台湾南部の都市、嘉義市において、12/14-18の日程で、アジアサクソフォンコングレス(2016 Asian Saxophone Congress)が開催されている。Rong-Yi Liu氏が総合責任者、Shyen Lee氏(タイ、バンコクのマヒドン大サクソフォン科教授で、ロンデックスコンクールのコーディネーター)が芸術監督を務める催しで、今回が第1回の開催となる。内容としては、3年に1度開催されている世界サクソフォンコングレスと同様のもので、会期中に亘ってサクソフォン奏者やサクソフォンを学ぶ学生による様々な演奏会、レクチャー、マスタークラス、コンクールが開かれている。とても充実した催しのようだ。
独奏コンクールは、ユース、シニア、ジャズと部門が分かれており、クラシックサクソフォンのメイン部門であるシニア部門では、見事、中島諒君が優勝したそうだ。渡仏後、CRR Versaillesで研鑽を積んでいるが、相変わらずの活躍っぷり、素晴らしいことだと思う。ちなみに、本選の課題曲はChihchun Chi-sun Lee「Concerto」と、Roger Boutry「Trois regards sur Taiwan(楽譜抜粋はこちら)」という曲。特にブートリーの作品はどのようなものなのか、気になるな。ちなみに、審査員の中にWilliam Chien氏の名前があって驚いた。2012年、スコットランドで開かれたコングレスで、熱心にいろいろな所を見て回っており、何かの拍子に少しお話もして名刺もいただいた記憶がある。若い方だなあと思っていたのだが、実は年上だったのだった(笑)。
今回のコングレス、日本からも、ゲストとして平野公崇氏や相愛大学サクソフォンアンサンブルなどが参加、さらに松下洋氏を始めとする若手奏者も多く参加しているようだ。同イベントのFacebookページでは、会期中の様子が写真とともにアップされており、盛り上がりが伝わってくる。台湾ということで、日本からも近く、移動しやすさや時差ほぼ無しという意味でもかなり魅力的だ。私は夏頃にこのコングレスの存在を知ったのだが、諸事情あって参加・見学等は叶わなかった。もし次回開催が決まれば、ぜひ詳細を注視し、できることなら見学・参加などしてみたいものだ。
2016/12/17
2016/12/14
ウィーン交響楽団の「シティ・ノワール」抜粋
ウィーン交響楽団(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ではない)が、ジョン・アダムス「シティ・ノワール」を演奏した動画が、YouTubeに抜粋で公式アカウントよりアップされていた。サクソフォンは誰かな…と注目して観ていると、ラーシュ・ムレクシュ Lars Mlekusch氏!確かに、Facebookでラーシュ氏が同曲を吹くとか何とか、そんなポストを見た記憶がある。
この動画はわずか3分ちょっとだが、全編も観てみたいなあ。
初演のロサンゼルス交響楽団はティモシー・マカリスター氏、ロンドン交響楽団の時はサイモン・ハラーム氏、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の時はアルノ・ボーンカンプ氏と、一線で活躍する演奏者がサクソフォンパート担当として抜擢されているようだ。
この動画はわずか3分ちょっとだが、全編も観てみたいなあ。
初演のロサンゼルス交響楽団はティモシー・マカリスター氏、ロンドン交響楽団の時はサイモン・ハラーム氏、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の時はアルノ・ボーンカンプ氏と、一線で活躍する演奏者がサクソフォンパート担当として抜擢されているようだ。
2016/12/12
モレティ氏のイベール(音だけ) on YouTube
ファブリス・モレティ Fabrice Moretti氏が独奏を務め、Jean-Louis Petit指揮Orchestre de chambre "Jean-Louis Petit"とともにジャック・イベール「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」を演奏している録音がYouTubeにアップロードされていた。録音データ等が全く書かれておらず、いつの時代の演奏か、セッション録音なのかライヴ録音なのか、わからない。
緩徐部分などなかなか良い演奏だと思うのだが、軽快なテンポの部分では少々微温的というか、若干オーケストラに足を引っ張られているというか、やはりイベールはある程度スピーディかつ軽やかな演奏が良いなあと思うのであった。とはいえ、貴重な録音である。
モレティ氏のYouTube上の演奏(音だけ)といえば、やはりこれだな。ゴトコフスキー「ブリヤンス」。
https://www.youtube.com/watch?v=zd54rB99y50
