2015/07/25

TSQヨーロッパ演奏旅行2015(2日目:コングレス見学等)

7/11は、朝からコングレスの様々なリサイタルを見学した。

この日の朝一発目、日本から参加のQuatuor Bは、高橋宏樹氏の作品を紹介する目的で参加。「アルルのサックス展覧会」のような作品が、コングレスの会場でどのように受け止められたのかは興味あるところだ。

後半が始まる前に退出して、ジャン=イヴ・フルモー Jean Yves Fourmeau氏や、ジャン=シャルル・リシャール Jean Charles Richard氏が講演する、サクソフォン初学者~初級者のためのレパートリーの講演へ。デモンストレーション演奏では、なんと12歳くらいの初級者と思われる子供が、サクソフォンとテープの作品を演奏していて驚かされた。

続いて、Salle24でUzume Saxophone Quarte(安井・スーヤ・寛絵、外山舞、井上ハルカ、本堂誠)の演奏を聴いた。パリ国立高等音楽院のサクソフォン・クラスに在籍している4名によって結成された団体だ。藤倉大「Reach Out」と、「じょんがら節」を演奏していたが、日本人的な綿密なアンサンブルと、最新のエコール・フランセーズともいうべき繊細な音楽表現が融合した、このカルテットならではの表現が素晴らしかった。本堂君が冒頭部の作曲を手がけた「じょんがら節」コンテンポラリーバージョンも、さらに盛り上がった。

10:30からリハーサル室を借り、1時間ほどTsukubaSQの合わせ。11:00から、共演するリチャード・インガム Richard Ingham氏にも来てもらい、7/13に演奏予定の「Mrs Malcolm, Her Reel」を合わせた。この曲を知ったのは前回のコングレスの直後で、それ以来幾度と無く演奏してきたが、まさかこのように作曲家と演奏できる機会が巡ってくるとは、その時は想像もできなかった。リチャード氏の素敵な人柄(とてもフレンドリー!)にも助けられ、楽しくリハーサルを終えた。

お昼ごはんはケバブやさん。大量の肉が挟まった大きなケバブでお腹がいっぱいになった。飲み物はオランジーナ。

午後は、ブラジルから来たBrasilia Sax Quartetを少しだけ聴いた。作曲者のDouglas Braga隣席のもと「Quarteto n.1 em tres pecas」と「Gare Saint-Lazare(パリの大きな駅の名前)」を演奏。ガリガリした演奏を期待していたのだが、それに反して柔らかく繊細な表現が全面に押し出されたものだった。作品自体も、ネオ・クラシックといった風の、きちんとした作品だった。

そして、ストラスブール音楽院のAuditorium(600席ほどあるシューボック型の大きな会場)において、「Concert de creation I」と題された、サクソフォン独奏と室内アンサンブルのための新作発表会を聴いた。ボルドーの著名な室内アンサンブルであるProxima Centauriと、ストラスブールのLineaという室内オーケストラの混合編成、指揮はGuillaume Bourgogne、そしてサクソフォン独奏、という布陣。鈴木純明「WolfieEdo(独奏:原博巳氏)」は、日本的な素材を混ぜ込みつつ、各パートが草書体のような音を奏でており、その各パートがポリフォニックに織りなされ、とても「柔らかい」サウンドが印象的であった。このような作曲の仕方は、やはり日本人作曲家ならではであろうか。Rodrigo Lima「Antiphonas」やKevin Juillerat「Monk 2: Plouk」なども、とても現代的な響きで、また作品の面白さとしてもかなり良いものだと感じたが、こういった作品の響きとしては、少々行き詰まっているような印象を受けたのも事実。そういった中で、Bernhard Lang「DW 24(独奏:Lars Mlekusch)」のテンションの高さは、観客を巻き込んだ集中力と、曲自体のテンションの高さ、またサクソフォンとしても非常に高いテクニックを要求するものとして、特筆すべきものであったのではないだろうか。ラース氏のソロはもちろん、室内オーケストラの中でソプラノ、テナー、バリトンを繰ってほぼ同じくらいの音符をガンガン並べていたマリー=ベルナデット・シャリエ Barie Bernadette Charrier氏も鬼気迫るといった感じですごかった。14:30までと予定されていた演奏会は、15分ほどおして終了。

