lucien Thévetだ!)、最後のバッハも、トランペットとクラリネット六重奏のためにアレンジされてしまってるし…。
リヴィエの「ダブルコンチェルト」は、サクソフォンのマルセル・ミュールに、ピアノはアニー・ダルコ Annie d'Arcoというスペシャルなメンバー構成。当時のフランス器楽界の最高峰を集めたような感じだ。技術云々とか、フランス風の輝かしい音色が云々とか、そのあたりのことはもう当たり前で(我ながらずいぶん耳が肥えたな)リズムや音が引き締まっており、音楽に常に推進力があるような印象。各個人が一流の独奏者というだけでなく、一流の室内楽奏者でもあるのだ。また、楽章によってスタイルが分離されて吹き分けられているのも聴きもの。一番楽しそうなのは、やっぱり第3楽章かなあ。曲に仕掛けられたトラップ、もといユーモアを、技術的にしっかりと表現しているのには舌を巻く。ちょっと急ぎすぎな気もしないでもないが(笑)。
ルーシュールという作曲家の名前は初めて聴いたが(サックスの作品は特に書いていないようだ)、この曲は室内楽的にも精密で破綻のない響きがして、興味深く聴いた。プーランクの「ソナタ」は、テヴェのコルが、コルらしからぬ怪しい動きをしていて面白い。どちらかというと、コルが主体の曲だものな。
2009/08/28
ミヨー作品集(デファイエ参加)
バンドジャーナルの過去記事に引き続き、頂戴した音源をご紹介する。まずは、ダニエル・デファイエが参加した、ミヨー作品集。といっても、バーンスタイン盤で有名な「世界の創造」とかサックスでおなじみの「スカラムーシュ(デファイエの録音はないけれど)」ではなく、「四行詩の組曲」という全く別の作品である。「Darius Milhaud - Aspen Serenade」と題されたLPで、ジャケットの写真も一緒に送っていただいたのだが、Productions Disques ADES 15.503という型番が見える。ざっとネット上の情報を探してみたが、このDurandのカタログ(PDFファイル)くらいにしか、LPの存在を確認することはできなかった。貴重な盤である。
収録曲は「アスペン・セレナーデ Aspen Serenade」、「四行詩の組曲 Suite de quatrains」、「弦楽七重奏曲 Septuor a cordes」の三曲。とりあえず参加している演奏者ものすごくて、たとえば「アスペン・セレナーデ」なんて、
Darius Milhaud, direction
Jean Pierre Rampal, fl.
Pierre Pierlot, ob.
Jacques Lancelot, cl....(以下略)
ってな感じ。ランパル、ピエルロ、ランスロ、さらに指揮はミヨーですかい!という、笑ってしまう程の豪華絢爛さ。
デファイエが「四行詩の組曲」は、ナレーション、フルート、アルトサクソフォン、バスクラ、ハープ、ヴァイオリン、チェロ、コントラバスという編成。ナレーションが、ミヨーのご婦人であるマドレーヌ・ミヨー女史で、サクソフォンにデファイエ、フルートは「アスペン」と同じくランパル、ハープがフランシス・ピエール、ヴァイオリンがジェラール・ジャリ…というメンバー。指揮はもちろん、ミヨー自身だ。
恥ずかしながら、「四行詩の組曲」という作品自体初めて聴いたのだが、フランシス・ジャム Francis Jammesという詩人の書いた詩にインスピレーションを受けたもの、ということのようだ。ぜひ誌の原文、そして訳を見てみたいものだが、どこかにないかな。編成の大きさの割には三人か四人くらいの室内楽的な雰囲気を漂わせ、とてもライトで聴きやすい。サクソフォンも随所に登場するが、デファイエはあくまで室内楽編成の一員として、神妙な音を奏でている。
収録曲は「アスペン・セレナーデ Aspen Serenade」、「四行詩の組曲 Suite de quatrains」、「弦楽七重奏曲 Septuor a cordes」の三曲。とりあえず参加している演奏者ものすごくて、たとえば「アスペン・セレナーデ」なんて、
Darius Milhaud, direction
Jean Pierre Rampal, fl.
Pierre Pierlot, ob.
Jacques Lancelot, cl....(以下略)
ってな感じ。ランパル、ピエルロ、ランスロ、さらに指揮はミヨーですかい!という、笑ってしまう程の豪華絢爛さ。
デファイエが「四行詩の組曲」は、ナレーション、フルート、アルトサクソフォン、バスクラ、ハープ、ヴァイオリン、チェロ、コントラバスという編成。ナレーションが、ミヨーのご婦人であるマドレーヌ・ミヨー女史で、サクソフォンにデファイエ、フルートは「アスペン」と同じくランパル、ハープがフランシス・ピエール、ヴァイオリンがジェラール・ジャリ…というメンバー。指揮はもちろん、ミヨー自身だ。
恥ずかしながら、「四行詩の組曲」という作品自体初めて聴いたのだが、フランシス・ジャム Francis Jammesという詩人の書いた詩にインスピレーションを受けたもの、ということのようだ。ぜひ誌の原文、そして訳を見てみたいものだが、どこかにないかな。編成の大きさの割には三人か四人くらいの室内楽的な雰囲気を漂わせ、とてもライトで聴きやすい。サクソフォンも随所に登場するが、デファイエはあくまで室内楽編成の一員として、神妙な音を奏でている。
2009/08/27
1988年コングレスの記事
前回の記事の続き。
1988年は、世界サクソフォーン・コングレスが日本で開かれた年である。バンドジャーナル誌も、かなり大がかりにコングレスの記事を取り上げている。写真もたっぷりで、あの伝説的な「協奏曲の夕べ」の演奏風景を写真で見ることができた。おお、ヘムケ氏がヤマハのWX7を使っているぞ!そして、相変わらず須川さんは若い(笑)
女性奏者の演奏風景がたくさん載っている。スウェーデンのRollin' Phones(BISからCDが出ていますね)と、イギリスのFairer Sax(Diversionsは名盤!)で、どちらの団体もとても派手な衣装で、驚いてしまった。モノクロの写真だけれど、これはおそらくCDのジャケットと同じような、ピンク系統なのかなあ。
その他、掲載されている写真は、ドゥラングル教授、武藤賢一郎氏×藤井一興氏、東京サクソフォーンアンサンブル、フルモー4重奏団(テナーがGuy Demarle氏だ!)、等々。どれも、大変貴重なものだ。
そして、もうひとつは国際サクソフォーンフェスティバル in 大阪の記事。コングレスの開催に合わせて、大阪に何人かの国際的ソリストを招聘し、独自にフェスティバルを開催したとのこと。知らなかった~。記事の執筆者は、野田燎氏ということで、おそらく野田氏が先陣を切って運営をこなしていたのだろう。
招聘されたというソリストの面々も、凄いもので、ジョン・サンペン氏、フレデリック・ヘムケ氏、インターナショナルサクソフォンアンサンブル(ボルドー)、ミシェル・ヌオーといったところ。トリは、野田氏の自演による協奏曲「現」だったそうだ。へえーー!
1988年は、世界サクソフォーン・コングレスが日本で開かれた年である。バンドジャーナル誌も、かなり大がかりにコングレスの記事を取り上げている。写真もたっぷりで、あの伝説的な「協奏曲の夕べ」の演奏風景を写真で見ることができた。おお、ヘムケ氏がヤマハのWX7を使っているぞ!そして、相変わらず須川さんは若い(笑)
女性奏者の演奏風景がたくさん載っている。スウェーデンのRollin' Phones(BISからCDが出ていますね)と、イギリスのFairer Sax(Diversionsは名盤!)で、どちらの団体もとても派手な衣装で、驚いてしまった。モノクロの写真だけれど、これはおそらくCDのジャケットと同じような、ピンク系統なのかなあ。
その他、掲載されている写真は、ドゥラングル教授、武藤賢一郎氏×藤井一興氏、東京サクソフォーンアンサンブル、フルモー4重奏団(テナーがGuy Demarle氏だ!)、等々。どれも、大変貴重なものだ。
そして、もうひとつは国際サクソフォーンフェスティバル in 大阪の記事。コングレスの開催に合わせて、大阪に何人かの国際的ソリストを招聘し、独自にフェスティバルを開催したとのこと。知らなかった~。記事の執筆者は、野田燎氏ということで、おそらく野田氏が先陣を切って運営をこなしていたのだろう。
招聘されたというソリストの面々も、凄いもので、ジョン・サンペン氏、フレデリック・ヘムケ氏、インターナショナルサクソフォンアンサンブル(ボルドー)、ミシェル・ヌオーといったところ。トリは、野田氏の自演による協奏曲「現」だったそうだ。へえーー!
2009/08/26
コングレス来日奏者へのインタビュー記事
前回の記事の続き。
送ってもらった記事の中に、1988年の世界サクソフォーンコングレスに関係する記事を、十数ページも入れていただいた。大変興味深い内容で一気に読んでしまったが、ものすごい時代だったんだなあ…と、はるか昔(でもないか)に思いを馳せた。
須川展也氏とジャン=イヴ・フルモー氏の対談:
フランス、日本の各サクソフォーン界の"現状"と、未来に進むべき方向についての対談。何というか、大変堅くてまじめな話で、おかしくて笑ってしまった。現在の須川氏からはちょっと考えられない…というと、いくぶん語弊があるかな。写真の須川氏の若いこと!このころはまだ眼鏡をかけており、ふと思ったのだが一見すると将棋の羽生善治さんに似てなくもない。
クロード・ドゥラングル教授と武藤賢一郎氏の対談:
サクソフォーン・コングレスについての印象と、留学時代(ドゥラングル教授と武藤氏は、パリ音楽院での同期)の思い出、パリ国立高等音楽院教授就任に際しての抱負について。こちらのほうはとてもフランクな話題で、またまた意外な印象。だいたい、インタビューが次のように始まっているくらいで…(訳し方の違いもあるのだろうが)。
武藤賢一郎:やあ、クロード。ひさしぶりだけど、元気そうだね。オディール(ドゥラングル夫人)も、ちっとも変わらないね。それにセシルとレミー(ドゥラングル教授のご子息)も元気かな?
ドゥラングル:うん、元気だよ。二人ともやんちゃで、ホントまいってるけどね。ケンも、ちっとも変わってないじゃないか。
武藤:いやあ、そうでもないよ。キミみたいなガキ面なら、ずっと若くいられるんだけどね(笑)。
ドゥラングル:はじめからこれか。相変わらずだなあ、君って(笑)。
コングレスの話題も面白いが、留学の思い出はもっと面白いなあ。面白いところを抜粋すると、次の部分。
武藤:僕はデファイエ先生に教えていただきたくてフランスに行ったわけだけど、たまたま同級生に、君やジャン=イヴ(フルモー)、リタ(クヌーセル)のような吹ける連中がそろっていたことは、最高にラッキーだったよ。
ドゥラングル:それはお互いさまだよ。あのころ、デファイエ先生は「この学年はパリ音楽院始まって以来、最高のレベルだ」っておっしゃるのが口癖だったなあ。
武藤:うん、われわれのレッスンのときは、いつもニコニコ顔だったね。卒業してから時々学校に顔を出すと、しょっちゅうどなりちらしていたよ。
ドゥラングル:そうそう。僕たちの頃は、学校でいっぱしの顔をしているのは大変だったもの。
へーーー。確かにまあ、武藤賢一郎氏、ドゥラングル教授、フルモー氏が同期というだけで、なんだかおそれおののいてしまうもんなあ。リタ・クヌーセル Rita Knueselという奏者の名前は初めて聴いたが、アメリカの女性奏者なのだそうだ。CDなどは出ていないのだろうか…聴いてみたい。
このあと、パリ国立高等音楽院の教授就任についての簡単な経過が話されている。1988年(1987年?)の4月に公募があって、書類選考でドゥラングル、フルモー、ロンデックスが選ばれ、最終的に口頭試問でドゥラングルが選ばれたのだそうだ。
また、インタビューの中には書かれていないが、ドゥラングル教授は、このときまでBoulogne sur Mer地方音楽院の教授であったとのこと。同音楽院サクソフォン科教授の後任には、1988年卒業のAlain Pereira氏が就任している。Alain Pereira氏は、ドゥラングル・クラスの第一期生で、1988年シーズンに一等賞で卒業したサクソフォン奏者である。
送ってもらった記事の中に、1988年の世界サクソフォーンコングレスに関係する記事を、十数ページも入れていただいた。大変興味深い内容で一気に読んでしまったが、ものすごい時代だったんだなあ…と、はるか昔(でもないか)に思いを馳せた。
須川展也氏とジャン=イヴ・フルモー氏の対談:
フランス、日本の各サクソフォーン界の"現状"と、未来に進むべき方向についての対談。何というか、大変堅くてまじめな話で、おかしくて笑ってしまった。現在の須川氏からはちょっと考えられない…というと、いくぶん語弊があるかな。写真の須川氏の若いこと!このころはまだ眼鏡をかけており、ふと思ったのだが一見すると将棋の羽生善治さんに似てなくもない。
クロード・ドゥラングル教授と武藤賢一郎氏の対談:
サクソフォーン・コングレスについての印象と、留学時代(ドゥラングル教授と武藤氏は、パリ音楽院での同期)の思い出、パリ国立高等音楽院教授就任に際しての抱負について。こちらのほうはとてもフランクな話題で、またまた意外な印象。だいたい、インタビューが次のように始まっているくらいで…(訳し方の違いもあるのだろうが)。
武藤賢一郎:やあ、クロード。ひさしぶりだけど、元気そうだね。オディール(ドゥラングル夫人)も、ちっとも変わらないね。それにセシルとレミー(ドゥラングル教授のご子息)も元気かな?
