2016/12/02

Tokyo Rock'n Sax 「Permanent」

他ジャンルに対する敬意を、ここまで強く前面に押し出して制作された(クラシカル・サクソフォン奏者による)アルバムが、これまで存在しただろうか。ぱっと思いつくところでは、Henk van Twillert氏の「Tango(Movie Play Classics)」や、Julien Petit氏の「POCCHA」が挙げられると思うが、そういった一流のアルバム達と同列に位置するような、素晴らしい内容だ。

各個人の技量は言うまでもがな、ミキシングやマスタリングの優秀さなどが、完成度を一層高めている…というか、これこそが必然なのだと思えてしまう。プログレッシヴ・ロックというジャンルが、いかに上流から下流まで一気通貫で隙無く作りこむ必要があるかを、物語っていると思う。

「Permanent(metoro music METOM 005)」
出演:Tokyo Rock'n Sax(松下洋、山下友教、東秀樹、加藤里志、丸場慶人、塩塚純、川地立真、田中拓也、山本真央樹(drs))
曲目:
U.K. - In the Dead of Night
King Crimson - 21st Century Schizoid Man
Led Zeppelin - Black Dog
Yes - Roundabout
Deep Purple - Fireball
Deep Purple - Burn
Led Zeppelin - Stairway to Heaven
Genesis - Dancin' with the Moonlit Knight
Queen - Love of My Life

このブログ上でも何度かライヴのレビューを行っておりお馴染みだが、改めて簡単に素性を紹介。松下洋氏をリーダーとして、クラシカル・サクソフォン界で活躍する8人の奏者と、ギタリスト山本恭司氏のご子息としても有名な山本真央樹氏をドラムスに据えた、"ロックバンド"である。1970年代のプログレッシヴ・ロックを中心とするレパートリーに取り組み続けている。すでにライヴは(レコ発ライヴ、レコスタライヴを含めると)7回を数え、今後ますます活躍が期待される団体だ。10月のライヴでは田中氏の脱退が発表されたが、今後どのように進んでいくのかなあ。

そんな彼らのファーストアルバムは、得意のレパートリー・名曲をこれでもかと詰め込んだ意欲作。各曲の解説はCDのライナー(レコーディングとミキシングを務めた安田信二氏による)に書かれているが、いくつかピックアップしてご紹介すると…キング・クリムゾンの「21 Century Schizoid Man」は、"プログレッシヴ・ロック"というジャンルの扉を開いたとされる、歴史上重要な作品。1969年に発表され、それまで「ロックと言えばロックンロール」というような一般認識を覆した。イエス「Roundabout」は、同団体4作目のアルバム「こわれもの」の冒頭に収録された作品。クリス・スクワイアのバス・オスティナート上で繰り返されるクールなメロディが印象深い。2012年にはアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」のEDに採用され、大ブレイク。レッド・ツェッペリン「天国への階段」は、美しいバラード…と思いきや冒頭の印象を残したままハードな後半へと突入していく、美しい構成感を持った作品。否応なしに感動させられる。ジェネシス「月影の騎士」は、ブリティッシュ・シンフォニック・ロックの古典。音数は控えめながら、その構成感やテアトル的雰囲気で一気に聴かせる名曲。…等々、ちょっと書ききれないほどだ。

どの曲においても、音色のバリエーションの豊富さ(ここまでギターのディストーション風の音を作れるのか、という驚き)、ソロの完全コピー、アレンジの緻密さなど、とにかく偉大な作品群へのリスペクトを存分に感じられる。奏者の技術力・音楽性の高さによるところは大きく、さらに上にも書いたが、ポスト処理の作り込みのコダワリも半端ではない。聴いてみれば判るのだが、1曲1曲ミキシングやマスタリングを変えているようで、例えばあのグループのあのアルバム風の音、を見事に表現しているのは恐れ入る。まるでオムニバスアルバムを聴いているような気分にさせられる。

価格の何倍も価値があるアルバム。ロックに興味がない方も、これを機に耳にしてみてはいかがだろうか。

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