2007/05/07

熱狂の日、二題+α

5/5 夕刻~ こちらのコンサートには行く予定はなかったのだが、勢いで聴いてきてしまった。有楽町の東京国際フォーラム周辺で行われている、熱狂の日(ラ・フォル・ジュルネ)音楽祭。2年前に彗星のごとく日本に降り立った、言わずと知れた大音楽祭だ。ゴールデン・ウィークの期間中、朝から終電の時間まで、5つのホールでクラシックのコンサートが同時進行。各コンサートは、一回45分から60分で終了し、入場料も1500円~2000円と破格。編成もソロ、室内楽からフル・オーケストラまで様々。今年は「民族のハーモニー」というテーマのもと、東欧、欧州の民族性に影響を受けた作曲家の作品が多く並んだ。

JRを降りてフォーラム方面に向かうと、すぐに中庭?の賑わいが見えてきた。屋台が並んだスペースに、くつろげる椅子とテーブルが並び、中央にはこじんまりとした演奏スペース。少しはなれたところには巨大なスクリーンが置かれている。食事をとりながら、肩肘張らず思い思いに演奏に聴き入る人たち…この光景を見るだけで、ラ・フォル・ジュルネが目指す方向を感じ取ることができる。

早速タイムテーブルを参照し、チケットがまだ買えるところを調べ、19:15からのウラル・フィルのロシアン・プログラム公演と、21:30からのバルビオ響のラヴェル・プログラム公演を確保。ギリギリの購入だったため、ドストエフスキーホールの、2階席ほぼ最後列になってしまった…しかし、2つ併せて3500円。激安。ウラル・フィルの演奏が、開演間近だったので、急いでホールA"ドストエフスキー"に移動する。2階席は、いくつものエスカレーターを乗り継いだ先。たどり着くだけで一苦労してしまった。

ドミトリー・リス指揮ウラル・フィルハーモニー管弦楽団
・ラフマニノフ - パガニーニの主題による幻想曲
・ムソルグスキー - 禿山の一夜
・ボロディン - 中央アジアの草原にて

とりあえず、ホールでかすぎ。5000席ですかい。ステージがずいぶんと遠かったのだが、2階席にふわっと浮き上がってくる音は、とても印象的で、ラフマニノフから一気に惹き込まれた。ピアノが実に見事な演奏で、超絶技巧が連続する楽譜を、転がるように弾きこなしていた。指揮の方も、弦の中低音域の、ガリガリした音色はさすがロシアのオーケストラと言ったところか。「禿山」こそ、このオーケストラの本領発揮で、全身フル運動のような激しい指揮から繰り出される大音響は、まさに巨大ホールを覆いつくす「嵐」。そして同時に、5000人の聴衆の、すさまじい集中力。後方の座席までも、水を打ったように静まり返り、ステージを一心に見つめる観客…。

ボロディンでしっとりと閉めた後は、オーケストラに心からの暖かい拍手が送られた。何回ものカーテンコール。なんだか、現実の世界ではないみたいだ。

夢見ごこちのまま中庭に出ると、外はすっかり暗く、しかし賑わいは先ほどのままだ。この期に及んで家路へと急ぐ姿はほとんど見受けられない。スクリーンに映し出された演奏を聴き入る人、食事を楽しむ人…。

半券を使って展示ホールへと移動すると、どこかのオーケストラがストラヴィンスキー「春の祭典」を演奏中。かなり上手い演奏で、第2部をまるまる聴くことができた。四方からステージを取り囲み、ここでもやはり演奏をじっと聴き入る聴衆…。指揮は高関健氏のようだったが、オーケストラはどこだろう。女の子が多いことだし、どこかの音大のオーケストラだと思っていたのだが、後から調べてみたら、桐朋音楽大学のオーケストラだったようだ。

「春の祭典」を聴き終わった後は、再び中庭に出て軽めの夕食。デミグラスソースオムライスを食す。なかなか美味しい。そうこうしているうちに、いつの間にやら開場時間に。5000人を収容せねばならないため、開場時間は開演の45分前なのだ。再び、ホールAへ移動。

ファンフォ・メナ指揮バルビオ交響楽団
・ラヴェル - 亡き王女のためのパヴァーヌ
・ラヴェル - 「ダフニスとクロエ」第2組曲
・ラヴェル - ボレロ

どんな音のオーケストラかなー、と思っていたのだが、意外なほどに正統的な響き。技術的にもとても上手いオーケストラだ。「亡き王女~」は、一音一音を慈しむような丁寧な演奏、美しい音色で、続くプログラムに否応なしに期待が高まる。「ダフニスとクロエ」でのメナ氏の指揮っぷりは、先ほどの曲がウソのような、ダイナミックさ。実に快速な「全員の踊り」の終結部へ向けての煽りは、圧巻の一言。ホールいっぱいにキラキラした音色が満ち溢れ、そして伸縮・爆発・霧散していく様子が眼前に無数の光の粒となって現れているかのようだ。「ボレロ」。少し遅めのテンポで始まったが、そこはさすがスペインのオーケストラ、自分たちが作り出すリズムに、自分たち自身がノッてしまうような、不思議な感覚が伝わってきて面白かった。有名ソリストだらけのお高くまとまった「ボレロ」も良いけれど、こんな楽しい「ボレロ」、初めてだ!終演後は、実に5分以上に及ぶ、何回ものカーテンコール。客席が明るくなって、ステージから奏者が退場するときに、ふと起こる拍手に、暖かさを感じた。

余韻に浸りながら、有楽町方面へ。こんなに素敵な音楽祭ならば、もっと聴きたかったなあ。来年のラ・フォル・ジュルネ「シューベルトと仲間たち」だそうだ。次も、ぜひ。

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