こういうリサイタルをされてしまうと、やはりサクソフォンのリサイタルというのは(実験的であっても)このようなアプローチが必要な時代に来ているのではないか、という思いを強くする。こと、委嘱新作から受けた印象は、作品・演奏とも強かった!
【村松和樹サクソフォンリサイタル】
出演:村松和樹(sax)、大嶋千暁(pf)、旭井翔一、Saitone(comp)
日時:2015年2月28日(土曜)14:00開演
会場:ティアラこうとう・小ホール
プログラム:
J.ドゥメルスマン - オリジナルの主題による幻想曲
H.ヴィラ=ロボス - ファンタジア
J.M.ダマーズ - ヴァカンス
A.デザンクロ - PCF
M.ブンス - Waterwings
JacobTV - Grab It!
旭井翔一&Saitone - Concertino_for_524DCA1A.ksh
村松氏のこだわりが随所に見えるリサイタルだった。それは、プログラム構成であったり、演奏そのものであったり、プログラム冊子(入場には曲目だけ書かれたレターセットのようなものが配布され、リサイタル後に"After Book"という、解説文etcが入った冊子が渡される)であったり、照明であったり、音響であったり…。リサイタルというものを多角的に捉えようとする彼の意思を感じ取ることができた。
前半は、クラシカル・サクソフォンのために書かれたオリジナル作品のプログラム。ドゥメルスマン、ダマーズは、技術的な面でもかなりしっかりしていて、驚き。曲を通して、これだけの演奏をする、ということは、音大生でもなかなか出来る人は少ないのでは。ちなみにドゥメルスマンは、村松氏が横浜国際音楽コンクールの学生部門で1位を取った時の作品だそうな。それを裏付けるような、かなりアグレッシブな音楽運びには驚いたのだった。デザンクロは、さすがに難しい作品ということで、若干テクニカルに難儀している様子が窺えたが、とはいえやりたいことはしっかりとわかる演奏。千暁さんの(いつものことながら)アンサンブルピアニストとしての的確なサポートは、特にドゥメルスマンやデザンクロで映えた。カデンツのダイナミックさは、今まで千暁さんになかったような雰囲気のものだった(ピアノがベヒシュタインだったことも関係しているかな?)。
後半は、エレクトロニクス特集。ブンスとJacobTVの作品は、私も演奏したことがあって、楽譜をどうしてもそういう聴き方になってしまうのだが(苦笑)ここでも演奏や視覚的なものの作り方に村松氏のベクトルを感じた。そして、なんといっても本日の白眉は旭井翔一氏とSaitone氏共作となる「Concertino_for_524DCA1A.ksh」であろう。この不思議なタイトルは、Shoichi_Asaiという文字列をSHA256(ハッシュ関数)に突っ込んで出てきた文字列の最初の8文字なのだそうだ。サクソフォンのソロパート、そして"Chiptune"と呼ばれるジャンルのプリ・レコーディングパート、それぞれが実に魅力的だった。今まで、おそらくサクソフォンとエレクトロニクスの作品って100も200も聴いたことがあるはずなのだが、そのなかでも確実に5本の指には入るようなものの一つではないかと思ったのだった。これはぜひ、日本発の作品として世界に広めていきたい!再演を期待したいところだ。そしてまた、この作品での村松氏の演奏は、特に気合いの入ったもので、圧倒されてしまったのだった。
アンコールに、Chiptuneで演奏されるデュボワ「りす」。面白かった。
終演後は、打ち上げに参加させていただいた。なんだか異業種交流会みたいな感じだったのだが、いろいろな話題に花が咲き、楽しい時間を過ごしたのだった。
2015/02/28
サクソフォン・スタンダード付随動画
先日、アメリカ陸軍制作のサクソフォン教則動画「サクソフォン・スタンダード」についてご紹介した。動画の中では、いくつか参考演奏が披露されているのだが、ほぼ全て途中でカットされてしまっていた。しかし、最近、その参考演奏のフル・ヴァージョン動画がいくつかアップロードされていたので、ご紹介したい。
ウジェーヌ・ボザ - 「アンダンテとスケルツォ」よりアンダンテ
ウジェーヌ・ボザ - 「アンダンテとスケルツォ」よりスケルツォ
Michael Gordon/Brian Sacawa - The Low Quartet
ルードヴィッヒ・ファン・ベートーヴェン - 「弦楽四重奏曲第一番」より第1楽章
ガブリエル・ピエルネ - 民謡風ロンドの主題による序奏と変奏
ウジェーヌ・ボザ - 「アンダンテとスケルツォ」よりアンダンテ
ウジェーヌ・ボザ - 「アンダンテとスケルツォ」よりスケルツォ
Michael Gordon/Brian Sacawa - The Low Quartet
ルードヴィッヒ・ファン・ベートーヴェン - 「弦楽四重奏曲第一番」より第1楽章
ガブリエル・ピエルネ - 民謡風ロンドの主題による序奏と変奏
2012年のコングレスのハイライト動画
前回のサクソフォン・コングレスのハイライト動画。もうあれから2年半が経つのか…セント・アンドルーズの街の様子や、そこに集結していたサクソフォン奏者たち、素晴らしい演奏の数々、全てが懐かしい。スコットランドは、ぜひまた行ってみたい場所のひとつだ。
この動画は、コングレスの楽しさとセント・アンドルーズの土地柄の良さ、双方をとても良く伝えるものであり、ぜひご覧いただきたい。
このハイライト動画、TSQもチラッと2回くらい出てきます(笑)。
この動画は、コングレスの楽しさとセント・アンドルーズの土地柄の良さ、双方をとても良く伝えるものであり、ぜひご覧いただきたい。
このハイライト動画、TSQもチラッと2回くらい出てきます(笑)。
John Edward Kelly plays Schumann on YouTube
先日亡くなった、シガード・ラッシャーの高弟、ジョン=エドワルド・ケリー John Edward Kelly氏が演奏する、シューマン「幻想小曲集op.73」の演奏がYouTubeにアップされている。2007年、何かのリハーサルの映像なのだそうだ。
ケリー氏の、"クラシック音楽"に対する考えが垣間見えるような演奏だ。ぜひ一度観ていただきたい。
https://www.youtube.com/watch?v=ZBYbH-TwQrQ
ケリー氏の、"クラシック音楽"に対する考えが垣間見えるような演奏だ。ぜひ一度観ていただきたい。
https://www.youtube.com/watch?v=ZBYbH-TwQrQ
四国サックスフェスタ in 鳴門の参加締め切り迫る
「四国サックスフェスタ in 鳴門」が、3月末に開催される。2013年に香川で開催されたフェスティバルに続く行事だ。今度は徳島県でさらに規模を拡大して開催の運びとなる。実行委員長のI氏の行動力たるや恐ろしいほどのもので、このフェスティバルを鳴門市文化会館の自主事業とし、さらに長瀬敏和氏、丸谷明夫氏を始めとする豪華ゲスト陣を招聘するなど、前回からさらにパワーアップした内容になるようだ。
http://www.tv-naruto.ne.jp/tn9865386/
今のところ、全員参加のサクソフォン・オーケストラステージが募集中(本日締め切り)。150人の参加を目指しており、現在130名ちょっとだそうで(それでも十分多いのだが笑)さらに四国以外からの参加者も増えると良いなあ。お時間あるそこのあなた、いかがですか?きっと楽しい演奏会になると思う。
私も参加する。前回はTSQで参加したのだが、今回は単身での参加(とは言え、お知り合いの方も多いので安心)。土曜日の夜に練習があるため、日曜日の朝、アルトを抱えてぱっと行って、月曜の午前は有給休暇とし、午前中にぱっと帰ってくる…ような旅程を組んでみた。
http://www.tv-naruto.ne.jp/tn9865386/
今のところ、全員参加のサクソフォン・オーケストラステージが募集中(本日締め切り)。150人の参加を目指しており、現在130名ちょっとだそうで(それでも十分多いのだが笑)さらに四国以外からの参加者も増えると良いなあ。お時間あるそこのあなた、いかがですか?きっと楽しい演奏会になると思う。
私も参加する。前回はTSQで参加したのだが、今回は単身での参加(とは言え、お知り合いの方も多いので安心)。土曜日の夜に練習があるため、日曜日の朝、アルトを抱えてぱっと行って、月曜の午前は有給休暇とし、午前中にぱっと帰ってくる…ような旅程を組んでみた。
先週末の仙台
原稿の締め切りに追われて、すっかり書くのが遅くなってしまったが…。
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先週末、2/21-22と、仙台へ伺った。かつて、大学時代の吹奏楽団で一緒に演奏した一人からお招きいただいて、とある中学校の吹奏楽部のサクソフォンパートの指導、ならびに皆様の前で演奏してきたのだ。フルート、サクソフォン、ピアノという編成で、下記のようなプログラム。
伊藤康英 - 琉球幻想曲(sax4, pf)
R.インガム - マルコム夫人のリール(sax4)
伊藤康英 - 木星のファンタジー(fl, pf)
R.ピーターソン - トリオより第3楽章(fl, sax, pf)
A.メンケン - ホール・ニュー・ワールド(sax2, pf)
菅野よう子 - 花は咲く(fl, sax4, gt, pf)
中学生の方々の驚きの眼差しに、自分の中学生時代の、サクソフォンをこれっぽっちも分かっていなかった頃を重ねて、不思議な感覚のまま吹き進めた。演奏後、びっしりと書き込まれたアンケートを読み、そのみずみずしい感性に、逆に驚いてしまったのだった。
震災から4年が経とうとしている。久々の仙台は、街中こそ以前と変わらぬ活気に満ちていたが(仙台には2006年の夏に3週間ほど滞在したことがあるのだ)、少し海の方面へと向かえばやはり傷痕が生々しい。そういったところで生活する方々に、一介の関東住まいのアマチュアの演奏家として、どんな働きかけをすれば良いのか未だに分からなくなってしまい、ネチネチと自問自答してしまうことがある。ただひとつ言えることは、とにかく何かチャンスがあれば/チャンスを作って、これからも定期的に働きかけていかなければいけない、ということだ。答えは出なくても、そうやって被災地のことを思い、考え続けることが重要なのかもしれない。
そういえば、"お礼に"ということで合唱してくれた「Love, Dream & Happiness」、日本の歌謡曲なのだそうだが、とても良い曲・歌詞だと思った。
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先週末、2/21-22と、仙台へ伺った。かつて、大学時代の吹奏楽団で一緒に演奏した一人からお招きいただいて、とある中学校の吹奏楽部のサクソフォンパートの指導、ならびに皆様の前で演奏してきたのだ。フルート、サクソフォン、ピアノという編成で、下記のようなプログラム。
伊藤康英 - 琉球幻想曲(sax4, pf)
R.インガム - マルコム夫人のリール(sax4)
伊藤康英 - 木星のファンタジー(fl, pf)
R.ピーターソン - トリオより第3楽章(fl, sax, pf)
A.メンケン - ホール・ニュー・ワールド(sax2, pf)
菅野よう子 - 花は咲く(fl, sax4, gt, pf)
中学生の方々の驚きの眼差しに、自分の中学生時代の、サクソフォンをこれっぽっちも分かっていなかった頃を重ねて、不思議な感覚のまま吹き進めた。演奏後、びっしりと書き込まれたアンケートを読み、そのみずみずしい感性に、逆に驚いてしまったのだった。
震災から4年が経とうとしている。久々の仙台は、街中こそ以前と変わらぬ活気に満ちていたが(仙台には2006年の夏に3週間ほど滞在したことがあるのだ)、少し海の方面へと向かえばやはり傷痕が生々しい。そういったところで生活する方々に、一介の関東住まいのアマチュアの演奏家として、どんな働きかけをすれば良いのか未だに分からなくなってしまい、ネチネチと自問自答してしまうことがある。ただひとつ言えることは、とにかく何かチャンスがあれば/チャンスを作って、これからも定期的に働きかけていかなければいけない、ということだ。答えは出なくても、そうやって被災地のことを思い、考え続けることが重要なのかもしれない。
そういえば、"お礼に"ということで合唱してくれた「Love, Dream & Happiness」、日本の歌謡曲なのだそうだが、とても良い曲・歌詞だと思った。
2015/02/23
演奏会情報:村松氏のリサイタル
先週末は、仙台へ演奏のために伺った。詳細は別の記事にするとして、先にこちらの演奏会情報をご紹介。
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お友達のサクソフォン奏者、村松氏の初リサイタル。アマチュアながら、これまでも、オーケストラとイベール「コンチェルティーノ」をやったり、横浜国際音楽コンクールのアマチュア学生部門で優勝したり、様々な活動を展開しているが、これまでの活動の総決算として、リサイタルを開催するそうだ。
前半・後半と、好対照で、とても面白そうなプログラム。後半について、ブンス「Waterwings」や、JacobTV「Grab It!」はもはや名曲として当たり前のように楽しい作品だが、委嘱作品となる「サクソフォンと8bitサウンドのための作品」も大注目。村松氏が下記のようにコメントしている。
この言葉通り、制約の多い音源(初期のゲーム機に似た音源等)を敢えて活用する音楽ジャンル"Chiptune"の急先鋒Saitone氏と、気鋭の作曲家旭井翔一氏とのコラボレーションは、要注目である。
彼の演奏は何度か聴いたことがあるのだが、演奏クオリティも折り紙つき!お時間ある方はぜひ。
【村松和樹サクソフォンリサイタル】
出演:村松和樹(sax)、大嶋千暁(pf)
日時:2014年2月28日(土)13:30開場 14:00開演
会場:ティアラこうとう小ホール
料金:1000円(全席自由)
プログラム:
J.ドゥメルスマン - 自主主題による幻想曲
J.M.ダマーズ - バカンス
H.ヴィラ=ロボス - ファンタジア
A.デザンクロ - PCF
M.ブンス - Waterwings
JacobTV - Grab It!
