2010/07/21

吹奏楽の名曲コンサート

今年のサクソフォン協会誌もまた、すごい。阪口新特集、ブーレーズを軸に、各種レポートがたくさん。うーん、盛りだくさん。来年は記事を書こうっと。

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【洗足学園音楽大学グリーン・タイ・ウィンドアンサンブル演奏会】
出演:ダグラス・ボストック(cond)、グリーン・タイ・ウィンドアンサンブル
日時:2010年7月21日 19:00開演
会場:洗足学園音楽大学前田ホール
料金:1000円(全席自由)
プログラム:
A.コープランド - 市民のためのファンファーレ
D.ミヨー - フランス組曲
I.ストラヴィンスキー - エボニー・コンチェルト
P.ヒンデミット - 交響曲変ロ調
P.A.グレインジャー - リンカーンシャーの花束

会社の残業ができない日であったし、会場も近いし、入場料も安いし、、、ということで、聴きに行った。なにより一番の動機は、このプログラム!久々に「吹奏楽」を聴いてみたいと思わせる曲目だ。もちろん、曲目解説は、音楽監督の伊藤康英先生。これも楽しみで。

コープランドを演奏会の冒頭に配置したことからして、並みの演奏会とは一線を画している。「ファンファーレ」という古典的な身なりはしているけれど、実際の中身は精緻に書き付けられたポリフォニー。聴いているこちらとしても、頭をフル回転させなければいけない。

続くホルストは、第1楽章がびっくりするほど速くて、感動の間もなく終わってしまったのだが(笑)第2、3楽章はさすがの出来映えだった。指揮が空中に放たれた瞬間、一部支えを失ってふらつくのは、学生のウィンドアンサンブルという点からすると致し方ない部分もあるかな。ボストック氏の指揮は初めて観たが、意外とテンポも表現も自由な(一部不真面目な)感じ。CDなどで聴くとカッチリした印象も受けていたので、意外だった。ホルスト「第一組曲」については、最近伊藤康英先生が自筆譜を基にした改訂版の作成を発表したそうだ。7/25には、洗足学園音楽大学にて、研究発表会が予定されている人のこと。詳細はこちらから。

「フランス組曲」は良かった!シンプルなリズムの構造が絶妙なバランスで聴こえてきて、さらに奏者の共感も感じられる。感想が前後するが、最後に演奏された「リンカーンシャーの花束」も、同じ。個人的には、この2曲が本日印象深い演奏だった。こういったレベルの高い演奏を気軽に聴けるのは、音楽大学主催の演奏会の良いところ。さらに進んで「エボニー・コンチェルト」「交響曲変ロ長調」は、きちんと聴くのは初めてだった。さすがに、「エボニー・コンチェルト」難解なリズム処理に、「交響曲」は主題の難しさに、それぞれやや翻弄されたか…!という感じだったが、両方ともなかなかの健闘ぶり。プロフェッショナルがやっても難しい曲だものな。

トリの「リンカーンシャーの花束」は、実に良くさらいこんであって、指揮者と演奏者と、さらに聴衆の深い共感を感じた。第6楽章「行方不明の婦人が見つかった」は、ご存知のとおり、表面上は比較的軽めの装いなのだが、実演を聴くとすごいのですよ。サクソフォン・セクションが揃ってテーマを演奏するあたりから、グレインジャーという作曲家がいかにウィンドアンサンブル、そしてサクソフォンを愛していたかが、実に良くわかるスコア。そして、今日の演奏は、それを体言した演奏だったように思う。

プログラムノートに引用されていた作曲家の言葉(「リンカーンシャーの花束」のプログラム・ノートから)を、ここにも掲載しておきたい。
ほとんどの作曲家の、ウィンド・バンドに対するこうした冷遇はなぜなのか?ウィンド・バンドは様々な木管楽器群を擁し(シンフォニー・オーケストラの木管楽器群よりもはるかに豊富である)、他には例を見ないほどの完全に整ったサクソフォーン属があり(私の耳にはサクソフォーンはすべての管楽器の中で最も表情豊かにきこえる。また管楽器は人間の声に最も近い楽器といえる。そして確かなことには、すべての楽器は、その人自身の声と音色的に近い存在と評価されるべきものである!)、そして一連の金管楽器群(太管、細管共)を取り揃えている。……そのような「ウィンド・バンド」は、かつて考えられた様々な演奏形態とは異なったものなのだろうか。私には、深い感情表現を伝達できる演奏形態として、ウィンド・バンドは無比のものと思える。(訳:三浦徹氏)

アンコールは、グレインジャーの「イェ・バンクス・オ・ボニー・ドゥーン」と、伊藤康英先生がこの演奏会のために書き下ろした「にっぽんモーリス」。伊藤康英先生の新作は、以前からTwitterでも話題となっていたが、グレインジャー風のスペシャルなコンサート・ピース!

今日演奏された曲はいずれも、「吹奏楽だからこそ」「吹奏楽ならでは」「吹奏楽でなければいけない」といった枕詞がつく作品ばかりだ。こういう曲ばかりならば、吹奏楽がクラシック音楽のいちジャンルとして捉えられてもおかしくない、と思うのであった。

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