2015/03/19

170th B→C(サクソフォン:佐藤淳一)

こだわりに、こだわりぬかれたプログラムを堪能した。

【B→C ビートゥシー:バッハからコンテンポラリーへ 第170回】
出演:佐藤淳一(sax)、有馬純寿(elec)、羽石道代(pf)
2015/3/17(火)19:00開演
東京オペラシティ・リサイタルホール
全席自由3000円
プログラム:
J.S.Bach - Suite No.2 for Cello
JacobTV - The Garden of Love
J.Brahms - Sonata op.120-2
B.Britten - 6 Metamorphoses after Ovid.
L.Berio - Sequenza VIIb
P.Boulez - Dialogue de l'ombre double

オペラシティの「B→C」コンサートシリーズ、新進気鋭の奏者を取り上げ、バッハ作品・現代作品を最低1曲ずつプログラミングすることを条件にオペラシティ主催で演奏会を開催する、というものである。

この「B→C」のプログラミングに際して、佐藤さんはさらに以下の様なこだわりを追加した。
・Bで始まる作曲家の作品を取り上げること(JacobTVだけが違うが、「The Garden of Love」はWilliam Blakeの詩を元にした作品である)。これにより、Bachからは始まる西洋音楽史を辿る…これはすなわち、B→Bという一貫性である。
・CをCounterpoint(=対位法)の頭文字とし、Bachから始まるポリフォニック音楽の歴史を辿る…これはすなわち、B→Cという一貫性である。

無伴奏作品あり、エレクトロニクス作品ありの、超名曲が揃う。JacobTV、Britten、Berioと、オーボエの編曲作品(ベリオについては"注釈作品"と呼ばなければならないかも)が3つも並ぶのが面白い。冒頭のBachから最後のBoulezに至るまで、一貫したコンセプトに基づき、さらに技術的にも優れた演奏を楽しんだ。

無伴奏作品の難しさ、というのは、やはり落ち着いた会場の響きであるせいか、ところどころ浮き彫りになってしまったが(Bachは難しいっす・・・)、注目すべきはやはりエレクトロニクス作品、そして佐藤さんが長きにわたって研究したBerio作品であろう。エレクトロニクス作品は、有馬氏の万全の助けも借りながら、優れたバランス感覚で楽曲を見事に運んでいた。Boulez作品は、旧奏楽堂や東京藝大の中でも聴いたが、今回の演奏はさらにグレードアップしており、素晴らしかった。難曲のJacobTV作品も、ビデオの効果と相まって見事の一言に尽きる。Berioは、これはもう構成感の見事さ、そして安定度が高すぎて…もはや何も言えない(笑)。

最後、アンコールとして演奏されたのは「(平野公崇氏から示唆のあった)20世紀の重要な作曲家」ということで、The Beatlesの「Let it Be」を、Bach風にアレンジした作品。編曲は夏田昌和氏。やっぱこれって、2014年大ヒットの「れりごー」とも引っ掛けてるんですかね(笑)

西洋音楽の系譜を、このような形で提案・構築し、高い技術力とプレゼンテーション能力でもって(誤解を恐れず言えば)何も知らない聴衆に対してポンと提示し、その誰もを納得させてしまう佐藤氏、さすがです。現在はメインの活動拠点を北海道に移しているが、また東京でもやってほしいなあ。

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