2007/01/08

Habanera

Habaneraといっても、ハバネラ四重奏団のことではない。今日はちょっと珍しいCDをご紹介。イギリスのサクソフォーンの資料としてこの度入手したもので、ジョン・ハール John Harle(sax)とジョン・レネハン John Lenehan(pf)のデュオによるディスクだ。

ハール×レネハンの実質的デビュー盤というと、1987年2月にHyperionに吹き込まれた「John Harle's Saxophone」だろうか。ウッズやデニゾフの作品に加えてイギリスの作曲家でもあるベネット、ヒース、バークリーのオリジナルも収録したCDで、2004年にClarinet Classicsから再発売され、現在店頭で見かけることも多くなっている。

実はそのニヵ月後に、ハールはもう一枚のクラシック・サックスのアルバムをレコーディングしているのだ。Hannibalレーベルの作成によるこのアルバム、タイトルは「Habanera(Hannibal HNCD 1331)」という(内容を同じくしたLPも発売されておりそちらはHNBL 1331という型番が付いている)。収録曲目は以下のとおり。

ベラ・バルトーク「チーク地方の3つの民謡」
エリック・サティ「ジムノペディ第一番」
ジェレミー・ウォール「エレジー・フォー・トレーン」
ジョージ・ガーシュウィン「3つの前奏曲」
エイトル・ヴィラ=ロボス「ファンタジア」より第1楽章
レオナルド・ヴィンチ「アレグロ」
ペーター・デ・ロセ「ディープ・パープル」
リチャード=ロドニー・ベネット「"Tender is the Night"のテーマより」
ヨハン=セバスチャン・バッハ「ソナタト短調 BMV1020」
フランシス・プーランク「15の即興曲より第7番『エディス・ピアフへのオマージュ』」
クロード・ドビュッシー「シランクス」
モーリス・ラヴェル「ハバネラ」
デイヴ・ヒース「アウト・オブ・ザ・クール」

一見したところ、よくある「クラシックの名曲を集めてサックスで演奏してみました」的なアルバムだなあと思ったのだが、まさにそのとおり(笑)!このHannibalというレーベルは、どうやらロックやポップス系の音楽に強いレーベルだったらしく、封入されていたチラシには、エルヴィス・コステロやリチャード・トンプソンのアルバムがリストされているほど。どういう経緯でこのディスクが作られるに至ったのかは、今となっては知る由もないが、こんなジャンルにもハール×レネハンの演奏が残されていたことは幸いだった。

Hyperion(Clarinet Classics)レーベルで聴ける演奏よりも、さらにサックスという管楽器の「地」に近い音色は、人によってかなり好みが分かれるところだろう。特にソプラノサックスの音色の生々しいこと!バロックだろうが現代のオリジナル物だろうが、ここまでブロウしますか、というほど。言っちゃ悪いが細かい音符の音程は、かなり適当なのだが(息を吹き込みすぎて、アンブシュアが少し緩んで音程が下がるあの感じ)、長いフレーズを途絶えなく、一気にオーバー・ブロウで吹き切る様は、まさにハールのアイデンティティ!イギリスのサクソフォーン演奏の礎になるこの奏法は、ハマると相当の演奏効果を生み出すんだよなあ…。

アルバム最後に配置されたデイヴ・ヒースの「アウト・オブ・ザ・クール」はかなりの聴き物だろう。ソプラノサックスの曲としても名曲だとEMIから出版されている協奏曲アルバム「Saxophone Concertos」でも録音しているが、その演奏よりもさらにハールの強烈な気迫が感じられる。ピアノの打鍵のアグレッシヴなこと!バッハのソナタト短調の演奏は、あたかも曲が即興的に生み出されているような不思議な感覚。そのうちhttp://www.geocities.jp/kuri_saxo/english/にも書きます。

発売からすでに20年が経過しようと言うだけあって、さすがにCDショップの棚に並んでいるのを見ることはないと思うのだが、eBayなどで「habanera harle」と検索すればCDやLPの新品、中古品がゴロゴロ出てくる(発売当時けっこう売れたんだろう)。興味ある方は買ってみて下さい。

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