2007/05/07

原博巳氏クリニック&ミニコンサート

5/5 10:30~は下倉ドリームフェアの一環、原博巳さんのサクソフォンクリニック&コンサート。会場は、明治大学リバティホール。少し出遅れて到着すると、会場は8割方の席が埋まるかなりの盛況。中学生と思われる方が多かったかな。熱心にメモをとっている生徒が多かった。クリニック一人目の途中から聴けた。

受講生は2人とも高校生だったが、音大を目指しているのかな、両者とも健闘していた。受講曲は、ラクールの45番、ミュール編の小品、ボザの「イタリア幻想曲」など。原さんのアドバイスは、プレイヤーとしての立場に立った、シンプルかつ的確なもの。奏法や解釈に言及しながら見本演奏を交えた進行に、受講生の方の演奏が徐々に変わっていく様子が面白いのだ。

クリニックの後は、原さんの演奏によるミニ・コンサート。バッハの「無伴奏パルティータ第2番」よりアルマンド、サラバンド、ジーグ。それに、ルチアーノ・ベリオの「セクエンツァVIIb」。どちらも無伴奏の作品だったが、とてもすばらしい演奏だった。

バッハは、ジャン=ピエール・パラグリオリ Jean Pierre Baraglioli氏からのアドバイスによる選曲だそうだ。まるで太身のクラリネットのような素朴かつ大音量の音色は、この作品を演奏するときのスタイルに、比較的マッチしている気もする。CDで聴ける原さんの演奏とは、ひとつひとつの音の処理などに違いが見受けられたが、意識して変えていたものだったのだろうか。せっかくの第2番ならば、本当はシャコンヌが聴きたかったが、それは贅沢な望みというものだろう。

ベリオは、なんと暗譜(!)での演奏。数年前にフェスティバルで聴いた、「ミステリアス・モーニングIII」の演奏を思い起こさせる、凄まじい集中力。比較的響きの少ないホールではあったが、そんなことを感じさせる暇のない、内容の濃い演奏だった。ソプラノサクソフォンを構えた演奏姿を見ていると、飛び出す記号的な音とあいまって、まるでPCのキーボードを構えてコンピュータを操作しているような光景にも見えますな。

曲が始まる前に行われた、原さん自身による曲に関するレクチャーも、面白かった。「セクエンツァVIIb」のテーマは、"縦方向(音域)と横方向(時間軸)への拡大と縮小"なんだそうだ。縦方向の基準音となるHの音は、「セクエンツァVIIa」の献呈を受けたオーボエ奏者、ハインツ・ホリガー Heinz Holligerのイニシャルから取られたとか(原博巳さんもH.H.だそうで笑)、横方向のぽんっ、ぽん、ぽんぽんぽぽぽぽ…という拡大と縮小のリズムは、ベリオの奥さんが日系人だったことにも由来しているとか、興味深いお話がたくさん。そのほか、Heinz Holligerの文字総数13文字に由来した13小節×13段の楽譜のレイアウト等、いろいろなところに言及されていた。

とりあえず、中学生のみなさんにベリオを聴かせてしまうという原さんのセンスに脱帽。おそらく大半の方々は、「セクエンツァVIIb」を聴くのは初めてだったと思うが、いったいどんな受け止められ方をしたのだろうか。この演奏をきっかけに、何人かの中学生は現代音楽に開眼したりして…(笑)。そういえば、私の"初めての現代音楽デビュー"も「セクエンツァIXb」だったっけなあ。

原さんは、ララン氏の招きにより、今月の中旬からバッハやベリオを含むプログラムでフランスツアーを行うそうだ。うーん、日本でも聴きたい。

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