2008/01/15

阪口新氏出演のラジオ録音

1975年放送のFM東京「富士フィルム・クリエイトルーム」という番組に、サクソフォニスト阪口新氏(当時、東京藝術大学サクソフォン科教授)が出演したときの録音をお分けいただいたので、ご紹介したい。「クリエイトルーム」というのが、いったいどんな番組であったか、というのは推測するしかないのだが、どうやら芸術分野で活躍する人物を毎回ゲストを迎え、司会の男性とお話をする、というような形態のようだ。クラシック・サクソフォンに関することを司会の方が質問する形で阪口氏が答えというような問答のほか、随所で阪口氏が所持するテープのコレクションが流されるなど、なかなか面白い構成となっている。

「サクソフォンがジャズだけの楽器ではない」というところから始まって、まず流されるのはギャルド・サクソフォン四重奏団の演奏でウジェーヌ・ボザ「アンダンテとスケルツォ」。司会の方もなかなか勉強されているようで、なかなか鋭いツッコミ、そして阪口氏のなんとも言えないテンションでの語り口…うーん、面白い。

続いてサクソフォンの歴史。「ベルギー生まれの楽器、今はフランスの楽器」という流れを軸に、黎明期のサクソフォンの使われ方という話。レパートリーでは、独奏用にバロック作品のトランスクリプションを行った人物として、シガード・ラッシャーの名前が出、続いてサクソフォンの芸術性を高めた人物としてマルセル・ミュールが紹介される。そこで、Erato盤のジャン・リヴィエ「グラーヴェとプレスト」のマルセル・ミュール四重奏団の録音が流される。中休みで、スーパー・サックスの演奏(ジャズ)。バンド名も演奏も初めて聴いたが、なかなかカッコ良いなあ。

今度は、阪口氏自身の生い立ちについて。チェロをやっていたが、ミュールの演奏を聴いて転向した、という話。今でも良く聞く話だが、自身の口から聞くのはまた違った感触がある。ミュールの演奏を初めて聴いたとき、「これはたまらん!」と思ったそうだ(笑)。そして、阪口氏の演奏ということで、コロムビアから発売されていたレコードから「峠のわが家」の演奏…って、うおおぉ!これ、以前Thunderさんの日記で話題になったヤツではないですか!まさかこういった形で再び聴くことができるとは思わなかった。

そして、世界サクソフォンコングレスの話題(マニアックだな)。新しい作品の開発に努めている、という話で1970年のシカゴ、1972年のトロント、1974のボルドーのちょこっとしたお話。そして、シカゴのコングレスのライヴ録音(氏の知人が隠しマイクで録音したものだ、ということも暴露している(笑))で、ダニエル・デファイエ四重奏団のリュエフ「"四重奏のためのコンセール"よりパスピエ」からの抜粋。続いてこちらはコロムビアのレコードから、グラズノフ「"四重奏曲"より第2楽章:テーマ」。

そして、サクソフォンの魅力についてひとしきり語り終えた後で、再び阪口氏の演奏で武蔵野音大の1974年大学祭のゲスト録音で、吹奏楽バックのヴィクター・ハーバート「インディアン・サマー」の録音が流される。もう、ステキすぎますねえ。どこまでも暖かみのある音に、豊かなヴィブラート、まるでタイムマシンに乗せて運んできたかのような懐かさを感じさせるフレージング…。阪口氏のこんな素晴らしい演奏を、2008年という時代に聴くことができるなんて!感動のあまり、泣けてきた。

いやあ、貴重なことこの上ない録音をお譲りいただきまして、ありがとうございました。

ところで、「富士フィルムFXカセット」のCMが、とても気に入ってしまった(笑)こういうCM、今はないよなあ。

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