2016/11/01

第64回全日本吹奏楽コンクール 職場・一般前半の部の感想

午前~昼の、"前半の部"の感想を。

【第64回全日本吹奏楽コンクール 職場・一般前半の部】
日時:2016/10/30(日曜) 9:30開演
会場:金沢歌劇座

・ソノーレ・ウィンドアンサンブル
課題曲では、木管の自由闊達な歌い方(歌わせ方)が印象的。朝イチを感じさせない爽やかなサウンドで、これが全国クラスの演奏かと感じ入る。金管は大人しめに進行すると思いきや、自由曲では一転、パリッとしたサウンド。細かい音符が連続し、さらに奏者単独の技巧(フルート、クラリネット等)を魅せる箇所もあった。高い緊張感を持ったまま、見事に演奏を終えた。

・光ウィンドオーケストラ
課題曲Vを聴くのは初めて。技術的に作り込んだとしても、聞かせどころを作るのがとても難しい印象を受けた。自由曲では、鍵盤系が大活躍し、魅了された。また、数名によるアンサンブル箇所がとても安定している。ホルンを始めとする金管系の仕事がとても丁寧に聴こえた。トランペットのアタックが美しい。

・名取交響吹奏楽団
クラリネットの人数が少ないように思えたが、課題曲では少ないなりに全体の構成でカバーする、という戦略が効いているように思えた。指揮者の作戦勝ちだろう。自由曲は、とにかく作品が面白い。ジョン・コリリアーノのクラリネット協奏曲か、ジョン・マッキーのサクソフォン協奏曲か、てなもんで、ハイハット、シェイカー、ウッドベースにサクソフォンとクラが絡む前半部、おどろおどろしく、濁ったサウンドもフル活用の中間部(コントラファゴットやコントラバスクラが超低音を奏でる)、スピード感のあるシンコペーション風コラールに走句が絡み、最後は大絶叫の最終部(後から調べてみたのだが、どうやら30分近くある作品の一部を取り上げていたようだ)という具合、技術的にも高難易度だが、見事に曲のグルーヴまでも表現しており、演奏が終わった瞬間に大盛り上がりとなった。

・倉敷市民吹奏楽団グリーンハーモニー
打楽器のみひな壇、あとの奏者はステージに平置きという珍しい配置。フレーズそれぞれの内部でそこまで統制を取っている感じを受けない(若干の凹凸が見られる)が、とてもリラックスした響きと雰囲気。なんだか緊張感のある演奏が続いていたせいか、優しい演奏に涙ぐんでしまった。自由曲は、柔らかいサウンドを前面に押し出している感じがする。オーボエはとにかく大変だったと思う。

・浜松交響吹奏楽団
課題曲で、"パートの上手さ"が聴こえる。個々の技量がそこまでクローズアップされるわけではないが、どのパート、どのセクションを取り出しても、納得の上手さ。ホルンとユーフォニアムがひな壇最上段という珍しい配置だったが、おそらく自由曲対策だろう(大活躍だった)。自由曲でも、パートごと、セクションごと、そして全体、という、3階層の美しさやダイナミックレンジを突き詰めているような印象を受ける。主題がとても難しく、若干処理に差があったかな。

・春日市民吹奏楽団
課題曲では、クラリネットを中心に、弱音~中音系の美しさが聴こえてきた。ときに「こんなに伸ばすのか」というほどの、長めのフレーズも特徴的。自由曲でも、クラリネットの美しさがバンド全体のサウンドの豊潤さを牽引しているように思えた。時折、バンド全体の中で、少しタイムラグがあるように思えたのだが、このくらいの大人数だとやむを得ないのかなあ。

・秋田吹奏楽団
課題曲は、少し遅めの設定で、じっくりと聴かせるような演奏だった。自由曲はネリベル!やはり良い作品だ。人数は全体的に若干少なめだが、縦のアンサンブルや、和音の精度でパワーを補っている。ネリベル独特の和声を、これでもかと美しく見せ付けていた。アルトサクソフォンとテナーサクソフォンは、ダイナミクスの処理が難しいフレーズを、よくまとめていたと思う。

・創価学会関西吹奏楽団
課題曲、冒頭のフルート、ピッコロのデュエットから見事な空気感。全体を通して、一見意味のないフレーズ間に、有機的なつながりを見出し、意味を与えていくような演奏だった。とてつもない大編成だが、アンサンブルのようにフレーズ内での統制は完璧。自由曲では、冒頭のファンファーレはこの日一番の貫禄と安定性だった。まるでスペクタクル映画の冒頭のファンファーレのよう。曲全体を通し、規範的そのもの。全体の構成方法、旋律のみならず、後ろで鳴っている和声にも隙がない。

・ブリヂストン吹奏楽団久留米
人気なんですね。演奏開始前、会場から期待の大きな拍手が印象的。課題曲IVはなかなかチグハグな作品だが、まったくそう聞こえない。団体が自らの強みを"わかっている"感がすごかった。中程度の人数ながら、鳴りは一級品。精度ももちろん高い。自由曲はおなじみの「ローマの祭」のスタンダード・カット(チルチェンセス途中までやって、主顕祭)だが、こうして聴くといかにトランペットが大変か、というのがよく分かる。トランペットは皆エース級で、バンダも全員鳴る、トップも相当鳴る。トロンボーンのソロは、今まで聞いた中でもっとも酔っぱらいを的確に表現しているソロ内容だったと思う。きっとあのトロンボーン奏者は酒呑みに違いない(笑)。

・上磯吹奏楽団
特別力を入れて吹いているわけではないのに、とても良く音が飛んでくる。大きい会場で鳴らすセオリーが、自然と身についているのかな(例えば練習会場が広いとか?)。美しく、良く鳴るバンドだった。個々の響きよりも、全体としての一体感や響きに重点を置き、音楽づくりをしているような印象。バンドのカラーがあるなあ。

・藤原大征とゆかいな音楽仲間たち
大人数だが、とてもスッキリした響き。見た目よりも落ち着いた音量。奏者は若い方が中心だが、指揮者の音楽作りだろうか。自由曲も同様に、とてもスッキリまとめてある。指揮者の意向が隅々まで行き渡っているような印象を受けた。

・東京隆生吹奏楽団
課題曲では、人数の多さに比して少し線は細いが、アインザッツの精度などでパワーを上手に補っている。自由曲では、瞬間瞬間の緊張と弛緩の切り替えが実に見事だ。特に、中間部から最終部にかけての、聴衆を座席に縛り付けるかのように緊張を強いる、音楽作り、オーラは見事だった。

・伊奈学園OB吹奏楽団
とにかく明るいサウンド。課題曲の再現部での明るい音は、本日前半の部の中でもピカイチ。最終部のトランペット・ソロがとても安定していて驚いた。自由曲も、やはり明るい音が印象的。瞬間瞬間の作り込みは相当なものだった。

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