2012/05/20

彦坂氏と新井氏のデュオアルバム

ずっと入手していなかったのだが、ようやく聴いた。彦坂眞一郎氏と新井靖志氏のデュオアルバム。デュオといえば、古くはジャン=マリー・ロンデックス氏とポール・ブロディ氏のルクレール&テレマン作品集あたりに始まり、最近では須川展也氏とケネス・チェ氏の委嘱作品群を集めたCDあたりまでが思い浮かぶ。ソロやカルテットといった華やかな編成の裏で、ごく小さな規模で、しかし着実に醸成が進んだのがサクソフォン・デュオだ。魅力的で取り組んでみたいと思える作品も多い。

私なんかは比較的最近の作品に惹かれるのだが、古典的なレパートリー(昔から演奏されている編曲もの)もまた粒揃い。このアルバム「6 Caprices(Meister Music MM-2024)」での選曲は見ての通り古典中心なのだが、あえてこの曲目でアルバム作成を決断したのが面白い。メインの選曲を行ったのは誰なのだろう。

J.M.ルクレール - 2本のサクソフォンのためのソナタ
J.Sバッハ - インヴェンション
C.P.Eバッハ - デュオ
W.F.バッハ - デュエット第4番
W.A.モーツァルト - デュエット第3番
P.M.デュボワ - 2本のサクソフォンのための6つのカプリス
C.ケクラン - 2本のサクソフォンのための24のデュオ 作品186より
P.ヒンデミット - 2本のアルトサクソフォンのためのコンチェルトシュトゥック

日本を代表する奏者のデュオということで、基本的な部分を全てクリアして上手なのは当たり前。注目すべきは鼻歌でも歌うような自由さである。ガチガチに固められた予定調和な音楽ではなく、もっとのびのびと即興的に筆を走らせている。テンポも自由なもので、ルクレールやバッハの作品をこのように作った録音(セッション録音というようり、ライヴでも聴いているようだ)は初めてだ。

レパートリー的にも、なかなか演奏されないデュボワの「6つのカプリス」が入っているのが気に入った。デュボワの他の作品と同様に、妙にテクニカルながら聴き手を楽しませることに徹した作品で、このお二人の演奏で聴けるとは贅沢なことだ。カプリス…奇想曲の雰囲気に、アルバム全体が支配されている。

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