2011/02/03

黛敏郎「饗宴」

黛敏郎ほど、サクソフォンを愛した邦人作曲家も、他にはいるまい。「スフェノグラム」「トーンプレロマス55」「シロフォンのためのコンチェルティーノ」など、サクソフォンを含む作品は数多い。また、自身が司会を務めた「題名のない音楽会」において4回もサクソフォンの特集を組んでくれているほどなのだ。それぞれの詳しい内容は判らないが、次のようなリストを発見した。いずれかの放送では、阪口新氏が登場することもあったようだ(サクソフォニスト No.22に写真が掲載されている。)。

1966.10.23 サキソフォンの饗宴
1975.04.13 サキソフォンの饗宴(野田燎、渡辺貞夫ほか)
1977.12.04 あるサキソフォンの遍歴(野田燎)
1980.12.21 サキソフォンの全員集合!

最近、福村芳一指揮香港フィルハーモニー管弦楽団の、黛敏郎作品集(Marco Polo 8.220297)を聴く機会があった。ここに収録されている「饗宴(バッカナール)」には、なんとSAATBの5本ものサクソフォンが使われている。曲の最初から最後まで活躍しまくり、ソロやユニゾン部分も数多い。オーケストラにサクソフォンが複数本入って、セクションとして使われたときの色彩感やリズムの推進感は、伝統的なオーケストラの編成では決して実現できないものだ。

演奏はやや荒削りな感じがする(まるでライヴ盤みたいな演奏)ものの、黛氏ならではの爆発的な曲のパワーを表現するにはこのくらいでも良いのかもしれない。熱演である。サクソフォンセクションは、もうちょっと音色に気を使って欲しかったかなあ。場面場面において最適な音色というものは存在するはず。…この嵐のような音絵巻に身を委ねたい方は、ぜひ探してみていただきたい。

3 件のコメント:

  1. 1985年頃にもサクソフォンの特集があって、私はたまたま観ています。黛さん自ら「僕はサクソフォンという楽器が大好きなんです」と言ったのをこの耳で聞きました(笑)
    ゲスト出演者は野田燎さんと当時の東京サクソフォンアンサンブルの4名(下地・宗貞・針生・佐々木)。最後はやはり『饗宴』で、この5名がオケに入ってました。黛さんは「本当はオネゲルの『火刑台上のジャンヌ・ダルク』をさわりだけでもやりたかったのだが諸事情で無理でした」と仰ってました。
    曲目は他に「世界の創造」と、イベールの小協奏曲を野田さんが「この曲はジャズからの影響がある」と言っておもいきりブルース調で吹いたもの、とか。

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  2. > Thunderさん

    貴重な情報ありがとうございます。やっぱそうですよねえ。サックスが好きでなければ、オーケストラのなかでこんな用法は思いつかないはずですね。
    野田燎氏、医学の方に傾倒する前はずいぶんとメディアへの露出も多かったようで、びっくりです。イベール生誕100年の「祝典序曲」でもオケに座っていたのは野田燎氏でした。野田氏のジャズイベールや世界の創造、聴いてみたかったです!

    オネゲルの「諸事情」も気になります(笑)

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  3. 訂正です。針生さんはアルモでした。下地・宗貞・市川・佐々木が正解。

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