2015/02/18

第22回東京藝術大学サクソフォーン専攻生による演奏会

聴き応えのある、魅力的な演奏会だったなあ!長丁場となったが、聴きに行けて良かった!

【第22回東京藝術大学サクソフォーン専攻生による演奏会】
出演:東京藝術大学サクソフォーン専攻生
日時:2015年2月17日 19:00開演
会場:東京文化会館・小ホール
プログラム:
(下記参照)

なんだか、どれも上手すぎて、上手い/凄い連発の感想になってしまい、同じような論調になってしまって、逆に感想の読み手としてはきっとつまらないと思う…のだが、ご勘弁を。私自身が演奏するレベルからすると、次元が4個位違って、もはや何も言えなくなってしまう(苦笑)。

デザンクロ「四重奏曲」
住谷美帆、宮越敦士、嵐田紀子、山本直哉
サクソフォンの演奏会の一発目からこの作品を取り上げる、ということからして尋常ではないが、お見事。技術的にも音楽的にもハイレベル。演奏全体としてほんの少し厳しいことを書くならば、細かいミスの除去、ダイナミクスの拡張により、さらに良い印象へと変貌するだろうし、そういった地力を持つカルテットだとも思った。バリトンの方は、そういった、真にプロフェッショナルと言える境地へと踏み込んでいこうとする気迫が感じられる、素晴しい演奏を展開していた。

夏田昌和「良寛による二つの詩」
竹内理恵(sax)、中山茉莉(mezzo-sop)、井上仁美(perc)
まず、選曲が個人的にドツボである。あまり知られていない作品で、おそらく本日の聴き手のうち1/10も知らないような作品のはずだ。これを選んで演奏を実現してしまう、という姿勢がまず素晴しい。衣装のこだわり(誰のデザインだったのだろう)も、こういった作品ではより一層活きてきますね。そして、もちろん演奏も!不思議な音響世界を、作曲家臨席のもと、説得力ある形で構築しており、終わった瞬間客席も大いに沸いたのだった。夏田さんのサクソフォンのための作品も増えてきたし、ここらで夏田昌和サクソフォン個展とかどうでしょう。

G.フォーレ/松尾怜奈「ピアノ五重奏曲第2番」
竹田歌穂、都築惇、中嶋紗也、田中奏一朗(以上sax)、黒岩航紀(pf)
黒岩氏の素晴らしいピアノとともに、ピアノとサクソフォン4本で、クラシックにおける室内楽の揺るぎない(体系的な)響きを構築しようとする意志が見え隠れする。時折ずいぶんと難しいことをやっているのだが、そういった箇所においても技術的な不安は感じない。アンサンブルの精度としては今回の演奏会の中でピカ一だったのではないかな。

長生淳「八重奏曲」
中島諒、田島沙彩、大坪俊樹、張誠、戸村愛美、西原亜子、土岐光秀、佐野純也
いやー、やっぱり名曲だ!"いつもの長生節"が散りばめられた作品なのだが、どうしてこうも他の曲と印象が変わるのか(笑)フシギ。トップは中島諒さん。数年前、中島さんをバリトンに迎えてこの曲を一緒に演奏したことを思い出した。(おそらく意図して)少し荒っぽく、音楽全体を引っ張っていく手腕が見事。警視庁音楽隊からの派遣履修生である佐野純也氏のバリトンも、息のスピード感でもってグルーヴをびしっと作り出していた。

A.K.グラズノフ/山田忠臣「サクソフォン協奏曲」
独奏:上野耕平、指揮:石坂幸治
上野耕平さんは、この曲を卒業試験で演奏して主席を獲得したそうだ。敢えてこの曲を選ぶというあたりに、こだわりと自信が見える。そんな前評判どおりの、いや、前評判を軽々と突き抜ける演奏だった。グラズノフ「協奏曲」って、もう演奏しつくされてなかなかそれ以上のものって想像できないのだが、こんな演奏できちゃうんですね。何が凄いって具体的にわからなくて、瞬間瞬間を取り出すと音が綺麗、とか、倚音を意識したフレージング、とか、広いダイナミクスを持っている、とか、そういう単純な言葉にしかならないのだが、ひとフレーズ、ふたフレーズ吹くと、とたんに魅力的な演奏へと様変わりする。理屈では説明できず、なんだか騙し絵でも眺めている気分だ。いやはや、すごすぎ。

M.ラヴェル/旭井翔一「ツィガーヌ」
独奏:松下洋、指揮:石坂幸治
まず、松下さんの曲目解説が面白かった。"サックスでオーケストラをバックに「ツィガーヌ」かいな!"これは、松下さんが2012年のコングレスでヴァンサン・ダヴィッド氏の演奏を聴いて持った感想だというが、おそらく本日臨席した観客も、似たような感想を持ったのではないだろうか(笑)。K点超え・柵超え連発、息をするのも忘れさせ、ぐっと観客を引き込む集中力・魅せ方は、松下さんの天賦の才能だろう。旭井さんのアレンジを"音色の魔術師"と書いているのには、なるほど!と膝を打ちたくなる思いだった。いやはや、すごすぎ(2回目)。

N.リムスキー=コルサコフ/旭井翔一「スペイン奇想曲」
指揮:石坂幸治
つべこべ言わずに大きな音楽の流れを作り出し、しかしサクソフォンの響きに任せて安易な方向に流れず、隅々まで作り込まれているあたり、さすが!といったところだろうか。各人のカデンツはとても良かったし、最終部にかけて熱狂の渦を作りながらも決してアンサンブルが乱れないことにも、惚れ惚れしてしまう。近年聴いたこの規模のラージアンサンブル(昨年以前の藝大サックス含む)の中でも、格段に高レベルな演奏だったのではなかろうか。

アンコールは、なし。

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