2011/12/18

サクソフォーン・フェスティバル2011二日目(その1)

やっぱり年末はフェスティバルですね!仕事の都合で一日目は伺えず、二日目のみ。一日目も、なかなか充実した催しだったようで、聴けなかったのが残念だ。二日目は、小田急線を使おうとしたところダイヤが乱れるという出鼻のくじかれっぷり(?)に驚きつつ、なんとかほとんどの部分を聴くことができた。

自分たちの演奏はとりあえず置いておいて、聴いた催しの感想をば。

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♪音大生によるサクソフォーン・アンサンブル/東京音楽大学
D.ヴィレーン/中村ちひろ - 弦楽のためのセレナーデ

以前国立音楽大学の演奏会で聴いたことがある。第4楽章が「ポケットの中にはビスケットがひとつ♪」のメロディが現れるということもあって、良く覚えていた。だれの選曲かはわからないが、なかなか面白いアプローチかと思う。ちなみに、この演奏の時にホールに到着して聴き始めたのだが、演奏者が出てきたとき「若っ!」と思ってしまった…(苦笑)。楽曲のせいもあるが、立体感のある音づくりで、面白く聴けた。テナー、バリトンパートともなると、やはり常日頃から吹いているというわけでもないのだろうか、弱音部分でコントロールの難しさが散見された。

♪音大生によるサクソフォーン・アンサンブル/尚美ミュージックカレッジ専門学校
L.E.ラーション/新実信夫 - 小セレナード

スウェーデンの作品が続く。有名な「サクソフォン協奏曲」よりも、さらにさかのぼる時期に作曲された作品だそうだ。冒頭の部分を聴くだけで、モーツァルトなどの古典的音楽に大きな影響を受けていることがわかる…のだが、曲が進むにつれて思ったよりも多面的な要素が含まれている作品だということに気づいた。原博巳さんの指揮は初めて見たが、オーケストラからダイナミックな響きを引き出しているあたり、なんとなく佐々木雄二氏の指揮を思い出した。オーケストラは、奏法がかなり洗練されている印象を受けた。

♪音大生によるサクソフォーン・アンサンブル/上野学園大学
E.H.グリーグ/島田和音 - 組曲「ホルベアの時代から」

上野学園大学にサクソフォン科が新設されたのが4年前、そこから一回りして、4つの学年が埋まったのが今年とのこと。来年早くには、サクソフォン科での演奏会も開くということで、めでたいことだ。指揮はなんと松原さん…あまり松原さんがサクソフォンオーケストラの指揮を振っているところを想像することができない(笑)。人数が17人とかなり少ない割には、各個人の美しい音色とMAX音量方向へのダイナミクスレンジの広さに驚いた。弱音は、やはり少し厳しい部分があるかなー、などとも思った。サクソフォンオーケストラの一般的な弱点ではあるが。

♪音大生によるサクソフォーン・アンサンブル/東京芸術大学
E.H.グリーグ/山下祐加 - 「ペールギュント」第一組曲より

近年の東京芸大サクソフォン科のレベルの上がりっぷりには驚かされるばかりだが、今日も名前のリストを見れば知った名前があちこちに。サクソフォンの基本的な奏法の弱点に関しては完全にクリアされており、有名な「朝」のメロディと和音の中からはノルウェーのまさに夜明けの情景が思い浮かび(行ったことないけど)、「魔王の城」からはおどろおどろしい城の情景が思い浮かび(行ったことないけど)と、音楽的な部分が見事に聴こえてきた。

♪管打楽器コンクール入賞者披露演奏/第3位:角口圭都
T.エスケシュ - テネブレの歌

フランスのサクソフォン奏者、ニコラ・プロスト氏のためにかかれたヴィルトゥオーゾ的作品で、ソプラノのために書かれた現代作品としては再演回数も多い。ネオ・ロマンティック的な美的感覚と、宗教的なテーマに彩られたあたり、ともすればバッハの作品でも聴いているような気分になる。至難な作品だが、角口さんは構成感を保ちながら、かつピアノとの緻密なアンサンブルでもってこの曲を吹きこなしてしまう。多くのアルティシモ音域を含む、まるでインプロヴィゼイションのようなフレーズをスラスラと吹きこなしており驚いた。エスケシュ⇔バロックというつながりで、角口さんの古典的作品の演奏も聴いてみたくなった。モーツァルトの器楽のためのソナタとか、けっこう似合うんじゃないかなー。

♪管打楽器コンクール入賞者披露演奏/第2位:小澤瑠衣
長生淳 - 天国の月

恥ずかしながら小澤さんの名前は管打コンの入賞まで存じ上げなかったのだが、倍音をたっぷりと含んだ輝かしい音色と、各難所へクサビを打ち込みながらぶったぎる感性は、あまり女性の奏者では聴いたことがない(男性だから、女性だから、という分け方はあまり普段考えないのだが)。ちょっと方向性は違うが、安井寛絵さんの演奏を思い出した。しかし、若い方々はなんとリズム処理が巧いことか。ポップな要素も含む長生作品を、ひとつの作品としてきっちりまとめていた。

♪管打楽器コンクール入賞者披露演奏/第1位:上野耕平
E.グレグソン - サクソフォン協奏曲

管打コン・サクソフォン部門での一位、そして特別演奏会での大賞受賞が記憶に新しい上野氏だが、ようやくライヴで聴くことができた。音色とか、テクニックとか、フレージングとか、ステージマナーとか、そういった言葉に表すことのできる要素を超越したところにある演奏だった。やっぱり、須川さんのベクトルに似通っていますね。技巧的と呼ぶにはややはばかられるグレグソンを、あのような説得力でもってさばいてしまうのかという驚きがある。特にアルトを繰る姿には、感動すら覚えた。

続きはまた今度。

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