2011/11/23

クラシック・サクソフォンの源流を辿ると…(続きの続き)

ミュール派とラッシャー派の統合に成功した初めてのサクソフォン奏者は、クロード・ドゥラングル教授なのかもしれない。Garage SのSさんからの示唆をベースにした考え方なのだが、ドゥラングル教授が何を考えて、あのような緻密なコントロールを前提とした目指しているのかといわれれば、そのひとつの理由として、サクソフォンのクラシック楽器としての地位向上を目指している、という理由があるのだという。

例えば、ミュールを始祖とするフレンチ・スクールのスタイルで、ジャック・イベールの「コンチェルティーノ」を吹けば、たちまち見事な演奏になってしまうだろう。しかし、同じスタイルでアントン・ヴェーベルンの「四重奏曲」を吹くことができるだろうか…いや、そんなはずがない。完成されたクラシックの演奏として求められているのは、隅々までよくコントロールされた音色・音量・音程感・フレージング、etcなのである。

ドゥラングル教授は、自身の協奏曲集に吹き込んだイベール「コンチェルティーノ」の演奏で、第2楽章を全て元の楽譜の通りにアルティシモ音域で演奏していた。その理由も、クラシック・サクソフォン流派の統合といった次元の話で考えれば納得がいく。レパートリーに関しても、初期のドゥラングル教授はずいぶんと現代よりの作品ばかりを取り上げていたイメージがあったが、BISレーベルの型番が進むにつれ、アドルフ・サックスの時代の作品~エリザ・ホール周辺の作品~フランスの近代作品~現代作品等々、サクソフォンが存在していた時代のあらかたの音楽はカヴァーしてしまったように思える。

その試みは成功していると言えるだろう。ただ、ミュール派に感じられるサクソフォンの「趣味の良さ」が失われてしまった、と評する向きもあり、次世代のサクソフォンは、楽曲に応じて表現や音色をカメレオンのように変えられるような、そんなことが求められているのだろうか。

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