旭井翔一&Saitone - サクソフォンと8bitサウンドのための作品(世界初演)
チケット等詳細:
http://saxastfm.com/concert.html
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お友達のサクソフォン奏者、村松氏の初リサイタル。アマチュアながら、これまでも、オーケストラとイベール「コンチェルティーノ」をやったり、横浜国際音楽コンクールのアマチュア学生部門で優勝したり、様々な活動を展開しているが、これまでの活動の総決算として、リサイタルを開催するそうだ。
前半・後半と、好対照で、とても面白そうなプログラム。後半について、ブンス「Waterwings」や、JacobTV「Grab It!」はもはや名曲として当たり前のように楽しい作品だが、委嘱作品となる「サクソフォンと8bitサウンドのための作品」も大注目。村松氏が下記のようにコメントしている。
旭井翔一さんとSaitoneさんの委嘱共作はおそろしいものが出来てしまいました。もはや初演が僕でいいのだろうか、と。アートとエンターテインメントを曖昧にしつつ、Jazzに変わる新しい「カッコいいサックス」像を作りました。
この言葉通り、制約の多い音源(初期のゲーム機に似た音源等)を敢えて活用する音楽ジャンル"Chiptune"の急先鋒Saitone氏と、気鋭の作曲家旭井翔一氏とのコラボレーションは、要注目である。
彼の演奏は何度か聴いたことがあるのだが、演奏クオリティも折り紙つき!お時間ある方はぜひ。
【村松和樹サクソフォンリサイタル】
出演:村松和樹(sax)、大嶋千暁(pf)
日時:2014年2月28日(土)13:30開場 14:00開演
会場:ティアラこうとう小ホール
料金:1000円(全席自由)
プログラム:
J.ドゥメルスマン - 自主主題による幻想曲
J.M.ダマーズ - バカンス
H.ヴィラ=ロボス - ファンタジア
A.デザンクロ - PCF
M.ブンス - Waterwings
JacobTV - Grab It!
旭井翔一&Saitone - サクソフォンと8bitサウンドのための作品(世界初演)
チケット等詳細:
http://saxastfm.com/concert.html
2015/02/21
デファイエ初来日時の録音(1964年)
ダニエル・デファイエ Daniel Deffayet氏が、1964年に初来日した際の録音が存在する。この初来日ではリサイタルは行わなかったのだが、音楽大学でマスタークラスを開催するなどしたそうだ。
この際、東洋大学を訪れて吹奏楽団向けにサクソフォンに関するクリニックを開いたというのだが、その録音が残っている。この録音を、栃木県のO様のご厚意によりダビングしていただき、所持している。久々に聴いてみたが、本当に凄いなあ…と改めて感じ入った。無伴奏ではあるが、まるで背後にオーケストラの響きが聴こえてきそうなほどの、一流の演奏である。
G.ビゼー - 「アルルの女」第一組曲より
C.ドビュッシー - ラプソディ(冒頭のみ)
P.ボノー - 「組曲」より第1楽章"即興曲"
J.イベール - コンチェルティーノ・ダ・カメラから第2楽章(緩徐部分)
この際、東洋大学を訪れて吹奏楽団向けにサクソフォンに関するクリニックを開いたというのだが、その録音が残っている。この録音を、栃木県のO様のご厚意によりダビングしていただき、所持している。久々に聴いてみたが、本当に凄いなあ…と改めて感じ入った。無伴奏ではあるが、まるで背後にオーケストラの響きが聴こえてきそうなほどの、一流の演奏である。
G.ビゼー - 「アルルの女」第一組曲より
C.ドビュッシー - ラプソディ(冒頭のみ)
P.ボノー - 「組曲」より第1楽章"即興曲"
J.イベール - コンチェルティーノ・ダ・カメラから第2楽章(緩徐部分)
2015/02/19
コングレス事務局からのプロジェクト受諾通知
第17回サクソフォン・コングレス(フランス・ストラスブールで"SaxOpen"として2015年7月に開催)に、Tsukuba Saxophone Quartetによるプロジェクト、ならびに、佐藤淳一氏との合同プロジェクトの計2つで参加を申し込んでいた。
本日、両方のプロジェクトについて、事務局よりプロジェクトの受諾通知を受け取った。200ちょっとの枠に、630の応募があったそうで、倍率が3倍!どうなることかと思ったが、何とか通って良かった。
内容は次の通り。
----------------
・Tsukuba Saxophone Quartet
サポートメンバーとして松下洋氏(バリトン)、木村佳氏(アルト)を迎え、ソプラノChisa、ソプラノ/テナー小倉@ブーローニュ留学中、テナーkuriで、以下の2曲を演奏する。旭井翔一氏の新作は、すでに委嘱して制作進行中。
旭井翔一 - サクソフォン四重奏委嘱作品(世界初演)
R.インガム - Mrs Malcolm, Her Reel(某国外の団体と共演予定)
----------------
・佐藤淳一氏との共同プロジェクト(JacobTVへの新作委嘱)
「Grab It!」等で有名な、JacobTV(Jacob ter Veldhuis)に、テナーサクソフォンとゲットブラスターのための新作を共同委嘱、初演を行う。すでに音素材提供は完了し、制作進行中。佐藤氏がコングレスでの世界初演を担当、私はコングレスの演奏に先立って、同一ステージで作品コンセプトのプレゼン、並びに、コングレス後に日本初演を担当する。
----------------
とっても楽しみだ!
本日、両方のプロジェクトについて、事務局よりプロジェクトの受諾通知を受け取った。200ちょっとの枠に、630の応募があったそうで、倍率が3倍!どうなることかと思ったが、何とか通って良かった。
内容は次の通り。
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・Tsukuba Saxophone Quartet
サポートメンバーとして松下洋氏(バリトン)、木村佳氏(アルト)を迎え、ソプラノChisa、ソプラノ/テナー小倉@ブーローニュ留学中、テナーkuriで、以下の2曲を演奏する。旭井翔一氏の新作は、すでに委嘱して制作進行中。
旭井翔一 - サクソフォン四重奏委嘱作品(世界初演)
R.インガム - Mrs Malcolm, Her Reel(某国外の団体と共演予定)
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・佐藤淳一氏との共同プロジェクト(JacobTVへの新作委嘱)
「Grab It!」等で有名な、JacobTV(Jacob ter Veldhuis)に、テナーサクソフォンとゲットブラスターのための新作を共同委嘱、初演を行う。すでに音素材提供は完了し、制作進行中。佐藤氏がコングレスでの世界初演を担当、私はコングレスの演奏に先立って、同一ステージで作品コンセプトのプレゼン、並びに、コングレス後に日本初演を担当する。
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とっても楽しみだ!
2015/02/18
阪口新氏の決意の大きさ
杉原真人さんの論文より。
日本のクラシック・サクソフォン界の黎明期を支えた阪口新(1910 - 1997)氏について、チェロからサクソフォンへの転向後、「ミュールとの文通を通じて、サクソフォンと楽譜を購入したが、土地を売ってその購入資金に充てた」というエピソードが語られることが良くある。
どのくらい高かったのかなあと気になっていたのだが、杉原さんの論文に具体的な金額が掲載されていて、その額にびっくりしたのでご紹介したい。ここから感じ取ることができるのは、阪口新氏の決意の大きさである。購入は1950年とされている。
アルトサクソフォン:150,000円
ソプラノサクソフォン:130,000円
当時の銀行員の初任給平均:3,000円
現在の銀行員の初任給平均を200,000円とし、そこから楽器の金額を現在の価格へと換算すると…。
アルトサクソフォン:150,000円→およそ10,000,000円
ソプラノサクソフォン:130,000円→およそ8,660,000円
そりゃ土地売らないと買えないですね。楽器2台、およそ2000万円を一気に投資とは、ちょっと想像ができない。仮に今、想像だにしないような画期的な楽器が発明されて、だがしかしこの先どうなるかも分からないのに1000万円投資して活動する覚悟があるか、と問われても、そんな勇気はすぐには出てこない。
この思いが、やがて実を結び、その後戦後の日本のサクソフォン界の発展へとつながっていったと思うと…。阪口氏の、人生を賭した行いが無ければ、日本のサクソフォンの発展は10年~20年単位で遅れを取っていたかもしれないのだ。
日本のクラシック・サクソフォン界の黎明期を支えた阪口新(1910 - 1997)氏について、チェロからサクソフォンへの転向後、「ミュールとの文通を通じて、サクソフォンと楽譜を購入したが、土地を売ってその購入資金に充てた」というエピソードが語られることが良くある。
どのくらい高かったのかなあと気になっていたのだが、杉原さんの論文に具体的な金額が掲載されていて、その額にびっくりしたのでご紹介したい。ここから感じ取ることができるのは、阪口新氏の決意の大きさである。購入は1950年とされている。
アルトサクソフォン:150,000円
ソプラノサクソフォン:130,000円
当時の銀行員の初任給平均:3,000円
現在の銀行員の初任給平均を200,000円とし、そこから楽器の金額を現在の価格へと換算すると…。
アルトサクソフォン:150,000円→およそ10,000,000円
ソプラノサクソフォン:130,000円→およそ8,660,000円
そりゃ土地売らないと買えないですね。楽器2台、およそ2000万円を一気に投資とは、ちょっと想像ができない。仮に今、想像だにしないような画期的な楽器が発明されて、だがしかしこの先どうなるかも分からないのに1000万円投資して活動する覚悟があるか、と問われても、そんな勇気はすぐには出てこない。
この思いが、やがて実を結び、その後戦後の日本のサクソフォン界の発展へとつながっていったと思うと…。阪口氏の、人生を賭した行いが無ければ、日本のサクソフォンの発展は10年~20年単位で遅れを取っていたかもしれないのだ。
第22回東京藝術大学サクソフォーン専攻生による演奏会
聴き応えのある、魅力的な演奏会だったなあ!長丁場となったが、聴きに行けて良かった!
