2015/02/18

阪口新氏の決意の大きさ

杉原真人さんの論文より。

日本のクラシック・サクソフォン界の黎明期を支えた阪口新(1910 - 1997)氏について、チェロからサクソフォンへの転向後、「ミュールとの文通を通じて、サクソフォンと楽譜を購入したが、土地を売ってその購入資金に充てた」というエピソードが語られることが良くある。

どのくらい高かったのかなあと気になっていたのだが、杉原さんの論文に具体的な金額が掲載されていて、その額にびっくりしたのでご紹介したい。ここから感じ取ることができるのは、阪口新氏の決意の大きさである。購入は1950年とされている。

アルトサクソフォン:150,000円
ソプラノサクソフォン:130,000円
当時の銀行員の初任給平均:3,000円

現在の銀行員の初任給平均を200,000円とし、そこから楽器の金額を現在の価格へと換算すると…。
アルトサクソフォン:150,000円→およそ10,000,000円
ソプラノサクソフォン:130,000円→およそ8,660,000円

そりゃ土地売らないと買えないですね。楽器2台、およそ2000万円を一気に投資とは、ちょっと想像ができない。仮に今、想像だにしないような画期的な楽器が発明されて、だがしかしこの先どうなるかも分からないのに1000万円投資して活動する覚悟があるか、と問われても、そんな勇気はすぐには出てこない。

この思いが、やがて実を結び、その後戦後の日本のサクソフォン界の発展へとつながっていったと思うと…。阪口氏の、人生を賭した行いが無ければ、日本のサクソフォンの発展は10年~20年単位で遅れを取っていたかもしれないのだ。

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