2008/01/08

ルソーとビッグバンドの共演盤

東京のドルチェ楽器にあった。「Eugene Rousseau with the E.R. Big Band(Liscio LAS-01188)」は、ユージン・ルソーとビッグバンドが共演したアルバムである。録音は1991年。ライナーノートを開いてみると、驚くことに日本語訳が付いており、それによるとこのCDは、インディアナ大学におけるマルセル・ミュール奨学基金の資金集めの一環として行われたコンサートの後に録音されたものだとのこと。1991年というと…わたしゃ6歳?いや、5歳?私がクラシック・サクソフォンを好きになったのは高校2年生のころだが、こんなディスクがあるなんてことは初めて知ったぞ。その頃には、ある程度流通したものなのだろうか。当時のことを知っている方がいらっしゃったらぜひ教えてくださいm(_ _)m

なんでそんな昔のディスクがドルチェ楽器で売られていたかというと、K田さん曰く「ヤマハに、売ってくれと頼まれたんだよー」とのこと。ルソーのCDだけでなく、フェスティバルに出展していたドルチェブースでは、フルモーの「Serenade」「Cinesax」なんていう超絶レアなルネガイ(Rene Gailly)盤までもが売られていたし(「Serenade」は、なんとか買えた)、うーん、ヤマハの倉庫にはまだまだ面白いものが眠っているかもしれない。関係者のみなさま、どうか日の目を見させてください。面白いものだったら買うから(切実)。

…と、話がそれたが、とりあえず収録曲目は以下の通り。ほとんどが王道の曲目ばかりであるが、いくつかは説明を付与しておこう。ドミニク・スペラが作曲した「ブルース・フォア・ミスター・メロウ」という曲目のタイトルにある、「ミスター・メロウ」とは、ルソーその人のことである。スペラとルソーとは旧知の仲であり、親友でもあるとのこと。そんな交友関係の中から、ルソーに献呈された作品だそうな。また、「イン・メモリアム」はインディアナ大学でジャズと木管楽器を専攻していたシグ・フラサソンの手によるもので、インディアナ大学公共放送局が主催した第1回作曲コンクールの、ポピュラーミュージック部門優勝作品、とのこと。

ハーレム・ノクターン
カーマイケル・メドレー
ジェローム・カーン・メドレー
ラウンド・ミッドナイト
ブルース・フォア・ミスター・メロウ
サマー・オブ・'42
ボディ・アンド・ソウル
テイク・ファイヴ
イン・メモリアム
ポーギーとベス
バック・ホーム・アゲイン・イン・インディアナ
スター・ダスト

一聴して解るのは、とにかくお金がかかったディスクだなあということ。綿密なアレンジ(そう、アレンジの豪華さは筆舌に尽くし難いほどで、これは実際聴いていただくのが良いと思う)、よく訓練されたアンサンブル、豪華演奏者(サックスにトム・ウォルシュがいた。どっかで名前だけは聞いたことがある)といったところが、そう思った所以。そもそも、ビッグバンドをやる、ということ自体、現代においては金銭面の理由から実現が難しいのだ。ミュージシャンもたくさん集めなければいけないし、アレンジも大変だし、スケジュール調整もマトモに行うことは難しいし、遠征を行うとすれば交通費もバカにならないし…。さすが1991年、まだまだ音楽に対して潤沢な資金が使える時代だったということか。

ルソーのサックスは、ミスター・メロウ Mr.Mellowと称されるほどの甘ーい音色と、良くかかったヴィブラートが素敵。サックスソロのパートは、さほどの難しい譜面を吹いているようには感じないが、突然フラジオ音域の連発が出てきて驚かされる。さすが、「サクソフォーン高音演奏技法」の著者、難なく切り抜けているあたり、さすがではないか。さらに「バック・ホーム・アゲイン・イン・インディアナ」では、ルソーの見事なクラリネットの演奏を堪能することもできる(!)。アメリカでは、木管楽器はすべて同じ!ということですかね。全体を通して落ち着いたアレンジ・演奏・曲目が多く、派手でぶっ速いような現代風ビッグバンドサウンドを期待していると裏切られるので、往年のビッグバンドファン向けか、ルソーファン向け、といったところだろう。

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