Mobilis Saxophone Quartetの演奏を聴いた。オーストリアのウィーン音楽院、ラース氏門下発のアンサンブルで、テナーにYukiko Krennさんが参加されている。エルッキ=スヴェン・トゥール Erkki Sven Tuurの「哀歌 Lamentatio」は、とても高い集中力での演奏が印象的。私が聴いていた席の近くで4,5人の10才前くらいの子供たちが聴いていたのだが、彼らもぐっと聴き入っていたのがなんだか面白かった。最後のデクレッシェンドに重なって、屋外を走る救急車のサイレンの音が重なったのも、偶然ながら不思議な効果をもたらしたと思う。Thomas Doss「Spotlight」は、本来はサクソフォン四重奏と吹奏楽のために書かれた協奏曲であるが、今回はウィーン音楽院のアンサンブル(Mobilis SQの後輩にあたる)と共演であった。熱い曲・演奏で、日本でもっと人気が出てもおかしくない。

再び、Auditoriumで「Concert de creation II」。一曲目は酒井健治氏の「Photon」。大石将紀氏のソロはさすがで、大きな存在感を放っていた。音の密度としてはそれほど高くないが、丁寧な音選び・構成感を感じる。Jose Manuel Lopez Lopez「Sonidoz Azules」と、Alex Mincek「Pneuma」は、ちょっと曲の印象があまり残っておらず…もう一度聞く機会を楽しみにしておこう。照明を赤く光らせたNicolas Tzortzis「My condition exempts me」は、ロックやノイズミュージックにも影響を受けたような作品で、またソロがVincent Daoudということもあって面白く聴いた。このときも、30分ほどおして終了。いやはや、サクソフォンの分野の新作、しかも室内オーケストラとの演奏を、高レベルでまとめて聴くことができるとは、なんと良い企画だろう!

外に出て、皆と合流し、レストランで夕食をとった。まだまだ外は明るく、ビールや肉盛り、アルザス地方風のサラダ、ニース風サラダなどつまみながら、休日を楽しんだ。途中、迷子のわんこが来たり、怪しい人形を売りつけるまじない師みたいな人が来たり、イケてるおじいさんが近くの席に座ったり、虫が来たり…いろいろとカオス。

ゆっくりと2時間ほどかけて夕食をとったあとは、トラムに乗ってPalais de la Musique et des Congrèsに移動。Salle Erasmeにおいて、ストラスブール管弦楽団 Orhestre Philharmonique de Strasbourgと、サクソフォン独奏陣による、「Sax Premieres」と題された、協奏曲初演祭りのようなコンサートを聴いた。指揮はBaldur Bronniman。とにかくしっかりと弾くオーケストラで、素晴らしいオーケストラの演奏とともにサクソフォンの演奏を楽しんだ。そして、サクソフォン陣が豪華!ヴァンソン・ダヴィッド、ハバネラ四重奏団、Iain Ballamy(この方はジャズ奏者)、ティモシー・マカリスター、てなもんで。その奏者ならでは、という演奏・作品は問答無用で面白い。イギリスの作曲家、ゲイリー・カーペンター Gary Carpenter「Set」は、ジャズ・テナーサクソフォンとオーケストラのための作品で、ハイ・テンションなサクソフォンと、イギリスらしい、もっといえばゲイリー・カーペンターらしい、硬質さとロックっぽさが混じった作品が楽しい。また、フィリップ・ガイス Philippe Geiss氏の「Sparkling Fantasy」は、弾ける幻想曲、というタイトルそのままの作品で、マカリスターの面目躍如!であった。前半は、作品としての印象はやや薄いが、ヴァンソン・ダヴィッド氏やハバネラ四重奏団が吹くと、もうそれだけでも楽しく、いやはや充実した時間を過ごしたのだった。

前日につづいてPalais de la Musique et des Congrèsの近くのバス停から、滞在先近くのアパルトマン近くまで通じる系列バスに乗車して帰投した。

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