前回の記事の続き。
今日ご紹介するのは、1988年の来日時に行われたインタビュー。バンドジャーナル誌上に掲載されたもので、インタビュアーは斉藤広樹氏(デファイエ氏門下で、1982年にパリ国立音楽院を一等賞で卒業)である。こちらのインタビューも、なかなか面白いことが書かれていたので、いくつか抜粋して紹介したい。
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斉藤広樹:今年いっぱいでパリ音楽院を退任なさったわけですが、その間、先生ご自身がお持ちになられていた方針や理念のようなものがあればおきかせください。
デファイエ:二十一年間パリ音楽院の教授を務めましたが、私はサクソフォーンの音楽に変革をもたらすことは考えませんでした。巨匠ミュールによって創始されたばかりの伝統的なフランス・サクソフォーンの継承を中心に考えてきました。
現在でもごく一般的に言われている「ミュールの教えを守った」「伝統を継承した」という批評と、まったく同じことが本人の口から語られている。
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斉藤広樹:ところで、今までの演奏活動やレコードについてお話し下さい。まずは印象深かったコンサートについて。
デファイエ:(中略)…最も満足のいくコンサートの一つとして、コンセルトヘボウ・オーケストラとのイベール(コンチェルティーノ・ダ・カメラ)の共演があります。あれほど音楽的で完成されたオーケストラと共演する機会はなかなかありません。
そんな演奏があったのか!デファイエ氏自身が、そこまで満足したというそのイベール、聴いてみたかったなあ。もし、千に一つ、いや万に一つの可能性でも、世界のどこかに録音が残っていればぜひ聴いてみたい。
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斉藤広樹:それでは、これまでになさった録音についておうかがいします。まずピアノとの二重奏やコンチェルトから。
デファイエ:(中略)…印象深いものとしては、アメリカで録音したリュエフの「ソナタ」やブートリーの「ディヴェルティメント」などのレコードがあります。コンチェルトでは約三十年ほど前のものですが、フルネ指揮コンセールラムルーとのイベールは印象に残っています。当時のラムルーはクラリネットにランスロ、フルートにカラジェ、オーボエにピエルロ、バソンにアラールという、フランスが誇る木管の最高峰の面々でした。明るく色彩感あふれるオーケストラで、お互いに感動しながらの録音でした。
やはり一番最初に出てくるのはCrest盤、しかもリュエフとブートリーの名前が挙がっている!誰が聴いても、とんでもない演奏だもんなあ。そして、コンセールラムルーのイベール。ソロ、オケともに引き締まった素晴らしい演奏だが、まさかオーケストラにそんなプレイヤーが乗っていたとは、知らなかった。上手いわけだ。
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(番外編)
あとがき:その後、四重奏のメンバーとの雑談の中で、日本のアルモ・サクソフォーン・アンサンブルについての話が出ました。アルモ・サクソフォーン・アンサンブルの演奏にいたく感動なさった四重奏の先生方は、彼らがどういう教育を受けてきたか、また彼らの音楽性や奏法を広く浸透させる場と機会はあるのかなどを質問され、大変関心を持ってらっしゃったことを付け加えます。
へー!デファイエ四重奏団の面々をもうならせる演奏とは、果たしてどういうものだったのか。デファイエとは直接関係ないが、気になるなあ。
アルモはこの時、コングレスのオープニングで(初日のプログラム一番)、ドビュッシーのベルガマスク組曲を演奏しています。
返信削除デファイエQの皆さんは、おそらくこれを聴かれたのでしょう。
この時点ではテナーは前任者の針生さんでしたが、演奏は現行のCDで聴けるのと同じような趣あるものでした。
コングレスというと、その時代の最新の現代音楽を披露する場というイメージがあるだけに、そういう場で敢えて伝統的なフランス音楽を新しい感性で再現した演奏を聴き、強い印象を受けたのであろうことは想像に難くありません。
> Thunderさん
返信削除貴重なお話ありがとうございます。ベルガマスク組曲でしたか、なるほど!しかもプログラムの一番最初だったのですね。
そういえば、と思いだして、歴代サクソフォンコングレスのプログラム表を参照してみました。
http://faculty.mansfield.edu/jmurphy/WSCSax.xls
なんと豪華な演奏陣、そして魅力的なプログラムでしょうか!まったく、聴くことができなかったことがつくづく残念です。