https://www.youtube.com/watch?v=ymoEETywVSI
https://www.youtube.com/watch?v=YnJjPufqZ6Q
緩徐部分などなかなか良い演奏だと思うのだが、軽快なテンポの部分では少々微温的というか、若干オーケストラに足を引っ張られているというか、やはりイベールはある程度スピーディかつ軽やかな演奏が良いなあと思うのであった。とはいえ、貴重な録音である。
モレティ氏のYouTube上の演奏(音だけ)といえば、やはりこれだな。ゴトコフスキー「ブリヤンス」。
https://www.youtube.com/watch?v=zd54rB99y50
https://www.youtube.com/watch?v=ymoEETywVSI
https://www.youtube.com/watch?v=YnJjPufqZ6Q
2016/12/10
演奏者フォローイングシステム「アンテスコフォ」について
イタリア出身の作曲家、マルコ・ストロッパが作曲したサクソフォンとライヴ・エレクトロニクスのための作品「Of Silence...」は、初演の2007年当時と、再演の2012年当時では、演奏形態が異なっていた。
2012年のドゥラングル教授の演奏会プログラム冊子には、次のような一文が書かれている:「アルシア・コント率いるチームがIRCAMで2011年に開発したアンテスコフォというシステムによってコンピュータが調和的に人間の演奏家と対話することが可能となった(要約)」。アンテスコフォによって、演奏形態に何らかのブレイクスルーが起こったことがわかる。つまり、2007年当時は、人の手(演奏者もしくはオペレーター)でサクソフォンの生演奏とエレクトロニクスパートの同期を図っていたのだが、2012年の再演時は同期が自動化されていたと推測できる。
ではそのアンテスコフォ Antescofoとは何なのか。簡単に言えば、コンピュータが演奏者が奏でる音のピッチとテンポを正確に追うことができるシステムだ。これまで、エレクトロニクス作品の演奏といえば、テープやクリック音を聴きながら演奏者がそれに生演奏を合わせこんでいったり、演奏者がペダリングによりエレクトロニクスパートを進める、といったオペレーションが必須であった。この考え方を根本的に変えるシステムが、このアンテスコフォである。事前に楽譜をアンテスコフォに記憶させ、楽譜のタイミングに応じて様々なアクションや調整を登録しておけば、演奏者の状況に応じて様々なアクションを起こさせることが可能になる、ということだ。また、単音を追っていくだけではなく、ポリフォニックな楽譜も追うことができるというから驚き。
これまで、エレクトロニクス作品の演奏における主従関係は、基本的にコンピュータが主、演奏者が従、というのが常だったが、それがこのシステムによってひっくり返るということ。
プラットフォームはMaxないしPureData。楽譜の入力はMidiないしMusicXML。楽譜に応じたアクションを、AscoEditorやAscoGraphなる専用ツールで入力してく、というワークフローモデルのようだ。非常に興味深いのは、トリガだけではなく、時間経過(スコア上の経過)とともに、時間経過で連続的に変化する「グラフ」を描くことができる、ということ。スコアの時間経過とともに、変調のためのパラメータを徐々に変えていく、という芸当は、これまでは演奏者が一人では決して実現できなかったものだが、それが実現できるようになるということだ。
極端な例だが、このシステムを使えば「私ではなく、風が…」を、マイク1本、コンピュータ1台、スピーカー1台、演奏者1人で演奏することも可能なのだろう。この曲、アンプリファイとエコーの、時間経過に伴う変化が要求されており、本来は個別の機能を持つ2本のマイク間を、サクソフォン奏者が楽器の位置を能動的に変えていく必要があるのだが、一本のマイクからの入力に適用するエフェクトを、スコア上の時間変化に伴って変化させる…という、そんなシステムが実現できそうだ。
ちなみに、アンテスコフォについて調べていると、以下のような文言も見つけることができる。アルシア・コントとマルコ・ストロッパが、まさに「Of Silence...」のために開発したシステム、ということのようだ。2007年当時の演奏の一部にはすでにプロトタイピングと思われるものが利用されており、「Of Silence...」その後、様々な音楽家や技術者の手によってブラッシュアップが図られていたことがわかる。
