2013/04/19

Saxophone Recital in Zushi vol.1(田口雄太&山下友教&大嶋千暁)

終業後、京浜急行に乗って逗子まで。田口さんと山下さんのリサイタルを聴きに伺った。田口さんと山下さん、お二人とも三浦市の出身で、昭和音楽大学では先輩後輩にあたるとのこと。

【Saxophone Recital in Zushi vol.1~若手演奏家による共演~】
出演:田口雄太、山下友教(以上sax)、大嶋千暁(pf)
日時:2013年4月19日 19:00開演
会場:逗子文化プラザ・なぎさホール
プログラム:
J.B.サンジュレ「デュオ・コンチェルタンテ」より第1楽章
E.デニゾフ「ソナタ」
豊住竜志「A Flash of Light」
J.フェルド「ソプラノサクソフォン・ソナタ」
F.マルタン「バラード」
カリヴォダ「サロンのための小品」
J.ノレ「フリッソン」
藤代敏裕「2人のサクソフォーン奏者のための2つの小品」
F.プーランク「トリオ」

配布されたプログラム冊子が面白かった。フォーマルな曲解説に加えて、曲ごとに3人の対談が載っている、というもの。興味を持って読んでもらえるだろうし、面白い試みだ。いつか試してみよう。

サンジュレの「デュオ・コンチェルタンテ」を挨拶代わりに吹いたあとは(このサンジュレの冒頭が不思議と印象に残っている)、お二人それぞれのソロステージ。これがまたフルリサイタルほどのボリューム感たっぷりなプログラムで、とても聴き応えがあった。

山下さんはまずデニゾフを演奏。昨月の修了試験の際にも吹いたということだが、基本的な高い技術がベースにありつつも、その上に展開されてゆく"個性"ともいうべき部分を興味深く聴いた。第二楽章のモノローグでの、各重音を見事に決めて高い集中力を保つ部分など、さすがである。千暁さんのピアノとのアンサンブルも見事だ。「A Flash of Light」は、アルティシモ音域もふんだんに交えつたヒロイックな立ち振る舞いだった。山下さんの演奏でラーションなんか聴いてみたいなー。

田口さんは、まずフェルド。有名な「アルトサクソフォンとピアノのためのソナタ」ではなく、オーボエソナタからの改作となるソプラノサクソフォンのためのソナタだ。フェルドの一連のサクソフォン作品については、あまり冷静なコメントが書けない(「四重奏曲」をやったことがあるのだが、似た主題が出現しまくるのだ)が、こちらも集中力の高い演奏。マルタンは、とにかく最終部での何もかもかなぐり捨てて走り抜けていくような煽りが最高だった。

第一部、ここまで終わってなんと20:20(笑)。このボリューム感は個人的には嬉しいが、一般の方向けにはもうちょっとコンパクトにまとめて欲しかった気もするなあ、などとも思った。

後半は山下さんのカリヴォダから。先日オーボエの演奏を聴いたのだが、こういったロマン派のヴィルトゥオーゾ的な作品に、サクソフォン側からもっと着目していかなければならないと思う。演奏は拍手喝采モノで、オーボエとは違うフレーズ内での息遣いによるうねりが感じられ、サクソフォンならではの演奏を聴く楽しみだろう。最終部の音のばら撒きの部分では、オーボエが高い音圧を保ったまま吹き切るのに対して、ソプラノサクソフォンでは逆に音圧が低下する、という楽器の発音体か構造か、特性による違い?も面白い。それにしても、山下さんはこの曲が大好きなんだろうなあ(笑)「フリッソン」は、田口さん。そういえば、この曲も意外と聴く機会がないかも。クラシックでもあり、ポピュラーでもあり、ジャズでもあり、というちょっと不思議な温度感をもつ作品だが、ノレ節とでも表現できるようなスタイルを面白く聴かせてくれた。

藤代氏の新作は、素敵な作品だった。2本のサクソフォンがハモる部分がとても面白く聴けて、特に第二楽章「カプリツィオ」では時折にビバップ風だったり、常動曲風だったりと、聴きながら興奮してしまったのだった。最後はプーランク。これも最近よく聴く機会があるなあ。まるで即興的に音楽を紡ぎ出す山下さんのソプラノと、悠々自適にどっしり構えている田口さんのテナー、そしてその二人を絶妙に支える千暁さん、といった構図が面白かった。それにしても、この曲での聴き手側の幸福感といったら半端ない(もちろん演奏が素晴らしいからなのだろうが…。)。演奏者はもっと楽しいんだろうなあ。

アンコールは「ダンシング・フェアリー」という美しい小品。

素晴らしいデュオリサイタルだった。サクソフォンも喝采モノだし、もちろんピアノもすばらしい(アンコールを含めて9曲出ずっぱりだった大嶋千暁さん…さすがだ)。

打上げも伺いたかったのだが、明日の準備がまったくできていないのでお先に失礼することとなった。乗り継ぎが上手くいって、一時間かからずに自宅に戻ることができた。

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