2009/09/14

The Solitary Saxophone

クロード・ドゥラングル教授の、BISレーベルへのデビューアルバム「The Solitary Saxophone(BIS CD-640)」。私にとってのドゥラングル教授の演奏は、このCDと、あと「The Japanese Saxophone(BIS CD-890)」がスタンダードだ。BISから数多くリリースされたアルバムの中でも、Robert Suffがプロデューサーを務めているものに関しては、ハズレがないような気がする(Japanese Saxは例外だが)。タイトル通り、すべてサクソフォンの無伴奏曲。

Karlheintz Stockhausen - In Freundschaft
Luciano Berio - Sequenza VIIb
Giacinto Scelsi - Maknogan
Giacinto Scelsi - Ixor
Betsy Jolas - Episode Quatrième
Giacinto Scelsi - Tre Pezzi
Luciano Berio - Sequenza IXb
Toru Takemitsu - Distance

この選曲!録音は1993年とのことで、もう16年も前になるのか。久しぶりに聴いてみたが、やはり素晴らしさは変わらなかった。今でこそスタンダードなべリオの両作品や、シュトックハウゼンだが、当時は世界を見渡しても演奏可能な奏者もかなり限られていたはずだ。そういった状況のなかで、こういった完成度の演奏をしてしまうところが驚異的である。

ふと、マルセル・ミュールやダニエル・デファイエのことを思い出した。ミュールは、イベールの「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」が作曲されてすぐに、後世の誰も越えられないような名録音を残しているし、デファイエも、ブートリーやリュエフの作品に対して世界最高の録音を残している。「パリ国立高等音楽院の教授になる」ということは、ひとつはそういうことなのだ。

録音会場は、スウェーデンの教会。良く響く環境を最大限に活用して、例えばシュトックハウゼンやべリオ「セクエンツァVIIb」、シェルシでは、ポリフォニックな効果を聴かせることに成功している。「響く」とはいってもお風呂のような環境であるというわけではなく、音の芯はしっかり捉えられているから聴きやすい。これは録音エンジニアの技量に依る部分も大きいのだろう。

ライナーノートには、ドゥラングル教授自身の言葉で、いくつかの作品についてコメントが書かれている。内容がちょっとおもしろかったので、以下にそのコメントを翻訳したものを掲載する。

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Betsy Jolas - Episode Quatrième
私がこの作品を始めて演奏したのは、1982年7月のパリ音楽祭(Paris Festival Estival de Musique)でのことだ。それ以来、私は数多くのジョラスの作品を演奏してきた。アンサンブル・アンテルコンタンポランとともに演奏したサクソフォンと15人の奏者のための「Points d'Or」、テナーサクソフォンとテナー(男声)とチェロのための「Plupart du Temps II」、ヴァイオリンとクラリネットそしてテナーサクソフォンのための「Pour Xzvier」などである。

Karlheintz Stockhausen - In Freundschaft
私が初めてシュトックハウゼンとの密なコラボレーションを行ったのは、1991年のことである。その年、サクソフォンアンサンブル、パーカッション、シンセサイザーのための「Linker Augentanz」を2度にわたって演奏したのだ。この作品は、「シュトックハウゼンへ作品を何か委嘱するように」とヴァンドレンに対して進言した結果、出来上がったものである。

Luciano Berio - Sequenza VIIb
1991年にシャトレで開かれたアンサンブル・アンテルコンタンポランの演奏会において、オーボエとオーケストラのための「シュマンIV」が演奏された。その演奏を聴いたべリオが私に「セクエンツァVIIb」のオーボエ版を作ることを示唆した。

Luciano Berio - Seuquenza IXb
もともとはクラリネットのために書かれた作品である。べリオのオペラ「La Vera Storia」が、パリのオペラ座においてフランス初演された際、私はオーケストラの一員としてその演奏に参加していた。第2幕の最初、この「セクエンツァ」のモチーフを、サクソフォンとクラリネットがデュエットで奏でる部分がある。このことから、ベリオの頭の中に「セクエンツァ」における明瞭なコネクションが生まれた。ベリオの最近の作品における同様の例は、声楽アンサンブルと4つのサクソフォン、4つのクラリネットのために書かれた室内楽曲である。

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