2013/11/29

Collection Jeunes Solistes - Alexandre Souillart

小倉君から、フランス土産でもらったCDをご紹介。先日演奏会に伺ったばかりの安井寛絵さんの旦那さんであるアレクサンドル・スーヤ Allexandre Souillart氏のCD。パリ国立高等音楽院の第三課程を卒業した学生(の一部?)に権利が与えられる、メイヤー財団出資によるCD制作。これまでも多くのサクソフォン奏者…ヴァンサン・ダヴィッド、ジェローム・ララン、エルワン・ファガン、アクソン四重奏団、ミーハ・ロギーナ他…がCDを制作しており、何枚かは私も所持している。各奏者の一番"尖った"時期を捉えている録音だと考えており、いずれも素晴らしい内容だ。本当はもっと流通して欲しいのだが、非売品扱いのためなかなか手に入れづらいのが辛いところ。

アレクサンドル・スーヤ氏は、"テナーサクソフォン"をコンセプトにCDを制作した。タイトルは「Ténor! Quand tu me tiens!」英語で言えば、「Tenor! When you hold me!」ってところだろうか。私自身がカルテットでテナーを吹いていることもあり、注目しながら聴いた。…のだがが、とんでもない次元の演奏が展開されており、ちょっとまともに感想を書くことができない。

Frédéric Durieux - Ubersicht II
Alexandre Markeas - Engrenages
Philippe Leroux - Un Lieu Verdoyant
Alain Savouret - A Flanc de Bozat
Nicolas Mondon - Ravine
Oscar Carmona - Uni-pacio en Espa-verso

無伴奏テナーサクソフォンのための「Ubersicht」から驚異的である。こと、パームキー&サイドキーを使う音域、かつ、超弱音が、どうしたらこのような美しい音色で響かせられるのかと思う。マスタリングも弱音を捉えることに躊躇しておらず、小さい音はとことん小さく捉えられている。録音環境の良さも特筆モノだろう。マルケアスは、サクソフォン四重奏+即興という編成で、ルイ・スクラヴィス&ハバネラ四重奏団の演奏がどうしても頭にあるのだが、74小節目以降の即興のアプローチ(実に長大な!)は、これは実に興味深い解釈で、耳を洗い直されてしまった。

ルルー作品は声楽のテナーとの共演。ジェラール・グリゼイへのオマージュとして書かれた作品だというが、シェルシの「yamaon」を思い出す、パワー溢れる作品だ。ちょっと神秘的な感じもあるが、なにせ曲目解説がフランス語しかなく、読む気がおきないのだ(失敬)。続くアラン・サヴレーの「ボザ山中腹」は、安井さんのリサイタルに伺った方ならトークに出てきたのでご存知と思うが、プリペアド・ピアノとソプラノサクソフォン/テナーサクソフォン持ち替えのための作品。作品としても、もちろん演奏としても非常に完成度が高く、このディスク中の重心となっている印象を受ける。

「Ravine」もやはりプリペアド・ピアノとの作品だが、ぼやけた・たゆたうような雰囲気。なんとなく環境音楽のようにも聴けてしまうのだが、時折のビート感のある曲想また、後半でのプリペアド・ピアノのなんとも言えない雰囲気など、ちょっとヨーロッパ産の作品には思えず、"多国籍"というキーワードが思い浮かんだが…。最後はテナーサクソフォンとエレクトロニクス。冒頭、息の音しかせずに驚くが、徐々に盛り上がり、まさにエレクトロニクスとの室内楽。最終部に向けてのアオリは、本当に見事という他ない。ステレオだとわからないが、マルチチャンネルだと音がぐるぐる回るのだろうか。

共演陣も豪華。奥様の安井寛絵さんのほか、Quatuor Osmoseのメンバー(Mathilde Salvi, Frantz Gandubert、Carmen Lefrancois)、ピアノはMatthieu Acar、ヴァイオリンのSimon Milone、チェロのMyrtille Hetzelなど、スーヤ氏の演奏に見事に華を添えている。

日本国内でのCDの入手は至難だが、スーヤ氏の公式サイトのAudioのメニューから全編聴くことができるようだ。その他面白そうな録音多数。ぜひ訪れてみていただきたい。

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