ドゥラングル:うん、元気だよ。二人ともやんちゃで、ホントまいってるけどね。ケンも、ちっとも変わってないじゃないか。
武藤:いやあ、そうでもないよ。キミみたいなガキ面なら、ずっと若くいられるんだけどね(笑)。
ドゥラングル:はじめからこれか。相変わらずだなあ、君って(笑)。
コングレスの話題も面白いが、留学の思い出はもっと面白いなあ。面白いところを抜粋すると、次の部分。
武藤:僕はデファイエ先生に教えていただきたくてフランスに行ったわけだけど、たまたま同級生に、君やジャン=イヴ(フルモー)、リタ(クヌーセル)のような吹ける連中がそろっていたことは、最高にラッキーだったよ。
ドゥラングル:それはお互いさまだよ。あのころ、デファイエ先生は「この学年はパリ音楽院始まって以来、最高のレベルだ」っておっしゃるのが口癖だったなあ。
武藤:うん、われわれのレッスンのときは、いつもニコニコ顔だったね。卒業してから時々学校に顔を出すと、しょっちゅうどなりちらしていたよ。
ドゥラングル:そうそう。僕たちの頃は、学校でいっぱしの顔をしているのは大変だったもの。
へーーー。確かにまあ、武藤賢一郎氏、ドゥラングル教授、フルモー氏が同期というだけで、なんだかおそれおののいてしまうもんなあ。リタ・クヌーセル Rita Knueselという奏者の名前は初めて聴いたが、アメリカの女性奏者なのだそうだ。CDなどは出ていないのだろうか…聴いてみたい。
このあと、パリ国立高等音楽院の教授就任についての簡単な経過が話されている。1988年(1987年?)の4月に公募があって、書類選考でドゥラングル、フルモー、ロンデックスが選ばれ、最終的に口頭試問でドゥラングルが選ばれたのだそうだ。
また、インタビューの中には書かれていないが、ドゥラングル教授は、このときまでBoulogne sur Mer地方音楽院の教授であったとのこと。同音楽院サクソフォン科教授の後任には、1988年卒業のAlain Pereira氏が就任している。Alain Pereira氏は、ドゥラングル・クラスの第一期生で、1988年シーズンに一等賞で卒業したサクソフォン奏者である。
2009/08/25
斉藤広樹氏からデファイエ氏へのインタビュー
前回の記事の続き。
今日ご紹介するのは、1988年の来日時に行われたインタビュー。バンドジャーナル誌上に掲載されたもので、インタビュアーは斉藤広樹氏(デファイエ氏門下で、1982年にパリ国立音楽院を一等賞で卒業)である。こちらのインタビューも、なかなか面白いことが書かれていたので、いくつか抜粋して紹介したい。
----------
斉藤広樹:今年いっぱいでパリ音楽院を退任なさったわけですが、その間、先生ご自身がお持ちになられていた方針や理念のようなものがあればおきかせください。
デファイエ:二十一年間パリ音楽院の教授を務めましたが、私はサクソフォーンの音楽に変革をもたらすことは考えませんでした。巨匠ミュールによって創始されたばかりの伝統的なフランス・サクソフォーンの継承を中心に考えてきました。
現在でもごく一般的に言われている「ミュールの教えを守った」「伝統を継承した」という批評と、まったく同じことが本人の口から語られている。
----------
斉藤広樹:ところで、今までの演奏活動やレコードについてお話し下さい。まずは印象深かったコンサートについて。
デファイエ:(中略)…最も満足のいくコンサートの一つとして、コンセルトヘボウ・オーケストラとのイベール(コンチェルティーノ・ダ・カメラ)の共演があります。あれほど音楽的で完成されたオーケストラと共演する機会はなかなかありません。
そんな演奏があったのか!デファイエ氏自身が、そこまで満足したというそのイベール、聴いてみたかったなあ。もし、千に一つ、いや万に一つの可能性でも、世界のどこかに録音が残っていればぜひ聴いてみたい。
----------
斉藤広樹:それでは、これまでになさった録音についておうかがいします。まずピアノとの二重奏やコンチェルトから。
デファイエ:(中略)…印象深いものとしては、アメリカで録音したリュエフの「ソナタ」やブートリーの「ディヴェルティメント」などのレコードがあります。コンチェルトでは約三十年ほど前のものですが、フルネ指揮コンセールラムルーとのイベールは印象に残っています。当時のラムルーはクラリネットにランスロ、フルートにカラジェ、オーボエにピエルロ、バソンにアラールという、フランスが誇る木管の最高峰の面々でした。明るく色彩感あふれるオーケストラで、お互いに感動しながらの録音でした。
やはり一番最初に出てくるのはCrest盤、しかもリュエフとブートリーの名前が挙がっている!誰が聴いても、とんでもない演奏だもんなあ。そして、コンセールラムルーのイベール。ソロ、オケともに引き締まった素晴らしい演奏だが、まさかオーケストラにそんなプレイヤーが乗っていたとは、知らなかった。上手いわけだ。
----------
(番外編)
あとがき:その後、四重奏のメンバーとの雑談の中で、日本のアルモ・サクソフォーン・アンサンブルについての話が出ました。アルモ・サクソフォーン・アンサンブルの演奏にいたく感動なさった四重奏の先生方は、彼らがどういう教育を受けてきたか、また彼らの音楽性や奏法を広く浸透させる場と機会はあるのかなどを質問され、大変関心を持ってらっしゃったことを付け加えます。
へー!デファイエ四重奏団の面々をもうならせる演奏とは、果たしてどういうものだったのか。デファイエとは直接関係ないが、気になるなあ。
今日ご紹介するのは、1988年の来日時に行われたインタビュー。バンドジャーナル誌上に掲載されたもので、インタビュアーは斉藤広樹氏(デファイエ氏門下で、1982年にパリ国立音楽院を一等賞で卒業)である。こちらのインタビューも、なかなか面白いことが書かれていたので、いくつか抜粋して紹介したい。
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斉藤広樹:今年いっぱいでパリ音楽院を退任なさったわけですが、その間、先生ご自身がお持ちになられていた方針や理念のようなものがあればおきかせください。
デファイエ:二十一年間パリ音楽院の教授を務めましたが、私はサクソフォーンの音楽に変革をもたらすことは考えませんでした。巨匠ミュールによって創始されたばかりの伝統的なフランス・サクソフォーンの継承を中心に考えてきました。
現在でもごく一般的に言われている「ミュールの教えを守った」「伝統を継承した」という批評と、まったく同じことが本人の口から語られている。
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斉藤広樹:ところで、今までの演奏活動やレコードについてお話し下さい。まずは印象深かったコンサートについて。
デファイエ:(中略)…最も満足のいくコンサートの一つとして、コンセルトヘボウ・オーケストラとのイベール(コンチェルティーノ・ダ・カメラ)の共演があります。あれほど音楽的で完成されたオーケストラと共演する機会はなかなかありません。
そんな演奏があったのか!デファイエ氏自身が、そこまで満足したというそのイベール、聴いてみたかったなあ。もし、千に一つ、いや万に一つの可能性でも、世界のどこかに録音が残っていればぜひ聴いてみたい。
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斉藤広樹:それでは、これまでになさった録音についておうかがいします。まずピアノとの二重奏やコンチェルトから。
デファイエ:(中略)…印象深いものとしては、アメリカで録音したリュエフの「ソナタ」やブートリーの「ディヴェルティメント」などのレコードがあります。コンチェルトでは約三十年ほど前のものですが、フルネ指揮コンセールラムルーとのイベールは印象に残っています。当時のラムルーはクラリネットにランスロ、フルートにカラジェ、オーボエにピエルロ、バソンにアラールという、フランスが誇る木管の最高峰の面々でした。明るく色彩感あふれるオーケストラで、お互いに感動しながらの録音でした。
やはり一番最初に出てくるのはCrest盤、しかもリュエフとブートリーの名前が挙がっている!誰が聴いても、とんでもない演奏だもんなあ。そして、コンセールラムルーのイベール。ソロ、オケともに引き締まった素晴らしい演奏だが、まさかオーケストラにそんなプレイヤーが乗っていたとは、知らなかった。上手いわけだ。
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(番外編)
あとがき:その後、四重奏のメンバーとの雑談の中で、日本のアルモ・サクソフォーン・アンサンブルについての話が出ました。アルモ・サクソフォーン・アンサンブルの演奏にいたく感動なさった四重奏の先生方は、彼らがどういう教育を受けてきたか、また彼らの音楽性や奏法を広く浸透させる場と機会はあるのかなどを質問され、大変関心を持ってらっしゃったことを付け加えます。
へー!デファイエ四重奏団の面々をもうならせる演奏とは、果たしてどういうものだったのか。デファイエとは直接関係ないが、気になるなあ。
2009/08/24
大室勇一氏からデファイエ氏へのインタビュー
最近、ダニエル・デファイエ氏に関する多くの記事・録音を、島根県にお住まいの方から送っていただいた。大変興味深く、かつ面白いものばかりだったので、今日から数日間にわたってブログ上でご紹介したい。送っていただいたF様には、深く感謝申し上げる次第。
1977年にデファイエ氏が来日した際に行われたバンドジャーナル誌上でのインタビュー。聴き手はなんと、当時東京芸術大学講師であった大室勇一氏(!)である。デファイエ氏が、当時の日本のサクソフォン界の印象、"現代作品"についての所感、サクソフォン・コングレス…などのことについて、短いながらも濃い内容で語っている。通訳は、おなじみビュッフェ・クランポンの保良徹氏。
そういえば、1977年というと、デファイエ氏時代のパリ音楽院サクソフォン科に、伝説的なクラスが存在した年である。その年の卒業生がなんと、クロード・ドゥラングル、ジャン=イヴ・フルモー、武藤賢一郎、てなもんで。インタビューの中でも、卒業生について触れられているな。
以下、少しだけ内容を抜粋したい。
大室勇一:(パリ国立音楽院のサクソフォーンのクラスについて、)教材として新しいものも使われますか?
デファイエ:ええ、それがよいものであれば。例えばシャルパンティエの「ガヴァンボディ2」のように。ただし私自身は二重音とか三重音といったような前衛的なテクニックについては美しさを感じられません。ある意味では私はもう過去の人間なのかもしれませんが、私の趣味によって美しいと感じるものを今後も守りとおしていきたいと思います。
と、デファイエ氏が自身のサクソフォン作品に関する美意識というか、そういった作品観について語り、さらに以下のように続いている。
デファイエ:ただし私の生徒については別です。彼らが卒業後に演奏家として生活していくためには。現代の作曲家が要求するようなテクニックを身につける必要があるわけで、それを勉強するよう生徒たちには勧めています。
ということで、"現代作品"についてまったく理解がなかったり、毛嫌いしているというわけではなく、自らの美意識に合ったものについてはレパートリーとして取り込み、さらに生徒にはきちんと同時代の作品を勉強させるよう、指導したということのようだ。デファイエ氏が自身の生徒にそう勧めるとは、少し意外な感じもしたが、サクソフォンの最高学府であるパリ音楽院の教授ともなれば、やはりそれだけ広い観点を持つことが必要なのだ、ということだろう。
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大室勇一:ジャズやポピュラー音楽におけるサクソフォーンについて、どう思われますか?
