2009/07/26

サクソフォーン協会誌 No.21が到着

サクソフォーン協会の協会誌「サクソフォニスト」の2009年度版であるVol.21が到着した。今回も100ページを超え、数年前と比較するとかなり盛りだくさんの内容となっている。読んでいて実に楽しいもので、歓迎すべき傾向だろう。以下、内容を簡単にご紹介する。

・石橋梓「サクソフォーンの誕生とそのルーツ」
Wally Horwoodの著書である「Adolphe Sax His Life and Legacy」の内容を軸に据え、アドルフ・サックス自身の人生から、サクソフォンの誕生までのいきさつを述べているもの。最終章では、結論として「サクソフォンのルーツはオフィクレイドにある!」と述べ、実際にその結論を裏付けるための検証も行っている。本文中では2月に行われた学位審査演奏会についても触れられているが、そういえば私も聴きに行ったのだった。その時は単純に出てくる音楽にしか感想を持たなかったのだが、この論文を先に読んでいたら少し違った感じで聴けたかもしれない

・拙著「グラズノフ"サクソフォン協奏曲"の成立」
昨年に引き続いて、記事を投稿させていただいた。記事投稿に際し、お世話になった先生方に感謝申し上げたい。内容は、グラズノフの「協奏曲」の成立に至る経緯と謎をまとめたものである。以前ブログにも掲載したものを多く含んでいるが、30%くらいは新しく書き下ろした。私が投稿した原稿とは比較にならないくらい素晴らしい組版がなされており、大変嬉しかった。

・「第28回日本管打楽器コンクール審査員による座談会」
石渡悠史、冨岡和男、宗貞啓二、服部吉之、平野公崇、原博巳、大和田雅弘各氏が参加した座談会。審査員の選出、出場者数による日程調整の話から始まり、コンクールの印象、運営や審査方法、課題曲、演奏内容についてなど、かなり細かい議論がなされている。3年前に比べて、内容をそのままディクテーションしたような印象があり、少し読みづらいものの座談会に参加した先生方の本音が伝わってくるようだ。付録?となっていたヴィブラートの話も、なかなか面白いな。

・「第28回日本管打楽器コンクールを終えて」
田中拓也、伊藤あさぎ、安井寛絵、細川紘希各氏による、28回管打入賞者のコメント、感想、エッセイ。長さ、文体、書いてある内容など、それぞれの方の書き綴り方が自由で面白い(笑)。あ、そうだったんだー、というような話もいろいろと載っている。

・原博巳「ランドスケープ日台演奏旅行日記」
昨年末に、ジェローム・ララン、原博巳、ティボー・カナヴァル、大石将紀の4名(敬称略)によって結成された四重奏団「ランドスケープ」の演奏について。日本のフェスティバルでの演奏(ドビュッシーの「夢」とデザンクロ)、そして、台湾への演奏旅行について、日記形式でまとめられている。昨年、フェスティバルで聴いて、大変に印象深かった記憶がある。また聴きたいものだ。

・大栗司麻「再びフランスを訪れて」
ロータリー財団研究グループ交換プログラム(?)の派遣としてフランスに渡った大栗さんのレポート。フランス各土地の文化をめぐりながら、大栗さんが感じたことについて簡潔な文体で述べられている。

・セルジュ・ベルトッキ/上田卓「サクソフォニストたちの協会-A.SAX-その沿革」
フランスのサクソフォン協会である、Association des Saxophonistes、通称A.SAXの、成立、現在の活動、そして著者のベルトッキ氏自身が参加ないしは企画しているプロジェクトについての解説。フランスのサクソフォン事情は、日本にいるとわかっているようで実は知らない部分が多く、こういった資料は貴重である。

・ルマリエ千春「パリ・サクソフォンフェスティバル」
今年初めての開催となったパリ・サクソフォンフェスティバルのレポート。パリ7区音楽院で開催されたとのことだから、ルマリエ千春さんのご主人であるヤン・ルマリエ氏が企画したものなのだろう。ガラ・コンサートの模様や、アマチュア向けコンクールの内容などが示されている。フランスでは、国内で小規模ながら充実した内容のフェスティバルがいくつも開かれているようで、うらやましい限りだ。

・服部吉之「第6回サクソフォーン新人演奏会報告」
・服部吉之「音大生によるサクソフォーン四重奏の夕べ報告」
・原ひとみ「第11回ジュニアサクソフォーンコンクール」
毎年おなじみのレポート。10年くらいたったら、演奏されるレパートリーも変わってくるのだろうか。数年前の協会誌を見ると、そこで演奏している奏者の中には、現在バリバリで活躍しているプレイヤーもおり、面白いものだなと思った。

・國末貞仁「第28回サクソフォーンフェスティバル後記」
何がびっくりしたって、管打楽器コンクールと同じ年月だけ続いているということ。28回って、考えてみればものすごいことだ。自分だって生まれてないし。

・大城正司、金井宏光「第6回アンサンブル・コンクール」
今年は聴きに行かなかったのだが、来年は聴きに行けるかなあ。あ、またいつか参加してみたいなー。でも、今出したら録音審査も通らないかも(苦笑)。一般の部で第一位のIBCは、ヴァンサン・ダヴィッド編のドビュッシー「弦楽四重奏曲」。それだけレベルの高い争いになってきたのだなあ。

・第28回サクソフォーンフェスティバルCD
今回の協会誌には、浅利真氏監修による、サクソフォーンフェスティバルのライヴCD、しかもプレス盤が付属している。これは驚いた!ある意味、一番気合いの入った記事(?)かもしれない。収録内容は以下の通り。
- 出演愛好家とフェスオケ:伊藤康英「サクソフォンのためのファンファーレ"アルルの女"」
- カステット・スピリタス:W.A.モーツァルト「"フィガロの結婚"序曲」
- 山崎憂佳:R.ブートリー「ディヴェルティメント」
- 東京芸術大学:M.ラヴェル「クープランの墓」より
- ヴァンサン・ダヴィッド:A.I.ハチャトゥリアン「ヴァイオリン協奏曲」より
- 田中拓也:H.トマジ「サクソフォン協奏曲」
- 彦坂眞一郎:長生淳「He Calls...」抜粋
- フェスオケ:L.v.ベートーヴェン「交響曲第7番」より

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