プログラムとドキュメント一式は、Ircamのウェブサイトから無料で入手可能。興味のある方は試してみてはいかがだろうか。まさに夢のようなシステムだが、実際の追従性や、スコアの複雑度、他声部への対応度、必要スペックはどんなものなのだろう。デモの演奏をYouTubeで観ると、かなり複雑な楽譜にも対応できているように見受けられるし、実際私が観た「Of Silence...」での演奏も、追従度は見事なものだった。何年かしたら、広く皆が使うようになっているかもしれない。
2012年のドゥラングル教授の演奏会プログラム冊子には、次のような一文が書かれている:「アルシア・コント率いるチームがIRCAMで2011年に開発したアンテスコフォというシステムによってコンピュータが調和的に人間の演奏家と対話することが可能となった(要約)」。アンテスコフォによって、演奏形態に何らかのブレイクスルーが起こったことがわかる。つまり、2007年当時は、人の手(演奏者もしくはオペレーター)でサクソフォンの生演奏とエレクトロニクスパートの同期を図っていたのだが、2012年の再演時は同期が自動化されていたと推測できる。
ではそのアンテスコフォ Antescofoとは何なのか。簡単に言えば、コンピュータが演奏者が奏でる音のピッチとテンポを正確に追うことができるシステムだ。これまで、エレクトロニクス作品の演奏といえば、テープやクリック音を聴きながら演奏者がそれに生演奏を合わせこんでいったり、演奏者がペダリングによりエレクトロニクスパートを進める、といったオペレーションが必須であった。この考え方を根本的に変えるシステムが、このアンテスコフォである。事前に楽譜をアンテスコフォに記憶させ、楽譜のタイミングに応じて様々なアクションや調整を登録しておけば、演奏者の状況に応じて様々なアクションを起こさせることが可能になる、ということだ。また、単音を追っていくだけではなく、ポリフォニックな楽譜も追うことができるというから驚き。
これまで、エレクトロニクス作品の演奏における主従関係は、基本的にコンピュータが主、演奏者が従、というのが常だったが、それがこのシステムによってひっくり返るということ。
プラットフォームはMaxないしPureData。楽譜の入力はMidiないしMusicXML。楽譜に応じたアクションを、AscoEditorやAscoGraphなる専用ツールで入力してく、というワークフローモデルのようだ。非常に興味深いのは、トリガだけではなく、時間経過(スコア上の経過)とともに、時間経過で連続的に変化する「グラフ」を描くことができる、ということ。スコアの時間経過とともに、変調のためのパラメータを徐々に変えていく、という芸当は、これまでは演奏者が一人では決して実現できなかったものだが、それが実現できるようになるということだ。
極端な例だが、このシステムを使えば「私ではなく、風が…」を、マイク1本、コンピュータ1台、スピーカー1台、演奏者1人で演奏することも可能なのだろう。この曲、アンプリファイとエコーの、時間経過に伴う変化が要求されており、本来は個別の機能を持つ2本のマイク間を、サクソフォン奏者が楽器の位置を能動的に変えていく必要があるのだが、一本のマイクからの入力に適用するエフェクトを、スコア上の時間変化に伴って変化させる…という、そんなシステムが実現できそうだ。
ちなみに、アンテスコフォについて調べていると、以下のような文言も見つけることができる。アルシア・コントとマルコ・ストロッパが、まさに「Of Silence...」のために開発したシステム、ということのようだ。2007年当時の演奏の一部にはすでにプロトタイピングと思われるものが利用されており、「Of Silence...」その後、様々な音楽家や技術者の手によってブラッシュアップが図られていたことがわかる。
Antescofo was born out of a collaboration a researcher¥ (Arshia Cont), a composer (Marco Stroppa), and saxophonist Claude Delangle for the world premier of ... of Silence in late 2007. Antescofo is particularly grateful to composer Marco Stroppa, the main motivation behind its existence and his continuous and generous intellectual support. Since 2007, many composers and computer musicians have joined the active camp to whom Antescofo is always grateful: Pierre Boulez, Philippe Manoury, Gilbert Nouno, Serge Lemouton, Larry Nelson, and others… .