デファイエ:ジャズのサクソフォーンの音色については"ひどい"としか言いようがありません。良い点について言えば「リズム」でしょう。しかし、これもフル・バンドで五本のサクソフォーンがそろっていればの話で、現代の流行のように一人で自由に演奏する場合には、その点も期待できないように思います。
ばっさり(笑)。ヴィブラートを始めとするクラシックのサクソフォンのいくつかの要素が、ジャズのサクソフォンにヒントを得たものである…と考えると、このはっきりとした意見もまた、やや意外に思えた。当時一部で流行していた、フリージャズに対する意識というものがあるのかもしれない。
1977年にデファイエ氏が来日した際に行われたバンドジャーナル誌上でのインタビュー。聴き手はなんと、当時東京芸術大学講師であった大室勇一氏(!)である。デファイエ氏が、当時の日本のサクソフォン界の印象、"現代作品"についての所感、サクソフォン・コングレス…などのことについて、短いながらも濃い内容で語っている。通訳は、おなじみビュッフェ・クランポンの保良徹氏。
そういえば、1977年というと、デファイエ氏時代のパリ音楽院サクソフォン科に、伝説的なクラスが存在した年である。その年の卒業生がなんと、クロード・ドゥラングル、ジャン=イヴ・フルモー、武藤賢一郎、てなもんで。インタビューの中でも、卒業生について触れられているな。
以下、少しだけ内容を抜粋したい。
大室勇一:(パリ国立音楽院のサクソフォーンのクラスについて、)教材として新しいものも使われますか?
デファイエ:ええ、それがよいものであれば。例えばシャルパンティエの「ガヴァンボディ2」のように。ただし私自身は二重音とか三重音といったような前衛的なテクニックについては美しさを感じられません。ある意味では私はもう過去の人間なのかもしれませんが、私の趣味によって美しいと感じるものを今後も守りとおしていきたいと思います。
と、デファイエ氏が自身のサクソフォン作品に関する美意識というか、そういった作品観について語り、さらに以下のように続いている。
デファイエ:ただし私の生徒については別です。彼らが卒業後に演奏家として生活していくためには。現代の作曲家が要求するようなテクニックを身につける必要があるわけで、それを勉強するよう生徒たちには勧めています。
ということで、"現代作品"についてまったく理解がなかったり、毛嫌いしているというわけではなく、自らの美意識に合ったものについてはレパートリーとして取り込み、さらに生徒にはきちんと同時代の作品を勉強させるよう、指導したということのようだ。デファイエ氏が自身の生徒にそう勧めるとは、少し意外な感じもしたが、サクソフォンの最高学府であるパリ音楽院の教授ともなれば、やはりそれだけ広い観点を持つことが必要なのだ、ということだろう。
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大室勇一:ジャズやポピュラー音楽におけるサクソフォーンについて、どう思われますか?
デファイエ:ジャズのサクソフォーンの音色については"ひどい"としか言いようがありません。良い点について言えば「リズム」でしょう。しかし、これもフル・バンドで五本のサクソフォーンがそろっていればの話で、現代の流行のように一人で自由に演奏する場合には、その点も期待できないように思います。
ばっさり(笑)。ヴィブラートを始めとするクラシックのサクソフォンのいくつかの要素が、ジャズのサクソフォンにヒントを得たものである…と考えると、このはっきりとした意見もまた、やや意外に思えた。当時一部で流行していた、フリージャズに対する意識というものがあるのかもしれない。
2009/08/23
Daniel Gremelle plays Czardas on YouTube
おおお。ダニエル・グレメル氏の演奏動画を発見。グレメル(グレメーユ)氏は、1985年以来、パリ警視庁音楽隊のサクソフォン奏者を務めいる、フランスを代表するプレイヤーの一人。パリ警視庁音楽隊といえば、かつて全盛を誇ったギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団がインターナショナライズされた後も、数少ないフランスの薫りを残す吹奏楽団として有名ですね。いまはどうなんだろうか。
独奏のCDはいくつか出ているらしいのだが、持っていない。公式ページで試聴する限りは、なかなか良さそうなのだが。マルコ・ポーロレーベルから出ている協奏曲集が、デュボワ「協奏曲第二番(ってなんだ汗)」、リヴィエ、ショルティーノというプログラムで、なかなか面白そうなのだが。
動画は、モンティの「チャルダーシュ」。こういう、"一世代前の超絶技巧"って、最近ではあまり聴かなくなってしまったな。どうぞアンコールも含めてお楽しみくだされ。
独奏のCDはいくつか出ているらしいのだが、持っていない。公式ページで試聴する限りは、なかなか良さそうなのだが。マルコ・ポーロレーベルから出ている協奏曲集が、デュボワ「協奏曲第二番(ってなんだ汗)」、リヴィエ、ショルティーノというプログラムで、なかなか面白そうなのだが。
動画は、モンティの「チャルダーシュ」。こういう、"一世代前の超絶技巧"って、最近ではあまり聴かなくなってしまったな。どうぞアンコールも含めてお楽しみくだされ。
2009/08/22
録音を整理
木下直人さん、あかいけさん、ジェローム・ララン氏、Andy Jackson氏他から送っていただいた録音を、整理している。まずは、マルセル・ミュールとダニエル・デファイエについて、Googleドキュメント上にリスト化を行った。いずれ、ロンデックスやラッシャーについても整理を行っていく予定である。
リストの公開は…どうしようかな。もうちょっとフォーマットがこなれてきたら公開するかもしれない。現状は、いかにも「自分専用」という感じなので…。本当は、XMLなど使って構造化して管理するのが良いのかもしれない。
最近の録音を新たに西日本にお住まいの方から、デファイエの貴重な録音を送っていただく予定がある。大変楽しみだ。それから、最近探しているもの…マルセル・ミュールが録音に参加したダリウス・ミヨー「世界の創造」の初演録音。世界のどこかにはあるらしいのだが、なんとかして手に入れられないものか。
リストの公開は…どうしようかな。もうちょっとフォーマットがこなれてきたら公開するかもしれない。現状は、いかにも「自分専用」という感じなので…。本当は、XMLなど使って構造化して管理するのが良いのかもしれない。
最近の録音を新たに西日本にお住まいの方から、デファイエの貴重な録音を送っていただく予定がある。大変楽しみだ。それから、最近探しているもの…マルセル・ミュールが録音に参加したダリウス・ミヨー「世界の創造」の初演録音。世界のどこかにはあるらしいのだが、なんとかして手に入れられないものか。
2009/08/20
Fabrice Moretti「Sonata!」
買ったのはもう5年以上前のことだ。大好きなCDで、今まで何度聴き返したことかわからない。おなじみファブリス・モレティ Fabrice Moretti氏の「SONATA!(Momonga Records MRCP 1005)」である。モレティ氏は現役バリバリのプレーヤーの中では珍しく、パリ国立高等音楽院でダニエル・デファイエに師事したというサクソフォン奏者。数多くの国際コンクールで優秀な成績を収めており、たとえばあのディナンの第1回アドルフ・サックス国際コンクールで第3位という成績を残した…と言えば、その凄さがわかるだろう(第1位がV.ダヴィッド、第2位がF.マンクーゾ)。
P.サンカン - ラメントとロンド
P.モーリス - プロヴァンスの風景
A.デザンクロ - PCF
J.リュエフ - ソナタ
A.ベルノー - デュオ・ソナタ
このような充実したプログラムなのだが、たとえば「プロヴァンスの風景」を聴こう!と思った時に手が伸びるというように、あまり作品それぞれとして聴くことは少ない。モーリスはミュールが、デザンクロはロンデックスが、リュエフはデファイエが、それぞれ素晴らしい録音を残しており、作品を聴こうとするときにはどうしてもそちらに手が伸びてしまう。しかし、このCDの演奏が彼らと比較して劣るとか、そういったことは全くなく、むしろ技術的にも音楽的にも(そしてもちろん録音の面でも)、大御所たちの演奏を凌駕しているのではないかと思われるほどの演奏だ。それではなぜ私の場合は、ミュールやロンデックスやデファイエを聴くかと問われれば、そういった有名曲に関しては「刷り込み」が起こってしまっているからだ。
と、前置きが長くなったが、とにかく良いCDなのだ。フランスの「伝統」と「革新」を、最良のバランスで融合させると、こういう演奏になるのだろう。本来音が持つ美しさに、ぐっと抑制されたヴィブラートが重なり、さらに隅から隅までみずみずしいフレージングを加えて出来上がる音楽は、現代におけるサクソフォン音楽の指標となるべきものだ。
たとえば「プロヴァンスの風景」の演奏なんて、実に美しい音で、様々な表現が使い分けられていて、ピアノ(服部真理子氏)とのアンサンブルも絶妙。数ある録音の中でも、これがベストだと言いきってしまいたいくらいだ。第5楽章が特に好きで、黒々としたあの楽譜の中をを軽々と進んでいくサクソフォンは、本当にアブが飛び回るような様子であり、実に聴いていて楽しい。
あとは、やはりベルノーかな。服部吉之先生とのデュオなのだが、類まれな美音を持つお二人のアンサンブル、さらに超難曲&大曲の「デュオ・ソナタ」ということで、聴きごたえは抜群。驚異的な集中力で奏でられるベルノーは、まさに圧巻である。あの楽譜を、ここまで吹いてしまうのか…という、ある意味では恐ろしさすら感じてしまう。モレティ氏&服部吉之先生というのは日本ではおなじみだが、の服部先生は、モレティ氏が10代前半のころから知りあいなのだそうだ。当時から、ソプラノサックスを軽々と操り、こいつは天才だ!と思ったとか。
録音も素晴らしい。ワンポイントなのかな?音の芯を捉えつつも、残響を最適なバランスで含めており、演奏会場で聴くようなリアルさを感じる。さらにさらに、上田卓氏による解説も、大変な読み物である。
P.サンカン - ラメントとロンド
P.モーリス - プロヴァンスの風景
A.デザンクロ - PCF
J.リュエフ - ソナタ
A.ベルノー - デュオ・ソナタ
このような充実したプログラムなのだが、たとえば「プロヴァンスの風景」を聴こう!と思った時に手が伸びるというように、あまり作品それぞれとして聴くことは少ない。モーリスはミュールが、デザンクロはロンデックスが、リュエフはデファイエが、それぞれ素晴らしい録音を残しており、作品を聴こうとするときにはどうしてもそちらに手が伸びてしまう。しかし、このCDの演奏が彼らと比較して劣るとか、そういったことは全くなく、むしろ技術的にも音楽的にも(そしてもちろん録音の面でも)、大御所たちの演奏を凌駕しているのではないかと思われるほどの演奏だ。それではなぜ私の場合は、ミュールやロンデックスやデファイエを聴くかと問われれば、そういった有名曲に関しては「刷り込み」が起こってしまっているからだ。
と、前置きが長くなったが、とにかく良いCDなのだ。フランスの「伝統」と「革新」を、最良のバランスで融合させると、こういう演奏になるのだろう。本来音が持つ美しさに、ぐっと抑制されたヴィブラートが重なり、さらに隅から隅までみずみずしいフレージングを加えて出来上がる音楽は、現代におけるサクソフォン音楽の指標となるべきものだ。
たとえば「プロヴァンスの風景」の演奏なんて、実に美しい音で、様々な表現が使い分けられていて、ピアノ(服部真理子氏)とのアンサンブルも絶妙。数ある録音の中でも、これがベストだと言いきってしまいたいくらいだ。第5楽章が特に好きで、黒々としたあの楽譜の中をを軽々と進んでいくサクソフォンは、本当にアブが飛び回るような様子であり、実に聴いていて楽しい。
あとは、やはりベルノーかな。服部吉之先生とのデュオなのだが、類まれな美音を持つお二人のアンサンブル、さらに超難曲&大曲の「デュオ・ソナタ」ということで、聴きごたえは抜群。驚異的な集中力で奏でられるベルノーは、まさに圧巻である。あの楽譜を、ここまで吹いてしまうのか…という、ある意味では恐ろしさすら感じてしまう。モレティ氏&服部吉之先生というのは日本ではおなじみだが、の服部先生は、モレティ氏が10代前半のころから知りあいなのだそうだ。当時から、ソプラノサックスを軽々と操り、こいつは天才だ!と思ったとか。
録音も素晴らしい。ワンポイントなのかな?音の芯を捉えつつも、残響を最適なバランスで含めており、演奏会場で聴くようなリアルさを感じる。さらにさらに、上田卓氏による解説も、大変な読み物である。
居酒屋でセッション?
