パソコンが壊れると、途端にCDをじっくり聴く時間ができる。これはこれで、悪くない(その代わり、ブログの更新はお昼休み時間中になってしまうのだけどね)。
昨晩は、アルモ・サクソフォン・クヮルテットの「四重奏の日々パート1」を取り出してきた。プラネルの「バーレスク」に始まり、ドビュッシー/中村均一編「ベルガマスク組曲」やバッハの「イタリア協奏曲」など、気楽に和音とメロディを楽しむことができる作品集だ。アルモ特有の几帳面な和音に、どこまでも明るいその音色。プログラムと演奏の相乗効果が、ここまで顕著に現れた例は、他にはあるまい。
アルモの「ベルガマスク」を聴きながら思い出したのは、昨年東京文化会館で聴いたハバネラ・サクソフォン四重奏団の演奏だ。第1楽章「プレリュード」の冒頭は、数オクターブの隔離による分厚い和声から始まる。アルモの、まるでオルガンで弾いたような演奏が刷り込まれていた私は、ハバネラの軽い吹き方と編曲に、随分と違和感を覚えたものだ。続くラヴェルや、イタリア協奏曲の演奏も、例えばアルモやトルヴェールの演奏と比較したときに、同じ傾向だったような気がする。重厚な和声から差音が聴こえてくる…というのが理想だと考えていた私には、演奏の凄さとは別に、けっこうなカルチャーショックを受けた。
そして、その感覚を意識しながら、持っているCDを片っ端から聴いてみたところ、日本人とフランス人の間には、確かに和音の捕らえ方に感覚の差を聴き取ることができのだった。
和声ベースのサウンド作りをする日本の四重奏団たちは多い。雲Qさんなんかその典型だし、アルモだって名前からして(笑)和声重視っぽい感じだし、トルヴェールも活動初期のアルバムを聴くと音の厚い重なりを聴き取ることができる。
相反して、フランスの四重奏団。デファイエ四重奏団やハバネラ、そしてあのアドルフ四重奏団の演奏などを聴いていると、和声の構築に関して実に適当?であることがわかるのだ。その代わり、横に流れる細い糸を絡めて、たぐって、織り成していくような繊細さを重視しているような気がする。そういえば、クローバーもこちらの傾向が強いサウンドだったな。
誤解を恐れず真っ二つに分けてしまうならば、アンサンブルにおける「縦の構築」と「横の構築」だ。「縦の構築」は、同一時間点での音楽作りを基礎としたもの。和声重視。対して「横の構築」は、時間軸方向ベースとした音楽作り。旋律線重視。どちらもそれぞれに良さがあるが、フランス人から見た「縦の構築」音楽は、どんな風に聴こえるのかな。
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閑話休題。デザンクロの「四重奏曲」って、聴けばわかるが、「縦の音楽」である和声的書法と「横の音楽」である対位法的書法がめまぐるしく入れ替わるのだ。第3楽章を例にとって、楽譜を少し載せておこう。
日本人だったら大好きでしょ、この最初のフレーズ(私も大好きです)。セブンスの響きがサイコーですよね。
あと、これとか。サックスにとってはかなり低い音域での5度進行(和声に厚みが出る)。リズムもかっこよい。
対位法的書法の最たるフレーズはこのあたりか。4本がまったく別の動きをしていることに注目。デファイエかハバネラあたりの演奏で、ここを聴いてみてくださいな。てんで4本ばらばらに吹いているかのようなのに、とっても綺麗。
なかなか興味深い解釈ですね~、いつもながら。
返信削除それにしても、
スコア見ると吹きたくなってきますねぇ(笑)
本当は、音でも載せられれば良いんだけど。あーー、デザンクロ聴いたら、久々に四重奏やりたくなっちゃいました。
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