2014/02/28

GD-2057収録曲目について(その3)

3回にわたって、マルセル・ミュール四重奏団の復刻盤:グリーンドア音楽出版GD-2057に収録されている曲目について、雑多なことを書いている。

第1回はこちら
第2回はこちら

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今回の復刻盤のメインコンテンツはErato盤の復刻だが、ボーナストラックとして、ジャン・フランセのオペラ・ブッファ「私たちのパリ!」を収録した。ボーナストラック…という名前は付いているが、Erato盤とは一線を画す内容、さらに非常にレア。ぜひボーナストラックだと軽んじず、じっくり聴いていただきたい内容なのだ!

パリで仕事を探している若者を、キャリアコンサルタントが芸術サロンに連れて行き、若者はそこを取り仕切る女主人に取り入る…という話。これだけ書くとなかなか伝わらないが、とにかく台本(原文はフランス語)の隅から隅までエスプリたっぷりであり、実に面白いのだ。さすがに解説に台本の全訳を載せる…などということはできなかったが、解説を書くにあたって英語訳を最初から最後まで斜め読みした。

その面白さたるや…例えば、こんな一場面が描写されている。芸術サロンに集う人々に、女主人が4人のサクソフォン奏者を紹介する(=伴奏だけではなく、劇中にもサクソフォン四重奏は"役"として一瞬登場するのだ)。芸術サロンの人たちは、無知で滑稽な人々として描かれている。

女主人:本日、私はこの4人の紳士をお呼びしました。彼らは知性的・形式的しかし進歩した音楽を奏でます。
芸術サロンに集った人々:素敵、ほら、聴いて!
サクソフォン四重奏:チューニングをする
女主人:なんて素晴らしく、神聖な音楽!
芸術サロン:本当、素敵!
マトモな知識人:(彼らはただチューニングしているだけなのに…)


…という具合。これが台本だけでなくてさらにフランセの音楽も付いて演奏されるのだから、面白く無いはずがない。サクソフォン四重奏のパートも相当テクニカルで聴き応えは十分。単独で間奏曲的に演奏される部分も、もちろんあり。

響きそのものを楽しんだあとは、ぜひ台本を入手していただきたい。Netherlands Saxophone QuartetのLPのジャケット裏に掲載されているが、他にどこかで読むことはできないのかな。もちろん楽譜には付いていることと思うが…。

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