デ・ラ・カンダのにこらすぅさんと、それから最近にこらすぅさんがお知り合いになったという方と、沖縄料理屋さん「とんとんみー」で飲み。なんだか妙に盛り上がってしまって、二次会へ。「とん平」というお店で、なんと店主がギター好きで、個室の中にギターが何本も掛けてあるという場所。
「タイコはだめだけど、サックスくらいなら吹けるよ」と言われたので、それならばということで、家にサックスを取りに帰り(←この時点でなにかがおかしい)、テナーサックスとアルトサックスを担いでお店に戻り、お酒を飲みながらセッション。楽譜も何もあったもんではないのだが、なんだか楽しかったなあ。
今度行く時までに、「ホテル・カリフォルニア」「天国への階段」「スペイン」ほか数曲を練習していくことになった。40代の方に、音楽の趣味が渋いねと言われるのは、今に始まったことではない(笑)。
「タイコはだめだけど、サックスくらいなら吹けるよ」と言われたので、それならばということで、家にサックスを取りに帰り(←この時点でなにかがおかしい)、テナーサックスとアルトサックスを担いでお店に戻り、お酒を飲みながらセッション。楽譜も何もあったもんではないのだが、なんだか楽しかったなあ。
今度行く時までに、「ホテル・カリフォルニア」「天国への階段」「スペイン」ほか数曲を練習していくことになった。40代の方に、音楽の趣味が渋いねと言われるのは、今に始まったことではない(笑)。
2009/08/18
初学者のためのレパートリー
野菜をしっかり食べなきゃなー。
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フランスでは、サクソフォン初学者のためのレパートリーが豊富であるそうだ。先日紹介した「musik'it」の内容を見ても明らかなように、クラシックの管楽器…という小さな括りから見てもマイナーな、このサクソフォンという楽器のために、同時代の作曲家が数多くの作品を提供しているのだ。
そのレパートリーは、どうやらフランス国内でのみ多く流通し、たとえば日本ではあまり知られてはいないようだ。フランスでは、小学校くらいの年ごろから音楽院に通い、専門の先生に楽器を習う、というシステムがあるため、こういった初学者のレパートリーの消費が多く、広く伝搬しやすいのだと思う。
日本だと、やはりサクソフォン・キャリアの最初に学ぶべきレパートリーは少ないよな。ラクールやフェルリングを学んでいって、次にやるのって何だろう。ミュール編曲の小品?それともプラネルの「ロマンティック組曲」とか?…という風に、かなり限られているのが現状。積極的にフランスのレパートリーを開拓していく必要があるのではないだろうか。
まあ一番良いのは、国内の作曲家がそういった易しい作品を書くことなのだが…例えば、児童合唱などに対して作品を書いている、大御所と呼ばれる作曲家の先生方が書いてくれませんかねえ(^^;さすがに無理かなあ。
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フランスでは、サクソフォン初学者のためのレパートリーが豊富であるそうだ。先日紹介した「musik'it」の内容を見ても明らかなように、クラシックの管楽器…という小さな括りから見てもマイナーな、このサクソフォンという楽器のために、同時代の作曲家が数多くの作品を提供しているのだ。
そのレパートリーは、どうやらフランス国内でのみ多く流通し、たとえば日本ではあまり知られてはいないようだ。フランスでは、小学校くらいの年ごろから音楽院に通い、専門の先生に楽器を習う、というシステムがあるため、こういった初学者のレパートリーの消費が多く、広く伝搬しやすいのだと思う。
日本だと、やはりサクソフォン・キャリアの最初に学ぶべきレパートリーは少ないよな。ラクールやフェルリングを学んでいって、次にやるのって何だろう。ミュール編曲の小品?それともプラネルの「ロマンティック組曲」とか?…という風に、かなり限られているのが現状。積極的にフランスのレパートリーを開拓していく必要があるのではないだろうか。
まあ一番良いのは、国内の作曲家がそういった易しい作品を書くことなのだが…例えば、児童合唱などに対して作品を書いている、大御所と呼ばれる作曲家の先生方が書いてくれませんかねえ(^^;さすがに無理かなあ。
2009/08/17
2009年のフェス情報
今年のサクソフォンフェスティバルについて。メイン企画であるフェスティバルコンサートは、「伊藤康英個展」と「現代の音楽展」だそうだ。
「伊藤康英個展」は、ツヴァイザムカイト(への補足的一章?)、幻想的協奏曲、四重奏曲第二番、第七の封印、シャコンヌ、琉球幻想曲、23時45分のMr.シンデレラ、木星のファンタジーという豪華仕立てで、これは聴きがいがありそうだ。大学時代に、伊藤康英先生の音楽に少なからず触れた私としては、やはり逃さずに聴きたいところだ。「Mr.シンデレラ」は、かつて吹奏楽ダイジェスト版の初演に参加したが、やはりあの小オペラ形式で演奏されるのだろうか。「シャコンヌ」というのは、伊藤康英先生が編曲したバッハの「シャコンヌ」かな?(追記→)と思ったらそうではなくて、無伴奏アルトサクソフォンのための「シャコンヌ」だそうだ。伊藤康英先生のサクソフォンのオリジナル作品の中でも、最初期(1980年)に作曲されたもの。
「現代の音楽展」は、松尾大祐「トリツカレ男」、伊藤高明「山女魚」、松尾祐孝「Distraction IX」、生野裕久「四つの葦のための四つの章」、可知奈尾子「サルルンカム」というプログラム。三月にも聴きに行ったが、どの作品も興味深いものであり、再び聴くことができるのが楽しみだ。演奏者は、同じなのか or 変わるのか。その辺りにも注目して聴きにいっていみたい。
フェスティバルコンサート以外では、いつもとほぼ同じ企画群。フェスティバルオーケストラ、A会員による演奏、音大のラージアンサンブル、アマチュアステージ、等々。
今年もパルテノン多摩でのフェスティバル開催ということなのだが、茨城県つくば市にいたころと比べたら、格段にアクセスが良くなったな(苦笑)。さくっと行って、さくっと帰ってこれそうだ。
「伊藤康英個展」は、ツヴァイザムカイト(への補足的一章?)、幻想的協奏曲、四重奏曲第二番、第七の封印、シャコンヌ、琉球幻想曲、23時45分のMr.シンデレラ、木星のファンタジーという豪華仕立てで、これは聴きがいがありそうだ。大学時代に、伊藤康英先生の音楽に少なからず触れた私としては、やはり逃さずに聴きたいところだ。「Mr.シンデレラ」は、かつて吹奏楽ダイジェスト版の初演に参加したが、やはりあの小オペラ形式で演奏されるのだろうか。「シャコンヌ」というのは、伊藤康英先生が編曲したバッハの「シャコンヌ」かな?(追記→)と思ったらそうではなくて、無伴奏アルトサクソフォンのための「シャコンヌ」だそうだ。伊藤康英先生のサクソフォンのオリジナル作品の中でも、最初期(1980年)に作曲されたもの。
「現代の音楽展」は、松尾大祐「トリツカレ男」、伊藤高明「山女魚」、松尾祐孝「Distraction IX」、生野裕久「四つの葦のための四つの章」、可知奈尾子「サルルンカム」というプログラム。三月にも聴きに行ったが、どの作品も興味深いものであり、再び聴くことができるのが楽しみだ。演奏者は、同じなのか or 変わるのか。その辺りにも注目して聴きにいっていみたい。
フェスティバルコンサート以外では、いつもとほぼ同じ企画群。フェスティバルオーケストラ、A会員による演奏、音大のラージアンサンブル、アマチュアステージ、等々。
今年もパルテノン多摩でのフェスティバル開催ということなのだが、茨城県つくば市にいたころと比べたら、格段にアクセスが良くなったな(苦笑)。さくっと行って、さくっと帰ってこれそうだ。
サクソフォニー初参加
昨日、サクソフォニー関東の練習と交流飲み会に参加してきた。25人以上もサックスが集まって、いったいどんなサウンドになるのかなあとも思ったのだが、これがまた意外にも(?)とてもまとまったサウンドで、吹いていてとても楽しかった。agitato!さんとたくとんさんの指揮で吹けるというのも、いいなあ。そのあとの飲み会も、いろいろな方と話すことができて良かった~。
サクソフォニー関東は、来年の6月に演奏会を予定している。
サクソフォニー関東は、来年の6月に演奏会を予定している。
2009/08/15
ゴトコフスキーのサックス協奏曲集
必要があって、イダ・ゴトコフスキー Ida Gotkovskyのサクソフォン協奏曲集を(安物のLPプレーヤーを使って)トランスファーした。ずっと昔にLPで入手して、こちらのページにも掲載しているが、聴いたことは聴いたのだがデジタル化はまだ行っていなかったのだった。
珍しや、「悲愴的変奏曲(1980)」のオーケストラ版と、「サクソフォン協奏曲(1966)」が収録されているレコード。BVHAASTという、現代音楽に強いことで有名なレーベルから出版されており(今も存在する出版社)、BVHAAST 066という品番が付与されている。「悲愴的変奏曲」のほうはライヴ録音。
サクソフォン独奏は、エド・ボガード Ed Bogaard氏。あまり有名な名前ではないが、あのアルノ・ボーンカンプ氏の師匠といえば驚かれる方もいるのではないだろうか。ライナーに書いてあった経歴をざっと訳してみたところ、以下のようになった。オランダ・サクソフォン界のパイオニア的存在と言えるだろう。
エド・ボガードは、1943年5月11日にオランダのWeespに生まれた。アムステルダム音楽院とユトレヒト音楽院に学び、彼はその2つの音楽院で一等賞を得て卒業した、初めてのサクソフォン奏者となった。ボガードは現在、アムステルダムのスヴェーリンク音楽院の教授であり、ベルギーのWalloon夏季アカデミーの講師も務めている。ボガードは、教育者としてのキャリアに加えて、国際的なソリストとしても活躍している。これまでに、イスラエル室内アンサンブル、フィルハーモニア・フンガリカ、コンセルトヘボウ管弦楽団、アルスター管弦楽団、ケルン放送交響楽団、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団、オランダ放送室内管弦楽団、ユトレヒト交響楽団、ロッテルダムフィル、デン・ハーグ交響楽団他、多数のオーケストラと共演している。同時代の作曲家とのコラボレーションも多く、作曲家のOtto Ketting、Tristan Keuris、Misha Mengelberg、Hans Kox、Leo Samama、Joep Straesser Walter Hekster、Willem Breuker他から、作品を献呈されている。1968年、ボガードはオランダサクソフォン四重奏団 Netherlands Saxophone Quartetを結成し、アルトサクソフォンを担当している。また、室内楽ではピアノのRonald Brautigamとデュオを結成し、演奏活動を行っている。ボガードはこれまでに、200を超える放送録音に参加しており、その中でGaudeamus弦楽四重奏団とも共演している。
