2008/07/04

ダール「協奏曲」の研究論文

数ヶ月前に買ってレビューし忘れていたもの。書籍のレビューが苦手なので、ついつい先送りにしてしまっていたのだった。ポール・コーエン Paul M. Cohen著「The Original 1949 Saxophone Concerto of Ingolf Dahl - A Historical and Comparative Analysis」。言わずと知れた名曲、インゴルフ・ダールの「サクソフォン協奏曲」について、1.歴史上のエピソードから 2.オリジナル版の楽譜と改訂版の楽譜を比較しながら、改訂遍歴を分析するものである。以前、ダールの「協奏曲」の改訂部分遍歴について翻訳し、こんな記事を書いたが、本論文が以前参照したドキュメントのフルバージョンということになる。

To the Fore Publishersから直接購入できる。内容は、以下の通り。

アブストラクト、序論
1. インゴルフ・ダールのバイオグラフィ
2. 「協奏曲」改訂遍歴
3. オリジナル版楽譜と改訂版楽譜の比較
4. 改訂に関する疑問
5. まとめ
付録:オリジナル版演奏リスト、プログラム冊子、出版譜に関するレビュー、バンドのための「シンフォニエッタ」に関するレクチャー

で、実際どんなことが書いてあるかというのは、ぜひ買ってみていただきたい。特に、30ページ以上が割かれた歴史上のバックグラウンド(2)と、オリジナル版の楽譜と出版譜の譜例をふんだんに使いながら、50ページに渡る比較(3)が、実に壮観である。オリジナル版楽譜は、どうやらコーエン自身が浄書したようで、手書きの楽譜に苦労の跡が見られる(初版は1985年なのだ!)。

それだけではあんまりなので、例を一つ。第1楽章、フランス風序曲のグラーヴェが重厚に始まったあと、サクソフォンが大見得を切る部分の最終部。オリジナル版と改訂版では、楽譜上ではこのような違いがあるのだ(クリックして拡大)。

音源を使用した聴き比べ用ページも作成したので、そちらでもご確認いただきたい。ラッシャーのほうは、なんと世界初演の録音。The Legendary Saxophonists Collectionからの抜粋。一つ一つ音を追ってみると、ややオリジナル版の楽譜と違う気もするが。

…そういえば、今年のフェスティバルは確か、吹奏楽とサクソフォンの共演、というようなメインプロであったはずだが、ダールのオリジナル版、やってくれないかなあ。

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