2013/03/30

海老原恭平サクソフォンリサイタル

仕事を終えたのち、つくば市へ。会社からドアツードアで2時間ほどかけて移動し、つくばカピオ・ホールで開かれた海老原さんのリサイタルに伺った。遠かったが、無理して聴きに行った甲斐のある、素敵なコンサートだった。

【海老原恭平サクソフォーンリサイタル ~Song Book~】
出演:海老原恭平(sax)、富山里紗(pf)、田村拓也(marimba)
日時:2013年3月29日(金)18:30開場、19:00開演
会場:つくばカピオホール(Txつくば駅より徒歩5分)
プログラム:
G.Fitkin -
R.Rogers - Lessons of the sky
武満徹 - めぐり逢い
J.Canteloube - Chants d'Auvergne(1ere)
湯山昭 - ディヴェルティメント
D.Maslanka - Song Book
?(アンコール1曲目失念)
小六禮次郎 - さくらのテーマ(アンコール)

さすがに開演には間に合わず3曲目の武満徹作品から聴く。ストレスフリーな美しい音色(音色だけ聴くと"軽い"セッティングで吹いているように聴こえるが、実際どうなのだろう)が実に印象深い。武満徹が創り出すポピュラー音楽の側面を、とても良い形で聴き手にプレゼンテーションしていた。

続く伊藤康英先生のアレンジによるカントルーブ作品は、美しいアレンジにも関わらずあまり演奏機会がない。何がきっかけでここに目をつけたのかな…。原曲が持つ「美しいメロディを奏でる喜び」という、人間の本能にも絡む愉しみがひしひしと伝わってくる演奏だった。ことさらに「3つのブーレ」でその印象が強い。海老原さんのサクソフォンは、フォルテは普通のサックスのように聴こえるのだが、弱音や管が短い音になった瞬間に音色が幾種類にも変化してゆくのが面白い。ピアノやピアニシモで音色のヴァリエイションを持つことは、演奏家としての強い武器だ。

後半はサクソフォンとマリンバ。エヴリン・グレニーとジョン・ハールの演奏で昔から慣れ親しんだ湯山昭「ディヴェルティメント」と、初めて聴きに行ったフェスティバルで雲井雅人氏が演奏していた「ソング・ブック」。いずれも、曲名はよく聞くが実演に接する機会はあまりない。特に「ソング・ブック」は5オクターブマリンバ必須という制約もあるのだという。

「ディヴェルティメント」では海老原さんのキャラクターが活かされる曲で、"準ポップス"という装いのこの作品を、聴かせどころをおさえながら上手くまとめていた。まとめていた、と書くと何だかマジメな演奏だったというように聞こえるがそういうことではない。捉えどころのない(どこに重心を置けばよいかわからない)この曲をちゃんと演奏できる人はなかなかいないのではないか。終わった瞬間の客席の興奮もかなりのものだ。

マスランカ作品は、非常に内省的というか、それまで演じていたキャラクターとは違う切り口を見せてくれた。音数が少ないが、終始一貫して高い集中力に満ちた演奏だ。派手な部分は限定的で聴き手としては「難しい」作品だと思うが、敢えてこの作品を取り上げたことによって退路を断って真正面から作品に向き合う、その姿勢に感化された。マリンバの田村氏もとても良く弾く方(海老原さんの高校の同級生とのこと)で、自身の内面を掘り下げていくような音楽の捉え方は、この作品に実にマッチしていると感じた。

終演後は打ち上げにちょっとだけ参加させてもらい、松下さん、塩塚さん(本日かなっくホールで演奏会を控えている)とともに東京へ戻った。

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