実際の演奏内容だが、今日久しぶりにこのLPを聴き返してみて、初めて聴いた時と同じような感想を持った。「悲愴的変奏曲」のほうは、(技術的な部分はほとんどをクリアしているが)ライヴ録音ということもあって演奏上の傷は若干散見される。しかし、6楽章を順に進むうちにそんなことは全く気にならなくなってしまって、むしろ演奏に内在する気迫のほうが勝ってくるような熱い演奏だ。ゴトコフスキーの音楽って、作曲家、演奏者、聴衆を全て巻き込んで疾走するような演奏になってしまえば、ほぼ100%勝ちであるわけで、まさにそんな演奏。
「サクソフォン協奏曲」…これも久しぶりに聴いたな。パーカッションも入って、トマジあたりの協奏曲にも匹敵する、3楽章構成の壮大な音楽。第2楽章での、冗長かとも思われるほどのドラマ性は、いかにもゴトコフスキー節という印象。1966年に作曲されて、1966年のパリ国立高等音楽院のサクソフォン科卒業試験課題曲となっている。マルセル・ミュールに献呈されたということなのだが、ミュール自身がこの曲を公式に演奏した可能性は低い。独奏のキャリアは、1958年に終えてしまっていたからだ。
聴いたのは本当に何年ぶりというくらいだが、似たような感想を持ってしまうということは、それだけ普遍的な力を持つ演奏なのではないだろうか…というのはこじつけ過ぎかな。
珍しや、「悲愴的変奏曲(1980)」のオーケストラ版と、「サクソフォン協奏曲(1966)」が収録されているレコード。BVHAASTという、現代音楽に強いことで有名なレーベルから出版されており(今も存在する出版社)、BVHAAST 066という品番が付与されている。「悲愴的変奏曲」のほうはライヴ録音。
サクソフォン独奏は、エド・ボガード Ed Bogaard氏。あまり有名な名前ではないが、あのアルノ・ボーンカンプ氏の師匠といえば驚かれる方もいるのではないだろうか。ライナーに書いてあった経歴をざっと訳してみたところ、以下のようになった。オランダ・サクソフォン界のパイオニア的存在と言えるだろう。
エド・ボガードは、1943年5月11日にオランダのWeespに生まれた。アムステルダム音楽院とユトレヒト音楽院に学び、彼はその2つの音楽院で一等賞を得て卒業した、初めてのサクソフォン奏者となった。ボガードは現在、アムステルダムのスヴェーリンク音楽院の教授であり、ベルギーのWalloon夏季アカデミーの講師も務めている。ボガードは、教育者としてのキャリアに加えて、国際的なソリストとしても活躍している。これまでに、イスラエル室内アンサンブル、フィルハーモニア・フンガリカ、コンセルトヘボウ管弦楽団、アルスター管弦楽団、ケルン放送交響楽団、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団、オランダ放送室内管弦楽団、ユトレヒト交響楽団、ロッテルダムフィル、デン・ハーグ交響楽団他、多数のオーケストラと共演している。同時代の作曲家とのコラボレーションも多く、作曲家のOtto Ketting、Tristan Keuris、Misha Mengelberg、Hans Kox、Leo Samama、Joep Straesser Walter Hekster、Willem Breuker他から、作品を献呈されている。1968年、ボガードはオランダサクソフォン四重奏団 Netherlands Saxophone Quartetを結成し、アルトサクソフォンを担当している。また、室内楽ではピアノのRonald Brautigamとデュオを結成し、演奏活動を行っている。ボガードはこれまでに、200を超える放送録音に参加しており、その中でGaudeamus弦楽四重奏団とも共演している。
実際の演奏内容だが、今日久しぶりにこのLPを聴き返してみて、初めて聴いた時と同じような感想を持った。「悲愴的変奏曲」のほうは、(技術的な部分はほとんどをクリアしているが)ライヴ録音ということもあって演奏上の傷は若干散見される。しかし、6楽章を順に進むうちにそんなことは全く気にならなくなってしまって、むしろ演奏に内在する気迫のほうが勝ってくるような熱い演奏だ。ゴトコフスキーの音楽って、作曲家、演奏者、聴衆を全て巻き込んで疾走するような演奏になってしまえば、ほぼ100%勝ちであるわけで、まさにそんな演奏。
「サクソフォン協奏曲」…これも久しぶりに聴いたな。パーカッションも入って、トマジあたりの協奏曲にも匹敵する、3楽章構成の壮大な音楽。第2楽章での、冗長かとも思われるほどのドラマ性は、いかにもゴトコフスキー節という印象。1966年に作曲されて、1966年のパリ国立高等音楽院のサクソフォン科卒業試験課題曲となっている。マルセル・ミュールに献呈されたということなのだが、ミュール自身がこの曲を公式に演奏した可能性は低い。独奏のキャリアは、1958年に終えてしまっていたからだ。
聴いたのは本当に何年ぶりというくらいだが、似たような感想を持ってしまうということは、それだけ普遍的な力を持つ演奏なのではないだろうか…というのはこじつけ過ぎかな。
2009/08/14
スカラムーシュのフルートオケ版 on YouTube
Orquestra de Flautas Francesa(フランス語で言うと、Orchestre de flutes françaiseとかになるのかな?)の伴奏で、スカラムーシュを演奏しているという動画を発見してしまった。しかも、それだけでない…独奏が、クロード・ドゥラングル Claude Delangle教授ではないですかー!驚き。
なんだかホームビデオで素人が撮ったような怪しい雰囲気で、正直メディアとして鑑賞に耐えるものかどうかと言われれば、ちょっと怪しいが、なかなか興味をそそられる動画ではある。まあでも、この曲の持つ雰囲気は、やはりサックス+ピアノ版でこそ最大限に表出するのかもなあと思っている。
ちょっと合わせづらそう…。外国で、フルートのオーケストラって珍しいですね。ん?そんなこともないか。演奏のデータとしては、2008年3月23日、パリのサル・コルトーでのライヴという但し書きがあった。
なんだかホームビデオで素人が撮ったような怪しい雰囲気で、正直メディアとして鑑賞に耐えるものかどうかと言われれば、ちょっと怪しいが、なかなか興味をそそられる動画ではある。まあでも、この曲の持つ雰囲気は、やはりサックス+ピアノ版でこそ最大限に表出するのかもなあと思っている。
ちょっと合わせづらそう…。外国で、フルートのオーケストラって珍しいですね。ん?そんなこともないか。演奏のデータとしては、2008年3月23日、パリのサル・コルトーでのライヴという但し書きがあった。
2009/08/13
Lev Mikhailov plays Glazounov
アレクサンドル・グラズノフの「協奏曲」も「四重奏曲」も、作曲家がロシア生まれでありながら、実際にロシアのプレイヤーに演奏されることは少ない。そもそも、ロシアのサクソフォン教育システム自体、グネーシン音楽大学にサクソフォン・クラスが設立されるまでは(教授はマルガリータ・シャポシュニコワ Margarita Shaposhnikova氏)、ほとんどなされていなかったわけで…。
ところが、レヴ・ミハイロフという奏者がグラズノフの「協奏曲」と「四重奏曲」を吹き込んだLPで、ずっと昔にオークションで落としたもの。5ドルくらいで落札したのだが、送料が20ドルかかるといわれてたまげたのも、いまとなっては昔の話&笑い話。正確には判らないのだが、出版が1977年と書いてあるので、おそらくそのころの録音である。
ミハイロフという人は、ロシアのサクソフォン吹き…というか、本職はクラリネット吹きであるそうだ。だからということでもなかろうが、太い素朴な音色で奏でられるグラズノフ「協奏曲」は、たとえばフランスや日本の奏者にはないタイプの演奏で、初めて聴いた時はたいへん新鮮に感じた。オーケストラのルバートっぷりも素晴らしくて、これぞまさにロシアのオーケストラではないか!さらに追い打ちをかけるような、パチノイズたっぷりのMelodiyaのプレス!笑。やっぱ本場は違うなあと(?)感じ入ったLP。
昔、柏原卓之氏編曲のグラズノフ「協奏曲」のバックを演奏したときに、参考演奏として配布したのがこのLPの音源だった。フランスのプレイヤーの演奏は、少々綺麗すぎてしまって、それはそれで好きなのだが、そこまで極めるならば、アントニオ・フェリペ氏くらい流麗な演奏を聴いてみたいし…。ロシアのサクソフォンの歴史の一端を担うこの録音、一度聴いてみて損はないと思う。
ところが、レヴ・ミハイロフという奏者がグラズノフの「協奏曲」と「四重奏曲」を吹き込んだLPで、ずっと昔にオークションで落としたもの。5ドルくらいで落札したのだが、送料が20ドルかかるといわれてたまげたのも、いまとなっては昔の話&笑い話。正確には判らないのだが、出版が1977年と書いてあるので、おそらくそのころの録音である。
ミハイロフという人は、ロシアのサクソフォン吹き…というか、本職はクラリネット吹きであるそうだ。だからということでもなかろうが、太い素朴な音色で奏でられるグラズノフ「協奏曲」は、たとえばフランスや日本の奏者にはないタイプの演奏で、初めて聴いた時はたいへん新鮮に感じた。オーケストラのルバートっぷりも素晴らしくて、これぞまさにロシアのオーケストラではないか!さらに追い打ちをかけるような、パチノイズたっぷりのMelodiyaのプレス!笑。やっぱ本場は違うなあと(?)感じ入ったLP。
昔、柏原卓之氏編曲のグラズノフ「協奏曲」のバックを演奏したときに、参考演奏として配布したのがこのLPの音源だった。フランスのプレイヤーの演奏は、少々綺麗すぎてしまって、それはそれで好きなのだが、そこまで極めるならば、アントニオ・フェリペ氏くらい流麗な演奏を聴いてみたいし…。ロシアのサクソフォンの歴史の一端を担うこの録音、一度聴いてみて損はないと思う。
2009/08/12
やや縮小気味?
今日から明日未明にかけて、ペルセウス座流星群!!