プログラムとドキュメント一式は、Ircamのウェブサイトから無料で入手可能。興味のある方は試してみてはいかがだろうか。まさに夢のようなシステムだが、実際の追従性や、スコアの複雑度、他声部への対応度、必要スペックはどんなものなのだろう。デモの演奏をYouTubeで観ると、かなり複雑な楽譜にも対応できているように見受けられるし、実際私が観た「Of Silence...」での演奏も、追従度は見事なものだった。何年かしたら、広く皆が使うようになっているかもしれない。
2016/12/09
ジーンダイバー
「ジーンダイバー」をご存知だろうか。1994年から1995年にかけ、NHK教育(そう、EテレではなくNHK教育)の「天才てれびくん」内の枠を使って放映されていたアニメ。最近そのDVD全巻(7巻セット)を中古で購入したのだ。
現実世界のナビゲーション・センターと、コンピュータ・シミュレーションによって構築された仮想世界の間で交信を行いながら、物語が進んでいく。その設定が、子供心に向けて妙なリアル感を醸し出すのに一役買っている。内容は、その仮想世界における、生物進化の謎を解く大冒険。げっ歯類が進化した生物(プグラシュティク)と人類の優位性との進化優位性を巡る攻防が繰り広げられる前半、そして、生物の全進化に介入しようとする存在(スネーカー)とそれを阻止する存在(エウロパ人)の戦いに巻き込まれる後半。
当時の最新の生物学的考証をふんだんに散りばめ、さらに計算機科学や物理学、天文学といったエッセンスを加えた、凡そ子供向けアニメとは思えない内容。特に後半はスケールの大きさに驚かされっぱなし。私はリアルタイムで観ていたが、当時はここまで深い内容とは思わなかった。
ちなみにオープニング・テーマには、ソプラノサクソフォンが使われており、短いながらも耳に残る作品だ。その他のBGMも抑制が効きつつも素敵なもの。
キャラクターも非常に魅力的。仮想世界を旅するのは、現実世界から仮想世界へ飛び込んだ唯という女の子、そして、仮想世界を構成するコンピュータが生み出した特殊生物のパック(少しキタキツネに似ている)。途中からはプグラシュティクのティル・ニーが加わる。また、それを現実世界からナビゲートする虎哲&セラフィー(感情を持つ計算機端末)、そしてアキラ。それぞれの役回りや性格が丁寧に描き出されている。唯やティルの可愛さや、仲間を思う性格・立ち振舞いに惹かれた方も多いことだろう。最後の最後には、唯の思いやりの心が物語の鍵になってきたり…。
作画はお世辞にも良いとはいえない。あくまで天才てれびくんの中のいちコーナーということで、おそらく予算が限られていたのだろう、同じカットの繰り返しや、平行移動/パラパラ漫画風カットなど、さすがに最新のアニメーションと比べると見劣り感が否めない。また、現実世界での子役の演技もイマイチ。第一話(アキラと唯以外に3人登場)などはちょっと観るに耐えないし、初期のアキラもたどたどしい(アキラは後半に向けて良くなっていく)。
といったことを差し引いても、シナリオ、音楽、そしてキャラクターの魅力の高さには抗えない。様々な楽しさが詰まった本作品、広く知られてほしいものだ。
現実世界のナビゲーション・センターと、コンピュータ・シミュレーションによって構築された仮想世界の間で交信を行いながら、物語が進んでいく。その設定が、子供心に向けて妙なリアル感を醸し出すのに一役買っている。内容は、その仮想世界における、生物進化の謎を解く大冒険。げっ歯類が進化した生物(プグラシュティク)と人類の優位性との進化優位性を巡る攻防が繰り広げられる前半、そして、生物の全進化に介入しようとする存在(スネーカー)とそれを阻止する存在(エウロパ人)の戦いに巻き込まれる後半。
当時の最新の生物学的考証をふんだんに散りばめ、さらに計算機科学や物理学、天文学といったエッセンスを加えた、凡そ子供向けアニメとは思えない内容。特に後半はスケールの大きさに驚かされっぱなし。私はリアルタイムで観ていたが、当時はここまで深い内容とは思わなかった。
ちなみにオープニング・テーマには、ソプラノサクソフォンが使われており、短いながらも耳に残る作品だ。その他のBGMも抑制が効きつつも素敵なもの。
キャラクターも非常に魅力的。仮想世界を旅するのは、現実世界から仮想世界へ飛び込んだ唯という女の子、そして、仮想世界を構成するコンピュータが生み出した特殊生物のパック(少しキタキツネに似ている)。途中からはプグラシュティクのティル・ニーが加わる。また、それを現実世界からナビゲートする虎哲&セラフィー(感情を持つ計算機端末)、そしてアキラ。それぞれの役回りや性格が丁寧に描き出されている。唯やティルの可愛さや、仲間を思う性格・立ち振舞いに惹かれた方も多いことだろう。最後の最後には、唯の思いやりの心が物語の鍵になってきたり…。
