ジャン・フランセ Jean Françaixの作ったサクソフォンのための作品といえば、まっ先に上がるのが「小四重奏曲(1935)」、あとはアルトサクソフォンとピアノのための「5つのエキゾチック・ダンス(1961)」、あとちょっとマイナーなところでは、アルモSQが録音している「組曲(1990)」あたり、が挙がるだろうか。
しかし、あまり知られていないが、フランセのサクソフォンのための最大の作品に、「Paris, à nous deux!」と呼ばれる小オペラがある。これは、1954年に書かれた、3人の独唱者、合唱、そしてサクソフォン4重奏という、極めて珍しい編成のために書かれたオペラである。
で、今回、木下直人さんに送っていただいた、復刻盤がその「Paris, à nous deux!」の収録されたLPなのだが…。
…。
……。
………。
…………じゃん!!
これ!VersaillesというレーベルからART 6001という型番つきで発売されたもので、「Paris, à nous deux!」と、カンタータ「Dèploration de Tonton」という作品が収録されている。音楽監督としてフランセ自身が参加しており、自作自演の企画ものということになるのだろうか。そもそも、この「Paris, à nous deux!」という作品自体、録音など聴いたことがなかったのだが、この珍しさに加えて以下の驚きのクレジットである。
Geneviève Touraine, La Maitresse de maison
Michel Senéchal, l'Arriviste
Bernard Lefort, Le Cicerone
Minou Drouet, l'Enfant prodige
La Chorale Marguerite Murcier, Les invités
Le Quatuor de Saxophones Marcel Mule
な、な、なんと、マルセル・ミュール四重奏団!!あまりに驚いて、このクレジットを見たときに、ひとりで大声を上げてしまった!まさかミュール四重奏団の、こんな録音が存在するなど、夢にも思わず…。もちろん「Marcel Mule: Sa vie et le saxophone」にはリストすらされていないものであり、いったい世界で何人が、こんなところにミュール四重奏団の参加した録音があることを知っていただろうか!
レーベル等からいまいち録音年が掴みきれないが、Le Quatuor de Saxophones Marcel Muleと名乗っているということは、1951年~1967年の間であるということは間違いない。この期間にはメンバー編成が一度変わっており、次のような変化があったのだが、どちらの時期の録音なのかはよくわからなかった。
1951~
Marcel Mule, saxophone soprano
André Bauchy, saxophone alto
George Gourdet, saxophone ténor
Marcel Josse, saxophone baryton
1960~
Marcel Mule, saxophone soprano
George Gourdet, saxophone alto
Guy Lacour, saxophone ténor
Marcel Josse, saxophone baryton
演奏だが、フランセならではのキラキラしたエスプリの宝庫から、サックスの音色があちらこちらに飛び出す!といった趣で、実にすばらしい。楽譜上では技巧的にも非常に高いものを要求しながら、ミュール四重奏団はその高難易度の譜面を軽々と吹きこなすどころか、ユーモアを確実に引き出して聴き手に伝えてくれている。ときに歌い手のバックグラウンドにまわりつつも、部分部分では明らかに主役となっており、フランセという点だけでなく、サクソフォンという点でも、実に聴きごたえがあるものだ。…いや、本当に素晴らしい!この録音を発見した木下さんの探究心には、(毎度のことながら)頭が下がる思いだ…。
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そういえば、フランセの遺作となったのも、声楽とサクソフォン、ピアノという編成の「Neuf Historiettes」という作品なのだった。亡くなった同年に書いたもので、こちらは声楽のバリトンと、テナーサックス、ピアノという編成。このページから試聴できるが、全部聴いてみたいな。
Paris, à nous deux! はNetherland Saxophone Quartet(オランダ・サクソフォン四重奏団)のLPを昔から持っていたので知っていましたが、ミュールQの録音があるとは知りませんでした。ちょっと聴いてみたいですね。
返信削除> Thunderさん
返信削除メール送っておきましたー。そのLP、eBayで見たりして存在は知っていましたが、作曲者名しか表示されないので、「小四重奏曲」が入っているものばかりと思っていました。