【第22回東京藝術大学サクソフォーン専攻生による演奏会】
出演:東京藝術大学サクソフォーン専攻生
日時:2015年2月17日 19:00開演
会場:東京文化会館・小ホール
プログラム:
(下記参照)
なんだか、どれも上手すぎて、上手い/凄い連発の感想になってしまい、同じような論調になってしまって、逆に感想の読み手としてはきっとつまらないと思う…のだが、ご勘弁を。私自身が演奏するレベルからすると、次元が4個位違って、もはや何も言えなくなってしまう(苦笑)。
デザンクロ「四重奏曲」
住谷美帆、宮越敦士、嵐田紀子、山本直哉
サクソフォンの演奏会の一発目からこの作品を取り上げる、ということからして尋常ではないが、お見事。技術的にも音楽的にもハイレベル。演奏全体としてほんの少し厳しいことを書くならば、細かいミスの除去、ダイナミクスの拡張により、さらに良い印象へと変貌するだろうし、そういった地力を持つカルテットだとも思った。バリトンの方は、そういった、真にプロフェッショナルと言える境地へと踏み込んでいこうとする気迫が感じられる、素晴しい演奏を展開していた。
夏田昌和「良寛による二つの詩」
竹内理恵(sax)、中山茉莉(mezzo-sop)、井上仁美(perc)
まず、選曲が個人的にドツボである。あまり知られていない作品で、おそらく本日の聴き手のうち1/10も知らないような作品のはずだ。これを選んで演奏を実現してしまう、という姿勢がまず素晴しい。衣装のこだわり(誰のデザインだったのだろう)も、こういった作品ではより一層活きてきますね。そして、もちろん演奏も!不思議な音響世界を、作曲家臨席のもと、説得力ある形で構築しており、終わった瞬間客席も大いに沸いたのだった。夏田さんのサクソフォンのための作品も増えてきたし、ここらで夏田昌和サクソフォン個展とかどうでしょう。
G.フォーレ/松尾怜奈「ピアノ五重奏曲第2番」
竹田歌穂、都築惇、中嶋紗也、田中奏一朗(以上sax)、黒岩航紀(pf)
黒岩氏の素晴らしいピアノとともに、ピアノとサクソフォン4本で、クラシックにおける室内楽の揺るぎない(体系的な)響きを構築しようとする意志が見え隠れする。時折ずいぶんと難しいことをやっているのだが、そういった箇所においても技術的な不安は感じない。アンサンブルの精度としては今回の演奏会の中でピカ一だったのではないかな。
長生淳「八重奏曲」
中島諒、田島沙彩、大坪俊樹、張誠、戸村愛美、西原亜子、土岐光秀、佐野純也
いやー、やっぱり名曲だ!"いつもの長生節"が散りばめられた作品なのだが、どうしてこうも他の曲と印象が変わるのか(笑)フシギ。トップは中島諒さん。数年前、中島さんをバリトンに迎えてこの曲を一緒に演奏したことを思い出した。(おそらく意図して)少し荒っぽく、音楽全体を引っ張っていく手腕が見事。警視庁音楽隊からの派遣履修生である佐野純也氏のバリトンも、息のスピード感でもってグルーヴをびしっと作り出していた。
A.K.グラズノフ/山田忠臣「サクソフォン協奏曲」
独奏:上野耕平、指揮:石坂幸治
上野耕平さんは、この曲を卒業試験で演奏して主席を獲得したそうだ。敢えてこの曲を選ぶというあたりに、こだわりと自信が見える。そんな前評判どおりの、いや、前評判を軽々と突き抜ける演奏だった。グラズノフ「協奏曲」って、もう演奏しつくされてなかなかそれ以上のものって想像できないのだが、こんな演奏できちゃうんですね。何が凄いって具体的にわからなくて、瞬間瞬間を取り出すと音が綺麗、とか、倚音を意識したフレージング、とか、広いダイナミクスを持っている、とか、そういう単純な言葉にしかならないのだが、ひとフレーズ、ふたフレーズ吹くと、とたんに魅力的な演奏へと様変わりする。理屈では説明できず、なんだか騙し絵でも眺めている気分だ。いやはや、すごすぎ。
M.ラヴェル/旭井翔一「ツィガーヌ」
独奏:松下洋、指揮:石坂幸治
まず、松下さんの曲目解説が面白かった。"サックスでオーケストラをバックに「ツィガーヌ」かいな!"これは、松下さんが2012年のコングレスでヴァンサン・ダヴィッド氏の演奏を聴いて持った感想だというが、おそらく本日臨席した観客も、似たような感想を持ったのではないだろうか(笑)。K点超え・柵超え連発、息をするのも忘れさせ、ぐっと観客を引き込む集中力・魅せ方は、松下さんの天賦の才能だろう。旭井さんのアレンジを"音色の魔術師"と書いているのには、なるほど!と膝を打ちたくなる思いだった。いやはや、すごすぎ(2回目)。
N.リムスキー=コルサコフ/旭井翔一「スペイン奇想曲」
指揮:石坂幸治
つべこべ言わずに大きな音楽の流れを作り出し、しかしサクソフォンの響きに任せて安易な方向に流れず、隅々まで作り込まれているあたり、さすが!といったところだろうか。各人のカデンツはとても良かったし、最終部にかけて熱狂の渦を作りながらも決してアンサンブルが乱れないことにも、惚れ惚れしてしまう。近年聴いたこの規模のラージアンサンブル(昨年以前の藝大サックス含む)の中でも、格段に高レベルな演奏だったのではなかろうか。
アンコールは、なし。
【第22回東京藝術大学サクソフォーン専攻生による演奏会】
出演:東京藝術大学サクソフォーン専攻生
日時:2015年2月17日 19:00開演
会場:東京文化会館・小ホール
プログラム:
(下記参照)
なんだか、どれも上手すぎて、上手い/凄い連発の感想になってしまい、同じような論調になってしまって、逆に感想の読み手としてはきっとつまらないと思う…のだが、ご勘弁を。私自身が演奏するレベルからすると、次元が4個位違って、もはや何も言えなくなってしまう(苦笑)。
デザンクロ「四重奏曲」
住谷美帆、宮越敦士、嵐田紀子、山本直哉
サクソフォンの演奏会の一発目からこの作品を取り上げる、ということからして尋常ではないが、お見事。技術的にも音楽的にもハイレベル。演奏全体としてほんの少し厳しいことを書くならば、細かいミスの除去、ダイナミクスの拡張により、さらに良い印象へと変貌するだろうし、そういった地力を持つカルテットだとも思った。バリトンの方は、そういった、真にプロフェッショナルと言える境地へと踏み込んでいこうとする気迫が感じられる、素晴しい演奏を展開していた。
夏田昌和「良寛による二つの詩」
竹内理恵(sax)、中山茉莉(mezzo-sop)、井上仁美(perc)
まず、選曲が個人的にドツボである。あまり知られていない作品で、おそらく本日の聴き手のうち1/10も知らないような作品のはずだ。これを選んで演奏を実現してしまう、という姿勢がまず素晴しい。衣装のこだわり(誰のデザインだったのだろう)も、こういった作品ではより一層活きてきますね。そして、もちろん演奏も!不思議な音響世界を、作曲家臨席のもと、説得力ある形で構築しており、終わった瞬間客席も大いに沸いたのだった。夏田さんのサクソフォンのための作品も増えてきたし、ここらで夏田昌和サクソフォン個展とかどうでしょう。
G.フォーレ/松尾怜奈「ピアノ五重奏曲第2番」
竹田歌穂、都築惇、中嶋紗也、田中奏一朗(以上sax)、黒岩航紀(pf)
黒岩氏の素晴らしいピアノとともに、ピアノとサクソフォン4本で、クラシックにおける室内楽の揺るぎない(体系的な)響きを構築しようとする意志が見え隠れする。時折ずいぶんと難しいことをやっているのだが、そういった箇所においても技術的な不安は感じない。アンサンブルの精度としては今回の演奏会の中でピカ一だったのではないかな。
長生淳「八重奏曲」
中島諒、田島沙彩、大坪俊樹、張誠、戸村愛美、西原亜子、土岐光秀、佐野純也
いやー、やっぱり名曲だ!"いつもの長生節"が散りばめられた作品なのだが、どうしてこうも他の曲と印象が変わるのか(笑)フシギ。トップは中島諒さん。数年前、中島さんをバリトンに迎えてこの曲を一緒に演奏したことを思い出した。(おそらく意図して)少し荒っぽく、音楽全体を引っ張っていく手腕が見事。警視庁音楽隊からの派遣履修生である佐野純也氏のバリトンも、息のスピード感でもってグルーヴをびしっと作り出していた。
A.K.グラズノフ/山田忠臣「サクソフォン協奏曲」
独奏:上野耕平、指揮:石坂幸治
上野耕平さんは、この曲を卒業試験で演奏して主席を獲得したそうだ。敢えてこの曲を選ぶというあたりに、こだわりと自信が見える。そんな前評判どおりの、いや、前評判を軽々と突き抜ける演奏だった。グラズノフ「協奏曲」って、もう演奏しつくされてなかなかそれ以上のものって想像できないのだが、こんな演奏できちゃうんですね。何が凄いって具体的にわからなくて、瞬間瞬間を取り出すと音が綺麗、とか、倚音を意識したフレージング、とか、広いダイナミクスを持っている、とか、そういう単純な言葉にしかならないのだが、ひとフレーズ、ふたフレーズ吹くと、とたんに魅力的な演奏へと様変わりする。理屈では説明できず、なんだか騙し絵でも眺めている気分だ。いやはや、すごすぎ。
M.ラヴェル/旭井翔一「ツィガーヌ」
独奏:松下洋、指揮:石坂幸治
まず、松下さんの曲目解説が面白かった。"サックスでオーケストラをバックに「ツィガーヌ」かいな!"これは、松下さんが2012年のコングレスでヴァンサン・ダヴィッド氏の演奏を聴いて持った感想だというが、おそらく本日臨席した観客も、似たような感想を持ったのではないだろうか(笑)。K点超え・柵超え連発、息をするのも忘れさせ、ぐっと観客を引き込む集中力・魅せ方は、松下さんの天賦の才能だろう。旭井さんのアレンジを"音色の魔術師"と書いているのには、なるほど!と膝を打ちたくなる思いだった。いやはや、すごすぎ(2回目)。
N.リムスキー=コルサコフ/旭井翔一「スペイン奇想曲」
指揮:石坂幸治
つべこべ言わずに大きな音楽の流れを作り出し、しかしサクソフォンの響きに任せて安易な方向に流れず、隅々まで作り込まれているあたり、さすが!といったところだろうか。各人のカデンツはとても良かったし、最終部にかけて熱狂の渦を作りながらも決してアンサンブルが乱れないことにも、惚れ惚れしてしまう。近年聴いたこの規模のラージアンサンブル(昨年以前の藝大サックス含む)の中でも、格段に高レベルな演奏だったのではなかろうか。
アンコールは、なし。
諏訪で合唱との合わせ練習
本日は(もう昨日か)有給休暇を取得し、長野県諏訪市で練習。
諏訪市の女声合唱団「スワ・セシリア」の5月の演奏会に、サクソフォン3本で参加する。詳細は後日掲載するが、合唱+ピアノにサクソフォン3本をコラール&オブリガート的に重ねていくというもの。本日は、その合唱との合わせ練習だった。当初は響きの想像がまったくつかず、どうなることかとドキドキだったが、いざ合わせてみるとなかなかよい感じ。2時間ちょっとだったが、楽しい時間を過ごした。あとは、5月のリハーサル、そして本番となる。楽しみ~。
合唱っていいですね。「あなたに会えて」なんて、本当に歌詞が感動的で…。歌詞とメロディと和声の融合した芸術なんて、素晴らしいじゃないですか。いいなあ。
練習後は上野へ移動。
諏訪市の女声合唱団「スワ・セシリア」の5月の演奏会に、サクソフォン3本で参加する。詳細は後日掲載するが、合唱+ピアノにサクソフォン3本をコラール&オブリガート的に重ねていくというもの。本日は、その合唱との合わせ練習だった。当初は響きの想像がまったくつかず、どうなることかとドキドキだったが、いざ合わせてみるとなかなかよい感じ。2時間ちょっとだったが、楽しい時間を過ごした。あとは、5月のリハーサル、そして本番となる。楽しみ~。
合唱っていいですね。「あなたに会えて」なんて、本当に歌詞が感動的で…。歌詞とメロディと和声の融合した芸術なんて、素晴らしいじゃないですか。いいなあ。
練習後は上野へ移動。
2015/02/16
昔のフルモー四重奏団の映像
一昨日、YouTubeにアップされていた動画。Quatuor de saxophones de Parisなどと書いてあるが、これはどう観てもフルモー・サクソフォン四重奏団ですね(笑)。だれが撮影した映像なのだろう。
1991年、セント・レナード教会での録画だそうな。演奏されているのは、バーンスタイン「ウェスト・サイド・ストーリー」やヘンデル「シバの女王の入場」など。テナー・サクソフォンは、なんとGuy Demarle氏だ!フルモー四重奏団の創設メンバーで、1995年に若くして亡くなったのだ(後任はステファン・ラポルト氏)。まさか、Demarle氏の演奏姿を映像で観ることができるとは思わなかった。
残念ながらダイジェスト的な映像であり、全編ではないが、演奏の素晴らしさが端々から感じられる。最後の最後、抱腹絶倒のアンコールは、まさにフルモー四重奏団の面目躍如だ!
ふと思ったのだが、今の学生のみなさんくらいまでの世代って、フルモー四重奏団のことを知っている方はかなり少ないのでは…と。昔は頻繁に来日していたイメージがあるのだが、ここ10年くらいは来日していないような。CDも日本では少々手に入れづらいし。
1991年、セント・レナード教会での録画だそうな。演奏されているのは、バーンスタイン「ウェスト・サイド・ストーリー」やヘンデル「シバの女王の入場」など。テナー・サクソフォンは、なんとGuy Demarle氏だ!フルモー四重奏団の創設メンバーで、1995年に若くして亡くなったのだ(後任はステファン・ラポルト氏)。まさか、Demarle氏の演奏姿を映像で観ることができるとは思わなかった。
残念ながらダイジェスト的な映像であり、全編ではないが、演奏の素晴らしさが端々から感じられる。最後の最後、抱腹絶倒のアンコールは、まさにフルモー四重奏団の面目躍如だ!
ふと思ったのだが、今の学生のみなさんくらいまでの世代って、フルモー四重奏団のことを知っている方はかなり少ないのでは…と。昔は頻繁に来日していたイメージがあるのだが、ここ10年くらいは来日していないような。CDも日本では少々手に入れづらいし。
2015/02/15
雲井雅人&須川展也 ジョイント・コンサート
まさに、クラシック・サクソフォン界の2大スターの共演!夢のような時間!今回は早々に売り切れてしまったようで、チケットを入手できなかった、という声を方方で聞いた。ということで、ぜひ第二弾も期待したいところだ。
【雲井雅人&須川展也 ジョイント・コンサート】
出演:雲井 雅人、須川展也(以上sax)、小柳美奈子、仲地朋子(以上ピアノ)、須川展也サックス・バンド
日時:2015年2月15日 13:30開場 14:00開演
会場:ヤマハホール
プログラム:
(のちほどこちらに追記する)
----------
詳細な感想はTHE SAX誌に演奏会レポートを依頼されているので、そちらをご覧ください(笑)。発行されたらまたお知らせします。
終演後は上野に移動し、いつものアメ横あたりでさらっと飲んで散会。ああ、楽しかった!
【雲井雅人&須川展也 ジョイント・コンサート】
出演:雲井 雅人、須川展也(以上sax)、小柳美奈子、仲地朋子(以上ピアノ)、須川展也サックス・バンド
日時:2015年2月15日 13:30開場 14:00開演
会場:ヤマハホール
プログラム:
(のちほどこちらに追記する)
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詳細な感想はTHE SAX誌に演奏会レポートを依頼されているので、そちらをご覧ください(笑)。発行されたらまたお知らせします。
終演後は上野に移動し、いつものアメ横あたりでさらっと飲んで散会。ああ、楽しかった!
