2016/04/11

マスターズ・ブラス・ナゴヤ第1回定期演奏会

指揮の鈴木先生にご案内いただき、演奏会を聴きに伺った。吹奏楽の演奏会をじっくりと聴くのは久々だったが、素晴らしい内容であった。

【マスターズ・ブラス・ナゴヤ第1回定期演奏会】
出演:鈴木竜哉(指揮)、安東京平(ユーフォニアム)、愛工大名電高(トランペット・バンダ)
日時:2016年4月10日(日曜)14:00開演
会場:愛知県芸術劇場・コンサートホール
プログラム:
R.シュトラウス/鈴木英史 - 祝典前奏曲
三枝成彰/長生淳 - トランペット協奏曲(ユーフォニアム・バージョン、独奏:安東京平)
J.バーンズ - 交響曲第5番「フェニックス」

名古屋はここ数年来る機会が増えているが、愛知県芸術劇場に入るのは初めて。名古屋駅到着後、きしめんを頬張り、熱田神宮に寄り道してから、名城線で栄駅まで移動した。会場は、約1800人を収容できる巨大なホール。パイプオルガンを始め、充実かつ豪勢な内装が目を引いた。客入りは上々で、見た目9割5分といったところか。この人数を集めるのは大変だったと思うが、どのようなチケットの売り方をしたのだろうか。演奏団体の"マスターズ・ブラス・ナゴヤ"は、東海地区のプロフェッショナルの管打楽器奏者によって構成された団体。運営母体等は良く分からないのだが、創設にあたっては指揮の鈴木先生がいろいろと奔走したようである。

さて、プログラムを見てまず驚いた。まるでオーケストラの演奏会のような、シンプル、だがしかし、挑戦的な、メインに交響曲を含む3曲構成。このプログラムを見て、会場に来た吹奏楽ファンは何を思っただろうか。

編曲委嘱初演となった「祝典前奏曲」の(巨大なオルガンやバンダを含む)豪華絢爛なサウンドは、身体の奥底が震えるかのようだった。厚みを持って書かれた元スコアは、鈴木英史氏の手により見事に吹奏楽版へと生まれ変わり、独特のサウンドが立ち上がった。コーダ?部は圧巻。バンダ(名電はさすがだ…)の冷静な仕事も素晴らしく、オルガン、吹奏楽の響きとともに、会場中を満たしていた。圧倒的なサウンドの塊だ。

三枝成彰の「トランペット協奏曲」についてはそれほど知られていないと思うのだが、作曲者の言葉によれば「(ドイツの)ノルトハウゼン歌劇場管弦楽団の定期演奏会のために作曲したもので、…トランペット奏者には大変難しく、そして過酷な曲だと思います。そのため初演当時オーケストラで、はじめ予定していたゲストのトランペット奏者に出来上がった楽譜を見てから"難しすぎる"と断られてしまい、代わりに同管弦楽団の主席トランペット奏者が初演することになりました」という、難曲とのこと。聴いていた位置のせいか、ソリストの細かい音符までは聴き取れなかったのだが、独奏・伴奏ともに、難曲を集中力を保ったまま吹き続け、「寄せ集め」らしからぬ演奏を展開した。鈴木先生の手腕、独奏の手腕、各演奏家の手腕、それぞれの相乗効果だろう。

バーンズは、有無を言わせないような感動がある。日本の戦後復興をテーマにした4楽章構成の作品で、幾度もの場面転換を経ながら終結部へと向かう。最終部直前には「君が代」の主題を下敷きにした引用も聴かれた。45分という長い時間ではあったが、様々な箇所でフレーズを持続させる力を感じ、それがそのまま客席の集中力につながっていったと思う。名電のバンダ部隊も、一つ一つの音の存在らこそ高校生らしさを感じたが、トータルでプロフェッショナルに肉薄しようとする演奏で、驚かされた。大きな拍手とブラヴォー、アンコールで幕。充実した時間だった。

ちなみに、本日のサクソフォンセクションは、小森伸二氏、水野雄太氏、國領さおり氏、佐野功枝氏、遠藤宏幸氏という布陣。時おり現れるソロ、対旋律、セクションワークでは、非常に良い仕事を聴くことができ、楽しく/嬉しくなってしまった。

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