2015/07/26

TSQヨーロッパ演奏旅行2015(3日目:JacobTV新作初演の日)

7/12、この日はJacobTV「Ticking Time」の初演の日である。

朝ごはんを食べて、少し遅めに出発。湿度は低いものの少し暑く、とにかく歩いていると体力を消耗するため、興味深いコンサートはいろいろとあったものの体力温存を優先した。コングレス期間中、平日前の日曜日ということもあって、演奏会場は人だらけ。

まずブレステイキングのブースに伺った。伊藤あさぎさん(ブースの通訳として働いていたが、なぜか商売根性が出てしまうとおっしゃっていた)や、代表の小村さんなどともお話することができた。とりあえず佐藤淳一さんとともに、演奏会場となるLe Shadokを探した。

Le Shadokは、地図上で位置を把握しており、ストラスブール音楽院の近くを流れる川の、中洲的な場所にあり、徒歩で向かうことができる、ということをわかっていた。地図をひらきつつ場所を探したのだが、どうも場所がわからない。あちらこちらと日差しが照りつける中を探しまわって、ようやく見つけたLe Shadok、音楽院から見える中洲の建物の奥の奥の建物、1階のレストランが並ぶ通りの中の、1角に位置していた。こりゃわかりづらいと途方にくれ、同時に集客が不安になってきた。

会場は50席ほどのコンクリート打ちっぱなしのスペース。音響や映像は、かなり充実していそうだ。ちょうど演奏中だったので、終わったと直後に現地のエンジニアと少しだけ自分たちのステージに関して話をし、いったん退出。佐藤さんと昼食をともにして(割高ではあったが、テイクアウトできるヴィシソワーズスープなど、なかなか美味しかった)、ストラスブール音楽院へと戻った。

何か聴こうかなと思ったのだが、お目当てのコンサートは満席で入れず、他に探してはみたものの満席、満席、キャンセル、といった具合で、仕方なく再度Le Shadokへ。最後の最後に、会場に向かう前に名刺サイズのフライヤー(とにかくJacobTVの文字が目立つように制作、デザイン時間1時間、1枚4円で300部刷った)をばら撒いた。

会場に到着し、準備とリハーサル開始。エンジニアのジュリアンとマーティン、お2人に手伝ってもらいながら進めた。揃っている機材は豊富で、音響は全く問題なく調整完了。プロジェクターは、全画面表示にすると枠がだいぶ見切れてしまい、ウィンドウ表示で縮小して再生することで対応することにした。そして、私が行うプレゼンテーションの準備。スライドを表示させて唖然。コントラストが低いせいか、濃い緑の地に白い文字、という全体のテーマが、すべて文字がうっすらとしか見えなくなってしまっていた。慌てて、すべてのスライドの文字の色を見直し・修正。そしてマイク調整も実施。そんなことをやっていると、あっという間に本番の時間が迫ってきた。

そして慌てて控室で着替えて本番。嬉しい事に満席!日本の方も、客席の1/3くらいいらしてくださったかな?そういえば、実際会場の場所がわからず辿りつけなかった方もいたようで、ちょっとその点は残念であった。まずは私のプレゼンテーション。自己紹介、JacobTVという作曲家についての紹介、委嘱作品「Ticking Time」の作品テーマ、制作過程において困難だった点について、10分弱で発表した。英語のプレゼンテーションは2007年の学会以来で、なかなか慣れなかった。またプレゼンテーション全体については妻にかなり修正を入れてもらい、とても助かったのだった。

なんとかプレゼンテーションを終えて拍手をいただき、続いて佐藤淳一さんよる「Ticking Time」の世界初演。ステージ横で、感慨深く聴いていた。ライヴで演奏されることによる作品の聴こえ方の違いも面白く、「Grab It!」ほどではないにしろ、パワーのある作品なのだなあと感じ入ったのだった。こうしてJacobTVの新作の世界初演を無事終えることができた。

佐藤さんとこの委嘱について初めて話をしたのが、2012年10月13日、静岡のAOIにおいて、であった。また、JacobTVに初めて委嘱作品についてメールを送ったのが2014年の1月2日だった。構想3年、実働1年半と、長かったが、なんとか実現できて良かった。日本初演は私が担当するのだが、今年か来年の頭くらいには実施したいと思っている。

さて、ステージを終えて、音楽院に戻る途中で皆と合流し、ビールを一杯。その後、皆といったん別れてThe Tenor Saxophone Collectiveの演奏を聴きに、Salle de la Bourseへと赴いた。The Tenor Saxophone Collectiveは、Andy Scott氏がディレクターを務めるイギリス発のテナーサクソフォンのレパートリーを研究・体系化するプロジェクト、Tenor Saxophone Index(→http://www.tenorsaxindex.info/)を母体とする団体で、テナーサクソフォン12人からなるアンサンブルである。トップはアルノ・ボーンカンプ Arno Bornkamp氏が務め、Niel Bijl氏や、Erin Royer氏といった、クラシック分野における世界中の著名なテナーサクソフォン奏者が参加している。私もテナーサクソフォンをメインで吹く身であるので、このようなテナーサクソフォンの多重奏はとても興奮した。また、新作とはいえ作品としてもとても楽しいものばかりで(ジャズやロックに影響を受けた作品も多かった)、演奏してみたい!と思うものも多かったのだった。アンコールは、ロバ「ハード」の抜粋を演奏しながら12人でソロ回しする、というもの…いやー、意表を突かれた!

皆と合流し、World Streaming Showのいち会場であるPlace Kleberへと徒歩移動した。この途中、広場での人だかりを目にし、覗いてみると、怪しい服を着た怪しいアンサンブルが、クラシックのロックアレンジのような曲を演奏中。プログラム冊子を手繰ってみると、Opus-Bandというイタリアのバンド。そのライヴ感がとにかくかっこ良く、つい釘付けになってしまった。今後、注目していこう。そして、ノートルダム=ド=ストラスブールを初めて見たのだが…その圧倒的なスケールに、上を向いたまま固まってしまった。

この頃からあいにく雨が降り出したのだが、とりあえずPlace Kleberの近くのレストランに陣取り、お酒とタルトフランベ(アルザス地方のピザ)を食べつつ、ステージの前に行ったり戻ったりしながら、World Streaming Showを見た。各会場を中継でつなぎ、Place KleberでのSaxOpenオーケストラや、ミ・ベモルの一般公募のアンサンブルや、カテドラル内の演奏あちらこちらでの演奏を順に繋ぐほか、遠隔地(ストラスブールの別会場のみならず、時にはニューヨークからLou Mariniがソロを取ったり…)からソロを取ったりと、なんて豪華絢爛なショーだ、と驚いた。遠隔地でソロを取るときも、音声の相互遅延は感じられない。いったいどうやっているのだろうかと、そんなことも考えつつライヴを楽しんだ。演奏される曲も、ガイス氏の自作(「SaxOpenのテーマ」や「Funky Sax」)等、とてもノリが良く楽しいものばかり。Place Kleberの盛り上がりも凄まじく、これまで聴いたサクソフォンのコンサートの中でも、間違いなく最も楽しいものであった。雨が降ったりやんだりと条件はいまいちだったが、夢のような時間を楽しみ、はしゃいでしまった。

その余韻に浸りながら、ノートルダム=ド=ストラスブール大聖堂のプロジェクションマッピングを鑑賞しに移動。東側のライトアップの荘厳さにも驚き、南側に移動すると現代的なプロジェクションマッピングが上映中。途中からではあったが、こちらも見事だった。

実に充実した気持ちで一日を終え、音楽院の方面からバスでアパルトマンへと戻った。

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