2015/02/14
John Edward Kelly氏の訃報
サクソフォン奏者、シガード・ラッシャー Sigurd Rascherの高弟、John Edward Kelly氏。そのケリー氏の訃報が、Carica Rascher氏(Sigurd Rascher氏の娘)のFB情報に掲載されていた。がんとの闘病を経て、2月12日に亡くなったとのことだ。まだ56歳、早すぎる死である…。大変残念なことだ。
1958年生まれ。アメリカ出身で、サクソフォンをシガード・ラッシャー氏に師事。1981年にはラッシャー・サクソフォン四重奏団に参加。1994年にはAlloys Ensemble(サクソフォン、チェロ、ピアノ、パーカッションという編成)を創設。デュッセルドルフのシューマン・アカデミー、オスロのノルウェー・アカデミーで教鞭をとった。コンサートでの演奏、レコーディングも多い。後年には、ニューヨークのArcos Chamber Orchestraの指揮者として活躍していた。
私は、ケリー氏の音をライヴで聴いたことはない。しかし、幸いな事に多くの録音が存在している。最も有名なのは、イベール「室内小協奏曲」、マルタン「バラード」、ラーション「協奏曲」が収録されたこのArte Nova盤だろう。価格が安く、有名な作品が収録されていることもあって、よく出回っている盤のようだ。入手し、演奏を聴いてたまげた方も多いのではないだろうか。いや、決して演奏が悪いというわけではないのだが、いわゆる"華麗なフランス流派の演奏"を期待して聴き始めると、面食らうこと請け合いなのだ。
この理由はこれまでにも何度かこのブログで取り上げたとおり。例えば音色については、選択しているマウスピースに多くの要因がある。
http://kurisaxo.blogspot.jp/2007/12/blog-post_08.html
http://kurisaxo.blogspot.jp/2011/10/blog-post_27.html
ケリー氏を始めとするラッシャー派の演奏は、フレージング・センス(ここで"センス"という言葉を、"耳あたりの良い"という意味で使う)という点で言えば、残念ながらフレンチ・スタイルと比較し、受け入れられにくいと言えるだろう。音色に関しても、ヴィンテージ楽器、そしてチェンバーが広いマウスピースを使うことにより、ややこもり気味で落ち着いた(悪く言えば地味な)ものだ。しかし、聴きこんでいく中で不思議とその演奏に魅力を感じ始めるのだから、不思議である。一聴してこもり気味だと思われた音色は、様々な録音を収集する中で、とんでもなく純度の高い音色だということを気づく。無菌室で培養したような、ノイズを取り去った音色、そして、発音のクリアさや一音一音のとんでもない安定さに驚嘆する。バロック作品における見事な演奏、現代作品への積極的な取り組みなども、高く評価されるべきである。
マイケル・シーゲル著「サキソフォン物語」に、ケリー氏のインタビューが掲載されている。ケリー氏が、クラシック・サクソフォンというものをどのように捉えていたかがよく分かるコメントだ。
ラッシャー氏はもちろん、このたび鬼籍へと入ったケリー氏も、クラシック・サクソフォンを、真のクラシック楽器として世間に認めさせようとしていた。サクソフォンがサクソフォンの中で留まらず、外の世界へ飛び出し、認めてもらうための、彼らなりのアプローチを試行錯誤・理論構築し、演奏・指導に邁進していた。サクソフォン界はまたひとり、一流の奏者を失ってしまったのだ。
追悼の意味を込めて、YouTube上の映像をご紹介。ミヒャエル・デンホフ Michael Denhoffの「Gegen-Satze」である。ソプラノ:カリーナ・ラッシャー、アルト:ジョン=エドワルド・ケリー、テナー:ブルース・ワインバーガー、バリトン:リンダ・バングスという、超大御所メンバー(シガード・ラッシャーが抜けた後のメンバー構成)。
1958年生まれ。アメリカ出身で、サクソフォンをシガード・ラッシャー氏に師事。1981年にはラッシャー・サクソフォン四重奏団に参加。1994年にはAlloys Ensemble(サクソフォン、チェロ、ピアノ、パーカッションという編成)を創設。デュッセルドルフのシューマン・アカデミー、オスロのノルウェー・アカデミーで教鞭をとった。コンサートでの演奏、レコーディングも多い。後年には、ニューヨークのArcos Chamber Orchestraの指揮者として活躍していた。
私は、ケリー氏の音をライヴで聴いたことはない。しかし、幸いな事に多くの録音が存在している。最も有名なのは、イベール「室内小協奏曲」、マルタン「バラード」、ラーション「協奏曲」が収録されたこのArte Nova盤だろう。価格が安く、有名な作品が収録されていることもあって、よく出回っている盤のようだ。入手し、演奏を聴いてたまげた方も多いのではないだろうか。いや、決して演奏が悪いというわけではないのだが、いわゆる"華麗なフランス流派の演奏"を期待して聴き始めると、面食らうこと請け合いなのだ。
この理由はこれまでにも何度かこのブログで取り上げたとおり。例えば音色については、選択しているマウスピースに多くの要因がある。
http://kurisaxo.blogspot.jp/2007/12/blog-post_08.html
http://kurisaxo.blogspot.jp/2011/10/blog-post_27.html
ケリー氏を始めとするラッシャー派の演奏は、フレージング・センス(ここで"センス"という言葉を、"耳あたりの良い"という意味で使う)という点で言えば、残念ながらフレンチ・スタイルと比較し、受け入れられにくいと言えるだろう。音色に関しても、ヴィンテージ楽器、そしてチェンバーが広いマウスピースを使うことにより、ややこもり気味で落ち着いた(悪く言えば地味な)ものだ。しかし、聴きこんでいく中で不思議とその演奏に魅力を感じ始めるのだから、不思議である。一聴してこもり気味だと思われた音色は、様々な録音を収集する中で、とんでもなく純度の高い音色だということを気づく。無菌室で培養したような、ノイズを取り去った音色、そして、発音のクリアさや一音一音のとんでもない安定さに驚嘆する。バロック作品における見事な演奏、現代作品への積極的な取り組みなども、高く評価されるべきである。
マイケル・シーゲル著「サキソフォン物語」に、ケリー氏のインタビューが掲載されている。ケリー氏が、クラシック・サクソフォンというものをどのように捉えていたかがよく分かるコメントだ。
「わたしの上級セミナーに学生がはいると、楽句を演奏することも、その作品を自分の音楽体験にすることも、自分の体験を聴衆に伝えることも知らない。それで、どんな作曲家を知っているかときいてみる。『ブラームスは』『いいえ』『シューベルトは』『え、だれです』これが音楽院に通うサキソフォン奏者だ。サキソフォン奏者はほかのサキソフォン奏者に影響されたり、手本を求めたりするが、とんでもない間違いでね。だれかが演奏するとき聴きたいのは西洋音楽の曲の来歴であって、サキソフォン奏者の来歴ではない」
ラッシャー氏はもちろん、このたび鬼籍へと入ったケリー氏も、クラシック・サクソフォンを、真のクラシック楽器として世間に認めさせようとしていた。サクソフォンがサクソフォンの中で留まらず、外の世界へ飛び出し、認めてもらうための、彼らなりのアプローチを試行錯誤・理論構築し、演奏・指導に邁進していた。サクソフォン界はまたひとり、一流の奏者を失ってしまったのだ。
追悼の意味を込めて、YouTube上の映像をご紹介。ミヒャエル・デンホフ Michael Denhoffの「Gegen-Satze」である。ソプラノ:カリーナ・ラッシャー、アルト:ジョン=エドワルド・ケリー、テナー:ブルース・ワインバーガー、バリトン:リンダ・バングスという、超大御所メンバー(シガード・ラッシャーが抜けた後のメンバー構成)。
あるあるですが
最近買った、ノートPCに関する記事(→http://kurisaxo.blogspot.jp/2015/02/pc.html)を書いた次の日に、eMMCの容量倍増モデル(32Gbytes→64Gbytes)が同一価格で発表されるとは…。まあ、ガジェット好きの宿命というか何というか。しかし、たった2ヶ月でモデルチェンジとは驚かされるなあ。
詳細は下記リンクより。eMMCの容量が増え、カラバリが追加。他のスペックは同一とのこと。
http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1502/13/news101.html
軽くてスタイリッシュ。なんと、重量はMacBook Air 11インチモデルを下回るのだ。このようなPCを求めている方で、コストパフォーマンスを重視される方(なんと30000円台!)には非常におすすめできる。さっそく、Amazonも取り扱いを開始した。
詳細は下記リンクより。eMMCの容量が増え、カラバリが追加。他のスペックは同一とのこと。
http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1502/13/news101.html
軽くてスタイリッシュ。なんと、重量はMacBook Air 11インチモデルを下回るのだ。このようなPCを求めている方で、コストパフォーマンスを重視される方(なんと30000円台!)には非常におすすめできる。さっそく、Amazonも取り扱いを開始した。
2015/02/12
Green Ray Saxophone Quartetのバレンタインコンサート
オーケストラ・ルゼルの演奏会後、半蔵門線に乗って表参道へ。写真家・井村重人さんのフォトスタジオ、「アーニーズスタジオ」で開かれるコンサートに伺った。今回は、Green Ray Saxophone Quartetが出演。
【Green Ray Saxophone Quartet: Valentine Studio Concert】
出演:Green Ray Saxophone Quartet(猪俣明日美、内田しおり、川﨑有記、池原亜紀)
日時:2015年2月11日 18:00開演
会場:アーニーズスタジオ
プログラム:
M.トーク - July
J.M.ルクレール - ソナタト調
C.コリア/旭井翔一 - アルマンド・ルンバ S&B版
伊藤康英 - サクソフォン・ドルチェ
キャロル・フロリオ - 四重奏曲
F.メンデルスゾーン=バルトルディ - 前奏曲とフーガ, op.35-5
R.ロジャース/Yuppi - マイ・ファニー・ヴァレンタイン
Green Ray Saxophone Quartetの演奏会は、これまでリサイタルを2回聴いたことがある。
http://kurisaxo.blogspot.jp/2012/03/green-ray-saxophone-quartet-1st-concert.html
http://kurisaxo.blogspot.jp/2014/11/green-ray-saxophone-quartet-3rd-concert.html
選曲/演奏、いずれも魅力的なカルテットだ。第1回コンサートでの「ランプリュヴ」や「July(今回の演奏会でも取り上げられていた)」、また第3回コンサートでの「倖せヲ呼ぶ嶌」など、音楽的に優れた作品を(誰の嗅覚なのかわからないが)探し出し、見事に提示してみせる様は、このくらいの世代のカルテットでは稀なことである。
今回も、バレンタイン・コンサートと銘打ちながら、まさかの1曲目からの「July」!そして、チック・コリア「アルマンド・ルンバ」のS&B二重奏版、さらにはフロリオやメンデルスゾーンの純クラシック等々と、驚きの選曲だった。デュオやトリオも演奏されたが(一番"面白かった"演奏は、なんとルクレール)、やはりキャロル・フロリオ以降の四重奏の響きが耳に残る。フロリオ~メンデルスゾーンの流れは、とても感動的。時代が近いこともあり、なんだか一曲のつながりのように聴こえた。
「サクソフォン・ドルチェ」は、アルトサクソフォン3本の作品で、これは「ジェラート・コン・カフェ」と「チョコレート・ダモーレ」のメドレー。初めて聴いたが、3重奏、そして同音域を活かした作品で、味わい深く、これはちょっと演奏してみたいとも思った。伊藤康英先生の、一口菓子のような作品の魅力って何物にも代えがたいものがあるなあ。
最後の、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」では、粋な演出とプチ・プレゼントも。選曲、演奏、その他まで、メンバーのこだわりが随所に感じられるコンサートであった。演奏会後は、そのまま会場で打ち上げ。なんだかんだ3時間くらい続いて、盛り上がったのだった。
楽しかったなあ。次の定期演奏会も期待!
【Green Ray Saxophone Quartet: Valentine Studio Concert】
出演:Green Ray Saxophone Quartet(猪俣明日美、内田しおり、川﨑有記、池原亜紀)
日時:2015年2月11日 18:00開演
会場:アーニーズスタジオ
プログラム:
M.トーク - July
J.M.ルクレール - ソナタト調
C.コリア/旭井翔一 - アルマンド・ルンバ S&B版
伊藤康英 - サクソフォン・ドルチェ
キャロル・フロリオ - 四重奏曲
F.メンデルスゾーン=バルトルディ - 前奏曲とフーガ, op.35-5
R.ロジャース/Yuppi - マイ・ファニー・ヴァレンタイン
Green Ray Saxophone Quartetの演奏会は、これまでリサイタルを2回聴いたことがある。
http://kurisaxo.blogspot.jp/2012/03/green-ray-saxophone-quartet-1st-concert.html
http://kurisaxo.blogspot.jp/2014/11/green-ray-saxophone-quartet-3rd-concert.html
選曲/演奏、いずれも魅力的なカルテットだ。第1回コンサートでの「ランプリュヴ」や「July(今回の演奏会でも取り上げられていた)」、また第3回コンサートでの「倖せヲ呼ぶ嶌」など、音楽的に優れた作品を(誰の嗅覚なのかわからないが)探し出し、見事に提示してみせる様は、このくらいの世代のカルテットでは稀なことである。
今回も、バレンタイン・コンサートと銘打ちながら、まさかの1曲目からの「July」!そして、チック・コリア「アルマンド・ルンバ」のS&B二重奏版、さらにはフロリオやメンデルスゾーンの純クラシック等々と、驚きの選曲だった。デュオやトリオも演奏されたが(一番"面白かった"演奏は、なんとルクレール)、やはりキャロル・フロリオ以降の四重奏の響きが耳に残る。フロリオ~メンデルスゾーンの流れは、とても感動的。時代が近いこともあり、なんだか一曲のつながりのように聴こえた。
「サクソフォン・ドルチェ」は、アルトサクソフォン3本の作品で、これは「ジェラート・コン・カフェ」と「チョコレート・ダモーレ」のメドレー。初めて聴いたが、3重奏、そして同音域を活かした作品で、味わい深く、これはちょっと演奏してみたいとも思った。伊藤康英先生の、一口菓子のような作品の魅力って何物にも代えがたいものがあるなあ。
最後の、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」では、粋な演出とプチ・プレゼントも。選曲、演奏、その他まで、メンバーのこだわりが随所に感じられるコンサートであった。演奏会後は、そのまま会場で打ち上げ。なんだかんだ3時間くらい続いて、盛り上がったのだった。
楽しかったなあ。次の定期演奏会も期待!
