2015/06/21

François Rossé "Wend'kreis"(独奏:松下洋)を聴いて

先日、5/27にストラスブールにて3人の独奏者をフィーチャーしたストラスブール交響楽団(Marko Letonja指揮)の演奏会が開かれた。この演奏会には、2名のサクソフォン奏者…松下洋氏(ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクール優勝)と、ニキータ・ジミン Nikita Zimin氏(アドルフ・サックス国際コンクール優勝)が招かれた。松下洋氏は、フランソワ・ロセ François Rosséの新曲「Wend'kreis」を、ニキータ・ジミン氏は、ラーシュ=エリク・ラーション「サクソフォン協奏曲」をそれぞれが演奏した。

そのうち、松下洋氏が演奏したロセ「Wend'kreis」の動画を、松下氏から観せてもらうことができた。作品は、アルト&ソプラノサクソフォン持ち替え+オーケストラという編成で、ジャン=マリー・ロンデックス氏がロセ氏に委嘱した。松下氏は、この初演の前、2週間ほどにわたってロンデックス氏の邸宅に滞在し、ロンデックス氏やロセ氏から長期に渡るレッスンを受けることができたのだという。

私が知っているロセ作品(以前、サクソフォンをいくつか含む作品集CDのレビューを書いた)とは、なかなか印象が異なる。まず作品のコンセプトについて、松下氏自身の言葉を引用する。

音の最後に特徴のある曲で、あり得ないくらい日本の事が大好きな、ロセの感じる日本の雅楽や民謡が基盤となっています。ただ、それらは彼のもともともってる語法の強いフィルターがかかって大変な事になってますが、笑
そこに、グリスアップを音の処理に多用すること、激しい部分では音の最後にアクセントをつける、グレゴリオ聖歌のプレッススという表現方法を混ぜてサクソフォンのオリジナリティーを出しております。

(西洋音楽ではあるので)テンポ的なものは常に時間を支配しているが、聴こえてくるのはone by one的なタイム・スケールである。もちろん、タイム・スケールのみならず、例えば冒頭の非常に低いアルト・サクソフォンの音域を使って奏でられる音運びは、松下氏自身が指摘するように、非常に邦楽的なモードを感じさせるものである(と感じたが、本当はどうだろう)。西洋音楽というフォーマットを使って、日本的な内容を表現しようとした作品は数多いが、ここまで多面的な要素を放り込んで、かつ、全体の構成が整えられた作品は珍しいのではないかな。しかもそれがサクソフォン協奏曲、という形で結実するとは!

サクソフォンの演奏は、それは素晴らしいものであり(技巧的には相当難しい楽譜)、またオーケストラも快演!これはライヴで聴いてみたかった。録音のリリース予定、ないかなあ。

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