一番最初に聴いたサクソフォンとエレクトロニクスのための作品は、Wayne Siegelの「Jackdaw」だった。バリトンサクソフォンと、鳥の鳴き声とシンセサイザー音がミックスされたようなテープパートを組み合わせた音楽で、調性があってとても聴きやすい曲だ(ここから試聴できる)。もともとバスクラリネット作品であったのを、作曲者のシーゲル氏がバリトンサクソフォン用に置き換えて作った作品なのだそうだ。
そして、たしか次に聴いたサクソフォンとエレクトロニクスの作品が、Mark Engebretson氏の「She Sings, She Screams」であった。これは、アメリカのサクソフォン奏者、リチャード・ディーラム Richard Dirlam氏のアルバム、その名も「She Sings, She Screams(Innova 543)」を高校生の頃に買って、知った音楽だった。凄いジャケットでしょ。一曲目「The Bear」の強烈なバリトンサクソフォン四重奏にもやられたのだが、一番印象深いのが、この「She Sings, She Screams」。
初めて聴いたときは、ジョン・ケージの「She is Asleep」を想起させる音楽だな、という印象を受けた。冒頭、柔らかなサクソフォンの一声、さらにそこに絡むYAMAHAのシンセサイザーの硬質な音は、まさに女声とトイピアノという「She is Asleep」の編成・響きと近いものがある。
全般を通して調性感に溢れており、聴きづらい部分はまったくなく、各所に散らされた微分音もとても音楽的だ。サクソフォンの音色がシンセサイザーと対比をなし、際立って美しい。後半は、「Screams」のパート。サクソフォン、エレクトロニクスの両者が徐々に熱を帯び、やがて絶叫を迎える。この構成感も、単純だけれど聴き手は興奮するというものだ。最期は、波が引いいたようにおさまってしまう。
この作品が収録されているCDで、確認できているのは以下の二枚。現代のアメリカサクソフォンの多様性を知ることができ、どちらもオススメです。
Richard Dirlam「She Sings, She Screams」
Susan Faucher「Ponder Nothing」
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