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東京に出てきて、演奏会を聴きに行く回数が増えるのかなあと思っていたのだが、案外そんなこともなくて、むしろやや減少傾向にあることに、自分でも驚いている。4月に始まりこのお盆の時期までに、今年はざっと8回(そのうちの二回は、同日中)、去年は12回。次聴きに行くのは、たぶんモルゴーア・カルテットのドルチェ・ライヴ、その次は大石将紀氏のOsmose Saxophone、というところだ。あとはまだ特に予定を入れていない。ああ、暮れのサックスフェスは行くと思うけれど…。
CDも買い控えているような感覚があるなあ。まあ、こちらは6月にノルディックサウンド広島で散財?したり、アメリカやフランスから買ったり、実はそんなに抑えていないのかもしれないが。実習やら何やらで、あちこち飛び回っていたせいもあるかもしれない。
まだ新入社員ということで、経済的にもう少し余裕が出るまで待ちたいなという理由が一番大きいのだが、手に入れやすいCDや、いつでも聴けるアーティストの演奏会について、以前と比べて少し冷静に考えられるようになったのかもなあ、という理由もある。
いつだかもブログに書いたが、こういったインターネット上での情報発信を行う限り、やはりマイノリティを追及してこそ意義があるというものなのではないか…!?かつては、サクソフォン界においてはマイナーだったことも、今ではかなり知られるようになったり、変化がおこりつつある。以前取り上げていた内容も、このブログでわざわざ取り上げる必要がなくなってきたものが多くあると感じている。
というわけで、やっぱりあまり知られていないことをどんどん掘りおこしていきたいですな。ただ、流れる情報は増える一方で、選定ならぬ剪定は、どんどん難しくなりそうだ。
こんな記事を書く前に、さっさと何かサックスの記事を書け、という声も聴こえてきそう(笑)。
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東京に出てきて、演奏会を聴きに行く回数が増えるのかなあと思っていたのだが、案外そんなこともなくて、むしろやや減少傾向にあることに、自分でも驚いている。4月に始まりこのお盆の時期までに、今年はざっと8回(そのうちの二回は、同日中)、去年は12回。次聴きに行くのは、たぶんモルゴーア・カルテットのドルチェ・ライヴ、その次は大石将紀氏のOsmose Saxophone、というところだ。あとはまだ特に予定を入れていない。ああ、暮れのサックスフェスは行くと思うけれど…。
CDも買い控えているような感覚があるなあ。まあ、こちらは6月にノルディックサウンド広島で散財?したり、アメリカやフランスから買ったり、実はそんなに抑えていないのかもしれないが。実習やら何やらで、あちこち飛び回っていたせいもあるかもしれない。
まだ新入社員ということで、経済的にもう少し余裕が出るまで待ちたいなという理由が一番大きいのだが、手に入れやすいCDや、いつでも聴けるアーティストの演奏会について、以前と比べて少し冷静に考えられるようになったのかもなあ、という理由もある。
いつだかもブログに書いたが、こういったインターネット上での情報発信を行う限り、やはりマイノリティを追及してこそ意義があるというものなのではないか…!?かつては、サクソフォン界においてはマイナーだったことも、今ではかなり知られるようになったり、変化がおこりつつある。以前取り上げていた内容も、このブログでわざわざ取り上げる必要がなくなってきたものが多くあると感じている。
というわけで、やっぱりあまり知られていないことをどんどん掘りおこしていきたいですな。ただ、流れる情報は増える一方で、選定ならぬ剪定は、どんどん難しくなりそうだ。
こんな記事を書く前に、さっさと何かサックスの記事を書け、という声も聴こえてきそう(笑)。
2009/08/11
Google Chromeについて思うこと
私の普段使いのウェブブラウザは、Google Chromeである。昨年の9月に発表されて以来、10月頃に一週間ほどFirefoxに戻ったこともあったが、やっぱりGoogle Chromeのほうがいいなと思い、ずっと使い続けている。
このブラウザが素晴らしい点はいくつかあるのだが、まずは何と言っても「速い」こと。「速い」という感覚は、ずっと同じブラウザを使い続けているとわからないものなのだが、こうして乗り換えてみると実感できるものだ。私はiGoogleをブラウザ起動時のホームページにしているのだが、そのページを開いただけでその体感的な差が生じる。WebKitによるHTMLのレンダリング速度に加えて、JavaScriptレンダリングのV8エンジンの速さが効いているのだろう。
起動が早いのもなお好感度高し。Windowsのクイック起動バーの1クリックで、数秒で立ち上がるのが嬉しい。これは、かつてのInternet ExplorerやFirefoxでは考えられなかったことで、パソコンつける→ブラウザ起動する、のシーケンスで、ストレスを感じなくなったのだ。
タブが最上段にあるインタフェースというのも、昔はあまりありがたみを感じなかったのだが、今ではかなり便利に感じている。横に広いフルHDのモニタを使用しているため、時々YouTubeのウィンドウを横にならべながらブログを書きたい、というように複数のウィンドウを開くことがあるのだが、マウスのドラッグ&ドロップでサクっとウィンドウを分けることができるのが嬉しい。
これだけ充実したブラウザにもかかわらず、発表当初、多くのユーザーがこのブラウザを試用しては、使うのをやめていった。やや癖のあるインタフェースや、HTMLレンダリングの互換性が問題であったのは確かなのだが、何よりもGoogle Chromeの初期バージョンにおける最大の問題点は、Adobe Flash Player利用時の不具合である。Flashプラグインが起動しているときに、プラグインがクラッシュすることが多かったのだ。そのため、当時のバージョンでYouTubeやニコニコ動画といった人気のコンテンツを使用するユーザは、ストレスを感じ、結果としてGoogle Chromeから離れてしまったということだ。初速を与えるべき段階で、このような大きな失敗があったことは確かなのだが、だが確かに少しずつGoogle Chromeのシェアは増加している。
ウェブのリッチコンテンツ化は進み、昔は大したこともないと思われていたウェブの閲覧が、それ相応のマシンパワーとブラウザを欲するような状況になっている。ウェブの世界はこれからどこに行くのか?という疑問に対して、すでに、進むための手段(ユーザが用意すべき環境)は明らかだ。この流れの中で、ブラウザはどうあるべきか。私自身は、やはりGoogle Chromeこそが、現在における最適解なのかなあと感じているのだ。
このブラウザが素晴らしい点はいくつかあるのだが、まずは何と言っても「速い」こと。「速い」という感覚は、ずっと同じブラウザを使い続けているとわからないものなのだが、こうして乗り換えてみると実感できるものだ。私はiGoogleをブラウザ起動時のホームページにしているのだが、そのページを開いただけでその体感的な差が生じる。WebKitによるHTMLのレンダリング速度に加えて、JavaScriptレンダリングのV8エンジンの速さが効いているのだろう。
起動が早いのもなお好感度高し。Windowsのクイック起動バーの1クリックで、数秒で立ち上がるのが嬉しい。これは、かつてのInternet ExplorerやFirefoxでは考えられなかったことで、パソコンつける→ブラウザ起動する、のシーケンスで、ストレスを感じなくなったのだ。
タブが最上段にあるインタフェースというのも、昔はあまりありがたみを感じなかったのだが、今ではかなり便利に感じている。横に広いフルHDのモニタを使用しているため、時々YouTubeのウィンドウを横にならべながらブログを書きたい、というように複数のウィンドウを開くことがあるのだが、マウスのドラッグ&ドロップでサクっとウィンドウを分けることができるのが嬉しい。
これだけ充実したブラウザにもかかわらず、発表当初、多くのユーザーがこのブラウザを試用しては、使うのをやめていった。やや癖のあるインタフェースや、HTMLレンダリングの互換性が問題であったのは確かなのだが、何よりもGoogle Chromeの初期バージョンにおける最大の問題点は、Adobe Flash Player利用時の不具合である。Flashプラグインが起動しているときに、プラグインがクラッシュすることが多かったのだ。そのため、当時のバージョンでYouTubeやニコニコ動画といった人気のコンテンツを使用するユーザは、ストレスを感じ、結果としてGoogle Chromeから離れてしまったということだ。初速を与えるべき段階で、このような大きな失敗があったことは確かなのだが、だが確かに少しずつGoogle Chromeのシェアは増加している。
ウェブのリッチコンテンツ化は進み、昔は大したこともないと思われていたウェブの閲覧が、それ相応のマシンパワーとブラウザを欲するような状況になっている。ウェブの世界はこれからどこに行くのか?という疑問に対して、すでに、進むための手段(ユーザが用意すべき環境)は明らかだ。この流れの中で、ブラウザはどうあるべきか。私自身は、やはりGoogle Chromeこそが、現在における最適解なのかなあと感じているのだ。
蒲池愛「Moment to moment」 on YouTube
大変なつかしい演奏をみつけた。今年の3月1日に、洗足前田ホールで開かれた「現代の音楽展」。そこで演奏された、蒲池愛「Moment to moment」の抜粋映像が、YouTubeにアップロードされていた。つまりあれだ、この客席で私は聴いているのだ。ロビーで演奏されたのだが、よく響く空間が、曲想にマッチしていると感じる。
サックスは斎藤貴志氏で、エレクトロニクスの操作はNAGIE氏と蒲池氏。感想は聴きに行った時に書いたが、いまこうして改めて聴いてみると、ライヴ・エレクトロニクスならではの作品だなあと思う。実に素敵な作品だ。
使用されているプロセッションの技法が字幕で出てくるため、なるほどー、この音はこうやって生成されていたのかーと思いながら、大変興味深くこのムービーを観た。全編観てみたいなあ。
サックスは斎藤貴志氏で、エレクトロニクスの操作はNAGIE氏と蒲池氏。感想は聴きに行った時に書いたが、いまこうして改めて聴いてみると、ライヴ・エレクトロニクスならではの作品だなあと思う。実に素敵な作品だ。
使用されているプロセッションの技法が字幕で出てくるため、なるほどー、この音はこうやって生成されていたのかーと思いながら、大変興味深くこのムービーを観た。全編観てみたいなあ。
2009/08/10
新井靖志"Fantasia"
先の記事でちらっと話題にしたジョセフ=エクトル・フィオッコの「協奏曲」というと、やっぱり第一に思い浮かぶのがこの新井靖志さんのアルバム「Fantasia(Meister Music MM-1091)」なのである。私の世代(このCDが発売されたころに、高校生だった)のアマチュアのテナーサックス吹きって、たいていこのアルバムを持っているんじゃないだろうか。CD自体は東京に置いてあるのだが、幸いポータブルプレーヤーに入れたまま持ってきていたので、聴いてみた。
H.ヴィラ=ロボス - Fantasia ファンタジア
J.H.フィオッコ - Concerto 協奏曲
F.プーランク - Sonate ソナタ
A.グラズノフ - Chant du Menestrel 吟遊詩人の歌
R.クレリス - Serenade Variee セレナード・ヴァリエ
M.ブルッフ - Kol Nidrei コル・ニドライ
R.シューマン - Adagio und Allegro アダージョとアレグロ
…聴くんじゃなかった。
高校生のころにフィオッコをこっそりさらって、ああ、難しいなあ、吹けないなあなどと思っていたのが、ようやく最近再びさらい始めて、「あ、いま吹いてみると、意外と良い感じかも?」と思っていた、その幻想を打ち砕くのに、十分過ぎる程であった。
想像を絶するほどに、軽やか。テナーサックスって鍵盤楽器だっけ?という錯覚に陥ってしまうほどだ。サイドキーも低いシドレミもなんのその。音の一粒一粒がはっきりと目立って、あいまいな部分がまったくない。高校生のころは、どちらかというと派手な須川展也さんや、田中靖人さんのアルバムなどを好きこのんで聴いていたもので、このアルバムの真の凄さに気づくのにはまだ早かったということか。
それまで、どれだけテナーサックスをやっているかで、このアルバムの凄さに対する認識が変わってくるかもしれない。まあ、それを抜きにしても素晴らしいCDであることに間違いはないのだが…。このCDについては、Thunderさんによるとびきりのレビューもぜひご覧ください。
小柳さんのピアノも、EMIでの須川さんとの共演盤と比べると、かなりはっきりと音像が捉えられていて、素晴らしい。ワンポイント録音、かくあるべき!
H.ヴィラ=ロボス - Fantasia ファンタジア
J.H.フィオッコ - Concerto 協奏曲
F.プーランク - Sonate ソナタ
A.グラズノフ - Chant du Menestrel 吟遊詩人の歌
R.クレリス - Serenade Variee セレナード・ヴァリエ
M.ブルッフ - Kol Nidrei コル・ニドライ
R.シューマン - Adagio und Allegro アダージョとアレグロ
…聴くんじゃなかった。
高校生のころにフィオッコをこっそりさらって、ああ、難しいなあ、吹けないなあなどと思っていたのが、ようやく最近再びさらい始めて、「あ、いま吹いてみると、意外と良い感じかも?」と思っていた、その幻想を打ち砕くのに、十分過ぎる程であった。
想像を絶するほどに、軽やか。テナーサックスって鍵盤楽器だっけ?という錯覚に陥ってしまうほどだ。サイドキーも低いシドレミもなんのその。音の一粒一粒がはっきりと目立って、あいまいな部分がまったくない。高校生のころは、どちらかというと派手な須川展也さんや、田中靖人さんのアルバムなどを好きこのんで聴いていたもので、このアルバムの真の凄さに気づくのにはまだ早かったということか。
それまで、どれだけテナーサックスをやっているかで、このアルバムの凄さに対する認識が変わってくるかもしれない。まあ、それを抜きにしても素晴らしいCDであることに間違いはないのだが…。このCDについては、Thunderさんによるとびきりのレビューもぜひご覧ください。
小柳さんのピアノも、EMIでの須川さんとの共演盤と比べると、かなりはっきりと音像が捉えられていて、素晴らしい。ワンポイント録音、かくあるべき!
