2007/06/05

ディアステマQのCD二題

久々のサクソフォーンCDのレビュー。けっこう前に買ったものだが、フランスのサクソフォーン四重奏団であるディアステマ・サクソフォーン四重奏団 Quatuor Diastemaのアルバムから二つほど。

この四重奏団の存在を知ったきっかけは、mckenさんのところ。1986年に結成されたということで、既に長い活動暦を持っているはずだが、日本へはあまり活動の様子が伝わってきていなかった。ところが、NAXOSから「Saxophone Classics」と「French Saxophone Quartets」というアルバムを発売したのを皮切りに、急速に認知されるようになった感がある。メンバーは、ダニエル・デファイエ教授時代にパリ音楽院のサクソフォーン科を卒業した奏者たちで構成される。

フィリップ・ルコック Philippe Lecocq, Soprano Saxophone
クリストフ・ボワ Christophe Bois, Alto Saxophone
フィリップ・ブラキャール Philippe Braquart, Tenor Saxophone
エリック・ドゥヴァロン Eric Devalon, Baritone Saxophone

フィリップ・ブラキャール氏の名前は、日本からフランスのモンペリエ音楽院に留学したサクソフォニスト(大栗司麻さん、西本淳さんなど)の経歴で目にすることがある。前回のパリ管弦楽団来日のときに、ラヴェル「ボレロ」のサクソフォーンソリストとして来日していたのも、ブラキャール氏(と、クリストフ・ボワ氏)だったという。また、ソプラノのルコック氏はトゥールーズ音楽院のサクソフォン科教授で、あのトゥールーズ・キャピトル管弦楽団のソリストを恒常的に務めているそうな。バリトンのドゥヴァロン氏は、Bayonne côte Basque音楽院のサクソフォン科教授だとのこと。

さて、そのディアステマQが発表したアルバムのうち、私が持っている二枚を取り上げてみよう。一つ目はNAXOSからの出版によるもので、フランスのアカデミズム作品を取り上げた「French Saxophone Quartets(Naxos 8.554307)」。


・ガブリエル・ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」
・アルフレッド・デザンクロ「サクソフォーン四重奏曲」
・フローラン・シュミット「サクソフォーン四重奏曲作品102」
・ジャン・リヴィエ「グラーヴェとプレスト」
・ジェラール・ガスティネル「ガンマ415」

デファイエ四重奏団がかつてEMIから出していたLPを思い起こさせる収録内容。というか、最初の4曲は完全にダブっているじゃないか。ガスティネルの作品が異質ではあるが、実際聴いてみると、不思議と受け入れやすい響きだ。

(録音が微妙なのは置いておくとして)軽めの音色に高いテクニックと、どれも名演奏。この時代にあっては、こういったフランスアカデミズムの潮流を汲む作品のレコーディングをするのって、かなり勇気がいることではないか、とも思うのだが(デファイエ四重奏団の録音が、完全にトドメを刺してしまっているというのは、周知の事実)、古きに惑わされず、しかし奇をてらわず、これらの名曲を現代にきっちりと再構築している。

ピエルネ、デザンクロ、リヴィエなんか、アンサンブルコンテストでも取り上げられる機会は多いのだから、ぜひ日本でも知られてほしい録音だ。変な解釈をせずとも、音色の美しさとスタンダードな解釈で、ここまで説得力ある演奏を創り出せるのか、と感心すること受けあい。そんな理由から、参考演奏としても聴きやすい。

一方、こちらは比較的最近発売されたアルバムで、弦楽四重奏曲のトランスクリプションとグラズノフの「四重奏曲」を取り上げた「D'OUEST en EST(label AMES AM 3004)」。(…気のせいかハバネラの「Grieg, Glazounov, Dovrak(alpha)」に、コンセプトがダブって見えるような…)


・サミュエル・バーバー「弦楽四重奏曲作品11」
・アレクサンドル・グラズノフ「サクソフォーン四重奏曲作品109」
・ドミトリ・ショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲第7番作品108」

録音媒体として聴けるグラズノフにまたひとつの名演が生まれた。奇をてらわない素直な解釈で、不自然にテクニックを見せ付けることもない。「グラズノフはこう自然体であるべきでしょ」というメンバーの主張が、スピーカーを通して伝わってくるような気がする。良く練られた安定したアンサンブル(ハバネラのライヴ盤とは対極)と、山間の湧き水を思い起こさせるような透き通った音色が、耳に心地よい。

ショスタコーヴィチでの、テンションが上がるような場所でも音色は均整を保ったままだ。個人的な趣味の範囲ではあるが、もう少し音色的にもテンション的にも、リミッターが外れたような演奏でも良いんじゃないかと(ショスタコだし)。とは言え、この黒々としたスコアをさらりと吹きこなしてしまうのって、良く考えたら驚異的な技術レベルことじゃないか。これ以上の要求は、贅沢な注文というものだ。

ちなみに、以上二点のCDの入手先はというと…。「French Saxophone Quartets」は、eBayから。送料込みで、日本円にして約1500円くらいだったか(CDが700円、送料が800円)。「D'OUEST en EST」は、フランスのアマゾンから。送料込みで、3500円(泣)。どちらも日本で流通すれば良いのにー。

2 件のコメント:

  1. ディアステマSQは、デファイエ時代の次の世代であり、またハバネラSQに先駆する世代でもあり、狭間で日本での知名度は高くないですが、注目すべき団体と思っています。ホントにぜひ来日して実演に接したいものですね!

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  2. 実演聴いてみたいですね。パリ管やトゥールーズ管といっしょに、四重奏としても来てくれないものでしょうか。

    ディアステマは正直な話、私はmckenさんのところで、初めて知りました。日本では全く無名であるのに、CDを聴いてみて「こんな凄い団体があったのか!」と、ぶっ飛んだものです(笑)。いやはやmckenさんの探求精神には、驚かされます…。

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