2006/07/01

トゥール「哀歌」

セルマージャパンに行ってマウスピース選びをしてきた。いくつか種類を用意してもらったのだけれど、結局前使っていたものと同じVandorenのV5。3時間弱もとっかえひっかえして決定。なかなか良いものが選べたと思う。

CDの棚を眺めていたら、アムステル四重奏団の「Straight Lines(Erasmus WVH 269)」があったので購入。驚いたことにアルトは日本人(佐藤尚美さん)だ。去年の定期演奏会で雲井雅人サックス四重奏団が取り上げていたけれど、やっぱりトゥールの「哀歌」はいい曲だなあ。

エルッキ=スヴェン・トゥール「哀歌(Lamentatio)」は、1994年にバルト海で起こった海難事故からインスピレーションを受けて作曲された作品だという。(事故についての詳しい解説はこちらのサイトにて発見→http://www.sydrose.com/case100/shippai-data/109/)。巨大なカーフェリーが高波の影響を受けて沈没、犠牲者は900人近くにも及ぶ史上最大規模の海難事故であった。

何かを暗示させるようなややフラジャイルな重音が4本のサックスによって重ねられる導入部、さらに続いて息の長い美しいメロディが歌われるが、これは嵐が起こる前の静かに広がる海。ソプラノ&アルトによる突然の即興風フレーズは、SOSの救難信号か。荒れ狂う海を表現した下声部はテナー&バリトンが荒々しいシンコペーションを吹き伸ばす。いったん曲が落ち着くと曲は慰めの部分へ。死者を弔う短くも穏やかなメロディ。最後には導入部のエコーを交えながら犠牲者の魂が海へと還ってゆく響きが聴かれる。

…という想像をしながら聴くと、事故の一連の様子が脳裏に浮かぶようでシリアス。作曲者はこの曲を聴くときに、必ずしも事故の情報は必要ないと述べているようだ。しかし多くの尊い命を奪った事故の描写音楽として捉えると、数あるサクソフォーン四重奏の中でも特にメッセージ性の強い作品の一つなのだと感じる。

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