2009/08/09
意外と難しかったり…
合わせてみるとテリー・ライリーの「Tread on the Trail」って、実はかなり難しい。たとえば、平野公崇さんのアルバム「Millennium」に収録されているような覇気あふれる演奏は、もともとかなり洗練された技術を持った状態でやってこそ、実現可能なものなのだということを再認識した。ちょっとリズムをさらいなおさないとなあ…
ちらっとだが、J.H.フィオッコの「コンチェルト」をテナーサックスでさらってみている。バロック時代の、小さいながらも洗練された工芸品のような曲で、単純な曲だけれど吹くごとに充実感を感じる。テナーサックス吹きならば、さらっと吹けるようにしておきたい。と、こんなことを書きながら新井靖志さんの「ファンタジア(Meister Music)」を聴くと、意気消沈してしまうんだけど。
----------
(追記)
ところで、フィオッコの「協奏曲」って、特に第1楽章が「フィオッコのアレグロ」として、弦楽器の世界では広く愛奏されているらしい。「G線上のアリア(管弦楽組曲第三番)」とか、バーバーの「アダージョ(弦楽四重奏曲)」みたいなもんかな。そういえば、ラッシャーもまさに「フィオッコのアレグロ」」だけをアルトサクソフォンで演奏しているのだった。
ちらっとだが、J.H.フィオッコの「コンチェルト」をテナーサックスでさらってみている。バロック時代の、小さいながらも洗練された工芸品のような曲で、単純な曲だけれど吹くごとに充実感を感じる。テナーサックス吹きならば、さらっと吹けるようにしておきたい。と、こんなことを書きながら新井靖志さんの「ファンタジア(Meister Music)」を聴くと、意気消沈してしまうんだけど。
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(追記)
ところで、フィオッコの「協奏曲」って、特に第1楽章が「フィオッコのアレグロ」として、弦楽器の世界では広く愛奏されているらしい。「G線上のアリア(管弦楽組曲第三番)」とか、バーバーの「アダージョ(弦楽四重奏曲)」みたいなもんかな。そういえば、ラッシャーもまさに「フィオッコのアレグロ」」だけをアルトサクソフォンで演奏しているのだった。
2009/08/08
Musik'it Saxophone Vol.1
セルマーのウェブページで見つけて、なんなんだろうなーと思い、試しに買ってみたもの。到着し、しっかりと中身を確認してようやく判ったのだが、Musik'it Œuvres Pédagogiques - Saxophone alto et piano "Teaching aids for Alto Saxophone works and piano"という、サクソフォン初学者(1年目~4/5年目)のための、参考演奏とプレイアロングトラックを収めたものだ。演奏は、サクソフォンがヴァンサン・ダヴィッド Vincent David氏で、ピアノがAline Bartissolという方なのだそうだ。ピアノの方の名前は良く知らないが、とりあえずサックスに関してはなんと豪華な…。
基本的にデータDVDであり、パソコンにDVDを投入すると専用のソフトウェア(CristalBox Player)が立ち上がって、収録されたトラックを再生できるという感じ。一つのトラックにつき、参考演奏、サクソフォンの音量を小さくした演奏、ピアノのみの演奏の、3種類が収められている。もちろん、ピアノのチューニング音(A, Bb, F)も…。収録されている演奏は実に精緻なもので、ただしこういった小品を完全にノン・ヴィブラートで演奏されると、ちょっと違和感もあるな、という感じ。ただ、ヴィブラートに頼らないフレーズの作り方は、大いに学ぶべきものかもしれない。
こんなの、どっかで見たことあるなあと思ったら、クロード・ドゥラングル教授が吹き込んだ「Jardin Secret(Vandoren V002)」も同じような感じの教育目的のCDなのだった。この「musik'it」はDVDとなることで、収録時間をかなり増やすことができているのだろう。なんと、7時間分(!)のトラックが収められているとのこと。
収録曲は、次の通り。
Jean Absil - Cinq pièces
Christophe Alary - Au cinéma muet
André Ameller - Baie Comeau
Félix Antonini - Divertissement tzigane
Jean Avignon - Danse exotique
Jean Avignon - Spiritual
René Berthelot - En berçant l'ourson
Marc Berthomieu - Suite brève
Marc Berthomieu - Volubilis
Lucien Blin - Gentiment
Jean Bouvard - Bagatelle
Jean Bouvard - Chant élégiaque et final
Eugène Bozza - Le campanile
Eugène Bozza - Rèves d'enfant
Eugène Bozza - Menuet des pages
Eugène Bozza - Parade des petits soldats
Eugène Bozza - Chanson à berser
Eugène Bozza - Gavotte des damoiselles
Alain Crepin - Céline Mandarine
Jean Michel Damase - Vacances
Jean Michel Damase - Azur
Francis Paul Demillac - Sicilienne et Tarentelle
Andé Jean Dervaux - Petite suite en saxe
Pierre Max Dubois - Olga valse
Pierre Max Dubois - Mini Romances
Jacques Ibert - Histoires
Jacques Ibert - L'âge d'or
Charles Jay - Aria
Charles Jay - Scherzetto
Claude Henry Joubert - Chanson de Thibault
Gilles Martin - La danse du sax
Michel Meriot - Grisaille
Michel Meriot - Comme un dimanche
Michel Meriot - Solitude
Michel Meriot - A l'ombre du micocoulier
Michel Meriot - Campanule
Jérôme Naulais - Coconotes
Jérôme Naulais - Petit suite latine
Jérôme Naulais - Kansax City
Robert Planel - Suite romantique
Henri Tomasi - Chant corse
おお、書きならべてみるとけっこう多いな。よく聴いたことのあるダマーズの「ヴァカンス」や、プラネルの「ロマンティック組曲」などのおなじみのものに加え、名前すら聞いたことのない作曲家も名を連ねる。これらの作曲家は、サクソフォン初学の段階において、フランスではおなじみなのだろうか。そもそも日本で知られていないだけかもしれない。あちらでは、サクソフォンの専門教育がかなり早い段階から始まるというし…。それにしても、Gilles Martinが曲を書いているとは知らなかった!
さて、このDVDにはおまけムービーの特典があって、これが実に面白いのだ!なんと、セルマー・サックスの出来上がる工程を、4分半ほどの短いムービーで見せるというもの。バリトンサックス・ソロのかっこいいジャズBGMに乗って、あれよあれよという間にサクソフォンが組み立てられていく。そういえば、サックスの製造工程なんて、いままできちんと観たことないぞ…!うおおお、セルマー・サックスに特徴的なネックの青字のSマークって、、こうやってつけているのか!みたいな。はっきり言って、こっちのほうがメインのほうより面白かったような…笑。このムービーだけで、DVDを買う価値はあるかもしれない。
基本的にデータDVDであり、パソコンにDVDを投入すると専用のソフトウェア(CristalBox Player)が立ち上がって、収録されたトラックを再生できるという感じ。一つのトラックにつき、参考演奏、サクソフォンの音量を小さくした演奏、ピアノのみの演奏の、3種類が収められている。もちろん、ピアノのチューニング音(A, Bb, F)も…。収録されている演奏は実に精緻なもので、ただしこういった小品を完全にノン・ヴィブラートで演奏されると、ちょっと違和感もあるな、という感じ。ただ、ヴィブラートに頼らないフレーズの作り方は、大いに学ぶべきものかもしれない。
こんなの、どっかで見たことあるなあと思ったら、クロード・ドゥラングル教授が吹き込んだ「Jardin Secret(Vandoren V002)」も同じような感じの教育目的のCDなのだった。この「musik'it」はDVDとなることで、収録時間をかなり増やすことができているのだろう。なんと、7時間分(!)のトラックが収められているとのこと。
収録曲は、次の通り。
Jean Absil - Cinq pièces
Christophe Alary - Au cinéma muet
André Ameller - Baie Comeau
Félix Antonini - Divertissement tzigane
Jean Avignon - Danse exotique
Jean Avignon - Spiritual
René Berthelot - En berçant l'ourson
Marc Berthomieu - Suite brève
Marc Berthomieu - Volubilis
Lucien Blin - Gentiment
Jean Bouvard - Bagatelle
Jean Bouvard - Chant élégiaque et final
Eugène Bozza - Le campanile
Eugène Bozza - Rèves d'enfant
Eugène Bozza - Menuet des pages
Eugène Bozza - Parade des petits soldats
Eugène Bozza - Chanson à berser
Eugène Bozza - Gavotte des damoiselles
Alain Crepin - Céline Mandarine
Jean Michel Damase - Vacances
Jean Michel Damase - Azur
Francis Paul Demillac - Sicilienne et Tarentelle
Andé Jean Dervaux - Petite suite en saxe
Pierre Max Dubois - Olga valse
Pierre Max Dubois - Mini Romances
Jacques Ibert - Histoires
Jacques Ibert - L'âge d'or
Charles Jay - Aria
Charles Jay - Scherzetto
Claude Henry Joubert - Chanson de Thibault
Gilles Martin - La danse du sax
Michel Meriot - Grisaille
Michel Meriot - Comme un dimanche
Michel Meriot - Solitude
Michel Meriot - A l'ombre du micocoulier
Michel Meriot - Campanule
Jérôme Naulais - Coconotes
Jérôme Naulais - Petit suite latine
Jérôme Naulais - Kansax City
Robert Planel - Suite romantique
Henri Tomasi - Chant corse
おお、書きならべてみるとけっこう多いな。よく聴いたことのあるダマーズの「ヴァカンス」や、プラネルの「ロマンティック組曲」などのおなじみのものに加え、名前すら聞いたことのない作曲家も名を連ねる。これらの作曲家は、サクソフォン初学の段階において、フランスではおなじみなのだろうか。そもそも日本で知られていないだけかもしれない。あちらでは、サクソフォンの専門教育がかなり早い段階から始まるというし…。それにしても、Gilles Martinが曲を書いているとは知らなかった!
さて、このDVDにはおまけムービーの特典があって、これが実に面白いのだ!なんと、セルマー・サックスの出来上がる工程を、4分半ほどの短いムービーで見せるというもの。バリトンサックス・ソロのかっこいいジャズBGMに乗って、あれよあれよという間にサクソフォンが組み立てられていく。そういえば、サックスの製造工程なんて、いままできちんと観たことないぞ…!うおおお、セルマー・サックスに特徴的なネックの青字のSマークって、、こうやってつけているのか!みたいな。はっきり言って、こっちのほうがメインのほうより面白かったような…笑。このムービーだけで、DVDを買う価値はあるかもしれない。
2009/08/06
Nikita Zimin plays Denisov on YouTube
第4回アドルフ・サックス国際コンクールで第1位を獲得したセルゲイ・コレゾフ Sergey Kolesovさんと同門の、ニキータ・ツィミン Nikita Ziminさんが、エディソン・デニゾフ「ソナタ」を演奏している動画。こういった「現代的な」作品で、大きなスケールを表現できる奏者というのは、実に珍しいと思う。
ツィミン氏の師匠である、マルガリータ・シャポシュニコワ Margarita Shaposhnikovaによるロシアのサクソフォン教育、気になるなあ。
・第1楽章、第2楽章
・第3楽章
ツィミン氏の師匠である、マルガリータ・シャポシュニコワ Margarita Shaposhnikovaによるロシアのサクソフォン教育、気になるなあ。
・第1楽章、第2楽章
・第3楽章
2009/08/04
J.Petit plays on Trio Klezele
フランス留学中のモンマミチコさんに、フランスのサクソフォン奏者であるジュリアン・プティ Julien Petit氏がクレツマー音楽のトリオ"Trio Klezele"で吹いているYouTube上の動画を教えていただいた。ソプラノ・サクソフォン、アコーディオン、バスというトリオで、もう目も回るような超絶技巧の嵐。やっぱプティ氏はうまい…!
