2014/08/30

2014年第31回管打楽器コンクール特別大賞演奏会

いやあ、素敵な演奏会だった。最初から聴くことができて良かった!

【2014年第31回日本管打楽器コンクール入賞者表彰式・特別大賞演奏会】
日時:2014年8月29日(金)17:00開演
出演:山下一史指揮東京ニューシティ管弦楽団ならびに各部門第一位受賞者
会場:かつしかシンフォニーヒルズ
料金:入場無料
プログラム:
表彰式 17:00-
特別大賞演奏会 17:50-
A.ジョリヴェ - 打楽器協奏曲(岡部亮登, perc)
一柳慧 - マリンバ協奏曲(沓野勢津子, mrb)
A.ウェニアン - ラプソディ(中島諒, sax)
W.A.モーツァルト - オーボエ協奏曲(荒川文吉, ob)
特別大賞授賞式 19:50-

岡部氏は、広島交響楽団の打楽器奏者。神経質なほどのリズムの正確さを武器に、オーケストラとの緻密な絡みを魅せた。それにしても、あのジョリヴェの「打楽器協奏曲」で使用される打楽器の種類の多さよ!後述(※)のとおりで、いったいどういう練習をしているのか、そもそも練習できるのかい、というところが気になる(笑)。また、叩いた瞬間に、きっと奏者自身はオーケストラの音がマスキングされてしまうのだろうな、というそんな苦労も窺えた。

沓野氏は、京都市立芸術大学からボストン音楽院に留学したという奏者。きりりと引き締まった立ちふるまいが印象深い。様々な音色を使い分けながら(時にヴィブラフォンのような音まで!)充実した和声・リズムを持つ一柳慧作品を見事に演奏していた。マリンバ奏者というのは本当に絵になりますね。しなやかな一挙手一投足は、まるでバレエか何かを観ているような、そんな気分にもさせられる。

中島君の演奏は、本当に堂々たるものであった。オーケストラを従えた時に、あれだけ対等に渡り合えるサクソフォン奏者というのも、なかなかいないであろう。骨太に構築された音楽は、強い説得力を持つ。また、クリーンな音色の中にほんのわずかの"良い"ノイズが乗っているところが実に魅力的であり、ホールを一気に満たすポテンシャルを持つ。第1楽章から第2楽章に移った時の音色の変化などは、やはりサクソフォンの良さを存分に発揮している。素晴らしい演奏に酔いしれた。驚いたことに暗譜!

荒川氏は、東京フィルの主席オーボエ奏者。そして、中島君の藝大の同期なのだそうだ。ただただ美しい音色はこれは確かにオーケストラの中で聴いてみたい、と思わせるものである。堅固な下地の上に構築される自由闊達な歌はやはりクラシック音楽のそれである。音程のバラつきが散見されたのと、さらなるダイナミックさがあれば、という感想を持った。

そして結果発表。"アベ賞"こと特別大賞は、ジョリヴェを演奏した岡部氏!であった(ちなみに、結果発表前の井上道義氏の歯に衣着せぬ講評はとても面白かった)。

ところで、サクソフォンは、やはりまだまだ若い楽器=レパートリーの醸成が急務なのだなと思った。一柳慧とモーツァルトに挟まれた時に、果たしてそれらに対抗しうるほどのサクソフォンのために書かれた協奏曲は、まだごくわずかな数しかない。ウェニアンはとても良い曲だが、発展途上の中で出てきた一作品の域を越えきれていないのかもしれない。向こう40年(自分が生きているくらい)のうちに、そういった作品がいくつ出てくるのだろうか。そんな風に、この先のサクソフォンが辿る道に思いを馳せつつ、会場を後にした。某所で軽く飲んで帰宅。

※ティンパニ4つ、スネアドラム2つ、ウッドブロック(以上1楽章)、ヴィブラフォン、チャイナシンバル、サスペンドシンバル(以上2楽章)、ウィップ、シロフォン、ラチェット、カウベル3つ(以上3楽章)、ウッドブロック、木魚3つ、じゃらじゃらした鈴、ハイハット、サスペンドシンバル、シンバル、チャイナシンバル、スネアドラム、トムトム3つ、キックバスドラム、コンサートバスドラム(以上4楽章)

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