2009/07/21

Milhaud conducts Milhaud

The Legendary Saxophonists CollectionのAndy Jackson氏とメールしていて話題となったもの。かつてEMIレーベルから発売されていた「Composers in Person」シリーズの一枚、「Darius Milhaud plays & conducts(EMI CDC 7 54604 2)」を買ってみた。ミヨーの自作自演記録となるSP音源やLP音源を復刻したもので、おなじみの作品がいくつも収録されている。

世界の創造 La Creéation du monde, Op.81
スカラムーシュ(2台ピアノ) Scaramouche, Op.165b
ブラジルの郷愁 Saudades do Brasil, Op.67
プロヴァンス組曲 Suite provençale, Op.152b
屋根の上の牛 Le B&oeliguf sur le toit, Op.58

なぜこのCDが話題に上がったかというと、「世界の創造」でサクソフォンを担当しているのが、マルセル・ミュールでないか?というAndy氏の推測があったからだ。ご存じのとおり、「世界の創造」は室内オーケストラのなかにアルトサクソフォンが含まれた編成のバレエ音楽である。

CDの解説には次のように書かれている:ミヨーは、ハーレムで聴いたメイシオ・ピンカール Maceo Pinkardの「Liza」というオペラの編成をそのまま引用しました。すなわち、弦楽四重奏セクションのヴィオラを、アルト・サクソフォンに替えた、19人の編成です。作品全体には、ジャズからの影響が見て取れます。コントラバスに導かれて始まるジャズ・フーガ、続いて現れるブルース、そして、クライマックスに見られるジャズの狂乱的なインプロヴィゼイションを想起させるダンス、等々。しかしながら、オープニングに出現するサクソフォンのテーマは、ハーレム風の奏法ではなく、ビゼー「アルルの女」で聴かれるようなクラシカルな奏法でもって演奏されるべきものです。…(以下略)

このディスクの「世界の創造」の録音データは、「Orchestra of 19 Soloists, II&III, 1932, Studio Albert, Paris」とある。確かに、この時期の録音ならば、ミュールが吹いていてもおかしくないだろう。事実、ミヨーは自作の映画音楽のなかで、何度もミュールを演奏者として指名していたそうだ。ということで、さっそく聴いてみた。

…ふーん、へええ。ほうほう。なるほどー。ヴィブラートの質や速度、高音域における響きは、かなりそれっぽい。だが、なんだか音程の捉え方や、低音域~中音域にかけての響き、リズム処理等が、あまりミュールらしくないような気がする。もしかしたら録音のせいもあるのかもしれない(木下さんから送ってもらった盤に、すっかり耳を洗いなおされてしまっているようだ)し、ベストな状態での録音かどうかという判定も不可能だが、これをミュールである!と私から断言することはできないなあ。どなたか、この録音のサクソフォン奏者についての情報をお持ちでないだろうか?ご存知でしたらご教示いただきたい(amazonへのリンク→Darius Milhaud Plays and Conducts)。やっぱ「世界の創造」は、バーンスタイン×フランス国立管×ダニエル・デファイエ盤が最高だなー(´ω`)ooO

また、本題とはあまり関係ないが、このCDで驚いたのは「屋根の上の牛」でレコーディングを手掛けているのが、あの伝説の録音技師、アンドレ・シャルラン André Charlinであること!1958年ということであるから、シャルランがまだEMIのエンンジニアだったころの仕事だ。

マルセル・ミュール関連といえば、木下直人さんからつい先日頂戴した驚き!の復刻盤。明日か明後日にブログで取り上げる予定なので、どうぞお楽しみに。

2 件のコメント:

  1. 私もこの録音がミュールによる演奏か気になってますが、断定はできませんがちょっと違うかな、と思っています。それにしても、シャルランの仕事は半世紀たっても輝きをうせないすばらしいものばかりですね。

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  2. > mckenさん

    コメントありがとうございます。やっぱり、「可能性はあるけれどちょっと違うかな」という感想になってしまいますよね…。クレジットがないのが悔やまれます!Maurice Viardとも少し違う気がしますし、しかしこの時代にミヨーの自演の録音に参加するほどの奏者とは、いったい何者なのでしょうか…。

    そして、シャルランの録音はすばらしい!結局「屋根の上の牛」ばかり聴いている有様です。まさかこれがワンポイントの録音とは、想像だにできません。

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