ジュリアン・プティ氏は、フランスのサクソフォン奏者の中でも、際立って面白い活動を展開しているとプレイヤーだと思う。シュトックハウゼンとのコラボレーション、Quatuor Carre meleでの活動、ピアノとのデュオによる活動…等々。
CDがいくつかリリースされているのだが、シュトックハウゼン作品集を除く他のソロCDや四重奏CDは、入手困難であるために未だ聴く機会は訪れない。以前プティ氏に「CDを探しています」というような内容でメールしたとき、送ってあげるよと言われたきり、忘れられているようだ(苦笑)。
ジュリアン・プティ氏は、フランスのサクソフォン奏者の中でも、際立って面白い活動を展開しているとプレイヤーだと思う。シュトックハウゼンとのコラボレーション、Quatuor Carre meleでの活動、ピアノとのデュオによる活動…等々。
CDがいくつかリリースされているのだが、シュトックハウゼン作品集を除く他のソロCDや四重奏CDは、入手困難であるために未だ聴く機会は訪れない。以前プティ氏に「CDを探しています」というような内容でメールしたとき、送ってあげるよと言われたきり、忘れられているようだ(苦笑)。
2009/08/03
Kees van Unen "JOUNK"
2006年だったか2007年だったか、オランダのサクソフォン奏者、ハンス・ド・ヨング Hans de Jong氏が来日した際に世界初演を行った曲。キース・ファン・ウネン Kees van Unen氏が作曲した、アルト・サクソフォンとテープのための作品である。昨年度の末にウネン氏からデモCDを送ってもらって以来、ときどき聴いている。
ジャズ風の独奏プレリュードから始まり、様々な技巧を披露するサクソフォンと、華やかなエレクトロニクスサウンドの絡みが面白く聴ける。テープのパートは、キラキラしたシンセサイザーのサウンドと、群衆のざわめきのようなミュージック・コンクレートが融合されたもので、こういう作品にしては珍しく(?)グロテスクな部分がまったくない。最終部分も、とても美しいまま終わるし…。
美しいことは美しいのだが、そのかわりに、様々な音世界を駆け巡るようなスリルや、エレクトロニクスならではのダイナミックさに欠ける部分があり、全体的にもうちょっと幅の広いサウンドを聴きたかったかな、と思う部分もある。
ジャズ風の独奏プレリュードから始まり、様々な技巧を披露するサクソフォンと、華やかなエレクトロニクスサウンドの絡みが面白く聴ける。テープのパートは、キラキラしたシンセサイザーのサウンドと、群衆のざわめきのようなミュージック・コンクレートが融合されたもので、こういう作品にしては珍しく(?)グロテスクな部分がまったくない。最終部分も、とても美しいまま終わるし…。
美しいことは美しいのだが、そのかわりに、様々な音世界を駆け巡るようなスリルや、エレクトロニクスならではのダイナミックさに欠ける部分があり、全体的にもうちょっと幅の広いサウンドを聴きたかったかな、と思う部分もある。
2009/08/02
Styliani "Remembering Sigurd Rascher"
スティリアニ Styliani氏はギリシャに生まれ、アメリカでサクソフォンを学んだラッシャー派に属する女性奏者。必要があって一年ほど前に「Remembering Sigurd Rascher(Wisteria Records WP-77957)」というCDを買い、その名前を知った。ラッシャー派のなかではかなり高名なプレイヤーのはずで、プレイヤーとしての活躍のみならず、教育者としても活躍しているようだ。
2001年にレコーディングされた「Remembering Sigurd Rascher」のプログラムは、以下。そう、笹森建英先生の、「"荒城の月"変奏曲」がレコーディングされたアルバムなのだ!去年、サクソフォーン協会誌に投稿した記事「サクソフォン奏者:シガード・ラッシャーとその周辺の作品」を書くに先立って、どうしても聴いておきたくて買ったというわけ。
Darius Milhaud - Scaramouche
Warren Benson - Aeolian Song
Alois Haba - Suite, op.99
Henry Cowell - Air and Scherzo
Erwin Dressel - Partita
笹森建英 - 「"荒城の月"の主題による変奏曲」
William Grant Still - Romance
Francois Schubert - L'abeille
arr. Glaser&Rascher - Carnival of Venice
ラッシャー派にとって重要なレパートリーが演奏されており、たとえばベンソン、ハーバー、カウエルなどは、シガード・ラッシャー自身による録音も残されている。ミヨー(フランス風の解釈とは一線を画すスタイルで、面白い)から始まり、無伴奏の後に響くカウエル作品の響き、そして驚異的なアルティシモに驚かされる。マルタンの冒頭部分を聴いた時にも思うのだが、まるで暗闇に射す一筋の光のようだ。続くスケルツォも、遊び心があって楽しい。
全体的な演奏の傾向として、ラッシャーの演奏に比べてフラジオ音域のコントロールを始めとしてテクニック的には劣る部分があるものの表現のアグレッシヴさが目立つ。音色の変化も大きく、演奏を聴いただけではものすごくガタイの良い男性がバリバリ吹いているイメージ(なんじゃそりゃ)が想起されるのだが、ちょっと意外という感じか。
「"荒城の月"変奏曲」については、笹森先生はLawrence Gwozdzという奏者のCDを聴いたことがあるそうで、このCDを送ったところ「スティリアニ氏の演奏のほうが、Gwozdz氏の演奏よりも表情が豊かについており、良いと感じた」と感想をおっしゃっていた。
それから、やはりシューベルトにおけるブレスコントロールはものすごいですな。そもそも息を使う量が、「普通の」サクソフォン吹きとはまったく違うのだ。
2001年にレコーディングされた「Remembering Sigurd Rascher」のプログラムは、以下。そう、笹森建英先生の、「"荒城の月"変奏曲」がレコーディングされたアルバムなのだ!去年、サクソフォーン協会誌に投稿した記事「サクソフォン奏者:シガード・ラッシャーとその周辺の作品」を書くに先立って、どうしても聴いておきたくて買ったというわけ。
Darius Milhaud - Scaramouche
Warren Benson - Aeolian Song
Alois Haba - Suite, op.99
Henry Cowell - Air and Scherzo
Erwin Dressel - Partita
笹森建英 - 「"荒城の月"の主題による変奏曲」
William Grant Still - Romance
Francois Schubert - L'abeille
arr. Glaser&Rascher - Carnival of Venice
ラッシャー派にとって重要なレパートリーが演奏されており、たとえばベンソン、ハーバー、カウエルなどは、シガード・ラッシャー自身による録音も残されている。ミヨー(フランス風の解釈とは一線を画すスタイルで、面白い)から始まり、無伴奏の後に響くカウエル作品の響き、そして驚異的なアルティシモに驚かされる。マルタンの冒頭部分を聴いた時にも思うのだが、まるで暗闇に射す一筋の光のようだ。続くスケルツォも、遊び心があって楽しい。
全体的な演奏の傾向として、ラッシャーの演奏に比べてフラジオ音域のコントロールを始めとしてテクニック的には劣る部分があるものの表現のアグレッシヴさが目立つ。音色の変化も大きく、演奏を聴いただけではものすごくガタイの良い男性がバリバリ吹いているイメージ(なんじゃそりゃ)が想起されるのだが、ちょっと意外という感じか。
「"荒城の月"変奏曲」については、笹森先生はLawrence Gwozdzという奏者のCDを聴いたことがあるそうで、このCDを送ったところ「スティリアニ氏の演奏のほうが、Gwozdz氏の演奏よりも表情が豊かについており、良いと感じた」と感想をおっしゃっていた。
それから、やはりシューベルトにおけるブレスコントロールはものすごいですな。そもそも息を使う量が、「普通の」サクソフォン吹きとはまったく違うのだ。
2009/08/01
武生国際音楽祭2009の情報
京青さんから教えていただいた情報。武生国際音楽祭は高名な作曲家である細川俊夫氏プロデュースの音楽祭で、テーマは「ロシアの音楽」。ロシア、というわりには、実際の内容はかなり雑多なものであるが、以下のリンクから辿ることのできるページを見ていただきたい。非常に興味深いプログラムが並んでいる。
http://takefu.typepad.jp/web/
で、今年の武生国際音楽祭、サクソフォン的興味で重要な出来事が。なんと、クロード・ドゥラングル教授が来日&出演するそうだ!!驚き!!確かに細川俊夫氏とドゥラングル教授は親交が深いと聞くが、こういった形での来日があるとは思わなかった。そういえば、最近の来日はドゥラングル教授と日本の音楽家の友情によるものが多いですね。2007年の「Quest」は野平一郎氏の招聘だし、2009年初頭の昭和音楽大学招聘は武藤賢一郎氏によるものだし。
オマケに、オディール・ドゥラングル女史とともに来日するそうだ!おおお!とりあえず、サックス関連のプログラムだけ抜き出して掲載しておく。
【クロード・ドゥラングル サクソフォン・リサイタル】
出演:クロード・ドゥラングル(sax)、オディール=カトラン・ドゥラングル(pf)、葛西友子(perc)
日時:8月19日(水)19:30
曲目:
C.ドビュッシー「ラプソディー」
E.デニソフ「ソナタ」
L.ベリオ「セクエンツァVIIb」
夏田昌和「西、あるいは秋の夕暮れの歌」
M.ラヴェル「亡き王女のためのパヴァ―ヌ」
A.ピアソラ「タンゴ・エチュード」
【細川俊夫と仲間たち】
出演:青木涼子(能謡・能舞)、田部井辰雄(guit)、クロード・ドゥラングル(sax)、平松英子(sop)、リューディガー・ボーン(指揮)、ネクスト・マッシュルーム・プロモーション
日時:8月22日(土)17:30
曲目:
細川俊夫「日本民謡集 より 黒田節、五木の子守唄 (2003) (voice & guit)」
細川俊夫「3つの愛の歌 (2005) (voice & sax)」
伊藤弘之「新作(武生国際音楽祭委嘱作品) (2009) (fl, ob, cl, perc, vn, vla, vc, pf)」
イザベル・ムンドリー「Balancen (2006) (vn solo)、Liaison (2008)(cl, vn, vc, pf)、Sandschleifen (2003/2006) (vn, vla, vc, pf, perc)」
【「新しい地平IV」作曲賞入選作と名作】
出演:ネクスト・マッシュルーム・プロモーション(ensemble)、リューディガー・ボーン(cond)、夏田昌和(cond)、クラウス・シェップ(fl)、クロード・ドゥラングル(sax)、宮田まゆみ(笙)、山本純子(pf)、塚越慎子(marimba)、青木涼子(謡)、石川星太郎(cond/pf)、ほか
日時:8月25日(火) 17:00
曲目:
作曲賞入選作3曲(ソロまたはデュオ)
夏田昌和「Layerd Song from Long Ago (cl, sax, vla, vc, vib) (2008) 」
西村朗「無伴奏のヴィオラソナタ第2番「C線のマントラ」(2007) 」
ジェラール・グリゼイ「Talea (fl, cl, vn, vc, pf) (1986)」
http://takefu.typepad.jp/web/
で、今年の武生国際音楽祭、サクソフォン的興味で重要な出来事が。なんと、クロード・ドゥラングル教授が来日&出演するそうだ!!驚き!!確かに細川俊夫氏とドゥラングル教授は親交が深いと聞くが、こういった形での来日があるとは思わなかった。そういえば、最近の来日はドゥラングル教授と日本の音楽家の友情によるものが多いですね。2007年の「Quest」は野平一郎氏の招聘だし、2009年初頭の昭和音楽大学招聘は武藤賢一郎氏によるものだし。
オマケに、オディール・ドゥラングル女史とともに来日するそうだ!おおお!とりあえず、サックス関連のプログラムだけ抜き出して掲載しておく。
【クロード・ドゥラングル サクソフォン・リサイタル】
出演:クロード・ドゥラングル(sax)、オディール=カトラン・ドゥラングル(pf)、葛西友子(perc)
日時:8月19日(水)19:30
曲目:
C.ドビュッシー「ラプソディー」
E.デニソフ「ソナタ」
L.ベリオ「セクエンツァVIIb」
夏田昌和「西、あるいは秋の夕暮れの歌」
M.ラヴェル「亡き王女のためのパヴァ―ヌ」
A.ピアソラ「タンゴ・エチュード」
【細川俊夫と仲間たち】
出演:青木涼子(能謡・能舞)、田部井辰雄(guit)、クロード・ドゥラングル(sax)、平松英子(sop)、リューディガー・ボーン(指揮)、ネクスト・マッシュルーム・プロモーション
日時:8月22日(土)17:30
曲目:
細川俊夫「日本民謡集 より 黒田節、五木の子守唄 (2003) (voice & guit)」
細川俊夫「3つの愛の歌 (2005) (voice & sax)」
伊藤弘之「新作(武生国際音楽祭委嘱作品) (2009) (fl, ob, cl, perc, vn, vla, vc, pf)」
イザベル・ムンドリー「Balancen (2006) (vn solo)、Liaison (2008)(cl, vn, vc, pf)、Sandschleifen (2003/2006) (vn, vla, vc, pf, perc)」
【「新しい地平IV」作曲賞入選作と名作】
出演:ネクスト・マッシュルーム・プロモーション(ensemble)、リューディガー・ボーン(cond)、夏田昌和(cond)、クラウス・シェップ(fl)、クロード・ドゥラングル(sax)、宮田まゆみ(笙)、山本純子(pf)、塚越慎子(marimba)、青木涼子(謡)、石川星太郎(cond/pf)、ほか
日時:8月25日(火) 17:00
曲目:
作曲賞入選作3曲(ソロまたはデュオ)
夏田昌和「Layerd Song from Long Ago (cl, sax, vla, vc, vib) (2008) 」
西村朗「無伴奏のヴィオラソナタ第2番「C線のマントラ」(2007) 」
ジェラール・グリゼイ「Talea (fl, cl, vn, vc, pf) (1986)」