2011/05/30

SaxAntiquaのCD

少し前に到着していたのだが、演奏会前後のドタバタでレビューが遅れてしまった。スペインのサクソフォン10重奏団体、SaxAntiquaのCDである。10重奏前後で定常的に活動する団体というと、イギリスならLondon Saxophonic(今は活動していないが)、フランスならEnsemble Squillante、オーストリアならVienna Saxophonic Orchestraといった団体名がすぐ思い起こされるが、各国特徴的な活動を展開しているのが面白い。例えば、London Saxophonicはナイマンやムーンドッグとのコラボレーション、Ensemble Squillanteはバロック中心の取り組み…といったように。SaxAntiquaは、レパートリーの方向性としてはEnsemble Squillanteに似ているだろうか。バロック時代の作品を、拡張された奏法で見事に演奏する、と言い切ってしまってほぼ間違いないだろう。

公式サイト:http://www.saxantiqua.com/
Antonio Felipe Belijar, ssax
Enrique Priento, ssax
Pablo de Coupaud, ssax
Israel Bajo, asax
David Rubio, asax
Sergio Diaz Ropero, tsax
Victor M. Mansilla, tsax
Angel L. Valbuena, tsax
Francisco A. Cabanillas, bsax
Daniel Duran, bsax

ディナンのアドルフ・サックス国際コンクールで、3回連続入賞という快挙を成し遂げたアントニオ・フェリペ・ベリジャル氏を筆頭に、スペイン・サクソフォン界の中堅(結成時は若手だったが、今や中堅と言い切ってしまっても良いだろう)の名手によって結成されている。バリトンのDaniel Duranさんは、Adolphesax.comの運営者であり、私も大変お世話になっている(このCDも、なんとプレゼントしてもらった!)。サクソフォンの名手でありながら、エンジニアでもあり、世界のサックス界全てが注目したディナンのコンクール中継は、この人がいたからこそ成り立っていたものなのだ。

CDの内容だが、下記の通り、バロック作品を中心としたラインナップである。

C.Monteverdi - Toccata
G.F.Handel - Music for the Royal Fireworks
A.Vivaldi - Concerto Grosso Op.3 RV522
H.Purcell - Chaconne
J.S.Bach - Brandenburg Concerto No.3
A.Vivaldi - Concerto No.2 RV315

どの演奏もハイ・テクニックで、あっけにとられる。例えばタンギング。スペインのサクソフォン演奏家のタンギングって、なんとなく世界最速なイメージがあるのだが(?)、その能力をのっけから遺憾なく発揮している。古典的な音階を滑るように奏でる様子は、聞き手に爽快感すら与えるほどのものだ。しかも、ソプラノからバリトンまで同じレベルで統一されているのも聞き物である。バッハ「ブランデンブルク協奏曲第3番」あたりを聴いていただけるとわかるだろう。

録音場所のせいか、やや音の解像感が悪く、さらに響きも抑えられてやや密度が薄い印象だが、逆にどの曲においても端正な音色が印象的だ。部屋に流しておいても、あまりサクソフォンを聴いている、という気にならないのが面白い。サクソフォンのCD、と考えることが間違っているのかもしれない。

あとは、最後に置かれたヴィヴァルディの「夏」だろうか。アントニオ・フェリペのソロは、昨今のサクソフォンのテクニックの向上を念頭においたとしても、それでもまだ世界最強クラスのトンデモ演奏であることに間違いないだろう。人間の能力の限界って、サクソフォンの限界って、どこにあるのだろうか…などと思ってしまう演奏!!

万人にオススメする。CDの購入は、公式サイトから(→こちら)。

0 件のコメント:

コメントを投稿