2016/07/30

上野耕路&ヒズ・オーケストラ「ビッグバンド・ルネサンスVol.2」

 BIG BANDの常套手法とはアレンジが容易でグルーヴも出し易い音量バランスがとれた楽器編成、同一演奏スタイルのミュージシャンの集合体:僕はそれらを手放した。
 過去の驚異的ジャズ・アンサンブルを視野に入れつつ再考されるBIG BAND。その答えは 個々の楽器音量比と演奏スタイルはアンバランスかもしれないが、流動的ダイナミズム、室内楽的精妙さ、真新しい歪さなどが現出することとなる。
 それが僕が目指す"BIG BAND RENAISSANCE"
上野耕路

上野耕路氏は、いくつかの特徴的な編成の演奏グループに参加ないし主宰しつつ、大編成のユニット:捏造と贋作、上野耕路アンサンブルなどを経て、近年では、上野耕路&ヒズ・オーケストラを結成し、CDリリース/ライヴ等を行っている。ピアノとヴォーカル、そして管弦打楽器が入り乱れた、強烈な個性を持つバンドだ。昨年、六本木で聴くことができたのだが、初めてライヴで聴いてそれはそれは感動したものだ。→ブログ記事

ということで、今回も楽しみに伺ったのだが、期待以上だった。

【BIG BAND RENAISSANCE Koji Ueno and His Orchestra Vol.2】
出演:上野耕路(pf)、佐々木理恵(fl)、秋山かえで(cl)、曽根美紀(asax)、小池裕美(tsax)、矢島恵理子(bsax)、田澤麻美(tp)、門星涼子(trb)、国木伸光(tub)、服部恵(mrb)、中島オバヲ(perc)、杉野寿之(drs)、真部裕(vn)、多井智紀(vc)、谷嶋ちから(drs)、清水万耶子(vo)、久保田慎吾(vo)
日時:2016年7月28日 19:30開演
会場:Blues Alley Japan
プログラム(すべて上野耕路作品):
Serius B、Oil Barons and Cattle Dukes、Archaeopteryx and Compsognathus、Cosmic Radio、1979、Canis Major、This Planet is Earth!、Volga Nights他

演奏された作品は、「Polystyle」「Sirius B」に含まれるものを中心に、その他にも改作多数。アンコール含めて、なんと計20曲も演奏された。知らない作品もあり、曲名のアナウンスがない場合もあったため、完全なセットリストを書くことが出来ないのが残念だ。

とはいえ、作品名など微塵も気にすること無く、ただひたすらに"上野耕路サウンド"に溺れた3時間。各楽器が、割り当てられた超高速フレーズを無造作なようでいて緻密に演奏する。一聴すると発散した響きなのだが、その中には有機的な関連性と、一致が見て取れ、気がつけば"上野耕路サウンド"が眼前に立ち上がる。才能とか天才、という言葉で一朝一夕に片付けられず、ある種の狂気や異常性(褒め言葉です)すらも感じるほどだ。「アトミックなもの(各パート)にひとつひとつ限界クラスの試練(楽譜)を与え、せーの!と音を出したら凄いものができちゃうから楽しみにしててね!」みたいな。本当に、上野氏だけしか作ることのできない音楽だと思う。

特に、新作「Volga Nights」の面白かったこと!キグルミ「たらこ・たらこ・たらこ」のメロディに、スパークス(ロン・メイル&ラッセル・メイル)が「Volga Nights」という歌詞を付け、さらに上野氏自身が込み入りまくったオーケストレーションを施した、類まれな傑作。10分位はあっただろうか。あまりに密度の高い音楽、そして楽しさに圧倒されっぱなし。

全曲通して、演奏者はとてつもなく大変そう(笑)で、しかし楽しそうだったのが印象的。特に、トランペットの田澤氏のノリ(見た目にも!)はバンドのサウンドの引き締めに一役買っていたようだ。また、今回から加入したというトロンボーンの門星氏も、なかなか味わい深かった。サクソフォン・セクションも鉄壁、ガリガリしたサウンドを随所で楽しんだ。

いやあ、楽しかったなあ。

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