2013/04/06

Claude Delangle - La creation du monde

パリ国立高等音楽院サクソフォン科教授、クロード・ドゥラングル教授の、吹奏楽との共演となる新譜。録音は2007年だが、リリースまでだいぶ間が開いてしまった。とにかく驚いたのはダリウス・ミヨー「世界の創造」の演奏だ…!

トロンボーン奏者としても有名な、クリスチャン・リンドベルイ指揮の、Swedish Wind Ensembleとの共演。サクソフォンと吹奏楽のための作品といえばダール、クレストン、ビンジ、そしてボルコム、オルブライトもぶっ飛んだ作品を書いている。ハイデンやエリクソンも…って、キリがないな。邦人作品だと、古くは伊藤康英「幻想的協奏曲」、最近では石毛里佳「Muta in Concerto」や長生淳「He Calls」などが思い浮かぶ。この編成で何を入れてくるかと興味津々だったのだが、なるほどというか、そう来ますかというか。ミヨーはオリジナル編成で弦楽も交えており、エミルソンの委嘱作品は協奏曲ではなく吹奏楽のための作品。できればダールを聴いてみたかったなー…というのは贅沢な悩みか。

「La creation du monde(BIS CD-1640)」
Claude Delangle, alto saxophone
Swedish Wind Ensemble, ensemble
Christian Lindberg, conductor

John Williams - Catch Me If You Can
Darius Milhaud - La creation du monde
Roger Boutry - Divertimento
Paul Creston - Concerto
Anders Emilsson - Salute the Band
Astor Piazzolla/Tejo - Escualo

「BISのCDは、収録音圧レベルが低いのがちょっとなー…」とブツブツ言いながら聴き始める。案の定、ボリュームを上げないと「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」の冒頭は聴こえづらい(苦笑)。リンドベルイ指揮の吹奏楽は非常に高い技術力で、ともすれば発散しがちなこの作品を良くまとめている。そして当たり前だが、ソロのクオリティは世界最高クラスだ。オリジナルのサウンドトラックに比べてややノリが抑制されているあたりは、いかにもドゥラングル教授らしいというか。

そして飛び上がるほど驚いたのはアルバムタイトルにもなっているミヨー。大前提として、この作品のベスト録音は、今も昔も変わらずレナード・バーンスタイン&フランス国立管弦楽団&ダニエル・デファイエのコンビの演奏(EMI)だと断言できる。妙に暑苦しくも統率の取れたオケ、自由自在な管楽器、デファイエ氏の神々しい音色・音楽性、録音状態も良い…等、ほかのいくつもの演奏が束になってかかっても敵わないものだと思っていた。今回のドゥラングル教授の録音は、誤解を恐れず言えば、この史上最強コンビの演奏を最良の形で現代に蘇らせようとしたものだ(と、少なくとも私自身は感じた)。

冒頭の数音を聴いた瞬間に、誰のサクソフォンの演奏なのか判らなくなってしまった。音色とフレージングによる抜群の存在感を保ちながら、オーケストラとのこの理想的なバランスをとる様は、バーンスタイン盤でしか聴いたことがない。弦楽器陣、管楽器陣も相当健闘しており、サクソフォンとともにユニゾンで動く場所など、艶っぽくて蠱惑的ですらある。全曲にわたって相当に良くまとめられており、入念なリハーサルを重ねたであろうことが推測できる。この演奏は、「世界の創造」の録音についてはバーンスタイン盤に次ぐ名録音として認識されるべきである。

ブートリー、クレストンの演奏も、サクソフォンは完璧。バックのパートの難しさを感じさせない(ブートリーはピアノのあのノリを出すことは至難の業だし、クレストンて実はすごく難しいと伝え聞くし)リンドベルイの棒&吹奏楽団と、高次元で融合している。特に急速楽章であるほど、その凄さがわかる。いずれもこの曲のベスト演奏として位置づけてしまって良いのではないだろうか。

エミルソンの新作(2006年にSwedish Wind Ensembleが創設100周年を迎えたことを記念して作曲されたとのこと。100周年ってすごいな)は、ちょっと難解な現代音楽といったふうだが、それほど聴きづらい作品でもない。

実質アンコールとして置かれたピアソラ。啼鵬さんにこのCDの情報を伝えたところ、2006年に大栗司麻さん経由でレンタルしたとの話を教えてくださった。須川氏の録音と聴き比べてみると、様々なアプローチの違いがあって面白いかもしれない。

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