モバイルノートPCを買った
ノートPC、Asus X205TAを数週間前に購入した。30200円くらいだった。タブレットにはあまり興味がなくて(その昔、格安の某タブレットを買ったのだが、使わなくなってしまった)、キーボードが付いている、リーズナブルな端末があればと思っていたのだ。
30000円程度でWindowsが載った軽いノートPCは、その要望にぴったりだった。メール書きや楽譜書き等々に、すでに3回ほど外での長時間作業に使っているが、処理速度は相応ながら、軽くて(なんと1kgを切る)、スリムで、またバッテリーも持つ…良いことずくめ。テザリングでインターネットにも接続して使っている。これは活用の機会が増えそうだ。
30000円程度でWindowsが載った軽いノートPCは、その要望にぴったりだった。メール書きや楽譜書き等々に、すでに3回ほど外での長時間作業に使っているが、処理速度は相応ながら、軽くて(なんと1kgを切る)、スリムで、またバッテリーも持つ…良いことずくめ。テザリングでインターネットにも接続して使っている。これは活用の機会が増えそうだ。
2015/02/11
オーケストラ・ルゼル 第15回演奏会
すみだトリフォニーホールの大ホールに入るのはいつ以来だろう。何年も前に、N響のミュージック・トゥモローを聴きに来たことがあるのだが、それ以来かもしれない。本日は、見た目満席、というほどの入り。開演10分前くらいに飛び込んだのだが、なかなか座る場所を見つけられないほどだった。
【オーケストラ・ルゼル 第15回演奏会】
出演:オーケストラ・ルゼル、佐々木新平(指揮)、千田寧子(オルガン)
日時:2015年2月11日 13:30開演
会場:すみだトリフォニーホール・大ホール
プログラム:
C.サン=サーンス - 歌劇「サムソンとデリラ」よりバッカナール
M.ラヴェル - ラ・ヴァルス
C.サン=サーンス - 交響曲第3番(オルガン:千田寧子)
なんというプログラム!オール・フレンチで、フランス後期ロマン~近代派の名曲を取り揃えた、アマチュアのオーケストラながら意欲的なものである。超難曲「ラ・ヴァルス」を始め、練習はなかなかに大変だったことだろうと推察するが、演奏そのものも、演奏会としても、とても満足するものであった。
時折アンサンブルの精度としては甘い箇所があるものの、盛り上がりの作り方はなかなかのもの。もちろん指揮者の旗振りによるところもあるだろうが、メンバーが比較的若いところも、その一因となっているはずだ。そういえば、アマチュアのオーケストラって東京に、関東に、いくつくらいあるのだろうか。私も昨年から今回を含めて3団体ほど聴いているが、おそらく他にもたくさんあるのだろう。
「バッカナール」での後半への煽りは、演奏者の"ノリ"と指揮者の引っ張りが見事に結実した結果である。客席も盛り上がった!「ラ・ヴァルス」は、普段私自身が聴いている演奏(バーンスタインxフランス国立管とか、クリュイタンスxパリ音楽院管とか)にはさすがに追いつけない部分があるが、全体の響きの作り方などはぐっとくるものがあった。何よりその旺盛なチャレンジ精神に大拍手である。「交響曲第3番」は、これはもう否応なしに盛り上がりますね。オルガンとオーケストラが、徐々に濃密な絡み合いを見せ、後半に向けて見事に融合していく様を楽しんだ。アンコールはなかった。たしかに「交響曲第3番」のあとに持ってくるもの…といっても、想像がつかないな(笑)。
いやはや。それにしても、オーケストラって良いですね。チューニングの音ですら、上質なアペリティフのよう。弦が弾いたときの、ふわっとした空気感(録音では楽しめない)。各管楽器の、まるでソリストのような扱い。視覚的にも聴覚的にも、管楽アンサンブルにはなかなか真似できない瞬間を、各所で楽しんだ。何よりも「これこれ!」と膝を打つような名曲の数々!である。サクソフォンは定席がないからなあ(苦笑)。
【オーケストラ・ルゼル 第15回演奏会】
出演:オーケストラ・ルゼル、佐々木新平(指揮)、千田寧子(オルガン)
日時:2015年2月11日 13:30開演
会場:すみだトリフォニーホール・大ホール
プログラム:
C.サン=サーンス - 歌劇「サムソンとデリラ」よりバッカナール
M.ラヴェル - ラ・ヴァルス
C.サン=サーンス - 交響曲第3番(オルガン:千田寧子)
なんというプログラム!オール・フレンチで、フランス後期ロマン~近代派の名曲を取り揃えた、アマチュアのオーケストラながら意欲的なものである。超難曲「ラ・ヴァルス」を始め、練習はなかなかに大変だったことだろうと推察するが、演奏そのものも、演奏会としても、とても満足するものであった。
時折アンサンブルの精度としては甘い箇所があるものの、盛り上がりの作り方はなかなかのもの。もちろん指揮者の旗振りによるところもあるだろうが、メンバーが比較的若いところも、その一因となっているはずだ。そういえば、アマチュアのオーケストラって東京に、関東に、いくつくらいあるのだろうか。私も昨年から今回を含めて3団体ほど聴いているが、おそらく他にもたくさんあるのだろう。
「バッカナール」での後半への煽りは、演奏者の"ノリ"と指揮者の引っ張りが見事に結実した結果である。客席も盛り上がった!「ラ・ヴァルス」は、普段私自身が聴いている演奏(バーンスタインxフランス国立管とか、クリュイタンスxパリ音楽院管とか)にはさすがに追いつけない部分があるが、全体の響きの作り方などはぐっとくるものがあった。何よりその旺盛なチャレンジ精神に大拍手である。「交響曲第3番」は、これはもう否応なしに盛り上がりますね。オルガンとオーケストラが、徐々に濃密な絡み合いを見せ、後半に向けて見事に融合していく様を楽しんだ。アンコールはなかった。たしかに「交響曲第3番」のあとに持ってくるもの…といっても、想像がつかないな(笑)。
いやはや。それにしても、オーケストラって良いですね。チューニングの音ですら、上質なアペリティフのよう。弦が弾いたときの、ふわっとした空気感(録音では楽しめない)。各管楽器の、まるでソリストのような扱い。視覚的にも聴覚的にも、管楽アンサンブルにはなかなか真似できない瞬間を、各所で楽しんだ。何よりも「これこれ!」と膝を打つような名曲の数々!である。サクソフォンは定席がないからなあ(苦笑)。
2015/02/09
浜松アカデミーの「ボレロ」 on YouTube
第20回浜松国際管楽器アカデミー&フェスティバル「オープニングコンサート」で演奏された、モーリス・ラヴェル「ボレロ」の動画が公式にYouTubeにアップロードされている。
サクソフォンはテナーがオーティス・マーフィ氏、ソプラノがジャン=イヴ・フルモー氏だ!なんと豪華な!実際の演奏は、想像していた内容からすると個人的には「あれれ?」となってしまったが…。
サクソフォンはテナーがオーティス・マーフィ氏、ソプラノがジャン=イヴ・フルモー氏だ!なんと豪華な!実際の演奏は、想像していた内容からすると個人的には「あれれ?」となってしまったが…。
"City Noir (Nonesuch)"がグラミー賞"Best Orchestral Performance"受賞!
ティモシー・マカリスター Timothy McAllister氏が参加したアルバム「John Adams - City Noir (Nonesuch)」は、グラミー賞の"Best Orchestral Performance"と"Best Engineered (Classical) Album"にノミネートされていた。
先ほど賞の発表が行われたのだが、なんと"Best Orchestral Performance"を受賞したとのこと!素晴らしい!公式発表は、このリンクから参照することができる。いろんなジャンルがあるのだなあ。
たしかに素晴らしいアルバムなので、まだ聴いていない方はぜひ耳にしていただきたいところ(以前書いたレビューはこちら)。
過去の受賞者リストは、こちらから(2015年の結果がもう追記されている)。サクソフォン協奏曲を含むアルバムの受賞は初めて!
先ほど賞の発表が行われたのだが、なんと"Best Orchestral Performance"を受賞したとのこと!素晴らしい!公式発表は、このリンクから参照することができる。いろんなジャンルがあるのだなあ。
たしかに素晴らしいアルバムなので、まだ聴いていない方はぜひ耳にしていただきたいところ(以前書いたレビューはこちら)。
過去の受賞者リストは、こちらから(2015年の結果がもう追記されている)。サクソフォン協奏曲を含むアルバムの受賞は初めて!
"kuri_saxo"10週年記念プレゼント当選者発表
10周年プレゼント企画、22名の方からの応募がございました。たくさんのご応募、ありがとうございました!
本日抽選を行いました。まずは応募順に名前を並べて、、、rand()関数を各名前の横に書き込み、乱数の最大値となる方を当選者とします。
rand()関数を横に書き込んだ結果。乱数が最大値となったのは、「ME-」さんです。当選おめでとうございます!(外れてしまった方、申し訳ありません)
「ME-」さんには、Quatuor Alexandre「Reminiscence」と、Sax 4th Avenue「Delusions de Grandeur」をお送りいたします。詳細は追って連絡申し上げますので、今しばらくお待ちください。
本日抽選を行いました。まずは応募順に名前を並べて、、、rand()関数を各名前の横に書き込み、乱数の最大値となる方を当選者とします。
rand()関数を横に書き込んだ結果。乱数が最大値となったのは、「ME-」さんです。当選おめでとうございます!(外れてしまった方、申し訳ありません)
「ME-」さんには、Quatuor Alexandre「Reminiscence」と、Sax 4th Avenue「Delusions de Grandeur」をお送りいたします。詳細は追って連絡申し上げますので、今しばらくお待ちください。
2015/02/08
セルジュ・ビション氏のLP
島根県のF様より、セルジュ・ビション Serge BICHON氏のLP(1981年録音)を復刻したCD-Rをお送りいただいた。この場を借りて改めて御礼申し上げたい。
ビション氏は、長らくリヨン音楽院サクソフォン科の教授を務めたサクソフォン奏者である。現パリ国立高等音楽院教授のクロード・ドゥラングル氏を始めとする名奏者の輩出、リヨン・サクソフォンアンサンブルの結成などを行い、名教師として知られている。奏者としての活動は、現代にあっては、いくつかの録音や、Quatuor de saxophones Rhône-Alpesの活動が有名だ。この録音には、四重奏、独奏、室内楽が収録されている。
Serge Bichon, saxophone
Roger Muraro, pf
Florent Schmitt - Quatuor (Quatuor de saxophones Rhône-Alpes)
Ida Gotkovsky - Brillance
Alfred Desenclos - Prelude, cadence et finale
Lucie Robert - supplications (Trio Evolution)
丸く、澄んだ音色である。1981年という時代にあって、最近(2015年)のフランスの主流派に通じる部分が散見される。ヴィブラートは深くかかっているのだが、どこか無機質というか、あれ?これはドゥラングル教授のCD「Jardin Secret」あたりで聴かれるタイプの演奏にも似ているなあ、などと感じた。技術的には不安要素はなく、丁寧で落ち着いた演奏である。
作品としては、シュミット、ゴトコフスキー、デザンクロの作品は当たり前のように存じていたが、ロベールの「Supplications」という作品(サクソフォン、オーボエ、チェロ)をとても楽しく聴いた。この3本から生まれる響きは、聴く前は想像できなかったのだが、とにかく美しいのだ!こんな作品があったとは知らなかった。
今日のサクソフォンのトレンドにつながる、その萌芽を垣間見るようで、興味深く全編を聴いた。録音に聴かれるスタイルから、サクソフォンの系譜をたどってまとめていったら、楽しいだろうなあ。ある意味では「出発点」とでも言ってしまおうか、貴重な記録の一つであることには、間違いないだろう。
ピアノは、ロジェ・ムラロ Roger Muraro氏。1977年にパリ国立高等音楽院のピアノ科を卒業し、メシアン弾きとして高名な奏者である。のみならず、1978年にはパリ国立高等音楽院のサクソフォン科(ダニエル・デファイエ氏のクラス)をも卒業している、というスーパーマン。ピアノ科とサクソフォン科を両方卒業するって、どんなやねん!とツッコミを入れたくなるが、そんなこともあって録音のピアノとして招聘されたのではないかな。
Quatuor de saxophones Rhône-Alpesのメンバーは、下記の通り。
Serge Bichon, ssax
Daniel Gaudet, asax
Daniel Cochet, tsax
Roger Michel Frederique, bsax
ビション氏は、長らくリヨン音楽院サクソフォン科の教授を務めたサクソフォン奏者である。現パリ国立高等音楽院教授のクロード・ドゥラングル氏を始めとする名奏者の輩出、リヨン・サクソフォンアンサンブルの結成などを行い、名教師として知られている。奏者としての活動は、現代にあっては、いくつかの録音や、Quatuor de saxophones Rhône-Alpesの活動が有名だ。この録音には、四重奏、独奏、室内楽が収録されている。
Serge Bichon, saxophone
Roger Muraro, pf
Florent Schmitt - Quatuor (Quatuor de saxophones Rhône-Alpes)
Ida Gotkovsky - Brillance
Alfred Desenclos - Prelude, cadence et finale
Lucie Robert - supplications (Trio Evolution)
丸く、澄んだ音色である。1981年という時代にあって、最近(2015年)のフランスの主流派に通じる部分が散見される。ヴィブラートは深くかかっているのだが、どこか無機質というか、あれ?これはドゥラングル教授のCD「Jardin Secret」あたりで聴かれるタイプの演奏にも似ているなあ、などと感じた。技術的には不安要素はなく、丁寧で落ち着いた演奏である。
作品としては、シュミット、ゴトコフスキー、デザンクロの作品は当たり前のように存じていたが、ロベールの「Supplications」という作品(サクソフォン、オーボエ、チェロ)をとても楽しく聴いた。この3本から生まれる響きは、聴く前は想像できなかったのだが、とにかく美しいのだ!こんな作品があったとは知らなかった。
今日のサクソフォンのトレンドにつながる、その萌芽を垣間見るようで、興味深く全編を聴いた。録音に聴かれるスタイルから、サクソフォンの系譜をたどってまとめていったら、楽しいだろうなあ。ある意味では「出発点」とでも言ってしまおうか、貴重な記録の一つであることには、間違いないだろう。
ピアノは、ロジェ・ムラロ Roger Muraro氏。1977年にパリ国立高等音楽院のピアノ科を卒業し、メシアン弾きとして高名な奏者である。のみならず、1978年にはパリ国立高等音楽院のサクソフォン科(ダニエル・デファイエ氏のクラス)をも卒業している、というスーパーマン。ピアノ科とサクソフォン科を両方卒業するって、どんなやねん!とツッコミを入れたくなるが、そんなこともあって録音のピアノとして招聘されたのではないかな。