作画はお世辞にも良いとはいえない。あくまで天才てれびくんの中のいちコーナーということで、おそらく予算が限られていたのだろう、同じカットの繰り返しや、平行移動/パラパラ漫画風カットなど、さすがに最新のアニメーションと比べると見劣り感が否めない。また、現実世界での子役の演技もイマイチ。第一話(アキラと唯以外に3人登場)などはちょっと観るに耐えないし、初期のアキラもたどたどしい(アキラは後半に向けて良くなっていく)。
といったことを差し引いても、シナリオ、音楽、そしてキャラクターの魅力の高さには抗えない。様々な楽しさが詰まった本作品、広く知られてほしいものだ。
2016/12/07
ベルンハルト・ラング「DW24」のCD化
オーストリア生まれの作曲家、ベルンハルト・ラング Bernhard Lang氏の作品「DW24 "Loops for Al Jourgensen"」が、Lars Mlekusch氏の最新アルバムに収録された。サクソフォンと室内オーケストラとエレクトロニクスのための作品で、小さな断片を反復させ、かつそこにグルーヴを加えるという独特の手法で作曲されているが、聴いた時の印象が実にカッコ良く、24分という長さを一気に聴けてしまうような内容。広く知られると良いな、と思っていた所なのだ。
クレジットは以下の通り。
Simeon Pironkoff, conductor
Lars Mlekusch, saxophone
Duo Saxophonic, sax & electronics
PHACE
ライヴで聴いた時、バックを務めていた室内オーケストラはプロクシマ・ケンタウリだったが、このアルバムではオーストリアのPHACEが担当している(出版自体も、PHACEが運営するレーベルが担当している)。演奏内容はさすがで、曲の魅力をしっかりと伝えているものだと感じた。Amazon等で購入できる。
クレジットは以下の通り。
Simeon Pironkoff, conductor
Lars Mlekusch, saxophone
Duo Saxophonic, sax & electronics
PHACE
ライヴで聴いた時、バックを務めていた室内オーケストラはプロクシマ・ケンタウリだったが、このアルバムではオーストリアのPHACEが担当している(出版自体も、PHACEが運営するレーベルが担当している)。演奏内容はさすがで、曲の魅力をしっかりと伝えているものだと感じた。Amazon等で購入できる。
2016/12/04
Amstel Quartetからメレマ氏が去ることに
昨月末のニュースであるが…オランダの中堅四重奏団で、これまでいくつも素晴らしいCDをリリースしていることで有名なAmstel Quartetから、バリトンのTies Mellema ティエス・メレマ氏が脱退することになったそうだ。後任はHarry Cherrin氏。
メレマ氏は、昨年中頃にがんを患い、化学療法により治療を試みて現在回復途中にある。数ヶ月前より演奏活動は再開しているようだが、諸々の事情により、脱退を決めたそうだ。そのメレマ氏コメント全文はメレマ氏のブログに記載されているが、(ざっくり言うと)これから音楽活動で重点的に取り組んでいくべきことを、Amstel Quartetではない他の場所で実現していくことにした、というのが脱退の理由なのだそうだ。
メレマ氏は、オランダの現代サクソフォン界における非常に有能な奏者の一人である。あのボーンカンプ氏が、自身のアルバムにおけるヒンデミットのデュオの相手としてメレマ氏を選んでいることからも、周囲からの期待の大きさが分かるというものだろう。2008年には料理中に右手を包丁で負傷し、しかしそれにめげず左手メインで演奏可能な作品を委嘱・収録した「On the Other Hand」をリリース、2015年のがん発症・治療のあとも演奏活動を行えるまでに回復している。様々な困難に直面しながらも、それに負けず演奏を続けている。Amstel Quartetを去るのは非常に残念だが、ぜひ今後もメレマ氏ならではの演奏を続けていただきたいところだ。
Amstel Quartetとしての活動は20年に及ぶ。ライヴで聴く機会はなかったが、「Straight Lines」を始めとする数々のアルバムは素晴らしく、何枚か所持、ブログで紹介したこともある。技術的な充実度は言わずもがな、取り組むレパートリーは古典・現代のバランスが取れており、演奏内容も充実と、良いことずくめ・隙のないアルバムばかりだった。今後もまずますカルテットとして円熟した活動を展開してくれる…と期待していただけに、今回のニュースは残念だった。しかし、新生Amstel Quartetが、これまで以上に魅力的なライヴ活動や、アルバムリリースを行ってくれることに期待したい。
