2008/03/21

雲井雅人「サクソフォーン・リサイタル」

空があまりにも明るくて何かと思えば、月の輝かしいこと。ふと自転車をこぐ足をとめてみれば、浮雲に月光が降り注いで、実に美しい情景を織り出している…。

最近、各所(こちらこちら)で雲井雅人さんのデビューリサイタルの音源が話題に上っているが、聴いてみたいなあと思いつつ、とりあえずまずはデビューCDだろう!ということで、ヤフオクで探して落札してきた。1993年に録音・出版された「雲井雅人サクソフォーン・リサイタル(KING Record FIREBIRD KICC 99)」である。たまにオークションに出ると、定価を越える価格で取引されることもあるのだが、送料込みで2500円以内に収まったのは幸いであった。

プログラムは、以下。雲井さんがソプラノ、アルト、テナーサクソフォンを吹き分けている。ピアノは、服部真理子さんだ。

F.シュミット「伝説 作品66」
P.ヒンデミット「ソナタ」
P.ボノー「組曲」
H.ヴィラ=ロボス「ファンタジア」
V.ダンディ「コラール・ヴァリエ」
J.S.バッハ/雲井編「ソナタト短調 BWV1029」
G.マーラー/F.ヘムケ編「私はこの世に忘れられ」

決して、超高度なテクニックを要するような曲ではなく、息の長い旋律を持った作品も数多く選択されているところに、雲井さんのコダワリを感じる。音色は、たとえば最新の「Simple Songs(Cafua)」などと比較すると驚くほど違うが、根底にあるのは師であるフレデリック・ヘムケ氏の音なのかな、という感じを受ける。そういえば、ボノーなんて、ヘムケ氏もレコーディングしていたっけ。

そんな感じで聴き始めてみたのだが、シュミットやヒンデミットを進んで聴こうという気になったのは、実に久々であった。不思議と聴き手を惹きつける、そういう音楽が流れているのだ。ダンディの「コラール・ヴァリエ」なんて、その名の通りピアノを主体に展開するコラール変奏曲であるが、時折出現するサクソフォンの演奏も、実に良いのですよ。サクソフォンが中盤を過ぎた頃にようやく旋律を歌い始め、高潮ののちに服部真理子さんのピアノに受け渡される箇所…うおぉ、鳥肌がー!

こんな素敵な演奏は、静かな夜にこそふさわしい。一度聴き終えた後に、ちょっと明かりを落として、月の光だけを頼りにシュミットやダンディを聴き返してみたのでした。

聴く前から楽しみにしていた、バッハ「ヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ第3番」は、テナーサクソフォンで演奏されると、ほとんど超絶技巧を求められる作品(息継ぎができない)となってしまうはずであるが、技術的な壁を軽々クリアして隅々まで良く歌われた演奏。ただし、演奏は軽くならないのが雲井さんらしい。自分でも演奏してみたいが、ちょっと難しすぎるかもなあ。

廃盤であるのは残念だが、ちょっと調べたところこの辺ではまだ手に入りそうだ。

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そういえば、雲井さんの録音つながりで、以前渡瀬英彦先生に頂戴した「ブランデンブルグ協奏曲第2番」の録音を掘り出してきた。一年以上聴いていなかったかもしれない。この録音、同曲のトランペットパートを、雲井雅人さんがソプラニーノ・サクソフォンに置き換えて吹いているのだが(ミュールの故事に倣っている)、これ以上何もいらないと思えるような…豪華絢爛な音楽が花開いている。

個人的には、「ドリーム・ネット(Cafua)」に収録されているものより好きだな。このブランデンブルグ、いろんな人に聴かれると良いと思うのだが、さすがに難しいのかしらん。

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