Quatuor de saxophones Rhône-Alpesのメンバーは、下記の通り。
Serge Bichon, ssax
Daniel Gaudet, asax
Daniel Cochet, tsax
Roger Michel Frederique, bsax
2015/02/06
上野星矢フルートリサイタル(2015年東京公演)
凄いものを聴いてしまった。
【上野星矢フルートリサイタル 東京公演】
出演:上野星矢(フルート)、内門卓也(ピアノ)
日時:2015年2月5日 19:00開演
会場:白寿ホール
プログラム:
フランシス・プーランク - 廃墟を見守る笛吹きの像
アンドレ・ジョリヴェ - リノスの歌
ピエール・ブーレーズ - ソナチネ
ベーラ・バルトーク - 15のハンガリー農民の歌 BB79/Sz.71
セルゲイ・プロコフィエフ - フルート・ソナタ ニ長調 作品94
ポール・タファネル - 魔弾の射手による幻想曲
尾崎豊 - I Love You(アンコール)
松任谷由実 - 海を見ていた午後(アンコール)
松任谷由実 - 春よ来い(アンコール)
昨年、リヨン歌劇場管にゲスト主席フルート奏者として客演したという話を聞き、気になっていた奏者。中学生の頃にはリサイタルを開催、藝大在学中に、J.P.ランパル国際コンクール優勝、パリ国立高等音楽院に留学し(だれに師事したのかな)、審査員全員一致の一等賞ならびに審査員特別賞を獲得して卒業…という、絵に描いたようなエリートコースを突き進んでいる演奏家である。その経歴に違わぬ、いやむしろその経歴すら意味をなさないほどの、素晴らしい演奏であった。
会場となった白寿ホール(白寿生科学研究所なる会社の付属ホールなのだそうな)には初めて入ったが、素晴らしい内装や音響が、コンサートの非日常感を演出していた。
なんだかフルートを聴いた、という感じがせず、純粋に音楽聴きました、という聴後感。まさに新世代の演奏家だ。堅牢なフレーズの保持力、ヴィブラートの使い分けを含む多彩な表現、高音から低音まで均一なパワー、初めて体験するほどのダイナミクス、そして何より輝かしい音色を武器に、重量級のプログラムを見事に吹ききっていた。
特に、第一部の印象は筆舌に尽くし難い。それでも敢えて書くならば…ジョリヴェ最終部の、細かいフレーズが幾重にも重なってゆくように錯覚するほどの音運び。また、曲の持つ世界観のせいか、聴き手を縛り付けて離さないような"強い"演奏だと感じた。バルトークは、上野氏のフルートの圧倒的なまでの表現力の豊かさを感じた。音符的には決して難しい作品ではないと思ったが、楽章ごとのスタイルの吹き分けの多彩さ・幅の広さに驚く。また、細かいアゴーギクやバランスの取り方等、ピアノとのアンサンブルの妙にも強い感動を覚えた。ブーレーズは、個人的には本日の白眉。呆れるほどのテクニカルなフレーズも飛び出し、人間業を超えた作品を、高い集中力で吹ききっていた。知らず知らずのうちに私自身も緊張し、聴き終わった瞬間に、思わず動悸が…。
ところで、ブーレーズの作品は、ほぼ初めて聴いたような作品だったが、実に面白い。作品自体は、12音技法のお手本のような(さらに突き進み、トータル・セリーの萌芽が一部に見られるほど)作品ながら、透明感のある響きが大部分を占める。さらに、時折現れるピアノのグリッサンドからは、実に"甘い"響きを感じた。中間部以降ではロックとでも形容してしまえるような高速なリズム…どこまでも続くと思われるような長大な…は、フルート、ピアノともども超高度なソルフェージュ能力を要求されること請け合いだが、ピシャリと決まればこれほどかっこいいことはないだろう(今日もそうだった)。
第二部は、第一部に比べればかなりリラックスした雰囲気があったが、それでも強靭な上手さを誇る。プロコフィエフにおいて、徹頭徹尾高尚な音楽表現から崩れなかった様子には、会場がとても沸いたし、タファネルに至っては19世紀ヴィルトゥオーゾ・スタイルの作品そのものを、わかりやすく楽しく、また暗譜で一気に吹ききっており、プログラムの最後にふさわしい盛り上がりをみせた。いやはや、素晴らしい。
アンコールは、日本の歌謡曲を3曲ほど。こうしたメロディ先行型の作品でも、嫌味にならないのは才能ですね。「海を見ていた午後」での、極小ppの響きには、しびれる。
また、全般を通してフルートの素晴らしさのみならず、ピアノの内門さんの素晴らしさも際立っていた。特に、ブーレーズ作品やプロコフィエフでの処理能力の高さ、タッチの多彩さなど、アンサンブル・ピアニストとして大成しつつある、そんなところを見通すことができるような演奏だった。東京藝術大学出身で、なんと大学での専門は作曲だそうで、作曲家ならではの高いソルフェージュ能力やアナリーゼ能力が、そのまま演奏に反映されているのかなあと、そんなことも思ったのだった。
【上野星矢フルートリサイタル 東京公演】
出演:上野星矢(フルート)、内門卓也(ピアノ)
日時:2015年2月5日 19:00開演
会場:白寿ホール
プログラム:
フランシス・プーランク - 廃墟を見守る笛吹きの像
アンドレ・ジョリヴェ - リノスの歌
ピエール・ブーレーズ - ソナチネ
ベーラ・バルトーク - 15のハンガリー農民の歌 BB79/Sz.71
セルゲイ・プロコフィエフ - フルート・ソナタ ニ長調 作品94
ポール・タファネル - 魔弾の射手による幻想曲
尾崎豊 - I Love You(アンコール)
松任谷由実 - 海を見ていた午後(アンコール)
松任谷由実 - 春よ来い(アンコール)
昨年、リヨン歌劇場管にゲスト主席フルート奏者として客演したという話を聞き、気になっていた奏者。中学生の頃にはリサイタルを開催、藝大在学中に、J.P.ランパル国際コンクール優勝、パリ国立高等音楽院に留学し(だれに師事したのかな)、審査員全員一致の一等賞ならびに審査員特別賞を獲得して卒業…という、絵に描いたようなエリートコースを突き進んでいる演奏家である。その経歴に違わぬ、いやむしろその経歴すら意味をなさないほどの、素晴らしい演奏であった。
会場となった白寿ホール(白寿生科学研究所なる会社の付属ホールなのだそうな)には初めて入ったが、素晴らしい内装や音響が、コンサートの非日常感を演出していた。
なんだかフルートを聴いた、という感じがせず、純粋に音楽聴きました、という聴後感。まさに新世代の演奏家だ。堅牢なフレーズの保持力、ヴィブラートの使い分けを含む多彩な表現、高音から低音まで均一なパワー、初めて体験するほどのダイナミクス、そして何より輝かしい音色を武器に、重量級のプログラムを見事に吹ききっていた。
特に、第一部の印象は筆舌に尽くし難い。それでも敢えて書くならば…ジョリヴェ最終部の、細かいフレーズが幾重にも重なってゆくように錯覚するほどの音運び。また、曲の持つ世界観のせいか、聴き手を縛り付けて離さないような"強い"演奏だと感じた。バルトークは、上野氏のフルートの圧倒的なまでの表現力の豊かさを感じた。音符的には決して難しい作品ではないと思ったが、楽章ごとのスタイルの吹き分けの多彩さ・幅の広さに驚く。また、細かいアゴーギクやバランスの取り方等、ピアノとのアンサンブルの妙にも強い感動を覚えた。ブーレーズは、個人的には本日の白眉。呆れるほどのテクニカルなフレーズも飛び出し、人間業を超えた作品を、高い集中力で吹ききっていた。知らず知らずのうちに私自身も緊張し、聴き終わった瞬間に、思わず動悸が…。
ところで、ブーレーズの作品は、ほぼ初めて聴いたような作品だったが、実に面白い。作品自体は、12音技法のお手本のような(さらに突き進み、トータル・セリーの萌芽が一部に見られるほど)作品ながら、透明感のある響きが大部分を占める。さらに、時折現れるピアノのグリッサンドからは、実に"甘い"響きを感じた。中間部以降ではロックとでも形容してしまえるような高速なリズム…どこまでも続くと思われるような長大な…は、フルート、ピアノともども超高度なソルフェージュ能力を要求されること請け合いだが、ピシャリと決まればこれほどかっこいいことはないだろう(今日もそうだった)。
第二部は、第一部に比べればかなりリラックスした雰囲気があったが、それでも強靭な上手さを誇る。プロコフィエフにおいて、徹頭徹尾高尚な音楽表現から崩れなかった様子には、会場がとても沸いたし、タファネルに至っては19世紀ヴィルトゥオーゾ・スタイルの作品そのものを、わかりやすく楽しく、また暗譜で一気に吹ききっており、プログラムの最後にふさわしい盛り上がりをみせた。いやはや、素晴らしい。
アンコールは、日本の歌謡曲を3曲ほど。こうしたメロディ先行型の作品でも、嫌味にならないのは才能ですね。「海を見ていた午後」での、極小ppの響きには、しびれる。
また、全般を通してフルートの素晴らしさのみならず、ピアノの内門さんの素晴らしさも際立っていた。特に、ブーレーズ作品やプロコフィエフでの処理能力の高さ、タッチの多彩さなど、アンサンブル・ピアニストとして大成しつつある、そんなところを見通すことができるような演奏だった。東京藝術大学出身で、なんと大学での専門は作曲だそうで、作曲家ならではの高いソルフェージュ能力やアナリーゼ能力が、そのまま演奏に反映されているのかなあと、そんなことも思ったのだった。
2015/02/04
"kuri_saxo"10周年プレゼントご応募ありがとうございました!
"kuri_saxo"10周年プレゼントご応募ありがとうございました!20ちょっとくらいの応募がありました。メッセージもありがたく読ませていただきました。時間はかかりますが、1件1件お返事させていただきます。
抽選は、今週末くらいを予定しております。今しばらくお待ちください。
抽選は、今週末くらいを予定しております。今しばらくお待ちください。
第34回サクソフォーンフェスティバル2015(その2)
フェスティバルの感想。前回の記事のつづき。
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♪第31回日本管打楽器コンクール入賞者披露演奏 - 斎藤健太
吉松隆 - ファジィバード・ソナタ
第二位と第三位の方は、二次予選での演奏曲を、第一位の方は本選での演奏曲を、それぞれ演奏するのが慣例となっている。斎藤さん演奏の「ファジィバード・ソナタ」は、もちろん初めて聴いたのだが、イントロのカチッとした演奏や、また全体を通してスタイリッシュな佇まいなど、ライヴとは思えない安定感など、新世代の演奏家として持つべき資質を多く備えていると感じるのだった。小ホールから大ホールに移動した直後で、自分の耳が慣れておらず、少し音場が遠目に聴こえた。
♪第31回日本管打楽器コンクール入賞者披露演奏 - 松下洋
T.エスケシュ - リュット
私自身が初めてこの作品をYouTubeか何かで聴いたときは、頭の上にはてなマークが付いたのだが、今では、噛めば噛むほど味わい深いというか、奥深い素敵な作品だなと感じている。松下君の、この曲に対する没入度合いは相当なもので、またホールをよく満たす音響とも相まって、聴き手としてはハードな作品ながら、曲の魅力を存分に伝える演奏だったと思う。どんな曲も魅力的に聴かせてしまう、だなんて、夢想はするけどなかなか大変なことだ。こういうことができる演奏家はなかなか稀だと思う。あの独特の衣装(松下君本人の言葉によれば「アディダスのジャージに見えると言われた」とのこと)については、周囲から「マイケル・ジャクソン…」との声が漏れており、なんだか可笑しかった。
♪第31回日本管打楽器コンクール入賞者披露演奏 - 中島諒
A.ウェニアン - ラプソディ
かつしかシンフォニーヒルズで聴いた大賞演奏会の様子を思い出す。あの時も、暗譜で、ホールをしっかりと鳴らし切る音で闊達に吹いていたなあ。今回はピアノとのデュオであったとはいえ、スケールの大きさを堪能した。初めて、拝聴したのは、彼がまだ高校生の頃だったが、もう大学院生なんだなあ。スタンダードなレパートリーについてはもはや当たり前のように上手く、作品の良さを聴き手にプレゼンテーションする能力に長けている。「未知の」レパートリーを、世に問うような、また、サクソフォンの素晴らしさを、未だ知らない人に広めるような、そんな活動にも飛び込んでいって欲しいなあと思う。例えば、ロバの「カブキ」の演奏や、管打での「アラベスク3(直接聴いてはいないが、話を聞く限り)」は、そういった境地に達するものであった。
♪第4回ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクール優勝者披露演奏 - 松下洋
N.プランチャロワン - マハ・マントラ
昨年の、第4回ロンデックス国際コンクールでの松下君優勝のニュースは、驚きと賞賛を持って迎えられた。コンクールのすべての模様は中継&録画配信されており、私も本選での演奏はYouTubeでしっかりと観たのだった。思いがけずこのような場でその演奏を再度聴くことができ、嬉しい。エキゾチックなテイストあふれる、独特な作品であり、モードの影響を色濃く感じる旋律、民族楽器を模した特殊奏法(ストロー「オープン・シティ」ばりの二本同時奏法まで!)などが、耳に残る。が、決してワケノワカラナイ作品ではなく、すっと耳に入ってくるのは、やはり私がアジア人だからなのだろう。松下君の演奏は、上にも書いた通り、聴き手が初めて耳にする作品であっても、演奏で納得させてしまう、という才能を、この曲でも感じた。ピアノ黒岩くんとのアンサンブルも、おなじみになったが、相変わらずの強力なアンサンブルである。
♪須川展也が俯瞰するサクソフォーンレパートリー - 須川展也、小柳美奈子、SAXBAND、フェスティバル・サクソフォーン・アンサンブル
G.カッチーニ - アヴェ・マリア
狭間美帆 - 秘色の王国
J.ドーシー - ウードルズ・オブ・ヌードルズ
長生淳 - パガニーニ・ロスト
M.エレビー - シナモン・コンチェルト
フェスティバル・コンサートが一人の奏者をピックアップして企画されるのは、1997年のボーンカンプ氏来日リサイタルくらいではないだろうか。チラシもどかんと須川氏を載せて、全面推し、というような感じ。ここ数年の、須川氏の活動やレパートリーを一気に俯瞰できる内容となっており、とってもお得。もちろん、個人的にも大変興味深く聴いた。須川氏の演奏や活動の凄さはいまさら説明するまでもない。美しい音色と圧倒的な響き、整ったフレージング、超絶技巧も何のその、といった強力な武器を使って、作曲家や演奏家とのコラボレーションにより多くの聴衆にサクソフォンの魅力を伝えている。誤解を恐れず言えば、日本のサクソフォンが、須川氏に負っている部分の大きさたるや相当なもの、なのである。
最初の2曲は、奥様である小柳美奈子さんとの共演。日本を代表する室内楽の1つだ。カッチーニの「アヴェ・マリア」の儚げなメロディの美しさを歌い上げ(だが決して嫌味にならない)、さらに新作初演となる狭間美帆氏の「秘色の王国」では、タイトルからは想像もつかないようなハードかつファンキーな響きをがんがんと聴かせる。この新作、全編を通して良い作品と感じたが、第三楽章はかなり人気が出そうだ。
続いて、須川展也SAXBANDと須川氏の共演。お弟子さんたちと組んだアンサンブルで、「ウードルズ・オブ・ヌードルズ」「パガニーニ・ロスト」という、対照的、しかしどちらも超超テクニカルな作品たち。まるでお祭りのような楽しさで、一気に聴き通してしまった。
最後は、エレビーの「協奏曲」。もともとは吹奏楽のために書かれた作品を、サクソフォン・アンサンブル版に編み直したそうだ。なんとかっこいい。吹奏楽とサクソフォンのために書かれた作品の中でも、際立って楽しい作品と感じた。これはCDを買わないと!