最近のメレマ氏の演奏より。バッハの「ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ」と、ジョン・コルトレーンの即興演奏を組み合わせたパフォーマンス。
メレマ氏は、昨年中頃にがんを患い、化学療法により治療を試みて現在回復途中にある。数ヶ月前より演奏活動は再開しているようだが、諸々の事情により、脱退を決めたそうだ。そのメレマ氏コメント全文はメレマ氏のブログに記載されているが、(ざっくり言うと)これから音楽活動で重点的に取り組んでいくべきことを、Amstel Quartetではない他の場所で実現していくことにした、というのが脱退の理由なのだそうだ。
メレマ氏は、オランダの現代サクソフォン界における非常に有能な奏者の一人である。あのボーンカンプ氏が、自身のアルバムにおけるヒンデミットのデュオの相手としてメレマ氏を選んでいることからも、周囲からの期待の大きさが分かるというものだろう。2008年には料理中に右手を包丁で負傷し、しかしそれにめげず左手メインで演奏可能な作品を委嘱・収録した「On the Other Hand」をリリース、2015年のがん発症・治療のあとも演奏活動を行えるまでに回復している。様々な困難に直面しながらも、それに負けず演奏を続けている。Amstel Quartetを去るのは非常に残念だが、ぜひ今後もメレマ氏ならではの演奏を続けていただきたいところだ。
Amstel Quartetとしての活動は20年に及ぶ。ライヴで聴く機会はなかったが、「Straight Lines」を始めとする数々のアルバムは素晴らしく、何枚か所持、ブログで紹介したこともある。技術的な充実度は言わずもがな、取り組むレパートリーは古典・現代のバランスが取れており、演奏内容も充実と、良いことずくめ・隙のないアルバムばかりだった。今後もまずますカルテットとして円熟した活動を展開してくれる…と期待していただけに、今回のニュースは残念だった。しかし、新生Amstel Quartetが、これまで以上に魅力的なライヴ活動や、アルバムリリースを行ってくれることに期待したい。
最近のメレマ氏の演奏より。バッハの「ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ」と、ジョン・コルトレーンの即興演奏を組み合わせたパフォーマンス。
2016/12/03
管打楽器コンクールのサクソフォン部門歴代本選課題曲
歴代の管打楽器コンクールの本選課題曲を並べてみる。情報の出元は、日本音楽教育文化振興会のページ。
第1回(1984年):H.トマジ「協奏曲」
第4回(1987年):P.M.デュボワ「協奏曲」
第7回(1990年):A.グラズノフ「協奏曲」
第10回(1993年):J.イベール「小協奏曲」
第13回(1996年):L.E.ラーション「協奏曲」
第16回(1999年):P.クレストン「協奏曲」
第19回(2002年):F.マルタン「バラード」
第22回(2005年):L.E.ラーション「協奏曲」
第25回(2008年):H.トマジ「協奏曲」
第28回(2011年):E.グレグソン「協奏曲」
第31回(2014年):A.ウェニアン「ラプソディ」
第34回(2017年):F.マルタン「バラード」
(「ラプソディ」を「狂詩曲」と書いたり、「バラード」を「譚詩曲」と書いたりすべきなのか、少々迷いもした)
基本的にはオーケストラと演奏されることが前提とされる曲で、ピアノ・リダクションが存在しており、技術的にも音楽的にも優れ、順位を付けることができる作品、ということで、毎度選曲は大変なのだろう。
第1回(1984年):H.トマジ「協奏曲」
第4回(1987年):P.M.デュボワ「協奏曲」
第7回(1990年):A.グラズノフ「協奏曲」
第10回(1993年):J.イベール「小協奏曲」
第13回(1996年):L.E.ラーション「協奏曲」
第16回(1999年):P.クレストン「協奏曲」
第19回(2002年):F.マルタン「バラード」
第22回(2005年):L.E.ラーション「協奏曲」
第25回(2008年):H.トマジ「協奏曲」
第28回(2011年):E.グレグソン「協奏曲」
第31回(2014年):A.ウェニアン「ラプソディ」
第34回(2017年):F.マルタン「バラード」
(「ラプソディ」を「狂詩曲」と書いたり、「バラード」を「譚詩曲」と書いたりすべきなのか、少々迷いもした)
基本的にはオーケストラと演奏されることが前提とされる曲で、ピアノ・リダクションが存在しており、技術的にも音楽的にも優れ、順位を付けることができる作品、ということで、毎度選曲は大変なのだろう。
2016/12/02
Tokyo Rock'n Sax 「Permanent」
