2014/10/15

思い出のマーニー

珍しく映画など観てきた。「思い出のマーニー」である。ジブリ作品はどれも大好きで、もちろんこれまでの作品は全部観、語れと言われれば夜を通して語るくらいの思い入れがある。「思い出のマーニー」、ジブリらしさを湛えつつ、個人的にはとても好みの作品に仕上がっており、充足感を得ることができた。同じ米林監督作品のアリエッティよりも好きだなあ。

詳細なストーリーについてはここでは言及しないが、ひとつ面白かった点を書いておきたい。いわゆる"彼岸"の描き方である。彼岸とは、夢とうつつの境目であり、虚構と現実の境目であり、あの世とこの世の境目である。ジブリ作品の多くにあるように、この作品も現実世界と虚構世界を行ったり来たりするのだが、これまでの私の感触では、何か明確なアイコンが彼岸を表わすために使われているのが、ジブリ作品の常であった。たとえば、トトロでは「木のトンネル」であり、ラピュタでは「龍の巣」であり、千と千尋の神隠しでは「トンネル」であったり、もののけ姫では「森とタタラ場の境界」であったり…登場人物はその彼岸を渡ることで、あちらとそちらを行き来するのである。それをくぐるたびに、主人公の成長や状況の変化が垣間見えるところが、人物視点に立った時の面白味である(ちなみに、ポニョの有名な評として、"全員で彼岸を飛び越えたっきり、皆あちらに行っちゃったままエンディングを迎えるという異常性"、というものがある)。

前置きが長くなったが、「思い出のマーニー」では、そのアイコンが非常にぼんやりとしていたところが新鮮であったのだ。"湿地帯"か、"満潮"か、とそのクリアなきっかけを探していたのだが、思いがけないタイミングで彼岸を飛び越える場面が散見された。そのことが、映画の持つ神秘性を増強し、観ている最中、観終わったあとの不思議な気持ちを観客に与えることに成功しているのだと感じた。また、ちょっとしたホラーのような不気味さも感じさせるのも、おそらく制作者の狙いなのだろう。一度観ただけでは伏線回収を追いきれなかった部分(実際回収していないものもあるかもしれないが)もあるので、地上波で放映されたときにもう一度観てみたいものだ。

もちろんそれ以外にも、絵柄の美しさ(北海道に行きたい!)、魅力的なキャラクター、音楽と映像のシンクロ…素敵な部分を挙げていけばきりがない。楽しかったなあ。ジブリ好きな方、ぜひ語りましょう(笑)

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