♪フェスティバルオーケストラ
A.グラズノフ - バレエ音楽「ライモンダ」より
12年にわたってサクソフォーン・フェスティバルを聴いているが、フェスティバルオーケストラはずいぶんと布陣が若くなったなあ、という印象。平均年齢を算出したら、面白いかも。
♪SAX大合奏2015
G.ホルスト - 「惑星」より木星
J.P.スーザ - 星条旗よ永遠なれ
最近は、最後のこの企画までしっかり聴くようにしている。ホールを満たす大音響からは、なんとも形容しがたい感動を受ける。
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以上。毎度のことながら、フェスティバルを企画運営する、実行委員長ほかスタッフの方々に大感謝!である。こうして楽しく聴けるのも、裏で働いてくれている皆様のおかげだ。
来年は、上田卓氏が実行委員長で、2016/2/26,27に開催予定とのこと。
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♪第31回日本管打楽器コンクール入賞者披露演奏 - 斎藤健太
吉松隆 - ファジィバード・ソナタ
第二位と第三位の方は、二次予選での演奏曲を、第一位の方は本選での演奏曲を、それぞれ演奏するのが慣例となっている。斎藤さん演奏の「ファジィバード・ソナタ」は、もちろん初めて聴いたのだが、イントロのカチッとした演奏や、また全体を通してスタイリッシュな佇まいなど、ライヴとは思えない安定感など、新世代の演奏家として持つべき資質を多く備えていると感じるのだった。小ホールから大ホールに移動した直後で、自分の耳が慣れておらず、少し音場が遠目に聴こえた。
♪第31回日本管打楽器コンクール入賞者披露演奏 - 松下洋
T.エスケシュ - リュット
私自身が初めてこの作品をYouTubeか何かで聴いたときは、頭の上にはてなマークが付いたのだが、今では、噛めば噛むほど味わい深いというか、奥深い素敵な作品だなと感じている。松下君の、この曲に対する没入度合いは相当なもので、またホールをよく満たす音響とも相まって、聴き手としてはハードな作品ながら、曲の魅力を存分に伝える演奏だったと思う。どんな曲も魅力的に聴かせてしまう、だなんて、夢想はするけどなかなか大変なことだ。こういうことができる演奏家はなかなか稀だと思う。あの独特の衣装(松下君本人の言葉によれば「アディダスのジャージに見えると言われた」とのこと)については、周囲から「マイケル・ジャクソン…」との声が漏れており、なんだか可笑しかった。
♪第31回日本管打楽器コンクール入賞者披露演奏 - 中島諒
A.ウェニアン - ラプソディ
かつしかシンフォニーヒルズで聴いた大賞演奏会の様子を思い出す。あの時も、暗譜で、ホールをしっかりと鳴らし切る音で闊達に吹いていたなあ。今回はピアノとのデュオであったとはいえ、スケールの大きさを堪能した。初めて、拝聴したのは、彼がまだ高校生の頃だったが、もう大学院生なんだなあ。スタンダードなレパートリーについてはもはや当たり前のように上手く、作品の良さを聴き手にプレゼンテーションする能力に長けている。「未知の」レパートリーを、世に問うような、また、サクソフォンの素晴らしさを、未だ知らない人に広めるような、そんな活動にも飛び込んでいって欲しいなあと思う。例えば、ロバの「カブキ」の演奏や、管打での「アラベスク3(直接聴いてはいないが、話を聞く限り)」は、そういった境地に達するものであった。
♪第4回ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクール優勝者披露演奏 - 松下洋
N.プランチャロワン - マハ・マントラ
昨年の、第4回ロンデックス国際コンクールでの松下君優勝のニュースは、驚きと賞賛を持って迎えられた。コンクールのすべての模様は中継&録画配信されており、私も本選での演奏はYouTubeでしっかりと観たのだった。思いがけずこのような場でその演奏を再度聴くことができ、嬉しい。エキゾチックなテイストあふれる、独特な作品であり、モードの影響を色濃く感じる旋律、民族楽器を模した特殊奏法(ストロー「オープン・シティ」ばりの二本同時奏法まで!)などが、耳に残る。が、決してワケノワカラナイ作品ではなく、すっと耳に入ってくるのは、やはり私がアジア人だからなのだろう。松下君の演奏は、上にも書いた通り、聴き手が初めて耳にする作品であっても、演奏で納得させてしまう、という才能を、この曲でも感じた。ピアノ黒岩くんとのアンサンブルも、おなじみになったが、相変わらずの強力なアンサンブルである。
♪須川展也が俯瞰するサクソフォーンレパートリー - 須川展也、小柳美奈子、SAXBAND、フェスティバル・サクソフォーン・アンサンブル
G.カッチーニ - アヴェ・マリア
狭間美帆 - 秘色の王国
J.ドーシー - ウードルズ・オブ・ヌードルズ
長生淳 - パガニーニ・ロスト
M.エレビー - シナモン・コンチェルト
フェスティバル・コンサートが一人の奏者をピックアップして企画されるのは、1997年のボーンカンプ氏来日リサイタルくらいではないだろうか。チラシもどかんと須川氏を載せて、全面推し、というような感じ。ここ数年の、須川氏の活動やレパートリーを一気に俯瞰できる内容となっており、とってもお得。もちろん、個人的にも大変興味深く聴いた。須川氏の演奏や活動の凄さはいまさら説明するまでもない。美しい音色と圧倒的な響き、整ったフレージング、超絶技巧も何のその、といった強力な武器を使って、作曲家や演奏家とのコラボレーションにより多くの聴衆にサクソフォンの魅力を伝えている。誤解を恐れず言えば、日本のサクソフォンが、須川氏に負っている部分の大きさたるや相当なもの、なのである。
最初の2曲は、奥様である小柳美奈子さんとの共演。日本を代表する室内楽の1つだ。カッチーニの「アヴェ・マリア」の儚げなメロディの美しさを歌い上げ(だが決して嫌味にならない)、さらに新作初演となる狭間美帆氏の「秘色の王国」では、タイトルからは想像もつかないようなハードかつファンキーな響きをがんがんと聴かせる。この新作、全編を通して良い作品と感じたが、第三楽章はかなり人気が出そうだ。
続いて、須川展也SAXBANDと須川氏の共演。お弟子さんたちと組んだアンサンブルで、「ウードルズ・オブ・ヌードルズ」「パガニーニ・ロスト」という、対照的、しかしどちらも超超テクニカルな作品たち。まるでお祭りのような楽しさで、一気に聴き通してしまった。
最後は、エレビーの「協奏曲」。もともとは吹奏楽のために書かれた作品を、サクソフォン・アンサンブル版に編み直したそうだ。なんとかっこいい。吹奏楽とサクソフォンのために書かれた作品の中でも、際立って楽しい作品と感じた。これはCDを買わないと!
♪フェスティバルオーケストラ
A.グラズノフ - バレエ音楽「ライモンダ」より
12年にわたってサクソフォーン・フェスティバルを聴いているが、フェスティバルオーケストラはずいぶんと布陣が若くなったなあ、という印象。平均年齢を算出したら、面白いかも。
♪SAX大合奏2015
G.ホルスト - 「惑星」より木星
J.P.スーザ - 星条旗よ永遠なれ
最近は、最後のこの企画までしっかり聴くようにしている。ホールを満たす大音響からは、なんとも形容しがたい感動を受ける。
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以上。毎度のことながら、フェスティバルを企画運営する、実行委員長ほかスタッフの方々に大感謝!である。こうして楽しく聴けるのも、裏で働いてくれている皆様のおかげだ。
来年は、上田卓氏が実行委員長で、2016/2/26,27に開催予定とのこと。
2015/02/02
友人夫妻の結婚式前撮りへ
有給休暇を取得し、友人M夫妻(大学時代の吹奏楽団の先輩後輩)の前撮りへ。もちろん本チャンのカメラマンはいるのだが、諸事情あって別のカメラも必要ということで、呼ばれて伺ったのだ。とっても素敵な会場、スタッフの行き届いた気遣い、何よりご夫妻の美しさ&かっこよさ!写真を撮るのはなかなか責任重大で大変だったが(ボディはNEX-5Nに、レンズは50mm F1.8、もしくは16mm F2.8&Fish-Eye Convなどを使用)、大変充実した時間を過ごすことができた。写真も気に入っていただけて良かった。
帰り際には、上野の大統領支店にて飲み。いろいろな話が飛び出して、時間を忘れ、こちらもとても楽しかった。
帰り際には、上野の大統領支店にて飲み。いろいろな話が飛び出して、時間を忘れ、こちらもとても楽しかった。
第34回サクソフォーンフェスティバル2015(その1)
今年のサクソフォーン・フェスティバル。2日目(2015/2/1@パルテノン多摩)を最初から最後まで聴いた。以下に感想を。
♪音大生によるアンサンブル - 東邦音楽大学・短期大学
A.コレッリ/圓田勇一 - 合奏協奏曲集作品6より"クリスマス協奏曲"
コレルリの「クリスマス」とは、また曲が良いですね。少人数ながらかなり鳴らしている印象で、この曲が持つポリフォニックな効果がよく出ていた。この団体に限らず、中編成〜大編成であっても、光る奏者は目立ちますね。そういえば、大石さんの(サウンドペインティングではない)指揮って初めて見た気がする(笑)。
♪音大生によるアンサンブル - くらしき作陽大学
A.ヴィヴァルディ/長瀬敏和 - ヴァイオリン・ソナタ作品5より
30名弱の専攻生がいるところ、有志10名での参加とのこと。岡山から新幹線で4時間かかった、という紹介があった。整ったアンサンブル、そして音色が美しい。そして「ラ・フォリア」とは、なんという良いセレクト!こういった、関東圏以外の音楽大学のアンサンブルと、関東圏のアンサンブルの、上手い交流の場があると面白いのかも、などと思った。
♪音大生によるアンサンブル - 国立音楽院
A.ポンキエッリ/早川菜美 - 歌劇「ジョコンダ」より時の踊り
もともとの曲のせいなのか、編曲のせいなのか、全体的に音が薄くて、中規模編成の利点が活かされていないのが残念。波及的に音楽の流れが停滞してしまっていた。こういったサクソフォン編成での、編曲の難しさを感じさせられた。
♪音大生によるアンサンブル - 東京藝術大学
J.S.バッハ - トッカータとフーガ
「スペイン奇想曲」の旭井さんのアレンジも聴いてみたかったが、曲が変更。「トッカータとフーガ」は、誰のアレンジだったのだろう?(とても良いアレンジと思ったのだが)各個人はもはや当たり前のように鉄壁に漏れなく上手いのだが、指揮に指揮科の学生を迎えて、アンサンブルとしても良く練られていた。
♪音大生によるアンサンブル - 上野学園大学
G.ホルスト/梶原未知 - セント・ポール組曲
3人の先生がローテーションして教えるシステムを採っているそうだ。門下、という概念が無いということになるのかな?面白い。アンサンブルとして、丸く整った音色がポーンと飛んできて、最初の一音を聴いた瞬間に「おおっ」と思った。「セント・ポール組曲」は、個人的にとても好きな作品だが、サクソフォン・アンサンブルへとアレンジした際の相性の良さを感じた。
♪音大生によるアンサンブル - 東京音楽大学
E.エルガー - 威風堂々第一番
「威風堂々」とはまた意外な選曲、演奏時間としても短いが、面白い響きだった。ここもまた音色の丸さが良いですね。大きな集合体となってもなお(なったからこそ?)、個々の音色が増幅される、サクソフォンのラージアンサンブルのそんな性質を垣間見たような気がする。
♪音大生によるアンサンブル - 尚美ミュージックカレッジ専門学校
A.P.ボロディン/土田まゆみ - "イーゴリ公"よりダッタン人の踊り
原博巳さんの熱い指揮に煽られるように、ダイナミックな演奏が展開された。編曲のせいか、少々高音セクションの音程が気になったが、このくらいの人数が集まってpからfまでうねるような演奏となると、ぐっと引き込まれてしまう。
♪音大生によるアンサンブル - 洗足学園音楽大学
R.シュトラウス/岩本伸一 - アルプス交響曲より