他ジャンルに対する敬意を、ここまで強く前面に押し出して制作された(クラシカル・サクソフォン奏者による)アルバムが、これまで存在しただろうか。ぱっと思いつくところでは、Henk van Twillert氏の「Tango(Movie Play Classics)」や、Julien Petit氏の「POCCHA」が挙げられると思うが、そういった一流のアルバム達と同列に位置するような、素晴らしい内容だ。
各個人の技量は言うまでもがな、ミキシングやマスタリングの優秀さなどが、完成度を一層高めている…というか、これこそが必然なのだと思えてしまう。プログレッシヴ・ロックというジャンルが、いかに上流から下流まで一気通貫で隙無く作りこむ必要があるかを、物語っていると思う。
「Permanent(metoro music METOM 005)」
出演:Tokyo Rock'n Sax(松下洋、山下友教、東秀樹、加藤里志、丸場慶人、塩塚純、川地立真、田中拓也、山本真央樹(drs))
曲目:
U.K. - In the Dead of Night
King Crimson - 21st Century Schizoid Man
Led Zeppelin - Black Dog
Yes - Roundabout
Deep Purple - Fireball
Deep Purple - Burn
Led Zeppelin - Stairway to Heaven
Genesis - Dancin' with the Moonlit Knight
Queen - Love of My Life
このブログ上でも何度かライヴのレビューを行っておりお馴染みだが、改めて簡単に素性を紹介。松下洋氏をリーダーとして、クラシカル・サクソフォン界で活躍する8人の奏者と、ギタリスト山本恭司氏のご子息としても有名な山本真央樹氏をドラムスに据えた、"ロックバンド"である。1970年代のプログレッシヴ・ロックを中心とするレパートリーに取り組み続けている。すでにライヴは(レコ発ライヴ、レコスタライヴを含めると)7回を数え、今後ますます活躍が期待される団体だ。10月のライヴでは田中氏の脱退が発表されたが、今後どのように進んでいくのかなあ。
そんな彼らのファーストアルバムは、得意のレパートリー・名曲をこれでもかと詰め込んだ意欲作。各曲の解説はCDのライナー(レコーディングとミキシングを務めた安田信二氏による)に書かれているが、いくつかピックアップしてご紹介すると…キング・クリムゾンの「21 Century Schizoid Man」は、"プログレッシヴ・ロック"というジャンルの扉を開いたとされる、歴史上重要な作品。1969年に発表され、それまで「ロックと言えばロックンロール」というような一般認識を覆した。イエス「Roundabout」は、同団体4作目のアルバム「こわれもの」の冒頭に収録された作品。クリス・スクワイアのバス・オスティナート上で繰り返されるクールなメロディが印象深い。2012年にはアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」のEDに採用され、大ブレイク。レッド・ツェッペリン「天国への階段」は、美しいバラード…と思いきや冒頭の印象を残したままハードな後半へと突入していく、美しい構成感を持った作品。否応なしに感動させられる。ジェネシス「月影の騎士」は、ブリティッシュ・シンフォニック・ロックの古典。音数は控えめながら、その構成感やテアトル的雰囲気で一気に聴かせる名曲。…等々、ちょっと書ききれないほどだ。
どの曲においても、音色のバリエーションの豊富さ(ここまでギターのディストーション風の音を作れるのか、という驚き)、ソロの完全コピー、アレンジの緻密さなど、とにかく偉大な作品群へのリスペクトを存分に感じられる。奏者の技術力・音楽性の高さによるところは大きく、さらに上にも書いたが、ポスト処理の作り込みのコダワリも半端ではない。聴いてみれば判るのだが、1曲1曲ミキシングやマスタリングを変えているようで、例えばあのグループのあのアルバム風の音、を見事に表現しているのは恐れ入る。まるでオムニバスアルバムを聴いているような気分にさせられる。
価格の何倍も価値があるアルバム。ロックに興味がない方も、これを機に耳にしてみてはいかがだろうか。
Amazonでの購入リンクは、こちら→Permanent
各個人の技量は言うまでもがな、ミキシングやマスタリングの優秀さなどが、完成度を一層高めている…というか、これこそが必然なのだと思えてしまう。プログレッシヴ・ロックというジャンルが、いかに上流から下流まで一気通貫で隙無く作りこむ必要があるかを、物語っていると思う。
「Permanent(metoro music METOM 005)」
