2011/10/27

ラッシャーのマウスピース推薦文

ラッシャーのマウスピース紹介のページにある、ラッシャー自身の推薦文が面白かったので、翻訳してみた。基本的な考えは、数年前にブログ記事用に訳した文と同じであり、特に真新しい情報はないが、注目すべきところはやはりラッシャーの挑発的な物言いだろう。

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親愛なる友人へ:
これは、私の名を冠した唯一のマウスピースである。私がコンサート活動を始めてから使っているマウスピースの、正確なレプリカである。このマウスピースを使って私が紡ぎ出した音色は、一般に「サクソフォンの音色」と呼ばれている音とは全く違うにも関わらず、世界中で賞賛を得た。

このマウスピースは、ただ一種類のフェイシングを持つ。これは何かの見過ごしでも製造コストの問題でもない。たくさんのプロフェッショナル奏者、サクソフォンを学ぶ生徒たちの経験に基づいたものだ。サクソフォンを演奏する上で、マウスピースのフェイシングは、様々な演奏上の恩恵をもたらすひとつの要因となり得る(フラジオ音域、音色の輝かしさ、音量、レスポンス、等々)。しかし、これらの恩恵は、得てして他の特徴をアンバランスに減少させてしまう。結果的に、不安定な音色を生み出すことになってしまうのだ。ここ数十年の一般的なマウスピースの傾向は、音色の輝かしさとある種のエッジを音色の中に求めるものであり、それらと引き換えに表情の美しさを失っていると考えられる。フェイシングに関する無意味な議論にばかり集中してしまい、マウスピースの内側の空間に関する議論を忘れてしまっていたのだ。

サクソフォンの発明者であるアドルフ・サックスは、マウスピースの内側の空間について、明確ない定義を行なっている。アドルフ・サックスの特許に示された図に描かれているとおり、短くて太いずんぐりした形状で、大きな図体で、マウスピースの内径についても大きく、樽型のチェンバーを持つというものだ。また、特許の図に添えられた文章が示すとおり、すべてのサクソフォンのマウスピースは同じ形で有るべきでなのだ。

音色の改善に関する意見を作る前に、まずは8週間、新しいマウスピースで毎日練習してみなさい。昔のマウスピースと新しいマウスピースを交互に使ってはいけない。初期段階で多大な努力を求められても、諦めてはいけない。この努力に対する見返りは、サクソフォンが本来持つ特徴…滑らかで豊潤な音色、他の楽器との音色のブレンド、独奏の際の表現力となって、もたらされることだろう。このマウスピースを使うことで、アドルフ・サックスが目指したクラシック音楽の高貴な遺産に新しい風を吹き込むという目標を実現する手助けとなることだろう。

私がこのマウスピースから得た利益はすべて、サクソフォンの教育のための基金へと使われる。

Sincerely Yours,

Sigurd Manfred Rascher

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