最大人数で壮観。パーカッションも、ティンパニ2組、ウインドマシーンなどを駆使し=原曲と同じの、大音響。「サクソフォンオーケストラ」としては、やはり頻繁に演奏を行っているせいか、響きやダイナミクスの作り方など突出している。世界的に見ても珍しいアンサンブルだ。レパートリーは管弦楽からのアレンジが多いが、この先どのように活動を発展させていくか、注視していきたい。
♪A会員によるプレミアムコンサート - 原博巳
G.フォーレ - ヴァイオリン・ソナタ第一番
暗譜か!と、その時点で驚いたのだが、演奏も言わずもがな凄かった…。ソプラノサクソフォンで、かくも繊細な表現の変化が可能なのかと、驚きの連続だった。表現の変化とは、紐解いていけばアーティキュレーションやダイナミクスの変化なのだが、それをこういったアレンジ作品でひょいとやってのける原さん、さすがです(もちろん物凄い練習量の上に成り立つ演奏なのだろう)。
♪A会員によるプレミアムコンサート - トリビュート to ルチアーノ・ベリオ(佐藤淳一、白井奈緒美、西原亜子)
L.ベリオ - セクエンツァVIIb
L.ベリオ - 二重奏曲よりベラ、シュロミットゥ、ロディオン
L.ベリオ - セクエンツァIXb
佐藤淳一さんによる、ミニレクチャーといった趣。興味深い内容であることは間違いないのだが、私は曲そのものや佐藤さんの論文の内容を知っているので「ふむふむ」という感じであったが、全く知らない方からすると少し難しかったかなあ。あの会場では難しいが、やはりパワポやキーノートで説明を聴いてみたい。演奏はもちろん言わずもがな、深い理解や曲に対する愛に基づく、感銘を受けるものであった。佐藤さんの7bは、冒頭の一撃〜歌手の如き繊細な跳躍まで、表現の幅が広いのが良い。デュエットは、白井さんとお弟子さんとの共演。白井さんが9bを吹くというのは意外で、7bのほうがキャラが活かせそうだなー、などと、そんなことを思ったのだった。
♪A会員によるプレミアムコンサート - 陸上自衛隊中央音楽隊サクソフォーン四重奏団
A.グラズノフ - 四重奏曲作品109
とても良い音色、そして四人それぞれの音楽性の豊かさを感じた。アンサンブルとしてもしっかりと練られており、サクソフォンの音色が重なった時の、芳醇な響きの連続に溺れた。この、グラズノフの最高傑作のひとつという、作品の素晴らしさを良く伝える演奏だったと思う。ダイナミクスの面として、やや巡航速度的なところに落ち着きがちで、ピアノ方向へのダイナミクスの拡張が、もう少しいろいろな箇所に聞こえてきてほしいなー、とも思った。
♪各メーカー楽器デモ演奏 - フィグール・サクソフォーン・カルテット
J.B.サンジュレ - 四重奏曲第一番より一部抜粋(ヤマハ、ビュッフェ、ヤナギサワ、セルマー、モモ・リガチュア各使用)
同一の曲を、各楽器メーカーの楽器を使って、同一のアンサンブルが吹き分ける…という、妄想はしてもなかなか実現しなさそうな企画。楽器メーカーの全面的なバックアップが必要…ということで、フェスならでは!ではないだろうか。興味津々で聴いたが、確かに楽器による差は、私の耳にはそれなりに聴こえてきた。響き、音量、指向性など、メーカーごとの特色を面白く聴いた。もう少し選曲の幅を広くして(サンジュレだけだと、差はそこそこと思うので)、響きの少ない落ち着いた場所で、各楽器メーカーの協賛を得て、いくつかのカルテットを立てて、なんならアドルフ・サックスの古い楽器も混ぜて…ぜひ第二弾を期待してしまう。誰か、企画しませんかね。ところで、演奏の前には、各メーカー/代理店の営業さんが簡単にプレゼンを行っていたのだが、その口上の、過不足無くはっきりと流麗な様に、なんだか驚いてしまったのだった。
♪サクソフォーン四重奏名曲館 - The Rev Saxophone Quartet
R.プラネル - バーレスク
J.フランセ - 小四重奏曲
A.デザンクロ - 四重奏曲
The Rev Saxophone Quartetは昨年もこのコーナーに登場しており、そのスタイリッシュな演奏に驚いたものだったが、今年もまた登場。やや速めのテンポ設定ながら、アンサンブルには乱れがなく、見事というほかない。プラネルやフランセでは、これでもかというほど曲の仕掛けを全面に押し出すが、嫌味にならないのが面白い。デザンクロは、なんというか2015年のデザンクロ、という感じで、伝統を見据えつつ新たな世界を構築しようとする気概を感じた。第2楽章の最後、"耽美"とも形容できるような、あまりに美しい和音の極小ピアノの伸ばしには痺れたのだった。
続く。
♪音大生によるアンサンブル - 東邦音楽大学・短期大学
A.コレッリ/圓田勇一 - 合奏協奏曲集作品6より"クリスマス協奏曲"
コレルリの「クリスマス」とは、また曲が良いですね。少人数ながらかなり鳴らしている印象で、この曲が持つポリフォニックな効果がよく出ていた。この団体に限らず、中編成〜大編成であっても、光る奏者は目立ちますね。そういえば、大石さんの(サウンドペインティングではない)指揮って初めて見た気がする(笑)。
♪音大生によるアンサンブル - くらしき作陽大学
A.ヴィヴァルディ/長瀬敏和 - ヴァイオリン・ソナタ作品5より
30名弱の専攻生がいるところ、有志10名での参加とのこと。岡山から新幹線で4時間かかった、という紹介があった。整ったアンサンブル、そして音色が美しい。そして「ラ・フォリア」とは、なんという良いセレクト!こういった、関東圏以外の音楽大学のアンサンブルと、関東圏のアンサンブルの、上手い交流の場があると面白いのかも、などと思った。
♪音大生によるアンサンブル - 国立音楽院
A.ポンキエッリ/早川菜美 - 歌劇「ジョコンダ」より時の踊り
もともとの曲のせいなのか、編曲のせいなのか、全体的に音が薄くて、中規模編成の利点が活かされていないのが残念。波及的に音楽の流れが停滞してしまっていた。こういったサクソフォン編成での、編曲の難しさを感じさせられた。
♪音大生によるアンサンブル - 東京藝術大学
J.S.バッハ - トッカータとフーガ
「スペイン奇想曲」の旭井さんのアレンジも聴いてみたかったが、曲が変更。「トッカータとフーガ」は、誰のアレンジだったのだろう?(とても良いアレンジと思ったのだが)各個人はもはや当たり前のように鉄壁に漏れなく上手いのだが、指揮に指揮科の学生を迎えて、アンサンブルとしても良く練られていた。
♪音大生によるアンサンブル - 上野学園大学
G.ホルスト/梶原未知 - セント・ポール組曲
3人の先生がローテーションして教えるシステムを採っているそうだ。門下、という概念が無いということになるのかな?面白い。アンサンブルとして、丸く整った音色がポーンと飛んできて、最初の一音を聴いた瞬間に「おおっ」と思った。「セント・ポール組曲」は、個人的にとても好きな作品だが、サクソフォン・アンサンブルへとアレンジした際の相性の良さを感じた。
♪音大生によるアンサンブル - 東京音楽大学
E.エルガー - 威風堂々第一番
「威風堂々」とはまた意外な選曲、演奏時間としても短いが、面白い響きだった。ここもまた音色の丸さが良いですね。大きな集合体となってもなお(なったからこそ?)、個々の音色が増幅される、サクソフォンのラージアンサンブルのそんな性質を垣間見たような気がする。
♪音大生によるアンサンブル - 尚美ミュージックカレッジ専門学校
A.P.ボロディン/土田まゆみ - "イーゴリ公"よりダッタン人の踊り
原博巳さんの熱い指揮に煽られるように、ダイナミックな演奏が展開された。編曲のせいか、少々高音セクションの音程が気になったが、このくらいの人数が集まってpからfまでうねるような演奏となると、ぐっと引き込まれてしまう。
♪音大生によるアンサンブル - 洗足学園音楽大学
R.シュトラウス/岩本伸一 - アルプス交響曲より
最大人数で壮観。パーカッションも、ティンパニ2組、ウインドマシーンなどを駆使し=原曲と同じの、大音響。「サクソフォンオーケストラ」としては、やはり頻繁に演奏を行っているせいか、響きやダイナミクスの作り方など突出している。世界的に見ても珍しいアンサンブルだ。レパートリーは管弦楽からのアレンジが多いが、この先どのように活動を発展させていくか、注視していきたい。
♪A会員によるプレミアムコンサート - 原博巳
G.フォーレ - ヴァイオリン・ソナタ第一番
暗譜か!と、その時点で驚いたのだが、演奏も言わずもがな凄かった…。ソプラノサクソフォンで、かくも繊細な表現の変化が可能なのかと、驚きの連続だった。表現の変化とは、紐解いていけばアーティキュレーションやダイナミクスの変化なのだが、それをこういったアレンジ作品でひょいとやってのける原さん、さすがです(もちろん物凄い練習量の上に成り立つ演奏なのだろう)。
♪A会員によるプレミアムコンサート - トリビュート to ルチアーノ・ベリオ(佐藤淳一、白井奈緒美、西原亜子)
L.ベリオ - セクエンツァVIIb
L.ベリオ - 二重奏曲よりベラ、シュロミットゥ、ロディオン
L.ベリオ - セクエンツァIXb
佐藤淳一さんによる、ミニレクチャーといった趣。興味深い内容であることは間違いないのだが、私は曲そのものや佐藤さんの論文の内容を知っているので「ふむふむ」という感じであったが、全く知らない方からすると少し難しかったかなあ。あの会場では難しいが、やはりパワポやキーノートで説明を聴いてみたい。演奏はもちろん言わずもがな、深い理解や曲に対する愛に基づく、感銘を受けるものであった。佐藤さんの7bは、冒頭の一撃〜歌手の如き繊細な跳躍まで、表現の幅が広いのが良い。デュエットは、白井さんとお弟子さんとの共演。白井さんが9bを吹くというのは意外で、7bのほうがキャラが活かせそうだなー、などと、そんなことを思ったのだった。
♪A会員によるプレミアムコンサート - 陸上自衛隊中央音楽隊サクソフォーン四重奏団
A.グラズノフ - 四重奏曲作品109
とても良い音色、そして四人それぞれの音楽性の豊かさを感じた。アンサンブルとしてもしっかりと練られており、サクソフォンの音色が重なった時の、芳醇な響きの連続に溺れた。この、グラズノフの最高傑作のひとつという、作品の素晴らしさを良く伝える演奏だったと思う。ダイナミクスの面として、やや巡航速度的なところに落ち着きがちで、ピアノ方向へのダイナミクスの拡張が、もう少しいろいろな箇所に聞こえてきてほしいなー、とも思った。
♪各メーカー楽器デモ演奏 - フィグール・サクソフォーン・カルテット
J.B.サンジュレ - 四重奏曲第一番より一部抜粋(ヤマハ、ビュッフェ、ヤナギサワ、セルマー、モモ・リガチュア各使用)
同一の曲を、各楽器メーカーの楽器を使って、同一のアンサンブルが吹き分ける…という、妄想はしてもなかなか実現しなさそうな企画。楽器メーカーの全面的なバックアップが必要…ということで、フェスならでは!ではないだろうか。興味津々で聴いたが、確かに楽器による差は、私の耳にはそれなりに聴こえてきた。響き、音量、指向性など、メーカーごとの特色を面白く聴いた。もう少し選曲の幅を広くして(サンジュレだけだと、差はそこそこと思うので)、響きの少ない落ち着いた場所で、各楽器メーカーの協賛を得て、いくつかのカルテットを立てて、なんならアドルフ・サックスの古い楽器も混ぜて…ぜひ第二弾を期待してしまう。誰か、企画しませんかね。ところで、演奏の前には、各メーカー/代理店の営業さんが簡単にプレゼンを行っていたのだが、その口上の、過不足無くはっきりと流麗な様に、なんだか驚いてしまったのだった。
♪サクソフォーン四重奏名曲館 - The Rev Saxophone Quartet
R.プラネル - バーレスク
J.フランセ - 小四重奏曲
A.デザンクロ - 四重奏曲
The Rev Saxophone Quartetは昨年もこのコーナーに登場しており、そのスタイリッシュな演奏に驚いたものだったが、今年もまた登場。やや速めのテンポ設定ながら、アンサンブルには乱れがなく、見事というほかない。プラネルやフランセでは、これでもかというほど曲の仕掛けを全面に押し出すが、嫌味にならないのが面白い。デザンクロは、なんというか2015年のデザンクロ、という感じで、伝統を見据えつつ新たな世界を構築しようとする気概を感じた。第2楽章の最後、"耽美"とも形容できるような、あまりに美しい和音の極小ピアノの伸ばしには痺れたのだった。
続く。