出演:Tokyo Rock'n Sax(松下洋、山下友教、東秀樹、加藤里志、丸場慶人、塩塚純、川地立真、田中拓也、山本真央樹(drs))
曲目:
U.K. - In the Dead of Night
King Crimson - 21st Century Schizoid Man
Led Zeppelin - Black Dog
Yes - Roundabout
Deep Purple - Fireball
Deep Purple - Burn
Led Zeppelin - Stairway to Heaven
Genesis - Dancin' with the Moonlit Knight
Queen - Love of My Life
このブログ上でも何度かライヴのレビューを行っておりお馴染みだが、改めて簡単に素性を紹介。松下洋氏をリーダーとして、クラシカル・サクソフォン界で活躍する8人の奏者と、ギタリスト山本恭司氏のご子息としても有名な山本真央樹氏をドラムスに据えた、"ロックバンド"である。1970年代のプログレッシヴ・ロックを中心とするレパートリーに取り組み続けている。すでにライヴは(レコ発ライヴ、レコスタライヴを含めると)7回を数え、今後ますます活躍が期待される団体だ。10月のライヴでは田中氏の脱退が発表されたが、今後どのように進んでいくのかなあ。
そんな彼らのファーストアルバムは、得意のレパートリー・名曲をこれでもかと詰め込んだ意欲作。各曲の解説はCDのライナー(レコーディングとミキシングを務めた安田信二氏による)に書かれているが、いくつかピックアップしてご紹介すると…キング・クリムゾンの「21 Century Schizoid Man」は、"プログレッシヴ・ロック"というジャンルの扉を開いたとされる、歴史上重要な作品。1969年に発表され、それまで「ロックと言えばロックンロール」というような一般認識を覆した。イエス「Roundabout」は、同団体4作目のアルバム「こわれもの」の冒頭に収録された作品。クリス・スクワイアのバス・オスティナート上で繰り返されるクールなメロディが印象深い。2012年にはアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」のEDに採用され、大ブレイク。レッド・ツェッペリン「天国への階段」は、美しいバラード…と思いきや冒頭の印象を残したままハードな後半へと突入していく、美しい構成感を持った作品。否応なしに感動させられる。ジェネシス「月影の騎士」は、ブリティッシュ・シンフォニック・ロックの古典。音数は控えめながら、その構成感やテアトル的雰囲気で一気に聴かせる名曲。…等々、ちょっと書ききれないほどだ。
どの曲においても、音色のバリエーションの豊富さ(ここまでギターのディストーション風の音を作れるのか、という驚き)、ソロの完全コピー、アレンジの緻密さなど、とにかく偉大な作品群へのリスペクトを存分に感じられる。奏者の技術力・音楽性の高さによるところは大きく、さらに上にも書いたが、ポスト処理の作り込みのコダワリも半端ではない。聴いてみれば判るのだが、1曲1曲ミキシングやマスタリングを変えているようで、例えばあのグループのあのアルバム風の音、を見事に表現しているのは恐れ入る。まるでオムニバスアルバムを聴いているような気分にさせられる。
価格の何倍も価値があるアルバム。ロックに興味がない方も、これを機に耳にしてみてはいかがだろうか。
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2016/12/01
第34回管打コンクールの課題曲
2017年の8月に開催予定の第34回日本管打楽器コンクール、オーボエ、サクソフォン、パーカッション、マリンバ各部門の課題曲が公開された。
サクソフォン部門は、一次がボザの「12 Études-Caprices」から第6曲と第1曲、二次がイベール「コンチェルティーノ」の第2楽章と選択曲(オルブライトやシュルードなど、比較的ハードな作品が含まれている)、本選がマルタンの「バラード」。どんなコンクールになるのだろう、直接関わることは無い身ながら、楽しみだ。
詳細・公式情報は以下のリンクから。
http://www.jmecps.or.jp/concours.php?time=34
サクソフォン部門は、一次がボザの「12 Études-Caprices」から第6曲と第1曲、二次がイベール「コンチェルティーノ」の第2楽章と選択曲(オルブライトやシュルードなど、比較的ハードな作品が含まれている)、本選がマルタンの「バラード」。どんなコンクールになるのだろう、直接関わることは無い身ながら、楽しみだ。
詳細・公式情報は以下のリンクから。
http://www.jmecps.or.jp/concours.php?time=34