2011/01/13

Ralph Gari SQのCD?

NMLをさまよっていると、今まで気にもとめなかったような面白い盤を見つけることがある。ということで、また変テコな盤を見つけてしまった。

タイトルは「Saxophones Four(Orion Master Recording LAN0343)」。Ralph Gari Saxophone Quartetという、名前すら聞いたこともない団体のCDだ。NMLは消費者にとっては概ね利点くらいしか思い浮かばないのだが、ライナーノートを読むことができないのが苦しい。幸いにして、Harry R. Geeの「Saxophone Soloists and Their Music」にRalph Gariに関する記述を見つけることができたため、なんとか正体を掴むことができた。

Ralph Gariは、1927年生まれのサクソフォン奏者。幼い頃から幅広い音楽的キャリアを身につけ、サクソフォン以外にもクラリネット、フルート、オーボエを学んだそうだ。この時代のご多分にもれず、Gariはダンスバンドや劇場オーケストラの仕事を重ねながら次第にその地位を確立していったという。クラシックの奏者としてよりも、ジャズ畑での知名度のほうが高いのではないだろうか。1958年より、Sands Hotelのお抱えオーケストラの主席サクソフォン奏者、1959年にNBC専属オーケストラと南カリフォルニアの交響楽団での演奏活動を開始し、さらに1960年にはディズニーランド・バンド(!)の主席サクソフォン奏者となった。このころ、ディズニー映画のBGMで数多くの演奏を務めたそうだ。これだけ見るとクラシック奏者としての経歴は皆無だが、何気に1974年にボルドーで開かれたサクソフォンコングレスに参加している。1974年のコングレスのパンフレットを参照したところ、次のようなプログラムが書かれていた。

1974年7月5日 9:30 -
Ralph Gari, saxophone
Monique Vincent, pf
John Rarig - Danse Episode
William Reddie - Gypsy Fantasy
Pierre Vellones - Rapsodie, op.92
Jack Hayes - Concertino

そのGariが組んだ四重奏団が取り上げているのは、グラズノフ「四重奏曲」、ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」、デザンクロ「四重奏曲」という王道。演奏に関しては…正直、例えばピエルネやデザンクロなんかは、正直、既にこの時代にリリースされていたミュール四重奏団やデファイエ四重奏団の演奏とは技術的にも音楽的にも比べ物にならないが、とりあえず味わい深い、とだけ評しておこう。明らかな音ミスも数多い。

とは言え、こんな演奏を聴いたのも久々で、なんだか嬉しくなってしまった。何も無い状況から創り上げた演奏、アメリカの往年の奏者独特の甘い音色、わざとらしい電気的な残響、何もかも現代においてはほぼ失われてしまったものである。ピエルネやデザンクロの第1楽章など、無性に感動してしまった。ああ、なんだか良いなあ、素敵だなあ。

1986年1月5日の、ロサンゼルス・タイムズには、この盤(ただし、リリース媒体はLP)次のような記事が載っている。オランダサクソフォン四重奏団と比べられる、というのも面白い。

January 05, 1986 | EMMON SCOTT
"SAXOPHONES FOUR." Ralph Gari Saxophone Quartet. Orion ORS 85485. This record deserves the highest praise. Glazunov's B-flat Quartet seems a dull piece, yet it is here rendered with a spirit that lifts it to a higher plain, far above, a competing recording by the Netherlands Saxophone Quartet. Pierne's Introduction and Variations is a jewel here polished to finest splendor. The music surges forward without losing its clarity and phrasing. And the sound of Ralph Gari's soprano saxophone at times casts a spell so sweet that the tone alone, shorn of all else, would still be music, or at least a pleasant substitute.

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